<あらすじ>
警視庁生活安全特捜隊、通称“セイアン”の新班長に任命された結城公一(村上弘明)は入庁以来、所轄の地域課と交通課の制服勤務ばかりで刑事経験ゼロという、48歳の新人刑事だ。かつて所轄で結城とデスクを並べたことのある特捜隊副隊長・内海康子(国生さゆり)が、現場に出なくてすむ班長のポストをわざわざ用意したにもかかわらず、着任早々、援助交際に端を発したある事件の聞き込みに奔走し、班員の石井誠司(笹野高史)、寺町由里子(原田夏希)らを戸惑わせる。
その結城班に、都下の雑木林で散骨が行われているとの苦情が飛び込んで来た。本来、散骨は法律の対象外なのだが、近隣の住民より、気味が悪いから取り締まってほしいと通報が入ったのだ。さっそく石井と共に出動した、結城。その雑木林で散骨をしてもよいと葬儀業者に許可を出していた地主の息子・占部末雄(長谷川朝晴)は留守だったが、妻・智子(須藤理彩)には今後、散骨を自粛してほしい旨を申し入れ、この事案は片が付いたと思われた。
だが、結城は現場の雑木林から奇妙なものを掘り起こしてしまう。見つけたのは、ポリ袋に入れられた未配達の年賀状の束と、謎のカジノ用のチップだった…。管轄の郵便局を訪ねた結城は、その年賀状が正月2日に配達されるべきだったもので、担当したのは高校生のアルバイト・八木裕介(ささの友間)だったことがわかる。少しでも引っかかることがあれば確かめずにいられない結城の姿勢に、石井は刑事としての資質を見抜く。
数日後、またもや同じ雑木林で散骨しているとの苦情が入った。結城たちは再び占部家を訪ねるが、智子は不在だった。姑の喜代(水野久美)によると、許可を出した当人である末雄は正月明けから家を飛び出し、連絡が取れないという。「もう終わりにしてほしい。あの子を楽にしてやって下さい」と懇願する喜代の言葉に、結城は末雄を探し出すことを決意する。
納得できないのは、班員たちだった。捜索願いも出ていない上、そもそも人探しはセイアンの仕事ではない。だが、「人間がひとりいなくなるには何らかの事情があるはずだ」という結城の熱意に押され、班員たちは末雄の行方を探しはじめる。末雄は、商工会議所の筆頭・檜山長三(山内としお)が社長を務める設備工事会社で働いていたが、欠勤も多かったため、失踪した末雄のことを誰も気にしていなかった。
実は、結城にはある予感があった。半年以上行方がわからない末雄は、何らかの事件に巻き込まれ、殺されたのではないか…。末雄の失踪、正月に配達されなかった年賀状、その年賀状が埋められていた雑木林での散骨…。これらはすべてつながるのではないか…!?
まもなく、結城の予感は現実となった――。半ば白骨化した末雄の他殺死体が、雑木林の奥の山で発見されたのだ…! 殺人と判明した以上、事件はセイアンの手を離れ、捜査一課の管轄となった。一課の剣持刑事(神保悟志)は智子の犯行とにらむが、結城は事件の奥にもっと深い闇が隠されていることを感じて…!?
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
警視庁生活安全特捜隊は通称「セイアン」と呼ばれている。
これはある者からは親しみを、ある者からは畏怖を、ある者からは侮蔑を込めて呼ばれる名である。
そんな「セイアン」に所属する石井誠司や寺町由里子たちは援助交際の元締めとして大村を追っていた。
ところが、大村の自宅には多量の大麻が栽培されており、当の大村は近くの川で他殺体で発見されたのである。
殺人となれば一課の領分である。
職分を超えたことで捜査を諦めようとする石井たち。
しかし、そんな石井たちの前に新班長の結城公一が現れる。
結城は所轄の地域課と交通課の経験こそあるが刑事経験ゼロと言う48歳の新人刑事であった。
当初こそ、そんな結城を侮る石井たち。
だが、結城は石井たちの想像を超えていた。
堂々と現場を調べるとあくまで大村の援助交際を追い始める。
大村が援助交際の元締めであると容疑をかけられたのは、あるネットカフェから援助交際メールを大量に送信していたからであった。
このメールに取り上げられていたのは「真由美」なる少女。
大村はメールに応じた者に「真由美」を紹介しようとしていたようである。
大村が懇意にしていたネットカフェを調べた結城は、付近の防犯カメラの映像から大村が真由美と共に居た男性に暴力を振るわれていたことを突き止める。
どうやら、大村は知らなかったが真由美自身が美人局を行っていたらしい。
それに大村が引っかかったのだ。
結城は防犯カメラ映像の車から真由美と共に居た男を音川と特定。
音川が大村を殺害したのだと結論付けた。
