<あらすじ>
8年前に赤壁の戦いに勝利した曹操(チョウ・ユンファ)は魏王と称され、全ての権力を掌中に収めていた。実質的には何の力も持たない献帝は、ひそかに曹操暗殺計画を実行に移す。一方、刺客として特訓を受けた穆順(玉木宏)と霊雎(リウ・イーフェイ)は密命を受け、それぞれ宦官(かんがん)と侍女として曹操に接近する。
(公式HPより)
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
・主人公サイド
霊雎:絶世の美女、曹操に拾われるが……。
穆順:宦官の1人、実は……。
・魏サイド
曹操:「治世の能臣、乱世の奸雄」と称された英傑。魏王。
曹丕:曹操の次男。後の魏皇帝。
許褚:曹操を守る巨漢の勇将。
・漢王朝サイド
献帝:漢王朝最後の皇帝、丞相である曹操から実権を取り戻そうと暗躍する。
伏皇后:献帝の妻。
伏完:伏皇后の父親。
・その他
吉本:曹操の主治医。
貂蝉:呂布の妻にして絶世の美女。
後漢末、三国鼎立の少し前のことである。
当時、漢王朝は丞相であり魏王と呼ばれる曹操のもとで維持されていた。
後漢の皇帝である献帝はこれに不満を抱き、密かに曹操に握られた実権を取り戻すべく策を巡らせていた。
一方、献帝の妻・伏皇后は曹操の息子・曹否と男女関係となり彼を利用し曹操排除を狙う。
この試みに伏皇后の父・伏完も協力していた。
当の曹否は献帝を廃し曹操を皇帝に推した上で伏皇后と添い遂げようとしていた。
これを曹操は危険視する。
曹否の行動は簒奪にあたる、曹操はあくまで漢王朝の臣下であることを貫こうとしていたのだ。
そんな曹操の姿を目にした絶世の美女・霊雎は困惑する。
実は霊雎は宦官として王朝に潜入している穆順と共に曹操暗殺を命令されていた。
霊雎と穆順は暗殺者の村で育てられた生粋の暗殺者であった。
しかも、2人は恋仲だった。
霊雎は戦場に出向く曹操に近付き、その信頼を勝ち得ていた。
そして穆順は黒幕の差配で男性機能を喪失し宦官となり曹操に近付いていた。
2人は使命の為に互いの愛を捨てたのだ。
だが、曹操の生き方を目のあたりにする内にこの使命に疑問を抱き始める。
曹操は民心を完全に掌握し善政を敷いていたのだ。
もしも、曹操を暗殺してしまえば民は路頭に迷うことになるだろう。
そんな中、伏完主導による曹操暗殺計画が実行に移された。
深夜、曹操の宮殿に押し寄せた刺客の数は数十人。
彼らはそれぞれ凄腕であった。
だが、曹操の寝所まで迫ったものの、曹操からの信頼厚い巨漢の勇将・許褚により阻まれる。
さらに急を聞いて集まった兵たちに取り囲まれ果てた。
これに曹操は激怒。
伏完と共に伏皇后が処刑されることに。
曹否は伏皇后の助命を献帝に願い出るが、献帝はこれを見捨ててしまう。
献帝は伏皇后と曹否の関係を知っていたのだ。
その夜、曹操は霊雎の前で思い悩んでいた。
息子・曹否への処遇についてである。
曹操は今回の暗殺における曹否の狙いをすべて理解していた。
曹否は伏皇后の計画を知りつつ看過し、その結果を以て献帝排除を目論んだのだ。
すなわち、其処には最悪の場合、曹操の死も織り込まれている。
悩む曹操であったが、霊雎と語らう内にある決意を固める。
翌晩、曹操に呼び出された曹否は怯えていた。
もしや、殺されるのでは……身体を震わせる曹否。
そんな曹否に曹操は「父親として不甲斐なかった」と詫びる。
さらに曹否の取巻きに責任を問うものの、曹否自身の罪は不問に付した。
この曹操の姿に霊雎は尚更使命への疑問を深めることに。
その疑問は穆順へも伝わっていた。
同時に穆順は曹操のもとにこそ霊雎の幸せがあるのではと考え始める。
当の曹操は頭痛に悩んでいた。
枕元に立つ関羽の亡霊を見るようになったのだ。
主治医の吉本は精神的なものが原因だろうと告げるが……。
やがて、曹操は霊雎に癒しを求めるように。
霊雎もまた穆順を思いつつ、これを受け入れる。
その数日後、霊雎は呂布の妻で絶世の美女・貂蝉に瓜二つであると称賛される。
呂布は曹操が討伐した群雄の1人。
曹操の策により処刑されていた。
この際、呂布の妻であった貂蝉は夫の首を抱き何処へともなく消えたと言う。
彼女には夫との間に1人娘が居たそうだが……。
さらに数日後、霊雎と穆順に黒幕から遂に指令が下った。
曹操暗殺計画の遂行である。
霊雎と穆順は迷いつつも使命を全うすることを決める。
主の暗殺は穆順が担当する。
秘密裏に曹操の寝所へ赴き、剣でこれを襲撃するのだ。
副の暗殺は霊雎が担当する。
正門の上で待ち構え、穆順が討ち漏らした場合に逃げて来た曹操を槍で襲撃する。
