2014年09月01日

『どこかでベートーヴェン 第一話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.6』掲載)

『どこかでベートーヴェン 第一話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.6』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家たちの書き下ろしミステリー・ブックです。『さよならドビュッシー』の中山七里が描く、待望の音楽シリーズ「どこかでベートーヴェン」、上甲宣之『JC科学捜査官』シリーズ、最新短編「雛菊こまりと“くねくね”殺人事件」、絶好調「死亡フラグ」シリーズの七尾与史によるジェットコースター・ミステリー「僕はもう憑かれたよ 第3話」、京都本大賞を受賞した「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズの岡崎琢磨による最新短編「純喫茶タレーランの庭で」、ほっこり温かいスープ屋の謎を描く友井羊による「つゆの朝ごはん 第4話」など、話題作家競演の一冊。
(宝島社公式HPより)


<感想>

中山七里先生「岬洋介シリーズ」の最新作『どこかでベートーヴェン』の第1話が発表されました。
長編第3作である『いつまでもショパン』と同様に『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK』に1話が掲載されています。
これにより、何時か来るシリーズ第4作『どこかでベートーヴェン』の発売が明らかに。
『いつまでもショパン』と同じ間隔ならば、最速で4ヶ月後には長編として我々読者にお目見えする可能性もありそうです。

そんな「岬洋介シリーズ」は「難聴を抱える天才ピアニスト岬洋介が関わった事件を描く」シリーズ作品。
あくまで関わった事件なので、中心視点人物は各作品ごとに別の人物となっており、岬は事態解決やアドバイスなどを行う探偵役の立場となっています。
いつか岬自身が視点人物となる日がやって来るのでしょうか。

なお、今回の『どこかでベートーヴェン』は『いつまでもショパン』の後から始まる物語。
ただし、ある事柄により一躍有名になった岬を見かけた高校時代の同級生が当時の事件について振り返るとの内容になっています。
この為、実際は回想が主になりそうかな。
1話を読んだ限り、当時から岬は他者を魅了する力を持っていた模様。
これは見逃せない作品となりそうです。
それと1話では登場人物や物語の背景についての説明で終始しており、事件自体は発生していません。
とはいえ、何か起こりそうな空気はありますね。
どうにも怪しいのは描写からだと棚橋教諭と春奈なのですが……おそらく彼らがメインに絡むと思われます。
特に棚橋が岬同様に音楽室の価値に気付いているらしい点がポイントかも。
そして、本作はタイトルが『どこかでベートーヴェン』とされている通り、岬の難聴も大きく絡んで来るのかもしれません。

ちなみに、「岬洋介シリーズ」には長編が『さよならドビュッシー』、『おやすみラフマニノフ』、『いつまでもショパン』の3作(刊行順、作中時系列順)と短編が短編集『さよならドビュッシー前奏曲(文庫化に際し『要介護探偵の事件簿』を改題)』(『さよならドビュッシー』の前日譚を描いたスピンオフ)、『間奏曲(インテルメッツォ)』(『いつまでもショパン』とう同時期に起こっていた事件を描くスピンオフ)の2作が存在しています。
記念すべきシリーズ第1作『さよならドビュッシー』は映画化もされています。
書籍版については、すべてネタバレ書評(レビュー)していますね。
興味のある方はネタバレあらすじ後の関連過去記事へどうぞ!!

ネタバレあらすじについては、管理人によりかなり改変されています。
本作を楽しんで頂くには直接お読み頂くことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
岬洋介:シリーズ主人公、今回は高校時代が描かれる。
鷹村亮:『どこかでベートーヴェン』の視点人物。音楽科の学生。
岩倉:音楽科の学生の1人。
春菜:鷹村が憧れる同級生。
棚橋:音楽教師。
佐久間:数学教師。

時系列は『いつまでもショパン』直後のことである。

『いつまでもショパン』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

ショパンコンクールに出場した岬洋介。
しかし、ある事情(『いつまでもショパン』参照)により受賞を逃してしまうことに。
だが、彼はそれにより世界中で一躍名を知られることになった。

