2014年10月06日

『新・世界の七不思議』(鯨統一郎著、東京創元社刊)

『新・世界の七不思議』(鯨統一郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

来日中のペンシルベニア大学教授ジョゼフ・ハートマンは、古代史の世界的権威。同じく歴史学者である早乙女静香と京都へ旅行しようとしてはキャンセルの憂き目に遭い、毎晩うらぶれたバーで飲むことに。しかし、バーテンダー松永の供する酒肴に舌鼓を打ちつつ聴く宮田六郎と静香の歴史検証バトルは、不満を補って余りある面白さであった。奇想天外なデビュー作品集『邪馬台国はどこですか?』の姉妹編が登場!
(東京創元社公式HPより)


<感想>

名作『邪馬台国はどこですか?』(東京創元社刊)の姉妹編。
シリーズには他に『新・日本の七不思議』(同社刊)がある。

このシリーズの醍醐味は、これまで歴史の常識とされてきた出来事がバーを舞台に繰り広げられる宮田と静香の論争で何時の間にやら引っ繰り返される点。
この大胆な仮説と解釈が面白い!!
ただ、その為には一定の説得力が必要となり、これが『邪馬台国はどこですか?』が名作となった由縁であり、『新・世界の七不思議』と『新・日本の七不思議』がそう呼ばれない理由だろう。

『新・世界の七不思議』は着眼点と発想は面白いんだけど、説得力が『邪馬台国はどこですか?』に比べると弱いんだよなぁ……。
まぁ、読み物としては充分にアリなんだけど。
だが『新・日本の七不思議』、あれは流石にどうなんだろう……。

ちなみに各作品の印象は次のようになる。

『邪馬台国はどこですか?』:史料とサプライズのバランスに優れた快作。一編一編が単独で成立。
『新・世界の七不思議』:サプライズ偏重、説得力に欠ける。さらに、連作短編としてまとまって居るので各作品単独では弱い。
『新・日本の七不思議』:史料偏重、面白みに欠ける……というかこれは流石に眉を顰めるだろう。

順番で言うと刊行順通り『邪馬台国はどこですか?』、『新・世界の七不思議』、『新・日本の七不思議』の順で好きかな。

なお、『新・日本の七不思議』最大のサプライズは語られた仮説の内容よりも、宮田と静香が交際し始めていたことだったりする。
正直、『邪馬台国はどこですか?』を読んでいれば別に読まなくても良い……かもしれない。

ええ〜〜〜っと、イロイロと言っちゃいましたが、そんな『新・世界の七不思議』の収録作は次の7作品。

・『アトランティス大陸の不思議』
・『ストーンヘンジの不思議』
・『ピラミッドの不思議』
・『ノアの方舟の不思議』
・『始皇帝の不思議』
・『ナスカの地上絵の不思議』
・『モアイ像の不思議』

好き嫌いがあると思うので各作品についての評は省略する。

個人的には『邪馬台国はどこですか?』に収録された『悟りを開いたのはいつですか?』が良かった。
あの意外な結論(実はまだ開かれて……)には度胆を抜かれたものだ。
他には明智光秀謀叛の動機について触れた『謀叛の動機はなんですか?』も秀逸(実は織田信長による……)だった。
ちなみに、この『謀叛の動機は〜〜〜』や『邪馬台国は〜〜〜』の後日談的な物語が『新・日本の七不思議』に掲載されているけどやっぱり初出には敵わないかな。
それだけ『邪馬台国はどこですか?』が如何に凄い作品かが分かるだろう。

結論、とりあえず『邪馬台国はどこですか?』は読んでおくべし!!
他は……『新・世界の七不思議』まではアリ。

ちなみに、そんな『新・世界の七不思議』に収録された『ストーンヘンジの不思議』がドラマ化されることに。
「歴史(ヒストリカル)カクテル」とのタイトルで2014年10月8日(水)24時45分から放送予定。

鯨統一郎先生『ストーンヘンジの不思議』(『新・世界の七不思議』収録、東京創元社刊)がドラマ化!!その名も「歴史(ヒストリカル)カクテル」とのこと!!

どちらかと言えば『邪馬台国はどこですか?』の収録作品をドラマ化して欲しかったかなぁ。
それと、『新・世界の七不思議』は連作短編の流れを活かしたラストのサプライズこそが最大の肝でもあるので『ストーンヘンジの不思議』単独でのドラマ化となると些か破壊力に欠けるかも。

とはいえ、これが好評ならば連続ドラマ化も狙えるかもしれない……というワケで『邪馬台国はどこですか?』ファンは注目せよ!!

<ネタバレあらすじ>

とりあえず、お試しとして『ストーンヘンジの不思議』と『新・世界の七不思議』のラストを簡単にまとめてみた。
これに興味を持たれた方はチャレンジを!!

・『ストーンヘンジの不思議』

来日中のジョゼフ・ハートマン教授は歴史学者。
彼は同じく歴史学者で美女の早乙女静香に夢中。
出来れば彼女の案内で、もう1つ夢中になっている京都観光を楽しみたいのだが……いつもそれが叶うことはない。

そんなハートマンだが、他にも夢中になれることが出来つつあった。
それが静香に紹介されたバーのカクテルと、其処で繰り広げられる宮田の大胆な歴史解釈である。

そして、今回は「ストーンヘンジ」が取り上げられることとなった。
宮田は「ストーンヘンジ」を全く知らなかったのだが、バーテンの松永や静香から聞いた情報だけで思いも寄らぬ仮説を唱え始めた。

なんと、宮田は「ストーンヘンジ」が「空を支える為の施設」だと主張したのだ。
それは「杞憂」の逸話に繋がる「空が落ちて来る」との思考から必要とされた「祭祀的施設」との結論である。

さらに、宮田は驚くべき仮説を口にする。
なんと、「ストーンヘンジ」が「日本に渡来し鳥居になったに違いない」としたのだ。
その証拠が「トリイ」という名前だ。
それは「トリリトン」が訛ったものなのだ―――。

以降、ピラミッドが日本に渡来し盛り塩になったなど……さまざまな仮説を提唱する宮田。
これを聞くハートマン教授はその都度、新鮮な驚きをもたらされていた。

しかし、そんなハートマン教授にさらに宮田は驚きを与える。

宮田は言う―――もしかして、すべてが逆なのではないか。
ストーンヘンジが日本に渡来し鳥居になった。
ピラミッドが日本に渡来し盛り塩になった。
これまではそう思っていた。
だが、海外から渡来したのではなく、すべてが逆転しており日本発祥だとしたら。

これを聞いたハートマン教授はあまりに大胆な仮説ながら、その魅力に抗えないのであった―――エンド。

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鯨統一郎先生『ストーンヘンジの不思議』(『新・世界の七不思議』収録、東京創元社刊)がドラマ化!!その名も「歴史(ヒストリカル)カクテル」とのこと!!

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