ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
大好評パスティーシュシリーズ、第二弾!
復員してきた金田一耕助がひらいた探偵事務所に名門・柳條伯爵家の息子が訪れ、その後何者かに殺害された。事件の嫌疑は金田一にかかっているようで……。金田一耕助と明智小五郎、2大名探偵が事件に迫る!
(角川書店公式HPより)
<感想>
2014年9月29日放送ドラマ「金田一耕助VS明智小五郎ふたたび」の原作である同名短編を含んだ「明智小五郎対金田一耕助」シリーズ最新短編集。
収録作は次の5作品。
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび/東京1947年』
・『金田一耕助 meets ミスター・モト/サンフランシスコ−神戸1935年』
・『探偵、魔都に集う/上海1941年』
・『物語を継ぐもの』
・『瞳の中の女異聞――森江春策からのオマージュ』
それぞれの感想は次の通り。
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび/東京1947年』
実は「みたび」であることが判明した「明智小五郎対金田一耕助」な物語。
雰囲気を活かした物語が素晴らしい。
詳しくは過去記事のネタバレ書評(レビュー)参照のこと。
・『金田一耕助 meets ミスター・モト/サンフランシスコ−神戸1935年』
初出は同人誌『WELCOME BACK, MR.MOTO』とのこと。
「ミスター・モト」は「天皇直属の秘密諜報部員」との設定を持つキャラクター。
太平洋戦争前に米国で流行したジョン・P・マーカンド『天皇の密偵―ミスター・モトの冒険』の主人公である。
本作はそのパスティーシュ作品で「ミスター・モト」の風貌的な特徴を活かした展開は必読。
振り回される金田一よ……ただし、此処から「あの事件」に至るのだ。
・『探偵、魔都に集う/上海1941年』
実はこちらこそが「ふたたび」であった「明智小五郎対金田一耕助」な物語。
金田一の若さが目立つ一編。
詳しくは過去記事のネタバレ書評(レビュー)参照のこと。
・『物語を継ぐもの』
初出は光文社刊『物語のルミナリエ 異形コレクション』。
物語を代表する者……と言えば主人公。
そんな主人公におけるイマドキの新旧世代交代劇とそれでも負けない根強い人気のレジェンド級主人公の存在を描いた作品。
とはいえ、「あとがき」によると出典バージョンから追加(ラストのAとKのシーン)されているらしい。
・『瞳の中の女異聞――森江春策からのオマージュ』
まさかの森江ミーツ金田一!?
探偵の魂はこうして受け継がれて行くのか……横溝正史先生『瞳の中の女』を絡めた上記『物語を継ぐもの』の別バージョンのような作品。
基本としてメインとなるのは『ふたたび』と『魔都に集う』と『瞳の中の女異聞』の3作。
『ミスター・モト』と『物語を継ぐもの』は初出は別でありながらボーナストラック的な要素が強い。
ちなみに「金田一耕助VS明智小五郎(明智小五郎対金田一耕助)シリーズ」を商業媒体への発表順に並べると次の通り(2014年9月29日現在)。
まず1作目『明智小五郎対金田一耕助』(東京創元社刊『明智小五郎対金田一耕助』、角川書店刊『金田一耕助VS明智小五郎』収録)。
「鴇屋蛟龍堂」で発生した奇妙な事件に、若かりし日の金田一とベテランとなっている明智が挑むもの。
この作品、ドラマ化もされています。
・『明智小五郎対金田一耕助』(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「金田一耕助VS明智小五郎 犬神家の一族八つ墓村の金田一が名探偵明智と世紀の推理対決!切断された頭部 黒頭巾の男、黒焦げの焼死体…老舗薬問屋で続発する奇怪な連続殺人!予想を全て裏切る謎につぐ謎!驚愕の真相とは!?」(9月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
続いて2作目『金田一耕助対明智小五郎』(角川書店刊『金田一耕助VS明智小五郎』収録)。
こちらはボーナストラック的作品で、作中時系列ではシリーズ中もっとも後年の出来事となっています。
・『金田一耕助VS明智小五郎』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