岬の奏でたノクターンが24人もの人命を救ったのだ。
これをパキスタン大統領が全世界に向けて表彰したのである。
これにより、岬は受賞せずして受賞者よりも知られる存在となった。

その報道を目にした鷹村亮は岬の人柄を思い出し、さもあらんと大きく頷く。
鷹村は岬の高校時代の同級生であった。
鷹村は当時のことを振り返りつつ、コンクール裏で起こっていたという事件解決にも岬が寄与したに違いないと想いを馳せる。
何故なら、高校時代の殺人事件を解決したのも、また彼だったから。

時は鷹村が高校2年に進級した当時に遡る。
鷹村が通う学校は3年前に新設されたばかりの高校であった。

新設するにあたってはちょっとしたエピソードが存在する。
建設予定地が見つからなかったのだ。
その為に、山の中を新たに切り開いたその高校は当然人里離れた場所に存在していた。
そう、通学にはちょっとした登山気分を毎日味わうこととなる。
これがなかなかに辛い。

しかし、そんな学校に鷹村が通うことには理由があった。
其処には市内唯一の音楽科があったのだ。
もしも、音楽科に進学しようとすれば隣の市まで通学する必要がある。
それに比べれば、ちょっとした登山ならば「まだマシ」と言うものだろう。

もっとも、鷹村自身は音楽科に拘りはない。
拘りがあるのはピアノ学校の教師をしている彼の母だ。
半ば強引に鷹村は進学先を決められていたのである。

そんなある日、音楽科に転入生が現れた。
それが岬洋介であった。

ルックスも抜群、行いも優雅、雰囲気も魅力的な彼。
さらに、音楽教師である棚橋によれば音楽の素養も素晴らしいそうだ。
これにクラスの女子はメロメロ。
男子は嫉妬の炎に身を焦がすこととなった。

しかも、音楽科の生徒は進学クラスに比べ余り数学が得意ではない。
いや、むしろ不得意だ。
数学教師の佐久間は、そんなクラスの特徴を知り尽くした上でわざと難問を生徒に答えさせ狼狽えるさまを楽しむと言う悪癖があった。
ところが、岬は佐久間の出した難問をスラスラと解いてしまったのだ。
これには佐久間も絶句してしまった。

なんと、才色兼備とは!!
女子は岬に憧れの視線を惜しまない。
鷹村としては好意を寄せるクラスメート・春奈が岬に惹かれはしないかとドキドキである。

しかし、鷹村には1つだけ疑問があった。
これだけ優秀な岬が、新設されて歴史も浅いこの学校を選んだのだろうかということだ。

席が近かったことから岬のお世話係を拝命した鷹村。
岬の希望で彼を音楽室へと案内することに。
すると、岬は音楽室の設備を目にするや否や、彼のイメージに似合わぬほど狂喜乱舞する。
岬によれば、この学校の設備は全国でもトップレベル。
だからこそ、此処を転校先に選んだらしい。

と、岬が大騒ぎしているところに見覚えのある男子生徒がやって来た。
岩倉だ。

岩倉は自称不良生徒。
しかし、鷹村に言わせれば可愛いものであった。
もちろん、彼もまた鷹村のクラスメートだ。

岩倉は未だに大喜びしている岬を珍しそうに眺めつつ、いずれ此処がどんなところか分かると呟くのだが―――『どこかでベートーヴェン』2話(あるいは本編)に続く。

◆「中山七里先生」関連過去記事
『さよならドビュッシー』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『おやすみラフマニノフ』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『いつまでもショパン』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『いつまでもショパン』第1回(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『間奏曲(インテルメッツォ)』(中山七里著、宝島社刊『このミステリーがすごい!2013年版』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『連続殺人鬼カエル男』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『要介護探偵の事件簿』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.6





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『間奏曲(インテルメッツォ)』が収録された「このミステリーがすごい! 2013年版」です!!
このミステリーがすごい! 2013年版



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