2014年12月05日

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第3話「もう1つの兄妹2」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第3話「もう1つの兄妹2」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第3話登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪してしまう。
ガイコツ:圭一を名乗る幽霊。蛍にしか見えない。

志田りか:聖マルス学園の生徒。2話から登場。
志田高志:りかの兄。りかにストーカーしているとのことだが……。

怪しい男:3話ラストに登場。聖マルス学園の教師?

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

高校生になった赤木蛍は行方不明となっていた兄・圭一と思わぬ形で再会を果たすことに。
なんと、圭一が幽霊として蛍のもとに戻って来たのだ。
しかも、圭一は悪意が関わる事件を察知し悪意を消滅させる能力を手に入れていた。
だが、圭一には現世に介入することが出来ない。
これでは折角の力も無意味である。
其処で圭一から協力を求められた蛍は、兄妹で力を合わせ1人でも多くの人を助けるべく動き出すことに。

今回、圭一が見つけたのは「聖マルス学園」に通う女子生徒・志田りか。
圭一は血塗れのりかの姿を幻視したのだ。

協力の約束を交わしたものの未だ納得いかない蛍だが、渋々りかに接近し友達になる。
そんな蛍にりかは「兄にストーカーされている」と告白する。
だとすれば、圭一の幻視はりかが兄に殺害されることを示しているのだろうか?

蛍は圭一に志田家を調べるよう助言。
その後、志田家を調べた圭一からその様子を教えられた蛍はりかではなくその兄が危ないと判断する。

何故、りかではなく兄が危ないのか……事情が呑み込めない圭一に蛍が説明する。

圭一は志田家を調べた際に、兄の隣の部屋の凄惨な様子を確認していた。
女物の衣服が並ぶその部屋には憎悪が満ちており、りかの兄・高志の写真が無惨に切り裂かれていた。

蛍はその様子から女性の部屋であると判断。
高志の隣室ということで、妹であるりかの部屋だと推測したのだ。
だとすれば、問題があるのはむしろ高志ではなくりかになる。
圭一が幻視した血塗れのりかは自身の血ではなく返り血に染まった姿では無かったか。
つまり、被害者は高志の方なのだ。
おそらく、りかは高志を殺害するつもりで正当防衛を偽装する為にストーカー被害を訴えたのだ。

この事実に気付いた蛍は慌てて志田家に向かうことに。

その頃、志田家では両親が不在になったことでりかと高志が兄妹2人きりとなっていた。
妹の前である為にリラックスした様子の高志。
そんな高志にイラついたりかは洗面所に足を運ぶと、鏡に向けて自身の頭部を叩きつける。

事態に気付いた高志は狼狽、早く手当てせねばと医療用具を探す。
しかし、その背中に刃物を振り翳したりかが近付いて行く。

危ない!!
誰もが思ったそのとき、インターホンが鳴り響いた。

「この大変なときに」
愚痴りつつもインターホンを取る高志。
来訪者の正体は蛍だ。

「あの、私はりかさんの友人で」
身分を明かし志田家に入ろうとする蛍は一足先に圭一を中へと向かわせる。

中へ飛び込んだ圭一は刃物を手にした血塗れのりかの姿を発見。
その背後に悪意の塊を確認するやこれに飛び掛かる。
だが、前回の川のときと異なり、りかの悪意は手強い。
あっという間に形勢が逆転し、圭一は不利に追い込まれてしまう。

其処に高志の許可を貰った蛍が駆け付けた。
蛍はその場を見るや状況を把握。
りかの憎悪の根源を見極める。

りかの憎悪は「兄へのコンプレックス」であった。
高志は非常に優秀であり、りかは事あるごとに出来の良い兄と比較され続けた。
そして劣等感に苛まれ続けていたのである。
その積もり積もったコンプレックスが爆発したのだ。

