2014年09月16日

『スーサイド・パラベラム』第5話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『スーサイド・パラベラム』第5話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<ネタバレあらすじ>

健在なオウカが武器会社を訪問していた。
もっとも、これはオウカが意識下に作り出した架空の会社である。
それは荒唐無稽な姿形をしていた。

とはいえ、今のオウカにとってそれに意味は無い。
あくまで、武器を販売していることを満たしていれば良いのだ。

社内へと突入したオウカは突如、現れたセールスマンらしき男から「魔銃・パラベラム」について説明を受ける。

セールスマンによれば「パラベラム」は確実に標的へ死をもたらす銃。
それは自殺、他殺を問わない。
飛び出した弾は回転しつつ標的の脳内に残り続けるのだそうだ。
だから、取り出すことも不可能である。

これを聞いたオウカは笑顔で購入を決めると、当のセールスマンに向けて発砲する。
そして、呟く……「不良品じゃない」と。
「パラベラム」は確かに標的の脳内に弾を残す。
しかし、それは僅かに死を逸れ、永遠の昏睡状態に陥らせるらしい。
この事実をオウカは既に知っていたのだ。
だが、オウカにとってはこれに意味があった。
オウカは倒れ伏したセールスマンを捨て置くと、その場を去ってしまう。

一方、チハヤ(千流)はオウカのバラバラ死体を運んでいた。
チハヤの肩に停まる小悪魔・メリックはこれで次の階層に進めると洩らす。
こうして、次の階層に進んだ1人と1匹であったが……。

其処は1話のマフィアの世界。
しかし、先に来た時とは違い部下たちは既に多くの者が死亡していた。
どうやら、先客が居るらしい。
彼らは「ボスを守れ」と口にしつつ、次々と斃れて行く。

先客を追ったチハヤはその正体に驚く。
なんと、チハヤ自身だったのだ。

しかし、先客となっていたチハヤはこれに気付くことなくチハヤ自身を攻撃することに。
辛うじてこれを防いだチハヤだが、その間に先客チハヤは去ってしまった。

そんな2人のチハヤの姿を、兎の仮面をした人物が見守っている。
「あいつらには無理だろう」
そう呟く兎仮面、その肩には隻眼のメリックが乗っていて……。

一方、再び先客を追うチハヤ。
すると、1話では監禁されていた筈のオカマに出会う。
オカマによれば、先客は既に別の世界に旅立ってしまったようだ。

こうして先客のチハヤを追い、今のチハヤも別の世界へと移動する。
これにオカマも同行して―――第6話へと続く。

<感想>

『メフィスト』の新連載第5回。
5話により、かなり物語の全貌が見えて来ましたね。

簡単にまとめるとこんな感じか。
まず、オウカが死ねないことを知りつつパラベラムを用いて自殺未遂、昏睡状態に。
これを救うべくチハヤがオウカの深層心理世界に飛び込む。
その目の前で深層心理世界のオウカが自殺。
これにより、チハヤがオウカに内包される。
内包された状態のチハヤが深層心理世界のオウカを救うべくさらにダイブ。
これを繰り返すことで、マトリョーシカ状態のオウカとその中で複数のチハヤが存在しているものか。
どうやら、オウカの身体の中が既にパラレルワールドとなっているようだ。

なので、5話でチハヤが後続のチハヤに出会ったように、今回ラストに登場した兎仮面もまた先行したチハヤとなるのだろう。
その証拠に兎仮面の方には隻眼となった小悪魔―――メリックが存在している。
壮絶な経験を積んだに違いない。

さらにどうやら、深層心理世界を行き来するにはオウカの身体の一部が必要となる様子。
2話でオウカがバラバラ死体であったのは、別のチハヤが既に移動した後であることを示していたのか。
さらに、3話で猫柳を握って寮に現れた人物もオウカに内包されたチハヤだったのだろう。

そして、オウカ自身の自殺未遂も何らかの目的があってのことか。
考え得るのは幾重にも続く運命の螺旋にチハヤを取り込むことかなぁ。
それにより、永遠にチハヤと共に居ることが可能になるとか。

1話、4話、5話で登場しているオカマの存在も気になる。
3話で登場した枯葉と同様に注目すべきキャラだろう。

ちなみに「スーサイド」が「自殺」や「破滅」を意味する英語、「パラベラム」が「戦いに備える」とのラテン語だそう。
本作タイトルを仮に和訳すれば「破滅(自殺)への戦いに備える」と言った意味合いか。
あるいは意訳すれば「(次なる)戦いに備えた破滅(自殺)」とも解釈出来そう。

そして4話に登場した「サムサラ・エクスプレス」。
「サムサラ」は「輪廻転生」を表す言葉。
つまり「サムサラ・エクスプレス」は「輪廻転生列車」。
だからこそ環状線になっており、今生の終着駅は次の人生の始発駅となるのだろう。
オウカが4話で語った夢のうち、列車旅は4話、アイドルは3話、ギャングのボスは1話で達成済み。
オウカはその度に、次のステージへと移動して行く。
これをチハヤが追い続ける。
この流れも「輪廻転生」と言えそうだ。

これらからは「輪廻転生」と同じく「終末へ向けてのリセット(またはその繰り返し)」と言った意味が引き出せる。
今回の描写と組み合わせると、チハヤがオウカを追って彷徨うこの世界は「現実から逃避するオウカの深層心理」が作り出した世界なのだろう。

全体的に抒情的な世界で繰り広げられるチハヤとオウカの追いかけっこ。
次なる舞台は何処になるのか?
次回も楽しみです!!

◆関連過去記事
『スーサイド・パラベラム』第1話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)

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『スーサイド・パラベラム』第4話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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