そして3作目『明智小五郎対金田一耕助ふたたび』(『金田一耕助VS明智小五郎ふたたび』収録)。
これは1947年に「華族・柳條家で起こった連続殺人事件」に金田一と明智が挑みます。
こちらも2014年9月29日に放送されました。
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・「金田一耕助VS明智小五郎ふたたび 名探偵金田一と明智の推理対決再び!村の入り口に垂れ下がる首つり死体…柳條家に隠された宝と謎…それを狙う怪人二十面相!名家を襲った怪事件!驚愕の結末とは!?」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
最後に2014年9月現在のシリーズ最新作にして4作目『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助』(『金田一耕助VS明智小五郎ふたたび』収録)。
これは1941年に起こった殺人事件に金田一が挑みます。
明智は意外な関わりを示すことに……。
・『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
なので、このシリーズを作中時系列順に並べると『明智小五郎対金田一耕助』→『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助』→『明智小五郎対金田一耕助ふたたび』→『金田一耕助対明智小五郎』なります。
これからも広がって行くであろう「明智小五郎対金田一耕助シリーズ」世界。
今後も見逃すなかれ!!
……と、その前にまずは本作『金田一耕助VS明智小五郎ふたたび』をチェキ!!
<ネタバレあらすじ>
◆『明智小五郎対金田一耕助ふたたび/東京1947年』
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
◆『金田一耕助 meets ミスター・モト/サンフランシスコ−神戸1935年』
1935年、サンフランシスコから神戸行の船に乗り込んだ金田一。
船内では「高名な探偵が乗船している」と噂されていた。
自分のことかと胸中で喜ぶ金田一であったが……。
ひょんなことから、ある謎を解くこととなった金田一。
これに成功したは良いが、その為に組織から狙われることに。
神戸に着くや金田一は組織に囚われてしまう。
組織の人間は金田一を「ミスター・モトだろう?」と詰め寄るが……。
其処に地元の警官隊が到着。
金田一は命からがら救い出された。
その目の前には船中で会話を交わした紳士然とした風貌の男性が。
彼はアジア風でもあり、何処か欧州風でもあった。
彼こそが「ミスター・モト」であった。
実は「ミスター・モト」こそが組織の追っていた相手だったのだ。
もちろん、船内で噂されていた「高名な探偵」も彼の事。
「ミスター・モト」は金田一が同じ船に乗っていたことを利用し、彼を自身の囮に用いたのだ。
これには金田一が「あの謎」を解いたことも有利に働いた。
組織は金田一こそが「ミスター・モト」だと思い込んでしまったのだ。
おそらく、彼の外見的にアジア然とも欧州然とも見える風貌も追い風となったに違いない。
そして「ミスター・モト」こそが金田一を救うべく通報した本人でもあったのだ。
金田一は体良く利用されたことを悔しがりつつも、先輩である「ミスター・モト」に探偵の真髄を見出し彼のような探偵になることを志す。
そんな金田一をこの後に待ち受けるのは……1937年「本陣殺人事件」である。
◆『探偵、魔都に集う/上海1941年』
・『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
◆『物語を継ぐもの』
駆けて行く少女の前に現れ出でるは騎士に怪物にスーパーヒーロー!?
彼らは次世代の主人公となる少女を応援するべく駆け付けたこれまでの物語世界の主人公たちであった。
物語世界の未来に頭を悩ませていた彼らだが、生まれながらに主人公の資格を持つ新世代の少女に世界を託す。
そんな少女の背中を見守るは探偵小説界の主人公2人。
すなわち明智小五郎と金田一耕助であった。
しかし、彼らは少女だけに物語世界の舵を任せるつもりは無かった。
彼ら自身を応援し続ける根強い読者の為に、彼らもまた新たな物語世界に挑むのだ―――エンド。
◆『瞳の中の女異聞――森江春策からのオマージュ』
あの2大探偵が遂に邂逅す!?
