<あらすじ>
都内に事務所を構える佐方貞人(上川隆也)は、検察から転身した、いわゆる“ヤメ検弁護士”。刑事事件を専門に扱い、やり手として通っている。
佐方は突然、舞い込んだ依頼を受け、新米弁護士の小坂千尋(倉科カナ)と共に“米崎”の地に降り立った。佐方に弁護を依頼したのは、米崎のホテルで起きた殺人事件で逮捕、起訴された男・島津邦明(大杉漣)で、すでに公判開始を翌日に控えているという状況だった。島津は米崎で建設会社など手広く事業を展開する、地元の有力者だった。
被害者は、彼との不倫関係を噂されていた女性・浜田美津子(紺野まひる)で、指紋、血痕、防犯カメラなど、あらゆる証拠が犯人は島津であることを示していた。2人の関係を火遊びだと思っていた島津が彼女から結婚を迫られ、言い争ううちに刺殺したものと誰もが考えていた。
だが、接見したところ、島津は無実を主張。佐方に弁護を依頼したのも、前任の弁護士が情状狙いの線を崩さなかったため憤慨し解雇、腕の確かな弁護士を捜して佐方に行き着いたらしい。小坂は“まったく勝算のない事件”と判断するが、佐方は事件の背後に何かが隠されていることを直感、あっさり弁護を引き受ける。
実は、米崎はかつて佐方が検事として勤務していた街で、検察を辞めるきっかけとなった“事件”が起きた因縁の地だった。当時の上司・筒井義雄(伊武雅刀)は現在、公判部長に出世しており、今回の公判を担当するのは佐方の同期で凄腕の検事・庄司真生(松下由樹)だった。
翌日、公判がはじまった。真生は美津子が島津との不倫にのめり込んだ末に、夫の開業医・高瀬(石黒賢)と離婚したという背景を明らかにし、鮮やかに弁護側を追い込んでいく。そして無謀にも無実を主張する佐方に対し、減刑を求める戦術に改めた方が賢明だと忠告までする。
そんな中、佐方は美津子が7年前に小学生の息子を事故で亡くしていた事実を知る。真相を見抜くため、佐方は被害者の過去を洗い直しはじめる。だが、状況は佐方の不利であることに変わりはなかった…。
そして最終弁論、ついに運命の人物が証言台に立った…! それは、佐方が召喚した“最後の証人”だった。その人物によって浮かび上がった、驚愕の真相とは…!?
(公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)。
米崎のホテルで殺人事件が発生。
被害者は浜田美津子なる女性で胸をステーキナイフで一突きされていた。
この事件の被告となったのが、元公安委員長で陶芸教室を営む島津邦明。
美津子は島津の陶芸教室の生徒であり、2人は不倫関係にあったとされていた。
動機は痴情のもつれにあると思われたが……。
島津は自身が無実であると主張。
確かに不倫関係にはあったが、事件当日には美津子に凶器のナイフで襲われ這う這うの態で逃げ出したと言うのだ。
だが、ホテル従業員や周囲の証言により彼の罪は明らかであると思われた。
この島津の弁護に立ち上がったのが元検事で今は弁護士となったヤメ検弁護士・佐方貞人。
彼は自身が興味を抱いた事件のみ扱うが、彼が担当すれば思わぬ事実が浮上することで知られるやり手であった。
佐方は事務所の新米弁護士・小坂千尋を連れ米崎の地に降り立った。
其処は佐方にとって因縁の土地。
過去、佐方はこの米崎で検事として活躍していたのだ。
そんな佐方が検事を辞めたのには理由があった。
検事時代、佐方は後輩検事である神田が犯した罪を知り慄然とした。
神田は司法修習生を強姦してしまったのだ。
ところが、上層部はこの事実を揉み消した。
組織の正義に失望した佐方はこうして検事を辞め弁護士となった。
そして、彼は島津の弁護を引き受けている。
対するは佐方の検事時代の同期・庄司真生、同期の中でも凄腕で知られる女性だ。
互いに手の内を知る両者だが、真生は佐方の真実を追う姿勢に脅威を抱いていた。
そんな中、公判が開始。
真生は「島津が不倫の果てに美津子を殺害した」と主張。
様々な証人を呼び、これを固めて行く。
美津子は島津と不倫したことで、夫であり開業医の高瀬とも離婚したらしい。
だが、佐方は怯まない。
彼は調書の記述から「現場のカーテンが開いていた」ことに注目する。
島津によればカーテンは閉めていた筈。
だとすれば、何者かがカーテンを開けたことになる。
さらに、佐方にはある疑問があった。
美津子は胸を一突きされている。
しかし、ステーキナイフでそんなに綺麗に相手を刺せるものだろうか。
矢先、佐方は7年前に美津子が当時小学4年生であった息子・卓を交通事故で失っていたことを知る。
佐方は卓の事故について調べ始め、驚くべき事実に行き当たる。
卓の事故の加害者が島津だったのだ。
