ネタバレあります、注意!!
<感想>
『小説宝石』に連載中の『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』―――その第9話。
事件はどんどん混迷の度合いを深めているようです。
前回から半年ぶりとなった最新9話では、8話ラストに飛び込んできた岡野殺害について木更津の推理が述べられました。
とはいえ、その直後に推理の一部を覆らせるような証言が浮上するなど読者としても木更津の推理を何処まで信頼すべきか難しいことになっています。
その反面で階下の住人は「大きな音を聞いた」としか述べておらず、その音が岡野殺害時のものとは限らない以上、本当に木更津の推理が覆っているのかどうかも不明。
まさにどの手掛かりが「真」でどれが「偽」なのかも曖昧な状況に。
此処に来て読者の悲鳴が聞こえて来そうです。
ただ、いずれにしろ岡野が殺害されたことで西町恵が絡んで来るとは思われる。
1話の推理が此処に来て息を吹き返すのか!?
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第1話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2012年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
前々回に触れた朝霞襲撃自作自演説は正しいのか?
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第7話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年7月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
ああ、謎は深まるばかり。
2話で述べた村雲犯人説が息を吹き返すか?
バルトーク『弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽』の意味とは?
楽器の見立てだとすると「清い音」こと「清音」にも意味はあるのか?
そして、シリーズ中での時系列も7話で判明。
作中の台詞によると、今鏡家の事件が1年前の出来事らしい。
つまり、本作『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』は『翼ある闇』から1年後の世界観であることが判明。
この9話でも「木更津の同業者が不遇の死を遂げた」旨に触れられています。
此処での同業者は「メルカトル鮎」を指すのでしょう。
これもまた何かを意味するのか……。
10話にも注目です!!
<ネタバレあらすじ>
・登場人物一覧
木更津:名探偵。香月との関係は……。
香月:今回も香月らしい活躍を……。
村雲:今回の依頼人。
朝霞:村雲の娘、福住とは恋人同士。福住殺害の有力容疑者とされている。
葛子:村雲の後妻で朝霞の継母。第2の被害者に……。
梅昭:村雲の弟。
磐人:村雲の長男。朝霞の兄。
珠代:村雲家の家政婦。
福住:第1の被害者、朝霞の恋人。普愛寮の寮生。
日置:福住の友人。普愛寮の寮生。
亜弓:福住、日置と同じく普愛寮の寮生。福住と交際していたことが判明。
清音:福住、日置と同じく普愛寮の寮生。福住と交際していたことが判明。
岡野:福住の手首を発見したコンビニ店員。第3の被害者に……。
西町恵:岡野の憧れの同僚、コンビニ店員。
〜〜〜前回までのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
先輩・西町恵とコンビニのバイトをしていた岡野は切断された手首を発見する。
バラバラ殺人であった。
被害者は大学生・福住。
容疑者はその恋人・朝霞。
この事件に挑むのは木更津と香月。
だが、事件は木更津の頭脳を以てしても膠着状態に陥ってしまう。
果たして、依頼人・村雲の娘である朝霞の無実を証明することが出来るか?
矢先、朝霞の継母である葛子までもが謎の死を遂げてしまう。
さらに当の朝霞が謎の襲撃を受けることに。
しかも、無関係と思われた岡野までも殺害されて……。
・前回のあらすじはこちら。
『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第8話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
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第1話に登場したコンビニのバイト店員・岡野が何者かに殺害された。
岡野の部屋からチェレスタの部品が回収されたこと、岡野の首が切断されていたことから、これまでと同じ犯人による犯行と思われた。
岡野の死を聞き、現場となった岡野のマンションを訪れた木更津と香月。
木更津はベランダに置かれたプランターに興味を示しつつ、岡野宅が家捜しされていたことから「岡野がチェレスタを隠匿し、これを犯人が捜そうとしていた」との推理を述べる。
さらに木更津はある仮説を立てた。
もしかして岡野は1話の時点で犯人の顔を見ていたのではないか。
つまり、岡野は犯人を知りつつも放置していたのではないか。
いや、庇ってすらいたのかもしれない。
いやいや、脅迫したのかもしれない。
いずれにしろ、犯人にとって岡野は邪魔な存在となったからこそ殺害されたのだ。
これに加え、木更津は「岡野殺害後に朝霞が襲撃された」と結論付ける。
木更津が見る限り犯人は論理的に活動している。
朝霞襲撃に失敗した後には関係者には監視が付いていた。
その中で岡野を殺害するような危険は負わないだろうと判断したのだ。
ところが、岡野の階下に住む学生の証言によりこれが覆った。
学生によれば2日前に大きな物音を聞いたらしい。
朝霞襲撃は3日前である。
岡野殺害は朝霞襲撃後に行われたのか!?
実際、監視は行われていたがこの事態は想定しておらず厳密なモノでは無かったらしい。
これを聞いた木更津は大きな動揺を示す。
香月の目には木更津の身体が揺らいだように見えるほどであった。
しかし、それでも木更津は木更津であった。
彼の視線はこの間にも手掛かりを探っていたのである。
木更津は岡野宅の傘立てに傘が無いことに気付く―――10話に続く。
【木更津シリーズ】
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第1話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2012年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第2話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年1月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第3話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年4月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第4話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年9月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第5話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年11月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第6話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年2月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第7話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年7月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第8話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
◆関連過去記事
【メルカトル鮎シリーズ】
・「メルカトルかく語りき」(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「メフィスト 2010 VOL.1」より「メルカトルかく語りき 第二篇 九州旅行」(講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「メフィスト 2010 VOL.3」より「メルカトルかく語りき 最終篇 収束」(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『メルカトル鮎 悪人狩り「第1話 囁くもの(メフィスト2011 vol.3掲載)」』(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『氷山の一角』(麻耶雄嵩著、角川書店刊『赤に捧げる殺意』収録)ネタバレ書評(レビュー)
【木更津シリーズ】
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第1話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2012年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第2話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年1月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
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・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第4話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年9月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
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・『最後の海』(麻耶雄嵩著、新潮社刊『小説新潮』2013年02月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『旧友』(麻耶雄嵩著、新潮社刊『小説新潮』2013年09月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『あかずの扉』(麻耶雄嵩著、新潮社刊『小説新潮』2014年2月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
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