果たして気になる結果は?
◆「本格ミステリ・ベスト10 2015」(原書房、探偵小説研究会著 2013年12月2日発売)
注意:各タイトルのリンクは「ネタバレ書評(レビュー)」に繋がっています。
順位 | 国内 | 海外 |
---|---|---|
1 | さよなら神様 | 逃げる幻 |
2 | 満願 | 服用禁止 |
3 | 小さな異邦人 | ミンコット荘に死す |
4 | 異次元の館の殺人 | 女郎蜘蛛 |
5 | 黒龍荘の惨劇 | 逆さの骨 |
6 | ○○○○○○○○殺人事件 | 養鶏場の殺人 火口箱、窓辺の老人 |
7 | 密室の神話 | なし |
8 | 風ヶ丘五十円玉祭りの謎 | 秘密 |
9 | 殺意の構図 | 被告人、ウィザーズ&マローン |
10 | 松谷警部と三鷹の石 | その女アレックス |
国内編1位は前年の『貴族探偵対女探偵』に続き麻耶雄嵩先生『さよなら神様』(文藝春秋社刊)に。
麻耶先生、おめでとうございます!!
やはり、麻耶先生は強かった―――「神様シリーズ」の最新作が堂々1位です!!
これにより2年連続で1位の栄冠に輝きました。
・『さよなら神様』(麻耶雄嵩著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
『さよなら神様』は『早ミス』2位、『文春』3位、そして『本ミス』で1位に。
残る『このミス』ではどうなるか!?
そんな麻耶先生は『本ミス』の常連。
2010年にも『隻眼の少女』が1位(同年『貴族探偵』が6位)。
2011年にも『メルカトルかく語りき』にて2位にランクイン。
本格ファンにとって麻耶雄嵩先生は外せない存在となっています。
ちなみに、麻耶先生は他にも精力的に作品を発表されています。
木更津シリーズ最新作『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』も8話までが連載(2014年12月初旬現在)。
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第8話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2014年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
おじさんシリーズも短編が5作まで既にストック済。
2015年春に単行本発売が控えているとか……。
・『あかずの扉』(麻耶雄嵩著、新潮社刊『小説新潮』2014年2月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
これらが書籍化されるであろう2015年もランキングトップ争いに参加するのは確定か。
そう言えば、メルカトルシリーズの『メルカトル鮎 悪人狩り』も続きが発表されるか!?
・『メルカトル鮎 悪人狩り「第1話 囁くもの(メフィスト2011 vol.3掲載)」』(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
2位には米澤穂信先生『満願』(新潮社刊)。
「ノンシリーズ」の短編集が2位にランクイン。
『早ミス』1位、『文春』1位も『本ミス』での3冠は逃しました。
これは『このミス』での『さよなら神様』との1位争いが楽しみになって来ました。
・『満願』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
米澤先生による「ノンシリーズ」の短編と言えば『ほたるいかの思い出』が『小説新潮』に掲載されました。
数年後には『満願』同様に単行本化が期待出来そうですね。
・『ほたるいかの思い出』(米澤穂信著、新潮社刊『小説新潮 2014年7月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
そして、3位は連城三紀彦先生『小さな異邦人』(文藝春秋社刊)。
『早ミス』3位『文春』4位。
連城先生は2013年に亡くなっており、その最後の作品が2014年に刊行されています。
その一作が本作。
なお、連城先生は同じ2014年に「第18回日本ミステリー文学大賞 特別賞」を受賞されています。
・「第18回日本ミステリー文学大賞、同特別賞、新人賞」発表。栄冠は船戸与一先生、連城三紀彦先生、直原冬明先生に!!
4位には芦辺拓先生『異次元の館の殺人』(光文社刊)。
『早ミス』5位。
「シュレディンガーの猫」をモチーフにした「特殊設定パズラーもの」。
森江春策シリーズ2014年時点での最新作です。
やはりランキングに上がって来ました!!
・『異次元の館の殺人』(芦辺拓著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
5位には同じ光文社から岡田秀文先生『黒龍荘の惨劇』(光文社刊)。
『早ミス』10位であり、ネット上で評判の作品。
明治の元勲たちの名前がどんどん出て来ます。
6位には早坂吝先生『○○○○○○○○殺人事件』(講談社刊)。
『早ミス』7位で「第50回メフィスト賞」受賞作。
タイトルからして分かるようにかなりの問題作ですが、ネット上では頗る評判が良いです。
ちなみに、あなたは○で伏せられたタイトルが分かりますか?
