2014年09月14日

「サイレーン」第61話「動機」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「サイレーン」第61話「動機」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧は本記事下部に移動しました。

<あらすじ>

・前回までのあらすじはこちら。
「サイレーン」第60話「犯人は……」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)ネタバレ批評(レビュー)

意識を回復した田沢麻弥は、月本殺害と麻弥殺害未遂について「犯人はカラだ」と里見に告げた。
これを聞いた里見は確信する―――猪熊が危ない、と。
一刻の猶予もないと判断した里見は轢き逃げの罪で拘留中の渡のもとへ。

その頃、渡は「俺が電話しないとカラちゃんが不安がるんだ!!」と担当刑事に未だ訴え続けていた。
其処へ駆け込んだ里見。
鬼気迫る表情の彼に怯む渡の腕を取り関節を決めると、伊豆浜付近に心当たりが無いかを問う。

「見たでしょ、ねぇ、刑事さん。これがこいつの本性……痛っ!!」
里見の非を訴える渡。
だが、これに続けた里見の言葉が担当刑事たちを動かした。
田沢麻弥が意識を回復し犯人がカラだと打ち明けたことを教えたのだ。
これを聞いた担当刑事は里見と渡を残し病院へ。

2人きりとなった里見と渡。
里見は先の質問に答えなければ遠慮なく渡の指の骨を折ると脅しつける。
これに渡はあっさりと屈した。

別荘の所在を明かしたのだ。
こうして、事態は急展開を迎えた。

一方、この急展開を知らない別荘のカラたち。
カラは拘束した猪熊をナイフでいたぶっていた。

あちこちに傷を負いながらもカラの動機を探ろうとする猪熊。
そんな猪熊にカラは動機を語り出す。

それは殺害した被害者の属性を己に取り込むことにあった。
例えば、高槻とおるの場合は殺される段になってまでカラを庇おうとした彼の優しさを。
女性マネージャーは常に湛えていた彼女の自信を。
乃花たちは猪熊に近付く為に殺害した。
月本は猪熊の真似をしたのだが、上手く行かなかったそうである。
そして、猪熊からは正義感を殺して奪うのだ。

この告白に、猪熊は戦慄するのであった―――62話に続く。

早川書房刊『ミステリマガジン』や『週刊文春』でも取り上げられた本作。
目的を果たすべく逃げるカラを里見が追う。
追い付くことが出来るのか……今週号の「週刊モーニング」で確認せよ!!

<感想>

「週刊モーニング」では『レンアイ漫画家』や『シマシマ』、『はるか17』などで知られる山崎紗也夏先生の新連載です。
『レンアイ漫画家』は設定と展開が面白くて読みました。

そんな「サイレーン」。
遂に猪熊が捜査一課に配属。
これにより「猪熊&里見VSカラ」の物語が明確化されました。
とはいえ、「悪女カラ自身」がテーマだったりもしそうだが。
それだけ、敵役のカラのインパクトが凄い。

その第61話。
サブタイトルは「動機」。
いよいよ、カラの動機が明らかに。
それは以前から当ブログで提唱していた「被害者の属性(パーソナリティ)を奪うこと」でした。
それにより、名前の通り中身の無い虚ろな「カラ(空)」を埋めようとしているのでしょう。

作中でも明かされた通り、高槻とおるからは優しさを、女性マネージャーからは自信を奪ったとのこと。
てっきり、女性マネージャーからは垢抜けたセンスかと思っていたのですが此の点は予想外でしたね。

しかし、こうなると女性マネージャー殺害前のカラは自信を持っていなかったのだろうか。
その割には月本と接触してたり、あちこちで暗躍しているような印象があるけど……。

とはいえ、この動機。
裏を返せば、カラのコンプレックスを示しています。
つまり、カラはコンプレックスの塊なのでしょう。
月本の件でも分かる通り、容姿を整形したこともその表れか。

すなわち、カラが狙うターゲットはいずれも彼女が認めるほど優れた点があるということ。
それは高槻を殺したことからも分かる通り、男性女性を問わないもの。
カラが異性として惹かれたり同性として嫉妬した相手が殺されることになるワケか。
だとすると、渡が放置されていたのは……本当にカラにとってどうでも良い相手だったことになりそうです。
渡よ……。

でもって、さり気にタクシー運転手殺害は省略しているところがカラらしい。
もっとも、あれは正当防衛(いや、過剰防衛か)でしたが。

一方、里見側は大躍進。
一気にカラに迫る情報を得ましたね。
此の点、渡は愛する人を守り切れなかったと言えそうです。
まぁ、相手が相手だけに寧ろ守らなくて正解なのですが……。

