ネタバレあります、未読の方は注意!!
<あらすじ>
ラストに驚愕!犯人はこの本の≪読者全員≫!アイディア料は2億円。スランプ中の作家に、謎の男が「命と引き換えにしても惜しくない」と切実に訴えた、ミステリー界究極のトリックとは!?
(河出書房新社公式HPより)
<感想>
講談社より刊行されていた著者のデビュー作『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』がタイトルを変更し河出書房新社から文庫として出版された作品。
それが本作『最後のトリック』。
本作に関しては「フーダニット」は成立しません。
何故なら「読者が犯人」と明記されているからです。
そして、それは事実となっています。
あなたの犯行動機は好奇心。
そして、あなたの犯行方法は本作を手に取りページをくること。
アレは、まさに驚天動地のトリックでしょう。
とはいえ、文庫化されたことで厳密には「今このときの読者であるあなたが犯人」かどうかは曖昧になりますね。
読者が手に取る時期がバラバラになっちゃうから。
ノベルス発売時点なら確実だったんだろうけど。
ただ、サプライズは色褪せない筈なので興味をお持ちの方は是非、読むべし!!
ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いようにかなり改変しています。
本作をきちんと読まれた方が楽しめる筈。
あくまでノリをご確認頂ければと思います。
<ネタバレあらすじ>
作家である深水の前に香坂誠一が現れた。
香坂は深水に「命と引き換えのトリック」について教える代わりに、必ず本にするよう取引を持ちかける。
そのトリックを聞いた深水はこれを了承することに。
こうして深水による連載が始まり、言葉通りに香坂が落命したのである。
深水には完璧なアリバイがあり、香坂の死は何処からどう見ても自然死であった。
だが、香坂の死は他殺なのだ。
しかも、犯人は深水では無い……誰あろう読者なのである。
何故、読者が犯人なのか!?
香坂誠一には彼が書いた文章を他人に読まれると動悸が激しくなるとの特殊な症状があったのだ。
いや、これは症状と言うよりは一種の精神感応とでも呼ぶべきであろう。
明らかな異能力である。
香坂は債権者に追われ命を狙われていた。
これから逃れる方法は死しかない。
同時に残される家族にも大金を与えたい。
此の為に生命保険を準備していた。
だが、受け取る為には他殺か自然死の必要があり自殺は出来ない。
さらに、香坂が確かに死亡したことが証明されなければならない。
其処で、自身の異能力を利用することにしたのだ。
作家である深水に前代未聞の殺人トリックがあると持ち掛けたのはコレであった。
香坂は深水に原稿を渡した。
これが出版物として不特定多数の読者の目に触れることで死亡することになるのだ。
そして、実際に果たしたのである。
まさに、命と引き換えのトリックであった―――エンド。
◆関連過去記事
【大癋見警部の事件簿シリーズ】
・『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』(深水黎一郎著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『現場の見取り図 大癋見警部の事件簿(ザ・ベストミステリーズ2012収録)』(深水黎一郎著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『大癋見警部の事件簿(番外編)』(深水黎一郎著、光文社刊『宝石 ザ ミステリー2』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『大癋見警部の事件簿 青森キリストの墓殺人事件』(深水黎一郎著、光文社刊『ジャーロ』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・『人間の尊厳と八〇〇メートル(ザ・ベストミステリーズ2011収録)』(深水黎一郎著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『完全犯罪あるいは善人の見えない牙』(深水黎一郎著、東京創元社刊『人間の尊厳と八〇〇メートル』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『特別警戒態勢』(深水黎一郎著、東京創元社刊『人間の尊厳と八〇〇メートル』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『蜜月旅行 LUNE DE MIEL』(深水黎一郎著、東京創元社刊『人間の尊厳と八〇〇メートル』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『五声のリチェルカーレ』(深水黎一郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
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