7位には柄刀一先生『密室の神話』(文藝春秋社刊)。
柄刀一先生、『翼のある依頼人』以来3年ぶりの作品。
8位には青崎有吾先生『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』(東京創元社刊)がランクイン。
第22回鮎川哲也賞受賞作『体育館の殺人』から始まる「裏染シリーズ」第3弾にして短編集。
『五十円玉二十枚の謎』を髣髴とさせる表題作の他にスピンオフ短編『針宮理恵子のサードインパクト』などが収録。
・青崎有吾先生、裏染シリーズ短編集『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』が刊行!!裏染版『五十円玉二十枚の謎』になるか!?
・『体育館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『水族館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『針宮理恵子のサードインパクト』(青崎有吾著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.60』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
9位には深木章子先生『殺意の構図』(光文社刊)。
第3回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を『鬼畜の家』にてデビューした著者の作品。
深木章子先生は第13回、第14回と「本格ミステリ大賞」に連続でノミネートされるほどの実力派。
第15回は『殺意の構図』で受賞なるか!?
・第14回本格ミステリ大賞(小説部門、評論・研究部門)発表!!栄冠はどの作品!?
・第3回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」受賞作決まる!!
10位には平石貴樹先生『松谷警部と三鷹の石』(東京創元社刊)。
名作『だれもがポオを愛していた』で知られる著者による新シリーズ「松谷警部シリーズ」第2弾。
・『だれもがポオを愛していた』で知られる平石貴樹先生の最新作が2013年9月に東京創元社より登場!!『松谷警部と目黒の雨』に注目せよ!!
前作『松谷警部と目黒の雨』(東京創元社刊)は「2014 本格ミステリ・ベスト10」では11位。
1つランクを上げて来たことになりますね。
・【2013速報】「2014 本格ミステリ・ベスト10」発表!!
では、国内10位以降の注目作について。
12位には天祢涼先生『都知事探偵・漆原翔太郎』(講談社刊)。
前作『セシューズ・ハイ』の続編です。
天祢涼先生と言えば、音宮美夜シリーズの新作も読みたいぞ!!
・「国会議員・漆原翔太郎」(天祢涼著、講談社メフィスト2011 vol.2掲載)ネタバレ書評(レビュー)
17位には下村敦史先生『闇に香る嘘』(講談社刊)。
第60回江戸川乱歩賞受賞作(受賞時タイトルは『無縁の常闇に嘘は香る』)です。
『文春』では2位でした。
・第60回江戸川乱歩賞決定!!下村敦史先生『無縁の常闇に嘘は香る』に!!
18位には深水黎一郎先生『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』(光文社刊)。
光文社刊『ジャーロ』誌上にて連載されていた同シリーズによる短編集。
ミステリのお約束をパロディ化し、それを逆手に取った大胆なトリックが特徴の作品。
・『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』(深水黎一郎著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
ちなみに本誌に掲載された作者近況から耳寄りな情報を挙げて行くと……。
まず、天祢涼先生が『キョウカンカク』の前日譚ことエピソード0を2015年に発売予定と表明。
・天祢涼先生、『キョウカンカク』の前日譚を執筆中とのこと!!
次いで、倉知淳先生が長編作品を執筆中とのこと。
・『シュークリーム・パニック Wクリーム』(倉知淳著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
そして、その著作『ささらさや』が映画化された加納朋子先生は『七人の敵がいる』続編の構想を発表。
・『七人の敵がいる』(加納朋子著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
法月綸太郎先生も以前に発表された「読者への挑戦」により成立する短編『挑戦者たち』を長編化する旨を記されています。
・『挑戦者たち』(法月綸太郎著、新潮社刊『小説新潮 2014年5月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
2015年もミステリ界は安泰のようです。
では、此処で「本格ミステリ・ベスト10」時点での国内総評。
比較的『このミステリが読みたい!(早ミス)』と10位以内の内容は似通っていますね。
それだけ今年は本格ミステリが強かったと呼べそうか。
あるいは『本ミス』がその他のミステリランキングに近付いているのか……。
とりあえず今後の注目は次の2点。
1.残る1冠(『このミス』)を巡り『満願』(『早ミス』『文春』制覇)と『さよなら神様』(『本ミス』制覇)のいずれが勝つか?