おそらく、音川は大村を脅迫し金を要求したのだ。
そして犯行当日に大村宅を訪問した。
だが、大村は大麻を栽培しており音川の来訪を拒否した。
此処で騒動が起こり、音川が大村を殺害してしまったのだろう。
さらに、真由美の制服から学校も突き止める。
真由美の本名は片桐沙織であった。
沙織が音川と同棲していることを知った結城は周囲が止めるのも聞かずに沙織のもとへ。
結城は沙織を助けようとしていたのだ。
しかし、時既に遅かった。
沙織もまた音川と共に大村殺害に関与していたのだ。
こうして、結城の目の前で音川と沙織が逮捕されてしまう。
結城は自身の無力を噛み締める。
そんな結城の態度に石井たちは少しずつ共感を抱き始めた……。
今、「セイアン」が大きく変わろうとしていた。
矢先、結城のもとに山中の雑木林で散骨が行われているので何とかして欲しいとの苦情が届く。
何でも、これにより迂闊に山に踏み込めなくなっているらしい。
この場合の散骨は不法投棄に該当しかねない。
早速、結城たちが出動することに。
ところが、散骨業者によれば地主の許可は得ていると言う。
地主の名は占部喜代。
だが、喜代は身体を悪くしており家から出ない。
実際はその息子の末雄が仕切っているそうだが……。
末雄を訪ねた結城たち。
しかし、末雄の妻・智子によれば末雄は滅多に家に寄りつかないそうで留守であった。
とりあえず、自粛以来を行うことで終わったに思われたのだが。
結城にとってはまだ終わっていなかった。
現場の雑木林から未配達の年賀状の束を発見したのだ。
どうやら、配達員が捨ててしまったものらしい。
他にも謎のカジノ用と思われるチップも発見される。
結城は捨てられていた年賀状を管轄の郵便局へ。
すると、担当したのが高校生アルバイトの八木裕介であると判明する。
八木裕介について調べた結城は彼が智子が教師を勤める予備校の教え子であることを突き止める。
つまり、祐介と智子は顔見知りだったのだ。
これは何かがある……。
だが、祐介本人に年賀状廃棄について確認したところ「面倒くさくなって捨てた」としか語ろうとしない。
そんな中、またも雑木林で散骨が行われているとの苦情が。
どうやら「SU」なるハンドルネームの人物が現場を最適の地としてネットで紹介していたのだ。
ところが、調べたところ「SU」の正体は占部末雄ではなく智子であることが分かる。
智子は何故か末雄に成り済ましていたのだ。
結城は当の末雄の消息を気にかけ始めた。
末雄は商工会議所の会頭・桧山長三が社長を務めている設備工事会社の元社員。
だが、勤務態度が極めて悪いことで知られていた。
どうやら、相当評判も悪いらしい。
それは「血の繋がりが無いにも関わらず姑の世話を甲斐甲斐しく看ている」と評判の智子とは対照的であった。
しかも、末雄の周辺を調べたところ愛人が居たことが判明。
愛人によれば末雄は高校時代の同級生を発見し「金蔓」と称していたそうだが……。
さらに、1月2日に実家に帰省すると語っていたそうである。
それは八木が年賀状を廃棄した日と同日であった。
これらから結城は次のような仮説を立てる。
実家に帰宅し末雄を智子が何らかのトラブルで殺害。
その現場を八木に目撃されたが、師弟関係を利用し沈黙を強いた。
智子は末雄の遺体を山中深くに遺棄すると、人が近付かないように散骨を誘導していたのではないか。
直後、結城の仮説を証明するように末雄の遺体が発見され智子が殺害容疑で連行される。
智子は認めるでもなく否定するでもなく、不思議な態度を貫く。
これに結城は違和感を抱いた。
さらに、末雄の死因が頭部の鍬の傷以外に散弾銃による射殺であると判明するや他に真犯人が居ると主張する。
何故なら、占部家には散弾銃が無かったからである。
そんな結城に石井が意外な情報を持ち込む。
例の謎のチップがバカラ賭博の物ではないかと言うのだ。
しかも、噂になっているバカラ賭博場「トリノ」のオーナーは塚本と言い、末雄の同級生であった。
さらに、「トリノ」には塚本以外に影のオーナーが居るらしい。
末雄が口にしていた「金蔓」はこのことではないか―――ある確信を持った結城は「トリノ」への強制捜査を行うことに。
これは秘密裏の捜査であった。
ところが、何故か立川西署生活安全課の古田と今岡までもが現れる。
結局、影のオーナに繋がる証拠は何も出ず、ほぼ空振りに終わってしまった。
これに疑念を抱く結城。
さらに事態は急展開。
塚本が末雄殺害の容疑で逮捕されたのだ。
どうやら、実行犯であることは間違いないらしい。
だが、凶器の散弾銃の行方は杳として知れなかった。
管轄内の散弾銃所有者を調べ始めた結城。
銃を所持するには銃砲検査を合格する必要がある。