蛍はりかの肩を抱き、呼びかける。

蛍にも兄が居ること。
りか同様にその兄にコンプレックスを抱いていたこと。
だが、その兄が突如消えてしまったこと。
実際に消えてしまってからは気が晴れるどころか喪失感に苛まれたこと。
だからこそ、りかの兄は健在なのだからこれを大切にすべきであること。
失ってからでは遅いし、そもそも家族とはそのようなものなのだ。

このとき、蛍のドクロの髪飾りが光を放ち始めた。
途端、りかが動揺し始める。

同時にりかの憎悪も悶え苦しみ始めた。
その隙を突き、圭一がこれを消滅させるのであった。

りかは気を失い、高志がこれを介抱することに。
とはいえ、もう大丈夫だろう。

その帰路、蛍はりかの心情について圭一に語って聞かせる。
憎悪の塊となってしまったりかだが兄への愛情が残っていたからこそ正気を取り戻せたのだ。
その証拠がりかの部屋に残されていた唯一、無事だった高志の写真。
その写真はりかが幼い時分の物であった。
当時のりかにとって高志はコンプレックスの対象ではなく、自慢の兄だったのだろう。
りかは高志を憎みつつ、心の奥底で優秀な兄を尊敬していたのだ。

こうして事件は解決した。

その翌日、聖マルス学園。
コーヒーを手に急いでいた蛍が、ぶつかった相手にコーヒーをぶち撒けてしまう。
相手は私服姿であることから教師のようだ。
必死に謝る蛍に教師らしき男は「いいよ、いいよ」と愛想笑いを浮かべつつその場を去るが……。

ふと振り返った教師。
「次はあいつを獲物にするか」
蛍の背中に向けてニヤリと口元を歪めるのであった―――次話に続く。

いよいよ始まった蛍と圭一の奇妙な相棒物語。
ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように展開などをかなり改変してます。
気になる詳細は「週刊少年チャンピオン」本誌で確認せよ!!

<感想>

「名探偵マーニー」から3ヶ月……我らが木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」に還って来た!!
というワケで、その新作「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」です。

前回終盤時点でりか犯人説が既に明かされており、其処から続いたのでもう1つ裏があるかと思いましたが意外に直球でした。
でも、だからこそりかの心情面が強調されており良かったです。
これに蛍と圭一の関係も重ね合わせられていた点が見事でしたね。

ちなみにきっちりと伏線も回収されていますね。
「圭一が幻視した血塗れのりか」は「洗面所の鏡に頭部をぶつけた本人の血」。
「破られなかった写真」は「りかが心の奥底で兄を尊敬している証」。
此の点も良かったです。

ちなみに、りかは前作でのゆりかちゃんポジションになるのかな〜〜〜と期待。
少なくともレギュラーキャラにはなりそうな気配ですが。

それと、りかの兄ですが名前が高志なので志田高志のようです。
最初と最後に「志」が入っている名前なんだなぁ。
その志田高志ですが、マーニーの枯野さんみたいな容姿をしています。
非情に妹想いの優しい兄のようです。
精神的に非の打ちどころのない人物なのかも。
だからこそ、余計にりかはコンプレックスを拗らせてしまったのでしょう。

そして、1話でも述べましたが蛍のドクロ型髪飾りにはやはり秘密がありそう。
人の心を覗き込んだり、介入したりといった道具なのだろうか。
そして、圭一が反応するのは人の悪意で良さそうか。

でもって、ラストに登場した怪しい人物(学園内でありながら私服であることから教師か?)にロックオンされた蛍。
おそらく、その台詞から察するに常日頃から聖マルス学園の女子生徒を狙う淫行教師か!?
あるいは猟奇的な趣味を持つ危険人物か!?
いずれにしろ、蛍の身に危機が迫っていると言えそう。
この危機を蛍と圭一はどう乗り越えるのか!?

次回も見逃すなかれ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

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赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪してしまう。
ガイコツ:圭一を名乗る幽霊。蛍にしか見えない。

志田りか:聖マルス学園の生徒。2話から登場。
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