日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season13」第5話「最期の告白」(11月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
年の瀬の気配が迫り始めたある日のこと。
右京(水谷豊)と甲斐(成宮寛貴)の姿は寒々しい留置場にあった。
とはいえ、彼らは誰かに会いに来たワケではない。
彼ら自身が留置対象とされているのだ……。
事の発端は4日前に遡る。
右京と甲斐は無銭飲食の容疑で滝沢という男性を捕まえた。
だが、どうも滝沢は体調が思わしくない様子で入院することに。
滝沢には身寄りも家もない、どうやら年越しを拘留施設で迎える為にわざと捕まったようだ。
しかも、滝沢は「5年前に人を殺した」とまで語り出した。
流石にこれは普通ではない。
驚いた右京と甲斐は滝沢の明かした殺人を調べ始める。
それは目黒区で発生した染谷という老婦人の強盗殺人事件であった。
しかし、その犯人は既に捕まっていたのである。
犯人の名は岩倉(ダンカン)。
岩倉は染谷夫人殺害以外にも山本夫妻殺害やその他の強盗により死刑が確定していた。
1つの事件に2人の犯人が現れたのである。
右京たちは真相を明らかにすべく動き出す。
まず、事件の捜査を担当した中根署へ。
奇しくも、中根署は甲斐の古巣。
しかも、捜査担当者は甲斐の尊敬する元上司・堀江(山口良一)だった。
もしも、滝沢の言葉が事実ならば堀江が冤罪を生み出したことになる。
甲斐は真実を突き止めることに戸惑うのだが、右京はそんな甲斐に構わず捜査を続ける。
矢先、右京は滝沢の言葉が事実であることを示す傍証を掴む。
岩倉の資料を調べたところ、山本夫妻殺人事件時の被害品が1点だけ消えていたのだ。
消えていたのは「輸入用靴下(6M)」。
すなわち、6ヶ月の幼児用靴下だ。
山本夫妻が孫の為にプレゼントしようと購入したものらしい。
これが現場から消えており、岩倉が夫妻を殺害し金を盗んだ際に持ち出したのだと思われた。
ところが、被害品のリストに一度は挙げられながらも訂正されていたのである。
岩倉の娘を訪問する右京たち。
すると、岩倉娘には6歳になる子供・あおいが居た。
岩倉の娘に確認したところ、同時期に誕生祝として靴下を貰っていたと言う。
そう、岩倉は山本夫妻を殺害した現場で靴下を発見し孫にプレゼントするべく奪ったのだ。
此処から右京は岩倉が堀江と取引を行い、染谷夫人殺害の罪も背負ったのだと考える。
もともと、岩倉には山本夫妻殺害ほかにも多くの余罪があった。
靴下の出処を伏せる代わりに、余計な罪を背負うことを選択したのだろう。
この事実に甲斐は激しく狼狽する。
右京は自身の正義に基づき事実を明らかにするべく、入院している滝沢に取調を行おうとする。
その頃、滝沢は急激に体調を悪化させ、死の影が迫っていた。
時間がない。
ところが、其処に中根署の堀江の部下が現れた。
取調を妨害するように壁となっている彼ら。
これを払いのけようとした途端、右京と甲斐は公務執行妨害の容疑で逮捕されてしまったのだ。
これが冒頭の状態であった。
それから数時間後、右京と甲斐は留置場の外に居た。
なんと、留置中に滝沢が病死してしまったのである。
もはや取調は行えない。
打つ手は残されていないかに思われたが―――。
岩倉娘のもとへ向かう右京。
靴下について打ち明け「お父さんは無実だったんです」と告げる。
だが、岩倉娘は喜ばない。
当たり前である。
誰が、殺人のついでに奪った靴下を貰って喜ぶだろうか。
しかも、この事実の代わりに得られるのは他にも多数の余罪を抱えている父親の罪が1つ減ること。
それが今更、何になるのか……。
岩倉娘は「こんなこと知りたくなかった」と右京に叫ぶ。
これを見ていた甲斐も右京に反発。
堀江の件も含めて真実を明らかにしたところで誰も喜ばないと主張し、意見が分かれることに。
だが、右京は止まらないし怯まない。
最後の手段に出ることに。
岩倉が入院中に採取された血液を入手すると、当時の現場で検出されたソレとの鑑定を行う。
証拠品を手に入れたのだ。
数日後、岩倉の弁護人である大久保弁護士が染谷夫人殺害について再審請求を起こした。
武器は例の血液である。
もちろん、右京の差配であることは言うまでもない。
この事態に峯秋は関係者を退職させることを決定。
再就職先を用意するよう指示する。
事は中根署の手を大きく離れていたのである。
だが、堀江は再就職を拒否。
堀江によれば取引は岩倉から持ちかけられたものであった。
この責任を取り静かに去ることに。
これに甲斐は無常を感じる。
同じ頃、右京は峯秋と対峙していた。
今回、右京と甲斐を逮捕させたのも峯秋の指図であった。
峯秋は右京に事情を明かす。
現状、取調の全面可視化と引き換えに司法取引の合法化が進められている。
これが実現する前に堀江の行動が露見すれば、司法取引の是非が論じられ事が頓挫しかねない。