検査合格者を調べようとした結城は、検査責任者に古田と今岡の名を発見し事件が繋がっていると断ずることに。
古田と今岡を尾行した結城は彼らが桧山と密会している現場を目撃する。
銃所持者のリストの中には桧山の名前もあったのである。
桧山が「トリノ」の影のオーナーで、古田と今岡がこれに便宜を図っていたとすれば辻褄は合う。
「トリノ」の捜査が空振りに終わったのも彼らが情報を流したからであろう。
こうして、桧山と対決しようとする結城であったが。
そんな結城の心の底に眠る情熱の正体を石井は過去の事件から見出していた。
その事件は結城が南館山署に在籍していた頃のもの。
ハーフのマリアは父親からDVを受けており、相談に訪れた。
これを受け付けた結城は担当者に取り次いだのだが……。
数日後、マリアの母が父を殺害してしまう。
残されたマリアは周囲から強硬な取り調べに遭うことに。
結城はそんなマリアを眺めつつ「担当ではないから」と諦めていた。
そして、追い詰められたマリアが自殺してしまったのだ。
後に分かることだが、マリアは父に関係を強要されていたらしい。
だからこそ、母が父を殺害したのだ。
もっと真摯に相談に耳を傾けていれば……結城は後悔し1人でも多くを救うことを決意したのだと言う。
聖域に踏み込んでいれば救えたかも……それが結城の偽らざる本音であった。
遂に結城は桧山と対決する。
だが、桧山は所有している散弾銃は処分したと主張し処分依頼書を提示する。
それは末雄殺害よりも過去の出来事になっていた。
これが事実ならば、既に存在しない銃で末雄を殺せる筈がない。
結局、結城は後日を期してその場を引き下がることに。
結城は再度の証拠固めに奔走し始めた。
すると、銃砲検査で暴発事故らしきものが起こっていたことが発覚。
だが、公的記録にその旨は無い。
さらに桧山の所持するレミントンの散弾が末雄の遺体から検出されたものと同型であると判明。
此処に結城は次の仮説を立てる。
銃砲検査の際、桧山が誤って暴発させたのではないか。
これに古田と今岡が担当者として責任を追及されることを怖れ、処分依頼書を作成し暴発事故を隠蔽した。
この事故が発端となり、桧山と古田や今岡の黒い蜜月が始まったのだ。
桧山は自身が影のオーナーを勤める「トリノ」に便宜を図る代わりに古田たちに報酬を支払ったのである。
これを末雄が嗅ぎ付けた。
其処で桧山が塚本に散弾銃を預け、末雄を殺害させたに違いない。
だが、まだ証拠不足である。
塚本の証言が必要だ。
結城は「猟銃が無ければ桧山は罪に問われないが、猟銃が無くともお前は起訴されるぞ」と塚本を揺さぶる。
しかし、塚本は全く動じない。
これに結城は塚本は桧山から預かった猟銃を処分せず、保険として何処かに隠していると考える。
だとすれば……塚本の城とも呼べる「トリノ」しかない。
こうして、塚本の城とも呼べる「トリノ」の捜索が開始された。
だが、其処からは何も出て来ない……。
トボトボと引き上げる結城たち。
その夜、古田と今岡が「トリノ」に現れた。
古田たちは周囲を確認するとトイレの配管を破壊し、隠されたレミントンを取り出すことに。
と、其処に結城たちが踏み込んだ。
すべては結城の罠だったのだ。
塚本がトイレの配管工事を発注していたことから隠し場所に目星をつけていたらしい。
その上で古田たちを罠にかけたのである。
凶器となった散弾銃が押収されたことで、塚本はすべてを語り始めた。
末雄は塚本と桧山の密会を目撃し、桧山が影のオーナーであることに気付き脅迫した。
桧山は塚本に命じ末雄の口封じを狙うように。
そんな中、智子と末雄の間でトラブルが発生。
過程は不明だが智子が末雄を山に捨てた。
しかし、末雄は生きていた。
意識を取り戻した末雄は塚本に迎えに来るよう要求。
塚本はこれがチャンスとばかりに桧山から預かったレミントンで末雄を射殺したのだ。
こうして末雄殺害事件の真相は明かされた。
だが、結城にとってはもう1つ残された謎があった。
智子の動機だ。
結城は智子を呼び出すと彼女に真相をぶつける。
1月2日に末雄を昏倒させたのは智子では無かったのだ。
あの日、末雄は実家に帰ると土地の権利書を智子たちに差し出すように迫った。
この際、末雄は智子に暴力を奮った。
その光景を年賀状配達中の八木裕介が目撃した。
八木は予備校の教師である智子を守ろうと末雄に突撃。
これを撥ね退けられると、逆上して鍬を叩きつけたのだ。
衝撃で末雄は気絶、死亡したものと思った智子が山中に遺棄したのである。
これが事件の一部始終であった。
その後、智子が末雄が生きているように隠蔽工作を行ったのだ。
では、智子は八木を守ろうとしたのか?
