2014年12月08日

『どこかでベートーヴェン 第二話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.7』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『どこかでベートーヴェン 第二話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.7』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家たちの書き下ろしミステリー・ブックです。千里眼をそなえた金平糖屋のひとり娘が事件解決に挑む!伽古屋圭市「なないろ金平糖」連載スタート!『さよならドビュッシー』の中山七里が描く、大人気・音楽シリーズ「どこかでベートーヴェン 第二話」、絶好調「死亡フラグ」シリーズの七尾与史によるジェットコースター・ミステリー「僕はもう憑かれたよ 第四話」、上甲宣之「JC科学捜査官」シリーズの最新短編「雛菊こまりと“赤いはんてん着せましょかぁ”殺人事件」、スマッシュヒットの人気シリーズ・佐藤青南「行動心理捜査官・楯岡絵麻」シリーズ最新作、「狂おしいほどEYEしてる」など、話題作家競演の一冊。
(宝島社公式HPより)


<感想>

中山七里先生「岬洋介シリーズ」の最新作『どこかでベートーヴェン』の第2話が発表されました。
長編第3作である『いつまでもショパン』と同様に『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK』に掲載されています。
これにより、何時か来るシリーズ第4作『どこかでベートーヴェン』の発売が明らかに。

そんな「岬洋介シリーズ」は「難聴を抱える天才ピアニスト岬洋介が関わった事件を描く」シリーズ作品。
あくまで関わった事件なので、中心視点人物は各作品ごとに別の人物となっており、岬は事態解決やアドバイスなどを行う探偵役の立場となっています。
いつか岬自身が視点人物となる日がやって来るのでしょうか。

なお、今回の『どこかでベートーヴェン』は『いつまでもショパン』の後から始まる物語。
ただし、ある事柄により一躍有名になった岬を見かけた高校時代の同級生が当時の事件について振り返るとの内容になっています。
この為、実際は回想が主になりそうかな。

そして、2話も岬を取り巻く不穏な空気を描きつつも事件は未だ発生せず。
これ自体が何かの伏線なのか!?
さらに本作はタイトルが『どこかでベートーヴェン』とされている通り、岬の難聴も大きく絡んで来るのかもしれません。

ちなみに、「岬洋介シリーズ」には長編が『さよならドビュッシー』、『おやすみラフマニノフ』、『いつまでもショパン』の3作(刊行順、作中時系列順)と短編が短編集『さよならドビュッシー前奏曲(文庫化に際し『要介護探偵の事件簿』を改題)』(『さよならドビュッシー』の前日譚を描いたスピンオフ)、『間奏曲(インテルメッツォ)』(『いつまでもショパン』とう同時期に起こっていた事件を描くスピンオフ)の2作が存在しています。
記念すべきシリーズ第1作『さよならドビュッシー』は映画化もされています。
書籍版については、すべてネタバレ書評(レビュー)していますね。
興味のある方はネタバレあらすじ後の関連過去記事へどうぞ!!

ネタバレあらすじについては、管理人によりかなり改変されています。
本作を楽しんで頂くには直接お読み頂くことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
岬洋介:シリーズ主人公、今回は高校時代が描かれる。
鷹村亮:『どこかでベートーヴェン』の視点人物。音楽科の学生。
岩倉:音楽科の学生の1人。
板台:音楽科の学生の1人、バンドを組んでいる。
春菜:鷹村が憧れる同級生。
棚橋:音楽教師。
佐久間:数学教師。

・1話はこちら。
『どこかでベートーヴェン 第一話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.6』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

転校生・岬洋介の存在に湧く音楽科。
貴公子然とした風貌、勉学もスポーツも優秀とくればそれも当然である。

鷹村亮はそんな岬と友人になったことで鼻高々である。
とはいえ、憧れの同級生・春菜までもが岬にお熱なのには閉口したが……。

そんな中、音楽科の学生でバンド活動を行っている板台が岬に目を付けた。
バンド活動に誘ったのである。
どうやら、その話題性に注目したようだ。

ところが、これをあっさりと断る岬。
板台は「大丈夫、下手でも問題ないから」と食い下がるが、岬の答えは変わらなかった。
この遣り取りを目にしていた鷹村は「完璧に見える岬にも演奏が下手だと言う弱点があるんだなぁ」と納得していたのだが。

数日後、これが大間違いだったことを知ることに。

その日、音楽科でも1番の技量を誇る春菜がピアノ演奏を終えた。
「流石は春菜」と同級生たちが感心する中、音楽教師の棚橋が次の演奏者に指名したのは岬であった。

(それはあまりに酷だろう)
板台との遣り取りから岬の技量を理解していたつもりの鷹村は岬に深く同情していた。
何しろ、春菜の後なのだ。
誰が演奏しても比較されるだけ損である。
ところが……。

岬の演奏が始まるなり、この想いは吹き飛んだ。
それは余りにもレベルが違い過ぎた。

春菜の演奏は確かに上手い。
だが、ただ上手いだけだ。
岬の演奏には心が籠っていた。
それこそ、プロの演奏と見紛うほどの。
春菜の演奏が「ただ上手いレベル」ならば、岬の演奏は「それこそ音楽」と言って良いものであったのだ。
其処には厳然たる才能の差が横たわっていた。

鷹村たちは驚き、そして敗北感を味わった。
曲がりなりにも鷹村たちは音楽科の生徒だからだ。
同じ音楽科の生徒に此処までの差を見せられたのはプライドが許さないだろう。

同時に、鷹村たちはあくまで普通科の受け皿として音楽科を選択した者も多かった。
だからこそ、高校生活を社会に出る前の猶予期間と見ている者が殆どだったのである。
そんな者たちにとって岬は眩し過ぎた。

演奏後、岬は羨望と共に嫉妬の眼差しを受けることに。
そして、それぞれがそれぞれの対応を示した。

春菜は敗北を認め、以前にも増して熱烈な岬のシンパとなった。
板台は音楽のレベルが違うからこそ岬が断ったことを知り、屈辱と受け止め遠巻きに眺めるようになった。
岩倉は岬の腕前に感嘆しつつ「なっ、言ったとおりだろ(1話ラスト参照)」と周囲を嘲った。

そして、鷹村は……岬の性格を理解し彼を守らなければと立ち上がった。
鷹村は岬に「君は周囲をもっとよく見るべきだ」と忠告。
岬は忠告を受け入れつつも「理解者は1人で十分だ」と嘯く。
もちろん、その1人とは鷹村のことだ。
これを聞かされた鷹村は胸が熱くなるのであった―――『どこかでベートーヴェン』3話(あるいは本編)に続く。

◆「中山七里先生」関連過去記事
『さよならドビュッシー』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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『いつまでもショパン』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『いつまでもショパン』第1回(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『どこかでベートーヴェン 第一話』(中山七里著、宝島社刊『「このミステリーがすごい!」大賞作家書き下ろしBOOK vol.6』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

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「どこかでベートーヴェン 第二話」が掲載された「『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.7」です!!
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「どこかでベートーヴェン 第一話」が掲載された「『このミステリーがすごい!』大賞作家 書き下ろしBOOK vol.6」です!!
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「いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)」です!!
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『いつまでもショパン』第1回が掲載された『『このミステリーがすごい!』大賞作家書き下ろしBOOK』です!!
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『間奏曲(インテルメッツォ)』が収録された「このミステリーがすごい! 2013年版」です!!
このミステリーがすごい! 2013年版



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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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