<あらすじ>
湯殿山山麓の山形県仙人村で、墓石を掘り返している男が何者かによって撲殺された。被害者の男が倒れた後も後頭部に凶器を執拗に振り下ろす犯人…。
それから半年後の東京。私大教授で浮世絵研究家でもある塔馬双太郎(佐々木蔵之介)は、雑誌編集部員・名掛亜里沙(森口瑤子)と推理小説家・長山作治(橋本さとし)が次に取材する資料に目を通す。取材テーマは湯殿山の即身仏(ミイラ)。塔馬は興味深いテーマで取材に賛成だったが、幽霊系の話が苦手な長山は取材することに反対。結局、亜里沙の知人で映画プロデューサーの小暮秀子(田畑智子)の作品が偶然、湯殿山で撮影していること、しかも長山の大好きな女優が出演していることを知り、長山も取材同行を承諾する。
数日後、亜里沙と長山は湯殿山の撮影現場を訪れる。小暮に誘われ撮影後の制作発表に出席すると、そこには仙人村の由緒ある寺・殿岳寺の住職、沼田雲海(山田明郷)地元の実業家で村議会議長・千崎完三(阿南健治)がいた。制作発表が始まり、その冒頭で主演女優が外から会場の中に向かう途中、突起物につまずいてしまう…。関係者がそれを掘り起こすと、仏像が彫られたふた付きの木棺であることが判り、中には1体のミイラが納まっていた…。
亜里沙はすぐに塔馬に電話をして状況を説明。細工された木棺に興味を覚えた塔馬は、自分が不在でも大丈夫なように学生たちの課題を3日分作成して、湯殿山へと向かう。
(金曜プレステージ公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)。
湯殿山山麓にある山形県仙人村にて―――。
深夜、墓石を掘り返していた男が何者かによって撲殺された。
犯人は、男が倒れた後も執拗に後頭部へと凶器を振り下ろし続ける。
それから半年が経過した。
東京では、仙人村についてアレコレ語り合う塔馬双太郎、名掛亜里沙、長山作治の3人組の姿があった。
塔馬は私大教授で浮世絵研究家。
名掛亜里沙は雑誌編集部員。
長山作治は推理小説家、チョーサクと呼ばれている。
3人は腐れ縁で結ばれた同志であった。
そんな彼らが今回、目を付けたのが湯殿山の即身仏(ミイラ)。
亜里沙が取材することになり、残る2人に同行を依頼していたのだ。
結局、塔馬は仕事で東京に残ることになり、チョーサクと亜里沙が2人で村へ。
仙人村での滞在に当たっては亜里沙の知人で映画プロデューサーの小暮秀子が彼の地で撮影を行っていたこともあって、これを頼ることに。
撮影現場を訪れたチョーサクたち。
女優・梓が現場へ足を踏み入れたところ、何かに蹴躓いてしまう。
どうやら、地面から突起物が飛び出ていたようだ。
不思議に思った周囲のスタッフが突起物を掘り返してみると……。
出て来たのは奇妙な木棺。
その中には古いミイラが納められていた。
これを目にした途端、秀子に招待されていた面々が息を呑む。
まずは、仙人村に現存する唯一の寺・殿岳寺の住職である沼田雲海。
続いて、地元の実業家で村議会議長である千崎完三。
さらに、撮影協力者として仙人村住人の松本や千崎の愛人・安田輝子もいた。
すわ大発見かと意気上がるチョーサクたち。
ミイラ発見の報を耳にした塔馬は仕事を放り出し、仙人村へ向かう。
ところがその夜、当のミイラが何者かに盗み出されてしまう……。
さらに、その翌日には松本が何者かに殺害されてしまうことに。
この容疑が千崎に向かう中、彼の無実を訴えていた輝子までもが殺害されてしまう。
ようやく到着した塔馬は事情を知るや事件を調べ始める。
地元で語り継がれた「珠光さん伝説」に興味を抱いた塔馬。
140年前に仙人村に居た珠光さんは謎の人物とされ、死後は「珠光さんの墓」に埋められたとされていた。
「珠光さん伝説」を追った塔馬は龍神峠の石碑を目にし、140年前の真相に辿り着く。
それこそが現在の事件にも繋がっているらしい。
さらに、塔馬は東京で今回の事件関係者の周囲を調べ上げることに。
すると、意外な事実が……。
仙人村に戻った塔馬は「ミイラの呪い」と称して雲海に揺さぶりをかける。
これに怯えた雲海は何かを確認するように洞窟へと走り出す。
其処にあったのは……盗み出された筈のミイラであった。