この61話で一息に物語が進展しました。
展開次第では残り10話前後で完結させることも難しくは無さそうだけど、どうなる?
そして、カラ篇が終了したとして次のエピソードはあるのか、それともカラの終焉を以て本作も完結するのか……此の点も気になるところ。

ちなみにカラですが、ラストは燃え盛る別荘と共に生死不明になりそうな予感。
でもって、里見と猪熊が街中でカラっぽい人を見かけてエンド的なホラーテイストの結末と予想。
あるいはカラは何処にでも居る的なラストか。
だとすると、やはりカラ篇終了が本作の完結となるのだろうか。
確かに綺麗にまとまるけど、出来れば里見と猪熊で他のエピソードなども読みたいなぁ。

おっと、気が早いか。
それもこれも今後の展開次第かな。
ちなみに今後の展開予想ですが、まずは麻弥の告発が月本殺害現場での歯に繋がって順調に伏線が回収されて行く筈……だったんですが、今回の里見の行動を見るに、これらを飛ばしていきなり別荘に乗り込み決着しそうな気もするなぁ。
何しろ猪熊が拘束されてタイムリミットがあるし。
最終的には、以前から唱えている「レナとアイの誤認」によりカラに止めを刺すような展開を希望したいけど今の方がスピーディーと言えばスピーディーか。

この「レナとアイの誤認」については次の通り。

これまでも何度か述べて来たけど、この状態での里見の打開策はレナにあると見た。
カラは里見の協力者が長髪の女性2人(レナとアイ)であることは知っているが、レナがアイそっくりなのは知らない。
そして、アイは渡の別荘で拘束されている。
其処で、レナがアイのふりをしてカラを揺さぶり、アイが脱走したと思い込んだカラを別荘へと誘導させる展開……の筈だったんだけど、どうもこれは無さそう?

さて、いずれにしても里見とカラの対決はすぐ其処。
果たして里見は猪熊を助けることが出来るのか。
次回に期待!!

コミックス1巻が2013年9月20日、2巻も2013年12月20日に発売。
さらに3巻、4巻に続き5巻も発売とのこと、こちらも注目!!
興味のある方はアマゾンさんのリンクよりどうぞ!!

ちなみに、山崎先生と言えば『七瀬ふたたび』のコミカライズでも知られる方です。

「七瀬ふたたび」(筒井康隆著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)

◆関連過去記事
「サイレーン」(山崎紗也夏作、講談社刊「週刊モーニング」連載)第1話から第60話までネタバレ批評(レビュー)まとめ

登場人物一覧:
里見偲:男性。警視庁機動捜査隊所属。相棒の猪熊と恋人同士。31歳。
猪熊夕貴:女性。警視庁機動捜査隊所属。相棒の里見と恋人同士。
橘カラ:女性マネージャー急性アルコール中毒死(実は他殺)の犯人。猪熊に興味を持つ。
渡:猪熊の寮の向かいに住む。カラを家に置くこととなった。
月本:美容整形外科医。実は高級売春クラブ「フルムーン」のオーナー。カラに正義執行される。
乃花:カラの元同僚。不倫の恋に生きていたがカラに殺害される。
千歳:生活安全課所属。
レナ:里見が潜入捜査を行った先の関係者。
アイ:里見が潜入捜査を行った先の関係者。
盛元:テレビ局有名アナウンサー。
田沢麻弥:月本のもとへ出入りしていた少女。カラの犯行を目撃し襲われるも一命を取り留めた。
倉本:入院した田沢麻弥の担当女医。
三河くん:月本の部下。
高槻とおる:5年前に発生した薬局店息子殺人事件の被害者。
時田:捜査一課未解決事件係の刑事。猪熊の先輩。
舞川:5年前からのカラの常連客。

遂に発売。「サイレーン(1) (モーニングKC)」です!!
サイレーン(1) (モーニングKC)





「サイレーン(2) (モーニングKC)」です!!
サイレーン(2) (モーニングKC)





「サイレーン(3) (モーニングKC)」です!!
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「サイレーン(4) (モーニングKC)」です!!
サイレーン(4) (モーニングKC)





「サイレーン(5) (モ-ニングKC)」です!!
サイレーン(5) (モ-ニングKC)





「レンアイ漫画家(5)<完> (モーニング KC)」です!!
レンアイ漫画家(5)<完> (モーニング KC)



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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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