2014年08月20日

『月は囁く』第10話「月と髪切り魔」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル9月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『月は囁く』第10話「月と髪切り魔」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル9月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
藤村月:陽一の父が再婚したことで、陽一の義妹となった。犯罪心理学と観相学を駆使する天才少女。
藤村陽一:警視庁捜査一課勤務、35歳。
陽一の父:犯罪心理学者。多くの事件解決に寄与した。

野々川:陽一の後輩で保育士。彼に好意を抱いているらしい。5話「月とハロウィーンの怪物」に登場。

片山光:28歳無職の男性。
山下:交番巡査。細面の男性。
立花:交番巡査。中肉中背の男性。


季節は夏である。
陽一は月を連れて夏祭りに出掛けることに。

陽一は予め用意していた月用の浴衣に彼女が袖を通すことを楽しみにしていたのだが……。
何故か、月は普段着であった。
何か気に喰わないことでもあったのだろうかと不安がる陽一。

そんな陽一に後輩で彼に好意を抱く野々川が声をかける。
事情を説明した陽一に野々川は一言「着付けの問題」と一刀両断する。
そう、外国育ちの月にとって初めての浴衣の着付けはハードルが高過ぎたのだ。

男性である陽一では思いも寄らぬ真相であった。
美容院でも着付けが行えることを聞いた陽一は、これを月に教えることに。

……と、その最中に何やら喧騒が近付いてくる。
見れば、1人の小太りの男が警官2人に追われているようだ。

「待て〜〜〜っ!!」
叫び声を上げる警官2人。
これから必死に逃げようとしている男。

月は男が目の前を通り過ぎるタイミングを見計らいこれに足をかける。
男は見事に転倒し、駆け付けた警官により御用となった。
興味を抱いた陽一は身分を明かすと警官に事情を尋ねる。

男を捕まえた警官2人は、細面の男性が山下、中肉中背の男性が立花と名乗った。
彼らは最近になって付近で頻発している髪切り魔を警戒していたらしい。
その最中、怪しそうな男を見つけ職務質問を行ったところいきなり逃げ出した為に追っていたのだそうだ。

捕まった男の名は片山光。
28歳の無職、その所持品からはナイフが見つかっていた。

陽一は月の要望でこの取調に立ち会う。
立花たちの問いに片山は犯行を否認、ナイフは護身用の物と主張するが……。

ところが、これを見ていた月が陽一に取調をして欲しいと依頼する。
こうして、月の要請で陽一自らが取調を行うことに。
犯行当日のアリバイなど髪切り魔について尋ねて行く陽一。

片山は時に俯き、時に脂汗を流しつつ応対する。
そんな片山を厳しく監視する山下。
そして、立花は鼻の頭をかきつつ帽子を目深に被り直していた。

結局、片山は証拠不十分で釈放されることに。
しかし、この様子を見ていた月は「犯人だ!!」と断言する。

翌晩、月はウィッグを着用し囮捜査を決行する。
月によれば、今夜間違いなく犯人を捕まえることが出来るのだそうだが。
不安に駆られた陽一が同行する中、ふと月の姿を見失った途端に悲鳴が届く。

慌てて駆け付けた陽一が目にした光景とは!!
髪切り魔に襲われた月……ではなく、逆に髪切り魔を取り押さえた月の姿であった。
そして、取り押さえられた髪切り魔の正体は……。

なんと、片山では無く立花であった。
月によれば、取調の最中に窺っていたのは片山では無く立花であった。
立花は髪切り魔について質問が及ぶと、無意識に鼻の頭をかくふりや帽子を目深に被り表情を隠していたのだと言う。
月が「犯人だ!!」と断言したのも、もちろん立花についてであった。

こうして、月の活躍で髪切り魔は逮捕された。

後日、陽一は浴衣を着こなした月と再び夏祭りに出掛けることに。
浴衣に対し無邪気に喜ぶ月。
そんな彼女の姿を眺めつつ、事件に挑む勇敢な彼女とのギャップに魅力を感じ心が騒ぐ陽一であった―――11話に続く。

<感想>

「幇間探偵しゃろく」でお馴染みの青木朋先生が宮崎克先生とタッグを組み、新たなミステリコミックの連載を「ビッグコミックオリジナル 増刊号」で開始されました。
タイトルは「月は囁く」。
捜査官・藤村陽一と、顔相学を修めたその義妹・藤村月が犯罪事件を解決する物語。

まさに陽一(太陽)と月(月)の物語です。

では、10話を読んだ感想を。
山下や立花ではなく、陽一自身が取調を行ったことが見事な伏線になっていましたね。

その陽一による取調。
一見、片山のみを対象に行われたモノ……と思いきや、片山が描き込まれたコマに傍で立ち会っていた山下と立花もきちんと1コマ1コマ動きが描写されており、実は彼らこそが月の観察対象となっていました。
結果、急転直下の事件解決に繋がる―――良かったです。
此の伏線、活字にすると違和感が残るであろう箇所で、まさに漫画という画像での媒体を活かした見事な手法でした。
同時に、この画像を活かした手法が本作の特徴である「観相学」を用いる推理法ともマッチしていたことも特筆すべき点と言えるでしょう。
どちらか一方だけでは此処までのインパクトは出ない筈です。

今回は「画像による伏線」と「観相学の推理法」、この2つが見事に噛み合った良回でしたね。
是非、これを体験する為にも本作それ自体を読んで欲しい。

ちなみに、ルナは父親に対しトラウマがある様子。
その天才的な力により、父に虐待されていたのかな。
結局、父と母はこれが原因で離婚。
そして、母が陽一の父と再婚といった流れか。

ルナとしては離婚の原因が自身にあると考えて、以来、人と距離を置くようになったか。
ところが、無邪気な陽一に癒されていく展開か。
イイですね。
最終的にはルナがトラウマとなった父と和解する(乗り越える)展開もありそうかな。

興味を抱かれた方は是非、『ビッグコミックオリジナル 増刊号』にて本作を確認されたし。

◆関連過去記事
『月は囁く』第1話「月は囁き、花は語る」(宮崎克原作、青木朋画、小学館刊『ビッグコミックオリジナル3月増刊号』掲載)ネタバレ批評(レビュー)

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