二段構えである。
さらに、曹操排除後は外から精鋭が主を失った残党を討つ手筈であった。
そして、黒幕の命で霊雎と穆順に指令を下す者、その正体は―――あの吉本であった。
吉本は主治医として曹操に近付き、その隙を窺っていたのである。
遂に暗殺決行の日がやって来た。
飛ぶように正門へと向かう霊雎、同じく曹操の寝所へと向かう穆順。
まず仕掛けたのは穆順である。
寝所へと突入すると、曹操へと剣を突き付けた。
だが、曹操も流石である。
乱入者に動じないどころか、相手が穆順と知るや控えていた部下を制し一騎打ちを求める。
曹操は穆順と霊雎の関係に気付いていたのである。
剣を撃ち合う2人。
若い穆順が有利かと思いきや、歴戦の雄・曹操も決して退かない。
2振りの剣が互いの皮を裂き、肉を切る。
やがて、穆順の剣が曹操を圧倒し始めた。
遂に曹操は太ももを刺され、その場に膝を着く。
状況を見ていた曹操の部下たちは色めき立つ。
だが、それでも曹操は介入を許さない。
その姿に穆順が剣を下ろした。
次いで、自身の剣を曹操に捧げ拝礼したかと思いきやある申し出を行う……。
それから数刻後のことである。
豪華な装束を纏った騎馬が一騎、正門を駆け抜けた。
その衣装は曹操の物だ。
すなわち、これは穆順の暗殺が失敗したことを示している。
霊雎は眼下を走り抜ける相手に向けて、穆順の仇とばかりに勢いよく槍を突き立てた。
だが、相手は止まらない。
そのまま馬を駆り走り抜けて行く。
騎馬が去ったのを見計らうように、ワラワラと群衆が湧き出でた。
手にはそれぞれ剣が握られており、その先頭に立つのは吉本だ。
吉本は剣を振り上げると突撃を命じる。
これを合図に精鋭たちが正門へと押し寄せた。
虚を突かれた曹操陣営は必死に戦うが切り崩されて行く。
さらに数刻後、吉本は勝利を確信していた。
カリスマである曹操が居ない曹操軍は散発的な抵抗に留まっていたのだ。
これを城壁から眺める人影があった。
献帝である。
この吉本の反乱の黒幕は彼だったのだ。
献帝に向け勝鬨の声を上げようとする吉本。
だが、その表情が凍り付いた。
目の前に有り得ない光景が繰り広げられていたのだ。
あろうことか敵陣が割れ、中央から其処に居ない筈の人物が現れたのである。
其処に居ない筈の人物―――曹操であった。
曹操の思わぬ登場に、曹操軍は意気が上がった。
しかも、曹操は大量の伏兵を従えていた。
実は曹操は事あるを予期し伏兵を控えさせていたのだ。
これに戦況は逆転。
みるみるうちに吉本側の兵が討たれて行く。
もはや、勝敗は明らかであった。
だが、彼らが投降することはない。
彼らは敗北が決しながらも、一矢報いるべく遮二無二に曹操軍へ突撃を繰り返す。
そして、そのたびに数を減らして行く。
それでも彼らは戦い続けた。
何故なら、彼らは曹操を仇と狙う者の子弟たちであったから。
それこそ、吉本が献帝の命を受けて集めた軍隊の正体であった。
なんと吉本は曹操に滅ぼされた群雄の遺児や関係者を暗殺者として育てたのだ。
霊雎と穆順もまた同じ境遇である。
中でも、霊雎こそ呂布と貂蝉の間に生まれた1人娘だったのだ。
もはや、吉本の周囲にはわずかながらの兵しかない。
覚悟を決めた吉本は「漢王朝、万歳!!」と叫ぶや自ら命を絶った。
次いで吉本の周囲の兵も自決して行く。
此処に反乱は終わったのである。
城壁を見上げる曹操。
その目に逃げ去る献帝が映る。
曹操はこれを追った。
曹操を迎え入れた献帝は「すべてが失敗した」と自嘲する。
献帝の秘策こそが吉本の反乱だったのだ。
献帝は実権を握る曹操を目障りに感じ、排除を目論んだのである。
「乱世の奸雄になりたかったワケではない、名君のもと能臣でありたかった」
嘘偽りのない想いを吐露する曹操。
其処に込められたのは頼りない主君の為に王朝を支えながらも、その主君に疎まれた男の悲嘆であった。
彼は実権に拘りを抱いていなかった。
だが、曹操が実権を握らねば国は亡びかねない。
だからこそ、曹操は実権を手放すワケにはいかなかったのだ。
これを聞いた献帝は力なく座り込んでしまう。
自身の不甲斐なさを知った為か、それでもなお曹操排除に失敗したことを悔いてのものか。
それは誰にも分からない。
その頃、崖の上では霊雎が自身が手にかけた人物の正体を知り絶句していた。
霊雎が槍を突き立てた人物は―――他ならぬ穆順だったのだ。
穆順は既に絶命していた。
驚きを隠せない霊雎の前に、彼女を探して曹操がやって来る。
曹操は穆順の遺志を霊雎に伝える。
曹操の生き方を宦官として観察していた穆順。