島津によれば「卓が信号無視をした為に起こった事故だった」とのことだが……。
しかも、島津は美津子が卓の母親だとは知らなかった。
佐方は事故を担当した警察官・丸山秀雄を訪ねる。
しかし、丸山は多くを語ろうとしない。
一方で、佐方は高瀬の犯行を疑う。
美津子の不倫に嫉妬しこれを殺害したと考えたのだ。
しかし、それを証明する筈のホテルの防犯カメラ映像には高瀬の姿は無い。
これでは物理的に不可能だ。
そんな中、美津子を司法解剖した医者から新事実が明かされる。
なんと、美津子は余命幾許も無い身体だったと言うのだ。
さらに、佐方はホテル周辺の聞き込みで「事件当夜に近くの川原で焚き火をしていた男」の存在を知るや、ある結論に至る。
そして、公判最終日。
佐方はある証人の入廷を求める。
証言台に立ったのは丸山であった。
丸山は7年前の事故の真相を語り出した。
あの事故は被害者である卓ではなく運転手である島津の過失だったのだ。
島津が信号無視をした為に起こったことだったのである。
だが、権力を誇っていた島津が圧力をかけ、これに屈した丸山が真相を隠蔽した。
結果、島津は不起訴となった。
しかし、高瀬は卓の過失を信じられず何度となく丸山に真相を尋ねた。
だが、丸山は島津の報復を怖れ真実を隠蔽し続けた。
そんな丸山が7年経過した今になって真実を打ち明けた。
佐方の説得を受けて「嘘を吐くべきではない」と考えを改めたのだ。
7年前の真相は明らかになった。
此処に佐方は「最後の証人」の入廷を求める。
その名は高瀬、被害者の元夫である。
証言台に立った高瀬に佐方は「すべては卓の復讐であった」と断じる。
余命幾許も無かった美津子は自身の命を以て島津への復讐としたのだ。
そう、美津子は自殺だったのである。
自身の死を島津の犯行に偽装することで彼を陥れるつもりだったのである。
高瀬と美津子は夫婦2人で何度となく予行演習を繰り返した。
それはあまりに悲壮なものであった。
佐方は此処で「現場のカーテンが開いていた」理由を語り出す。
復讐に燃える美津子だが、その決行には相当な覚悟が必要であった。
美津子は自身の最期を愛する夫に見ていて欲しいと望んだ。
高瀬は自身の居場所を現場から分かるように焚き火を目印とした。
美津子は計画通り島津を襲い、これを帰宅させるとホテルの一室から外を眺めた。
其処にあったのは高瀬が灯した焚き火。
美津子は涙ながらにこれを見据えると、覚悟を決めて胸を刺した。
こうして、島津を罪に問う復讐が為されたのである。
だが、最後の証人・高瀬は佐方の推理を否定する。
そして判決のときが来た。
下されたのは「無罪」との結果。
佐方の弁護により、美津子殺害については島津の犯行とは言えないと判断されたのだ。
だが、裁判長は「まだ事件は終わっていない」と言い添えた。
島津はこれに喜ぶ素振りも見せず、佐方に詰め寄る。
島津には7年前の事件の再捜査が待っているのだ。
そして佐方はと言えば、小坂を通じ高瀬にあるメッセージを残した。
「弁護士が必要ならば呼んでくれ」と。
「罪は全うに裁かれるべき」が佐方のポリシー。
だが、それは裏を返せば「全うに救われるべき」でもある。
佐方は高瀬を救いたいのだ―――エンド。
<感想>
原作は佐方シリーズの第1弾『最後の証人』。
とはいえ、シリーズでは作中時間でもっとも最新の物語となります。
実は第2作『検事の本懐』以降は作中時間を遡っており、主人公・佐方の過去である検事時代が描かれています。
シリーズは2015年1月現在のところ、次の通り。
シリーズ第1弾にして作中時間でもっとも未来に当たる『最後の証人』。
・『最後の証人』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
シリーズ第2弾、過去に戻り佐方の捜査検事時代を描く『検事の本懐』。
・『検事の本懐』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
シリーズ第3弾、公判検事に異動した佐方の活躍を描く『検事の死命』。
・『検事の死命』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
2014年12月現在シリーズ最新作短編『裁きを望む』。
・『裁きを望む』(柚月裕子著、宝島社刊『このミステリーがすごい!2015年版』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
シリーズにストックのある作品だけに、本作が好評ならば連続ドラマ化も狙えそうな予感。
では、ドラマ感想を。
かなりアレンジが施されていましたね。