いや、違う。
智子が守ろうとしたのは姑の喜代であった。
智子は事件が露見することで、喜代との静かな暮らしが妨害されることを怖れた。
其処で全て無かったことにしようと奔走していたのだ。
人避けに散骨という手段を選んだのも、夫である末雄の静かな眠りを妨害されまいとの理由だったらしい。
結城は智子を救うことが出来なかったと悔やむ。
そんな結城に石井は稀有壮大だと評するのであった―――エンド。
<感想>
集英社より刊行されている安東能明先生原作「生活安全特捜隊シリーズ」のドラマ化第1弾。
原作シリーズには3冊の既刊あり。
それぞれシリーズ順に『聖域捜査』『境界捜査』『伏流捜査』となっている。
ストックがあることでドラマ版続編にも期待出来そう。
あらすじはこちら。
<あらすじ>
・聖域捜査
欲と打算に隠された“聖域”を暴く警察小説
第一線の刑事として活躍する夢を抱き続けた結城がようやく着任したのは、「生活安全特捜隊」という組織だった。慣れない事案にとまどいながら、勇み捜査に踏み込んでいくが……。(解説/吉野 仁)
・境界捜査
「生安(セイアン)」の刑事たちを描く傑作警察小説!
花形刑事に憧れていた結城が、警視庁生活安全特捜隊の班長に着任して2年目。女性刑事・寺町が新たに仲間に加わり、結城率いる“生特隊”の面々はさらなる事件捜査に挑んでいく。(解説/西上心太)
・伏流捜査
結城公一が警視庁生活安全部・生活安全特捜隊の班長となって3年目。渋谷のクラブで脱法ハーブが売られていると情報が入り、結城らはクラブを張るが…。“生特隊”の活躍を描く全2編。(解説/池上冬樹)
(集英社公式HPより)
ちなみに同作者による似たタイトルで『限界捜査』『侵食捜査』(共に祥伝社刊)や『潜行捜査』(双葉社刊)などがあるが別シリーズである。
さ〜〜〜て、ここからドラマ版感想です。
原作のあらすじを読む限り、ドラマ版はかなりアレンジされていたのかな。
とはいえ、個人的にはなかなか良かった印象です。
序盤から中盤に掛けてはかなり惹き付けられました。
結城と石井の関係は十津川警部と亀井刑事の関係に近いのかな。
ベストコンビです。
ただ、惜しむらくは終盤が「あと一息」だったか。
贅沢かもしれないが、もう1つ何か欲しかった。
それと、結城の理想「人を救うこと」が今一歩分かりにくいか。
これについては台詞のみで理想が表現されていることと、劇中の案件がすべて「間に合わなかった」パターンばかりなのがその理由かな。
事前に事件を防ぎ相手を救うことに成功するパターンが加わることで結城の理想もより明確になる気がします。
そう言いつつも、充分にシリーズ化に耐え得る出来でしょう。
原作にストックもあるようですし、次回にも期待です。
ちなみに檜山役の山内としおさん。
「必殺仕事人」の筆頭同心・田中を演じられた方です。
故・藤田まことさん演じる中村主水と「田中様」「中村さん、あなたって人は!!」の遣り取り、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
「必殺仕事人」ファンにとってはかなり嬉しいキャスティングでしたね。
◆関連過去記事
【安東能明先生原作関連】
・「殺人予告」(安東能明著、朝日新聞出版刊)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ版】
・土曜ワイド劇場 特別企画「殺人予告〜完全犯罪は一本の電話で始まった!!特命班が追う警官殺しと折れたタクトの謎!?」(1月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
結城公一:村上弘明
内海康子:国生さゆり
班員・石井誠司:笹野高史
班員・寺町由里子:原田夏希
一課・剣持刑事:神保悟志
占部智子:須藤理彩
占部喜代:水野久美
占部末雄:長谷川朝晴
檜山会頭:山内としお ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
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こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
「乙川」ではなく「音川」だったのですね。
早速、訂正せねば!!
教えて頂き感謝です(^O^)/!!