ミイラを盗んだのは雲海だったのだ。
と、雲海の背後から塔馬や秀子たちが現れた。
塔馬は雲海を揺さぶり、その行き先を確かめたのだ。
すべてはミイラに原因があると述べる塔馬。
140年前廃仏毀釈が行われた。
この際、仙人村にあった緑翠寺は住職が消えた為に廃寺となっている。
だが、即身仏のある寺は対象にならない。
殿岳寺はこれにより、廃寺を逃れた。
ところが、戦後になると殿岳寺はこのミイラの存在を何故か執拗に隠蔽したのである。
何故か……それは表沙汰に出来ない方法でミイラを作ったからだ。
そして、同時期に消えた人物が居る―――珠光さんだ。
珠光さんの正体は緑翠寺最後の住職であった。
塔馬によれば、この死因には謎が残されているらしい。
珠光さんの最期に立ち会ったのは寺男と同業者だったそうだ。
この寺男の子孫が千崎、同業者の子孫こそが雲海である。
もしかして、雲海の先祖は珠光さんを殺害し即身仏に仕立て上げたのではないか。
この塔馬の推理を証明するように、ミイラには刺し傷が残されていた。
つまり、珠光さんの死は他殺だったのだ。
雲海は「珠光さんのミイラ」を盗んだのではなく、取り返したのだと主張する塔馬。
では、そもそも雲海のもとにあった珠光のミイラを撮影現場に埋めたのは誰か?
珠光の子孫は伴内の姓を名乗っていた。
そして、小暮秀子こそが伴内の子孫であった。
そう、秀子がミイラを雲海のもとから盗み出し、撮影現場に埋めたのだ。
その狙いとは……。
一方、塔馬はミイラの他にもう1つあるべきものがないと指摘する。
たぶん、あそこだ……口にした塔馬は珠光さんの墓を暴き出す。
しかし、其処からは何も出なかった。
そんな……愕然とする塔馬だが、ふと雲海と秀子が消えていることに気付く。
地元の老婆によれば、2人は龍神峠へ向かったらしい。
これを聞いた塔馬は2人を追いかける。
龍神峠では、秀子が雲海にナイフを突きつけていた。
どうやら、埋められたモノを掘り起こすよう迫っているらしい。
駆け付けた塔馬が雲海に代わって掘り返すことになり、出て来たモノは……。
真新しい白骨死体であった。
雲海は慌てて逃げ出そうとするが、逮捕されることに。
この白骨死体こそ、冒頭の被害者。
その犯人は雲海であった。
塔馬はこの死体が秀子の弟・小暮達也であると指摘する。
撮影現場にミイラを仕掛けたのは秀子であった。
そして、松本と輝子を殺したのも……。
秀子は達也について語り出す。
達也は定業に就かずふらふらと生きていた。
とはいえ、秀子にとっては可愛い弟である。
何くれとなく世話を焼いていた。
そんなある日、達也は一念発起すると自身のルーツを調べたいと言い出した。
秀子と達也は小暮家の養子、本姓は伴内であった。
達也は伴内一族のルーツを調べ始めたのである。
そして、達也は先祖である珠光が殺害されたことを突き止め雲海を脅迫した。
しかし、雲海により殺害されたのだ。
急に姿を消した達也を不安に思った秀子はこの事実に行き当たった。
だが、雲海の犯行を証明する方法が無い。
其処で雲海の様子を監視し続け、達也の遺体の場所を調べようと考えた。
ところが、雲海は用心深く達也の遺体に近付こうとしない。
唯一、判明したのは珠光さんのミイラの在処であった。
其処で秀子は映画の宣伝作りとの口実で松本に協力を求め、ミイラを撮影現場に埋めたのだ。
秀子は雲海がミイラを取り戻そうとすることを予測していた。
その上で、ミイラを囮に達也の行方を探ろうとしたのだ。
ところが、何者かに襲われ気絶してしまった。
その隙に、雲海はミイラを持ち去ってしまった。
翌晩、秀子は松本に呼び出された。
秀子を気絶させたのは松本であった。
松本は秀子の行動に金の匂いを嗅ぎ付けたのだ。
仕方なく秀子は松本にすべてを打ち明けた。
すると、松本は「あの男、あんたの弟だったのか」と言い出したのだ。
なんと、松本は雲海が達也を殺害し埋めるのに協力していたのだ。
達也の居場所を問い質そうとした秀子だが、揉み合う内に松本が死亡してしまう。
今、逮捕されてしまうと達也の行方は分からない。
其処で松本の死をも利用し、雲海を揺さぶることを思いついた。
