2014年10月13日

『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』(深水黎一郎著、光文社刊)

『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』(深水黎一郎著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、未読の方は注意!!

<あらすじ>

本格ミステリーの古典から最先端までを、上から下から、後ろから、そして真正面から、斬新に独自の視点から痛快に切りまくるミステリー・ファン垂涎の異色作。生け贄となったのは──ノックスの十戒、アリバイ崩し、密室殺人、逃走経路の謎、叙述トリック、レッドヘリング、図像学、ヴァン・ダインの二十則、後期クイーン問題、正確な死因、お茶会で特定の人物だけを毒殺する方法、二十一世紀本格、「見立て」の真相、バールストン先攻法にリドル・ストーリー、警察小説、歴史ミステリーおよびトラベルミステリー、さらには多重解決──。
初心者からマニアまで大癋見警部が満足させます!
(光文社公式HPより)


<感想>

光文社刊『ジャーロ』誌上にて連載されていた深水黎一郎先生「大癋見警部の事件簿シリーズ」短編集です。
シリーズには『国連施設での殺人』から始まり『青森キリストの墓殺人事件』までで全13作品存在。
このうち、3作品のみ過去に書評(レビュー)してますね。

【大癋見警部の事件簿シリーズ】
『現場の見取り図 大癋見警部の事件簿(ザ・ベストミステリーズ2012収録)』(深水黎一郎著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『大癋見警部の事件簿(番外編)』(深水黎一郎著、光文社刊『宝石 ザ ミステリー2』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『大癋見警部の事件簿 青森キリストの墓殺人事件』(深水黎一郎著、光文社刊『ジャーロ』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

本作の肝は何と言ってもミステリのお約束をパロディ化したこととそれを逆手に取った大胆なトリック。
ある意味、東野圭吾先生『名探偵の掟』の本格ミステリバージョンと言えそうです。

今回は本『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』に収録された作品のうち、『宇宙航空研究開発機構(JAXA)での殺人』と『薔薇は語る 〈見立て〉の真実』をネタバレ書評(レビュー)。
このノリに「おっ?」と惹かれる物があれば、是非、本作それ自体にチャレンジを!!

ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いようにかなり改変しています。
本作をきちんと読まれた方が楽しめる筈。
あくまでノリをご確認頂ければと思います。

<ネタバレあらすじ>

◆『宇宙航空研究開発機構(JAXA)での殺人』

宇宙航空研究開発機構(JAXA)にて殺人事件が発生した。
被害者は研究用の施設内で殺害されていたのだが、現場は密室であった。
果たして、犯人はどのようにして犯行に及んだのか!?

この犯人、実は同じく職員の佐和田であった。
佐和田は部屋の屋根に熱を加えると変形する新素材を採用していた。
変形すれば人が出入り可能な穴が屋根に出来るのだ。
本来は余興の脱出マジック用だったのだが、今回の犯行に活かせることに気付き利用したのであった―――エンド。

◆『薔薇は語る 〈見立て〉の真実』

眼窩から肛門、果ては前立腺まで穴という穴に薔薇を突き立てられた被害者の遺体が発見された。
死因はショック死。
おそらく、薔薇を突き立てられた恐怖と激痛により死亡したようだ。
被害者の携帯は水没させられており、何者かによる陰湿な猟奇殺人が考えられたが……。

携帯のデータを復元したところ、死亡直前の被害者が風俗店に連絡を入れていたことが判明。
その店舗は俗にいう「SMショップ」であった。
まさか……。

読者の脳裏に嫌な予感が過る中、被害者を担当していた風香嬢から意外な事情が明かされた。
被害者にはM嗜好があったのだ。
其処で前立腺と肛門に薔薇を突き立てるプレイに興じていたらしい。
ところが、喜びの余り興奮し過ぎた被害者がショック死してしまう。
そう、事故死だったのだ。
風香嬢は慌てて其処から逃げ出したのであった。

あれ?
では、眼窩や耳に突き刺された薔薇は?

実はこれにも意外な結末が控えていた。
現場保全を行ったのは刑事の安齋(趣味:写真)である。
此処で注目は彼の趣味だ。

後日、安齋が芸術写真で大賞を受賞する。
その作品こそ人体を花瓶に見立てた例の被害者の写真。
そう、安齋は自身の創作意欲を満たす為に勝手に遺体に手を加えていたのである。
眼窩や耳に突き立てたのは彼であった。

当然、安齋はクビになった。
しかし、彼はこの写真がもとで写真家として大成することに。
世の中、何が功を奏するか分からないものなんだなぁ―――エンド。

◆関連過去記事
【大癋見警部の事件簿シリーズ】
『現場の見取り図 大癋見警部の事件簿(ザ・ベストミステリーズ2012収録)』(深水黎一郎著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『大癋見警部の事件簿(番外編)』(深水黎一郎著、光文社刊『宝石 ザ ミステリー2』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『大癋見警部の事件簿 青森キリストの墓殺人事件』(深水黎一郎著、光文社刊『ジャーロ』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

【その他】
『人間の尊厳と八〇〇メートル(ザ・ベストミステリーズ2011収録)』(深水黎一郎著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『完全犯罪あるいは善人の見えない牙』(深水黎一郎著、東京創元社刊『人間の尊厳と八〇〇メートル』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『特別警戒態勢』(深水黎一郎著、東京創元社刊『人間の尊厳と八〇〇メートル』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『蜜月旅行 LUNE DE MIEL』(深水黎一郎著、東京創元社刊『人間の尊厳と八〇〇メートル』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『五声のリチェルカーレ』(深水黎一郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「大癋見(おおべしみ)警部の事件簿」です!!
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