あるいは第3の作品が登場するのか!?
2.この時点での10位以内皆勤作品が『このミス』でも10位以内になるか?
現時点での対象作品はわずかに3作品。
『満願』(『早ミス』1位『文春』1位『本ミス』2位)
『さよなら神様』(『早ミス』2位『文春』3位『本ミス』1位)
『小さな異邦人』(『早ミス』3位『文春』4位『本ミス』3位)
奇しくもベスト3に該当する作品が対象となっています。
そして驚くべきことに『本ミス』の縛りを外しても対象となる作品は上記3作のみとの状況。
『早ミス』と『文春』とで上記3作以外が割れたことが理由のようです。
では、海外。
1位には『逃げる幻』(『IN★POCKET』5位『早ミス』6位『文春』7位)がランクイン。
遂に戴冠を果たしました。
反面、此の時点での4冠が期待された『その女アレックス』(『IN★POCKET』1位『早ミス』1位『文春』1位)は10位に留まることに。
そして、此処から本ランキングの条件である「本格しばり」の影響が出ます。
しか〜〜〜し、これこそが『本ミス』の味です。
2位には『服用禁止』。
『毒入りチョコレート事件』でも有名なアントニー・バークリー(アントニイ・バークリー)の作品。
以降、3位、4位、5位とランキング初出の作品が並びます。
どうも海外では本格系以外の作品が多く、その絶対数の差から本格系作品が「本ミス」以外では10位以内に入りづらくなっているような印象を受けますね。
一転、国内では本格系作品が他ランキングでも上位を占めることもあり、なかなかに面白い現象と言えそうです。
では、海外編の注目点を2つ。
1.残る1冠を巡り『その女アレックス』(『IN★POCKET』1位『早ミス』1位『文春』1位『本ミス』10位)が勝つか、それとも『逃げる幻』(『IN★POCKET』5位『早ミス』6位『文春』7位『本ミス』1位)が勝つか?
あるいは第3の作品が登場するのか?
複数のタイトルホルダーに『本ミス』1位が挑むとの形で、このあたりは国内編と同様の状況ですね。
2.この時点での10位以内皆勤作品が『このミス』でも10位以内になるか?
現時点での対象作品はわずかに2作品。
『その女アレックス』(『IN★POCKET』1位『早ミス』1位『文春』1位『本ミス』10位)
『逃げる幻』(『IN★POCKET』5位『早ミス』6位『文春』7位『本ミス』1位)
これまた国内編と同じくベスト2作品のみの争いに。
こちらでは『本ミス』の縛りを外せば『もう年はとれない』(『IN★POCKET』4位『早ミス』5位『文春』5位)も該当作品になりますね。
大体、こんな感じでしょうか。
他ランキングに比べ独自色が強く見られた『本格ミステリ・ベスト10』。
管理人とっては「本格ミステリ」とは次の2条件を満たすかどうか。
・作中にロジックを用いているか?
・そこにサプライズはあるか?
どちらか一方でも構いません。
勿論、両方兼ね備えていればより本格純度の高いミステリと考えます。
その意味で、今回のランキングに入った作品はいずれかの条件を満たしており、さらに上位作品に関しては両方をクリア。
満足いくランキングとなりました。
◆【2014速報】現在までのランキング
・【2014速報】「週刊文春ミステリーベスト10 2014」発表!!
・【2014速報】『ミステリが読みたい!2015年版』発表!!
・【2014速報】「IN★POCKET 文庫翻訳ミステリー・ベスト10 2014」発表!!
◆関連外部リンク(外部サイトに繋がります)
・探偵小説研究会HP
http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/
◆関連過去記事
・2014年(2013年発売)ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・2013年(2012年発売)ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・2012年(2011年発売)ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・2011年ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・2010年ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・【2013速報】「2014 本格ミステリ・ベスト10」発表!!
・【2012速報】「2013 本格ミステリ・ベスト10」発表!!
・【2011速報】「2012 本格ミステリ・ベスト10」発表!!
・【速報】「2011 本格ミステリ・ベスト10」発表!!
上記、ランキング中で気になる本がある方はこちら。
ラベル:本格ミステリ・ベスト10
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