この間、千崎に捜査の目が向くように仕組んだ。
この狙いは当たったかに見えたが……。
輝子が千崎の無実を証明しようと動き出した。
輝子の行動は素早かった。
彼女は秀子の行動に気付いたのだ。
しかし、この後が拙かった。
輝子はナイフで秀子を脅そうとして揉み合う内に刺されてしまったのだ。
秀子は「2人とも殺す気は無かった……」と洩らす。
これを聞いていた雲海は「お前の弟が悪い!!」と言い出した。
達也は珠光さんが所持していた土地を返して欲しいと雲海に迫ったそうだ。
当初、雲海はこれを放置するつもりだった。
ところが、達也は珠光の墓を暴こうとした。
このとき、珠光のミイラは寺の庭に隠してあった。
掘り返したところで其処には何もない。
しかし、このままだと何だか気分が悪い。
苛立った雲海は達也を殺害し、松本に協力させ龍神峠に埋めたのだ。
塔馬によれば、珠光はすべてを理解した上で敢えて刺殺されたのだと言う。
龍神峠の石碑にその遺志が刻まれていたのだ。
それこそが珠光の本意だったのだそうだ。
秀子が逮捕され、チョーサクが監督を引き継いだ。
今回、もっとも利益を得たのは犯人ではなくチョーサクだったようだ―――エンド。
<感想>
高橋克彦先生の原作をドラマ化した「塔馬教授の天才推理」第2弾です。
前作は2012年6月1日に放送されており、実に2年3か月ぶりの新作に。
ちなみに過去記事にネタバレ批評(レビュー)がありますね。
興味のある方はどうぞ!!
そんな原作は高橋克彦先生『即身仏(ミイラ)の殺人』(文藝春秋社刊)。
<『即身仏(ミイラ)の殺人』あらすじ>
湯殿山麓の映画ロケ地から出土したミイラの所有権を巡って騒動が起こるなかで肝心のミイラが消失、さらに連続殺人事件が。長山と亜里沙、塔馬双太郎が活躍する長篇推理。(小梛治宣)
(文藝春秋社公式HPより)
この『即身仏(ミイラ)の殺人』、実は「リサ&チョーサクシリーズ」の1作。
シリーズには他に『パンドラ・ケース よみがえる殺人』、『南朝迷路』(共に文藝春秋社刊)があります。
では、ドラマ版の感想を。
出来ればシリーズ化して欲しくなかった作品だけに不安が募ってました……が、それは杞憂に終わったようです。
前作に比べれば見易くなっていたので一安心。
あくまで前作に比較すれば、となりますが。
此処からは内容について。
初めからラストのように秀子が雲海を脅せばその時点で済んでいたような……。
まぁ、それが出来ずとも松本殺害の時点で出頭して動機を明かせば雲海にもダメージが及んでいた筈だと思うけど甘いのだろうか。
少なくとも、千崎に罪を着せるべき必然性があまり見えないのだが、もしかして彼の先祖に殺された珠光さんの復讐もかねていたのだろうか。
そもそも、雲海も達也を殺す必要があったのか?
放置しとけば、ミイラが見つからない限り安全だろうになぁ……と。
まぁ、それもこれも先祖同士の因縁が為したこととなるのでしょう。
だとすると、輝子にも何か先祖の因縁があればより締まったのに……とは思いますが。
さて総評。
場面転換、視点変更が多過ぎて雑多な印象のあった前作に比べるとスッキリしていて視聴し易かった。
ただ、チョーサクの必然性が前作に増して薄くなったなぁ……。
前半、塔馬不在時のストーリーの牽引役を終えた途端に単なるマスコットキャラに……。
とはいえ、ドラマとしては前作よりもまとまってたのでアリです。
◆関連過去記事
・金曜プレステージ「塔馬教授の天才推理(1) 隠岐島の黄金伝説殺人事件(隠岐島黄金伝説殺人事件)〜悲しき秘宝伝説めぐりナゾの陰謀集団登場…愛と欲望渦巻く歴史ミステリーVS和製インディ・ジョーンズ死体なき殺人トリック(秘)真相」(6月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
佐々木蔵之介
森口瑤子
橋本さとし
田畑智子
渋谷飛鳥
山田明郷
阿南健治
宇梶剛士 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)
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