原作だと高瀬夫妻は離婚してなかった筈だし、原作だと事務員だった小坂が弁護士になってるし。
他にもいろいろ変更点があったように思います。
原作ファンにとってはこの変更点を好意的に受け入れられるかどうかがポイントとなりそう。
とはいえ、佐方の信念=ポリシーは原作と同様。
そのスタンスにより多くの人々が救われるのだ。
悪に厳しい佐方だが、弱者には限りなく優しい……そんな点も過不足なく描かれていたのではないでしょうか。
ちなみに、サブタイは今回も暴走気味だなぁと思う。
<キャスト>
佐方 貞人:上川 隆也
刑事事件を専門に扱う弁護士。いわゆる“ヤメ検”で、12年前まで“米崎”地方検察庁の検察官だったが、自らの“正義”を貫くためにその職を辞し、東京で弁護士事務所を開いた。
佐方の正義とは、“罪をまっとうに裁かせること”。いかにも偏屈でとっつきにくそうな男だが、その胸には自らの信念を貫くための情熱が燃えさかっている。
それゆえ彼が引き受けるのは、充分な捜査もされずに不当な裁きが下りそうな事件や、検察調書からはわからない複雑な動機が隠されているような事件ばかり。その見た目とは裏腹に、いつしか凄腕の弁護人として鳴らすようになり、今回の依頼で久々に米崎の地を踏むが…!?
庄司 真生:松下 由樹
米崎地方検察庁公判検事。明晰さと美貌を兼ね備えた、地検のエース。検事時代の佐方とは同期だった。 “どのような理由であれ、罪を犯した人間は裁かれるべき”という信念を持ち、組織の面子にとらわれることなく、自らの正義感に忠実に仕事に向かっている。
その心情の核には、子ども時代に通り魔に父を奪われた上、犯人が刑法第39条により不起訴になった…という過去があった。誰よりも罪を憎むがゆえに、時には罪そのものしか見えなくなり、人間の真実を見つめることを忘れてしまいがち。上司の筒井を検事として尊敬している。
小坂 千尋:倉科 カナ
佐方の事務所に所属する、新米弁護士。何を考えているかわからない佐方に振り回されながらも、“罪をまっとうに裁く”ことは“まっとうに救う”ことにほかならないという佐方のやさしさを誰よりも理解している。佐方もまた、小坂の“事件の本質を見極めようとする目”を信頼している。仕事以外にはまったく無頓着な佐方をあらゆる角度からサポートしている。
高瀬 光治:石黒 賢
被害者・美津子の元夫。内科医で、市内でクリニックを開業している。美津子との関係はすっかり終わっていたように思えるが…!?
浜田 美津子:紺野 まひる
事件の被害者。島津が趣味で開いている、陶芸教室の生徒だった。痴情のもつれによるありふれた殺人事件と見られていたが、彼女の死には7年前のある事故に端を発した驚愕の真相と、壮絶な決意が隠されていた…!
丸山 秀雄:平田 満
元警察官。7年前の事故の真相を知る人物。調べを進める佐方に対し、固く口を閉ざす。
島津 邦明:大杉 漣
今回の裁判の被告人。当初から一貫して無実を主張しており、情状酌量を狙う前任の弁護士を解雇し、公判直前に佐方に弁護を依頼した。建設会社や運送会社などを手広く経営し、地元では知らない者はいない有力者。元県公安委員長。
筒井 義雄:伊武 雅刀
米崎地方検察庁公判部長。かつては佐方の上司で、彼の優秀さを見込み、検事としての姿勢を事細かに教え込んだ。だが、12年前のある出来事がきっかけで、袂を分かった。今では2人の間に苦い溝が横たわっているとはいえ、筒井と佐方には師弟関係を超えた絆のようなものがある。「罪を犯すのは人間。法より人間を見なければならない」が筒井の口ぐせ。 ほか
(公式HPより、順不同、敬称略)
◆関連過去記事
【佐方シリーズ】
・『最後の証人』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『検事の本懐』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『検事の死命』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『裁きを望む』(柚月裕子著、宝島社刊『このミステリーがすごい!2015年版』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・『臨床真理』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【「大藪春彦賞」関連記事】
・「第15回大藪春彦賞」受賞作は柚月裕子先生『検事の本懐』に!!
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