2014年12月16日

『ダイヤモンドダスト』(安生正著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『ダイヤモンドダスト』(安生正著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

最強の『このミス』大賞作家、書き下ろし4編!豪華作家陣で贈る、ミステリー・アンソロジー。

TBS系にて豪華ドラマ化!『このミステリーがすごい!ベストセラー作家からの挑戦状』

2014年12月29日(月)よる9時〜案内人:又吉 直樹(ピース)×樹木 希林
歴代大賞作家4名×映画監督の豪華コラボレーション!
(宝島社公式HPより)


<感想>

『生存者ゼロ』にて「第11回このミステリーがすごい!」大賞を受賞された安生正先生の短編。
12月29日にはTBS系にてドラマ放送が決定されている。

『生存者ゼロ』(安生正著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

明神はただ自身が生き残る為だけにあの行動を取った。
たまたま集団の方が生き残り易かっただけだ。
それが結果として賞賛されたに過ぎない。
其処には奥脇と何らの差は無かった。
それだけに明神の苦悩は深いのだろう。
短い中にも見事に心の動きを描き切った作品だと思う。

ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いように改変しています。
興味をお持ちの方は本作をお読みになることをオススメします。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
明神:営業マン。
奥脇:明神の同期、係長。


明神と奥脇は同期入社の営業マン。
だが、世渡りの上手い奥脇は明神よりも一足先に係長となった。

明神自体はそんな奥脇とは対照的に世渡り下手。
上司からも疎まれていた。

ある日、残業で遅くなった2人が新宿駅から帰宅しようとすると猛烈な寒波が押し寄せて来た。
それはたちまちのうちに猛吹雪となり、遂には周辺を呑み込んでしまった。
停電となり、通信もほぼ断たれている。
もちろん、電車は動かない。

駅構内ではこの緊急事態に怯える人々が集まっていた。
この輪に明神と奥脇も居たのだ。
ところが、外から列を為して避難民たちが押し寄せて来た。

既に構内はいっぱいである。
それでも押し寄せる人々、それは途絶えることは無い。

その内に険悪なムードとなった。

構内の人々は未だ増え続ける外の人々に向けて罵詈雑言を浴びせた。
これに、外の人々は構内に向けて投石することで返事とした。
もはや、一触即発の状況である。

奥脇はこのままでは危険だと主張し、明神に会社に戻ろうと誘う。
確かに、会社まではほど近い。
戻ることが出来れば現状よりは心強いだろう。

明神は奥脇に誘われるまま、構外へと躍り出た。
入替りに数人が嬉しそうに中へと入って行ったことが明神の心に残った。

会社へと来た道を戻り始めた明神たち。
すると、その後ろを一団が付いて来るではないか!!

どうやら、構内に入れなかった人々が外へと出た明神たちを見かけ、何かあると付いて来たらしい。
彼らは同行を願い出た。

これに明神は反対した。
人数が多くなれば動きが鈍る。
危険が増すとの判断だ。

ところが、これを奥脇は許した。
こうして、一団は会社へと進み始めた。

少しして明神の危惧は的中した。
集団行動故になかなか進めないのだ。
そのうちに雪は深くなり、進行方向も定かでは無くなった。

気付けば都会のど真ん中で遭難していたのである。
しかも、奥脇と明神以外の人々が動くのも厳しい状態に陥ってしまう。

そんな中、奥脇が錯乱した。
奥脇は「お前らは死ね、俺は生き残るんだ!!」と叫ぶや、明神たちを置いて先に進んでしまった。

置いて行かれた人々は明神に縋るような目を向ける。
とはいえ、明神自身にも打開策があるワケではない。
気持ちは奥脇と同じであった。
だが、先程までと違い方角も判然としない状況下での単独行動は逆に危険だと判断していた。

明神はイチかバチか地理に詳しいものに情報を聞くと、飲食店がある筈の方角へと向かった。
其処には……あった。
確かに飲食店だ。

明神は一団に指示を出すと、飲食店のごみ箱からゴミ袋を回収させた。
それを身体に巻き付けると、全員で寄り添うように集まった。
そして、暖を取り寒さをしのぐことを選択したのだ。

これで本当に正しかったのだろうか……悩む明神は暫くして眠りに落ちた。

数時間後、明神たちが助け出された。
その一方で、数ブロック先から奥脇が遺体で発見された。

メディアは2人の生死を分けたものについて分析した。
それは遭難した際に動き回らず一箇所に留まったことに尽きると評価された。
すなわち、明神の機転である。

世の中はヒーローの誕生と明神を囃し立てた。
あの明神を疎んでいた上司でさえも彼を称賛する。
一方で、奥脇の行動を激しく批判した。

「そんなんじゃないんだ、そんなんじゃ」
明神は何度も繰り返す。

明神はただ生き残る為だけにあの行動を取った。
それが結果として賞賛されたに過ぎない。
其処には奥脇と何らの差は無かったのである―――エンド。

2014年12月30日追記:

2014年12月29日にドラマ版が放送されました。
ネタバレ批評(レビュー)はこちら。

「このミステリーがすごい!〜ベストセラー作家からの挑戦状〜 天才小説家×一流映画監督がコラボした、一夜限りの豪華オムニバスドラマ!味わいの異なる4つの謎=各25分の濃密ミステリー!又吉×希林の他では見られないコントも!」(12月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)


追記終わり


◆関連過去記事
『カシオペアのエンドロール』(海堂尊著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

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◆関連過去記事
『生存者ゼロ』(安生正著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『ゼロの迎撃』(安生正著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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