此処で曹操を暗殺しても、戦乱の世に逆戻りするだけだと考えた。
それは霊雎や穆順と同じ境遇の子供を増やすだけだ。
そして、何より霊雎が安全に生きて行くには自身のもとよりも曹操のもとが良いと考えたのだ。
あのとき、曹操に拝礼した穆順は吉本の計画を全て打ち明けた。
それは曹操が予期していたものと寸分違わぬ内容。
さらに、穆順は曹操の身代わりとなることで吉本たちを罠にかけると申し出た。
その代わりに霊雎を助け守って欲しいと訴えたのだ。
実は曹操は霊雎の出自を知った上でこれを寵愛していた。
曹操は穆順の申し出を受け入れたのである。
穆順の真意を知らされた霊雎は錯乱した。
曹操は全てを知っていた。
そして、穆順はそんな曹操に自身を託した。
霊雎自身、曹操に安らぎを覚えたこともある。
だが、今は穆順が堪らなく愛おしかった。
「さぁ、共に行こう!!」
手を差し伸べる曹操。
しかし、霊雎は愛する穆順の亡骸を抱えたまま馬を駆った。
その先に広がるのは深い崖である。
「止めろ、止めてくれ!!」
普段に見られないほど感情を露にし絶叫する曹操。
だが、その悲鳴も虚しい。
霊雎は振り返ることも無く馬ごと穆順と共に崖下へと消えて行った。
愕然とした曹操は先の献帝のように膝から崩れ落ちた。
以降、誰も曹操の心を支えることは叶わなかった。
それから数ヶ月後、曹操は失意のうちにこの世を去った。
その陵墓からは名も知れぬ女性の遺体が1体だけ発見されている。
それが霊雎なのかどうかは判然としない―――エンド。
<感想>
管理人が大好きな『三國志』や『三国志演義』を原作とする映画です。
登場人物の1人が『正史』に基づく「吉本」表記(『演義』では吉太、あるいは吉平)なので『正史』ベースかとも思うが、その職業が主治医(『演義』での設定、『正史』にこの記述は無い)であること。
また、『演義』の登場人物である穆順の名が用いられていることから、今回の映画原作は『三国志演義』と言えそうか。
ちなみに、本作の出発点は曹操の陵墓が発見されたことだそう。
このニュースについては下記記事で取り上げていますね。
・「三國志」の英傑、曹操の陵墓が発見さる!!
そんな「曹操暗殺 三国志外伝」。
何と言ってもキャストが豪華。
曹操役にチョウ・ユンファさんを迎え、穆順役を演じているのは玉木宏さん。
加えて繰り広げられるのが男たちの1人の女性への愛と来れば観ざるを得まい。
視聴してまず思ったのは「男女の愛がテーマ」であること。
まず、曹操は霊雎の正体を知りつつ過去の貂蝉への想いからこれを愛した。
やがて、霊雎に愛を求めるようになる。
そして、穆順は一度は愛よりも使命を選び宦官になりながらも、最終的に愛を選び使命を放棄する。
結果、身を滅ぼして霊雎の為の道を作ろうとする。
2人の男性から愛を捧げられる霊雎。
だが、曹操に揺れ動きながらも彼女の心は穆順にあった。
彼の居ない世界に霊雎の居場所はない。
それ故に共に黄泉へと旅立つ。
この三者三様の愛が哀切で胸に来る。
さらに、献帝、伏皇后、曹否の間の関係も複雑である。
伏皇后の画策と不義密通を知りつつ、自身に利する為に放置していた献帝。
献帝に権力を奪還させるべく曹操暗殺を狙い曹否と密通する伏皇后。
伏皇后の狙いを知りつつ、献帝打倒と伏皇后奪取を胸に秘めこれを黙認する曹否。
こちらは先の曹操たちに比べると些か打算的ではありますが、また立派な男女の愛でしょう。
この2つの三竦みの比較も本作のポイントです。
そんな愛憎劇であると同時に本作は陰謀劇でもある。
権力を手にしながらも、狙われることに苦悩する曹操。
実権奪還を目指す献帝。
献帝の正当性を支持し、その意に従う吉本。
一方で、独自に曹操排除を画策する伏皇后や伏完一派。
それを利用し実権を得ようとする曹否。
その陰謀は深く激しい。
ところが、実際に行われた暗殺計画を頓挫させたのも「男女の愛」であった。
曹操は霊雎の狙いを知りつつ、これを愛するが故に放任する。
穆順は霊雎への愛ゆえに、計画を放棄する。
霊雎は計画を優先するも、穆順の彼女への愛ゆえに失敗する。
「理性的な計画」は「情的な愛」ゆえに脆くも崩れ去るのである。
観始めれば圧倒される本作。
興味をお持ちの方は是非、鑑賞するべし。
ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
本作を実際に視聴して、何処を改変したかを楽しむのもアリかも。
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