それを阻止する為だったと言う。
だが、右京はこれをあっさりと一蹴する。
司法取引は捜査がスムーズに行える反面で、刑を軽くする為にありもしないことを訴える輩も出る。
つまり、諸刃の剣なのだ。
右京はこれを危惧していた。
右京の主張を聞いた峯秋は「つくづく面白い男だねぇ〜〜〜君は」と笑みを浮かべる。
その翌日、甲斐は岩倉の娘から感謝の言葉を伝えられていた。
一時は錯乱していたが、其処まで岩倉が孫を想っていることに気付いたらしい。
これを聞いた甲斐は右京に反発していたことに複雑な想いを抱くのであった―――第5話了。
<感想>
シーズン13第5話。
脚本は金井寛さん。
サブタイトルは「最期の告白」。
亀山版の「相棒season5」15話「裏切者」に神戸版の「相棒season9」6話「暴発」を加え、「司法取引(及びその隠蔽)は是か非か」をテーマに相棒同士の信頼を描いたストーリー。
それぞれの回の各相棒の右京への対応は亀山が「同調」、神戸は「反抗」でした。
これに比較すると、甲斐は「これらが半々」と言ったところか。
白でも黒でもない玉虫色的な対応になるのかなぁ……。
甲斐の心理的には、堀江のことを思えば右京の行動はやり過ぎに思える。
だが、岩倉の娘の件が残されていた。
これにより右京の行動に一縷の光を見出した。
そして、折り合いをつけたと言えるでしょうか。
ただ、その一縷の光ですが……闇に閉ざされそう。
真実が明らかになることで岩倉が取引に応じた理由が追及されることになるだろう。
だとすると、靴下の件にも触れられる筈で……染谷夫人殺害の件の無実はともかく、山本夫妻殺害現場から孫のプレゼントを手に入れた事実は人間的にかなり批判される筈。
ともすれば、岩倉娘にさえ批判の矛先は向かうかもしれない。
それはあおいにも向かうかも……。
あおいのことを考えれば、岩倉娘は父の想いに浸っている場合ではない。
岩倉自身もこれを危惧していたところもあるのだろうし。
しかし、それは儚く散った。
正直、其処に救いは無い。
とはいえ、右京にこれは関係ない。
右京はあくまで自身が信じる正義を通したに過ぎない。
岩倉娘の件は正義を貫く中で生じた副次的なものなのだ。
これが右京。
これこそが右京と言えるでしょう。
「誰も救われない」とした甲斐の言葉は正しい。
だが、絶対正義とは主観に寄らないもの。
正義を標榜するなら右京のスタンスもまた間違いとは言い切れない―――むしろ正しい。
このように、どちらが正しいとは言い切れないのが難しいところですね。
ただ、右京も回によっては割と主観で動くことが多いから「1個人が正義を背負って良いのか」など、この問題を複雑化させている……。
しかし、正義は各個人の心の中にあるのだろうし……ああ、難しい!!
それと、テーマを活かすなら右京がラストで述べていたリスクを劇中で表現し強調しても良かったかもしれないですね。
岩倉の偽証はそれ自体が取引の結果でしかなくなってますし、それ以外であればもっと映えたと思う。
とはいえ、なかなか良かったです。
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滝沢の犯行が冤罪だと認められても2人もの命を奪った岩倉の死刑は変わらないのに対してそれでも正義を貫こうとする右京さん。それにより、悲しむカイトの元上司と岩倉の娘。右京さんもつくづく罪作りだなと思いました。
私が右京さんなら絶対に暴こうとしませんね。仮に暴いて岩倉が死刑から無期懲役に変わるのであれば、暴きますが、変わらないのに冤罪を暴いたところで一緒じゃないですか。岩倉には犯した罪を償って貰いたいものです。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
確かに、犯行手口が異なっている以上は疑惑が生じて然るべしですね。
此の点、如何に堀江に事情があったとはいえ、取引に応じて早期解決を図ったことは1つの罪と言えそうです。
だからこそ、右京は誰を利することがなくとも堀江の罪を告発したのでしょう。
その為には岩倉の罪ではないことを明らかにする必要があった。
また、右京にとっては岩倉に下される罰の内容は重要ではないのかもしれません。
むしろ、右京にとって重要なのは「正しく罰を与える為に犯した罪を正確に把握する」こと。
あくまで、罰の軽重を計るのは個人ではなく裁判というシステムだと考えているのではないでしょうか。
その上で、審議を行うにあたり正確な罪科を把握する―――其処には罪人が誰であれ不平等は存在しない。
それこそが、右京の絶対的正義の一端なのでしょう。
とはいえ、もちろん岩倉の犯した罪は限りなく重く、また業も限りなく深い。
これはきちんと清算されるべき類のものであることも事実です。
ですが、あくまで岩倉の犯した罪の範囲でとなるのでしょう。
やはり「相棒」はいろいろと考えさせられますね。