こればかりは此処では明かせない。本作を読むべし!!
【ドラマ化情報】
・【至急報】謎の推理ドラマ情報が!!果たして「KvsA」とは!?
・「KvsA」の正体判明!!土曜プレミアムSPドラマ「金田一耕助vs明智小五郎」だった!!
・【朗報】「KvsA」続編製作中とのこと!!つまり「金田一耕助VS明智小五郎」第2弾放送決定!?
◆関連過去記事
【明智小五郎対金田一耕助シリーズ関連】
・『明智小五郎対金田一耕助』(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『金田一耕助VS明智小五郎』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『探偵、魔都に集う――明智小五郎対金田一耕助(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・「金田一耕助VS明智小五郎 犬神家の一族八つ墓村の金田一が名探偵明智と世紀の推理対決!切断された頭部 黒頭巾の男、黒焦げの焼死体…老舗薬問屋で続発する奇怪な連続殺人!予想を全て裏切る謎につぐ謎!驚愕の真相とは!?」(9月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「金田一耕助VS明智小五郎ふたたび 名探偵金田一と明智の推理対決再び!村の入り口に垂れ下がる首つり死体…柳條家に隠された宝と謎…それを狙う怪人二十面相!名家を襲った怪事件!驚愕の結末とは!?」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【森江春策シリーズ関連】
・森江春策シリーズ第1作にして初々しい学生・森江青年が初登場する作品はこちら。
「殺人喜劇の13人」」(芦辺拓著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「綺想宮殺人事件」(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『異次元の館の殺人』(芦辺拓著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・土曜ワイド劇場版「森江春策」シリーズ第1作となった「弁護士・森江春策の裁判員法廷 殺人レシピのさしすせそ」のネタバレ批評(レビュー)も含んでます。
「裁判員法廷」(芦辺拓著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「探偵Xからの挑戦状!」にあなたも挑戦!?「森江春策の災難」ネタバレ批評(レビュー)です。
「森江春策の災難」(芦辺拓著)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「弁護士森江春策の事件 殺人同窓会・すり替った友人の死体〜君は一体誰!!密閉空間の移動トリックで法廷が踊る!?」(8月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「弁護士・森江春策の事件 透明人間の完全犯罪!!偽装結婚で殺された病院長!?死のカプセルが相続人を狙う」(10月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
『明智小五郎対金田一耕助ふたたび(前篇)』が掲載された「小説 野性時代 第119号 (KADOKAWA文芸MOOK 121)」です!!
小説 野性時代 第119号 (KADOKAWA文芸MOOK 121)
小説 野性時代 第119号 (KADOKAWA文芸MOOK 121)
【関連する記事】
- 『どこかでベートーヴェン』(中山七里著、宝島社刊)
- 『通いの軍隊』(筒井康隆著、新潮社刊『おれに関する噂』収録)
- 『クララ殺し』最終話、第6話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.7..
- 『自殺予定日』(秋吉理香子著、東京創元社刊)
- 『タルタルステーキの罠』(近藤史恵著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.76 ..
- 『歯と胴』(泡坂妻夫著、東京創元社刊『煙の殺意』収録)
- 『迷い箱』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『噂の女』(奥田英朗著、新潮社刊)
- 『追憶の轍(わだち)』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.69 F..
- 『コーイチは、高く飛んだ』(辻堂ゆめ著、宝島社刊)
- 『恋人たちの汀』(倉知淳著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.75 FEBRU..
- 『東京帝大叡古教授』(門井慶喜著、小学館刊)
- 『傍聞き』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)
- 『愚行録』(貫井徳郎著、東京創元社刊)
- 『転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿』(笠井潔著、講談社刊『メフィスト 2016v..
- 『声』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)
- 『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)
- 『図書館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)
- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)