2015年03月09日

『緑の女』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.67 OCTOBER 2014』掲載)

『緑の女』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.67 OCTOBER 2014』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

大学構内で事件発生。居合わせたのは、生物に詳しい妙な男で……。第10回ミステリーズ!新人賞受賞作家による受賞後第一作
(公式HPより)


<感想>

「第10回ミステリーズ!新人賞」受賞作『サーチライトと誘蛾灯』に続く作品。

『サーチライトと誘蛾灯』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.61 OCTOBER 2013』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

読んでみて、やっぱりスゴイの一言です。
前作に引き続き、泡坂妻夫先生「亜愛一郎シリーズ」の作風を見事に再現しています。
今回の視点人物・桜のエキセントリックな性格などはその最たるものでしょう。
これはやろうと思ってやれるものではない……おそらく自然に表現されているのではないでしょうか。

そして、亜愛一郎同様に魞沢の正体にも秘密がありそうだなぁ……。
それは何なのだろうか!?
きっと発売されるであろう連作短編集で明らかになる筈だ。
要注目!!

なお、『サーチライトと誘蛾灯』は単品で電子書籍でも発売されているようなので、興味をお持ちの方はチェック!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
魞沢:斉藤の紹介で本宮の取材に訪れた謎の男。
桜:本宮の助手。
柿崎:教授。
本宮:准教授。
茜:院生の1人。
狩野:院生の1人。
斉藤:別大学の教授。

桜は大学に勤務する助手で、准教授の本宮の下で働いている。
彼女たちは上司であり退官が近い柿崎教授の論文が不正にデータを改竄したものであることに気付き、これを告発することを決意していた。
もちろん、自分たちにも累が及ぶことは覚悟の上だ。

ただ1つ憂慮すべきことがあるとすれば、柿崎の論文に共著として名を載せた大学院生らにも影響が出かねないことだ。
特に論文の本数が多い院生の1人・狩野には強い影響が出ると思われた。
おそらく、決まっていた就職先もフイになるだろう。
だが、それでもやらなければならないことなのだ。
本宮と桜はそれだけの意義があると考えていた。

ちなみに、本宮と違って桜は狩野の件に罪の意識を感じていない。
狩野が女癖が非常に悪いことを知っているからだ。
むしろ天罰程度に考えていた。

もっとも、これが茜のような真面目な学生ならば話は別だったろう。
当の茜は決まっていた就職先を不意に断っており、桜としては心配でならなかった。

そして、告発を数日後に控えた日のこと。
朝から学生相手のミーティングなどで忙しく過ごしていた筈の本宮が何者かに殺害されたのだ。
しかも、顔全体を緑色に塗ってである。

とはいえ、例年のことならば顔のペイント自体は珍しくもなかった。
何故なら、本宮自身が学生に受けを狙ってミーティングの席上で毎年行っていることだからだ。
この事実は院生やゼミ生たちは誰でも知っている。

だが、今年に限って本宮は顔全体ではなく頬のみを緑色に塗っていたのである。
それが今では例年の如く顔全体に及んでいる。
当然、これは本宮の行動ではない。
犯人の行動だと思われた。

動揺する桜の前に、魞沢と名乗る男が現れる。
魞沢は斉藤教授の紹介で本宮の取材をする為にやって来たらしい。
斉藤教授は本宮と交際していたと噂の男性であった。
いや、正確には本宮が取り入ろうとしていた相手である。

どちらにしろ斉藤本人ではない以上、桜にとって魞沢は得体の知れない人物であることには変わりない。
桜は持てる毒舌を以て、これに相対するが……。
幸いと言うべきかどうか、魞沢は特に動じる様子も無い。

それどころか、本宮の死を知るや根掘り葉掘りいろいろ聞いて来る。
気付けば、自然自然に相手に狩野のことなどを伝えていた。

そして、魞沢が導き出した結論。
それは本宮の顔を緑色に塗ったのは犯人による死亡推定時刻の偽装工作であるとのものであった。
つまり、アリバイ工作だ。

普通、用を為せば本宮はすぐにペイントを落とした筈だ。
しかし、死体となった本宮の顔が緑色に塗られていたら……それが出来ないほどすぐに犯人によって殺害されたと周囲は考えるだろう。
すなわち、犯人は本宮が学生とのミーティング直後に殺害されたと思わせたかったのだ。

これは裏を返せば、犯人がミーティング後、本宮がペイントを落とした後に接触したことを示している。
つまり、実際の殺害時刻はそれなりに後へとずれ込む。
同時に犯人がミーティングに参加せず、本宮が今年に限っては頬しか塗っていなかったことを知らなかったことをも示している。
そして、動機がある人物……。

これらの条件により浮かんだ人物は狩野であった。
こうして、狩野が取調を受けることになるのだが……。

取調から数日後、真犯人が判明する。
その正体は茜であった。

実は茜は狩野と交際していたのだ。
しかも、結婚の約束までしていたのである。
だからこそ、これを宛てにして就職先を反故にしたのだ。

ところが、本宮たちが柿崎を告発しようと計画していることを知り狼狽する。
もしも、本宮たちが告発すれば狩野の就職話は流れてしまうだろう。
だとすれば、そんな狩野と結婚する自分はどうなるのか!?

其処で茜が本宮を殺害したのだ。
顔を緑色に塗ったのは、魞沢の推理通りアリバイ工作であった。
しかし、自身ではなく狩野のアリバイだったのだ。
狩野ならずとも同じ利害を持つ関係者が居たことがポイントだったのだ。

これを魞沢に伝えた桜。
得体の知れない魞沢に素直に教えた理由はただ1つ。
亡き本宮に代わる上司として斉藤教授に自身を紹介して貰う為であった―――エンド。

◆関連過去記事
『サーチライトと誘蛾灯』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.61 OCTOBER 2013』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

「第10回ミステリーズ!新人賞」受賞作発表!!第11回も募集中!!

『緑の女』が掲載された「ミステリーズ! vol.67」です!!
ミステリーズ! vol.67





『サーチライトと誘蛾灯』が掲載された『ミステリーズ! vol.61』です!!
ミステリーズ! vol.61





こちらはキンドル版「サーチライトと誘蛾灯 (第10回ミステリーズ!新人賞受賞作)」です!!
サーチライトと誘蛾灯 (第10回ミステリーズ!新人賞受賞作)





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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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