2014年12月18日

『黒いパンテル』(乾緑郎著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)

『黒いパンテル』(乾緑郎著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

最強の『このミス』大賞作家、書き下ろし4編!豪華作家陣で贈る、ミステリー・アンソロジー。

TBS系にて豪華ドラマ化!『このミステリーがすごい!ベストセラー作家からの挑戦状』

2014年12月29日(月)よる9時〜 案内人:又吉 直樹(ピース)×樹木 希林
歴代大賞作家4名×映画監督の豪華コラボレーション!
(宝島社公式HPより)


<感想>

第9回「このミステリーがすごい!」大賞『完全なる首長竜の日』の作者・乾緑郎先生による短編。
12月29日にTBS系にてドラマ放送が決定されている。

『完全なる首長竜の日』(乾緑郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

読んでみたところ、『完全なる首長竜の日』もそうだったんだけど、やっぱり管理人には合わない印象。
悪くはないと思うんだけどなぁ……どうにも合わない。

おそらく、須藤は今回の出来事によりトラウマを乗り越えたことになるのだろう。
此の点で「ゼブラーマン」にモチーフが近い。
管理人も「ゼブラーマン」は好きなのだが、本作についてはこのモチーフを処理し切れていない印象。

作中の各描写が浅く感じたのがその原因。
基本、あらすじっぽい作品になっている。
それなのに、内容的には情を介する作品で読者の感情移入が求められるのが辛い。

もしかして、映像化を念頭に置いてのことなのだろうか。
確かに映像化されるのならば描写不足は補えそうだし期待出来そうではあるが。
描写不足が解消されれば「化ける」作品ではあると思う。

それとモチーフは寧ろ好ましいくらいなのに、何故、あれで終わってしまうのか。
あれで引っ張るなら、二ノ宮自身にそれらしいことを口にさせる必要があると思うのだが。
少なくとも、それなりのまとめは必要だと思う。
仮に余韻を重視するならするで、もっと描写を増やすべき。

それと、作中だと「取り壊し間際の廃工場が見せた夢」になってるけど、どう考えても「小惑星が見せた夢」だと思うんだよなぁ……。

どうにもこの辺りが気にかかったのでネタバレあらすじでは相当改変を加えています。
本作に興味のある方は本作それ自体をチェックすべし!!

ただ、シナリオとしては不満があるが、映像化により化ける可能性は非常に高い作品のように思う。
映像化には期待したい。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
須藤:元役者で現在は建設会社勤務。
栄子:須藤の妻。
千明:須藤の娘、戸倉と交際中。
戸倉:千明の恋人。
二ノ宮:須藤の役者時代の先輩。


須藤は元役者で現在は建設会社に勤務する中年男性。
30年来の妻・栄子や娘・千明と共に慎ましく生活している。

だが、須藤には2つだけ悩みがあった。

1つは千明の恋人・戸倉のこと。
須藤は2人の交際を認めていなかったのである。

そして、もう1つが須藤が抱えるあるトラウマ。
栄子はトラウマに苦しむ夫をそっと支え続けていた。

その頃、小惑星の接近が取り沙汰されていた。
地球直撃コースを取るとされたソレに人々は怖れ慄いていた。

そんな須藤の目の前に二ノ宮が現れた。
須藤は大いに狼狽する。

二ノ宮は須藤の役者時代の先輩であった。
だが、ある撮影中に事故死を遂げていたのだ。

事の発端は30年前に遡る。

須藤は特撮ヒーローの主役であった。
須藤が演ずるヒーローの名は「ブラック・パンテル」。

後の妻となる栄子ともこの番組で出会った。
当時、栄子はアイドルであり出演していたのだ。

そして、ブラック・パンテルの敵役「ドラクル」として配されたのが須藤の先輩にして天才俳優と称された二ノ宮。
当時の二ノ宮は誰からも憧れられる存在で、栄子も彼に恋心を抱いていた。
栄子に想いを寄せていた須藤も一時は諦めていたのである。

ところが、そんなある日に事件が起こった。
廃工場での撮影中に火が出たのだ。
これが仕掛けていた火薬に引火、たちまち廃工場内は火に包まれた。

そのとき、須藤は廃工場内に居た。
そして、二ノ宮と栄子も中に居たのである。

脱出しようとする須藤の前で、二ノ宮と栄子がそれぞれ助けを求めた。
須藤は栄子を選び助け出したが、これにより二ノ宮を助け出せなかったのである。
その後、須藤は傷心の栄子と結婚したのだ。

あのとき、須藤の心のどこかに栄子を欲する気持ちが無かったとは言い切れない。
もしかして無意識に二ノ宮を見捨てたのではないか……須藤はそんな想いを抱えていたのだ。

須藤は30年もの間、この想いに苛まれて来た。
其処に来て二ノ宮の登場である。
須藤が驚くのも無理のない事であった。
ところが、二ノ宮は特に何かを告げるでもなく消えてしまう。

それから数日後、いよいよ小惑星の直撃が噂され始めた。
人々が混乱を来たし始めた。

そのとき、千明が消えた。
戸倉によれば何者かに誘拐されたらしい。
そして、須藤のもとに届いた二ノ宮からの挑戦状。
須藤は30年ぶりに「ブラック・パンテル」として廃工場に挑む。
その傍には戸倉の姿もあった。

廃工場に現れたのは当時のままの二ノ宮……すなわち「ドラクル」と部下の戦闘員たち。
須藤は「ブラック・パンテル」として彼らとの戦いに挑む。

30年のブランクをモノともせず、戦闘員たちを蹴散らす須藤。
残るは「ドラクル」だけだ。

だが、ドラクルは強かった。
あっという間に劣勢に追いやられる須藤。
そんな須藤にドラクルは「俺を倒さなければ小惑星が衝突するぞ」と明かす。

そんなことになれば千明は……栄子は……。
家族を助けるべく須藤は再び立ち上がるや、必殺の一撃をドラクルに叩き込む。

ふと須藤が気付いた時、ドラクル……いや二ノ宮の姿は消えていた。
其処にはただ廃工場だけが残されていたのだ。

小惑星は直撃コースを逸れ、地球は救われた。

後に聞いたところ、この廃工場は取り壊しが迫っていたのだそうである。
もしかして、廃工場が見せた幻だったのだろうか……。
だが、須藤の身体には確かに傷跡が残されていたのであった―――エンド。

2014年12月30日追記:

2014年12月29日にドラマ版が放送されました。
ネタバレ批評(レビュー)はこちら。

「このミステリーがすごい!〜ベストセラー作家からの挑戦状〜 天才小説家×一流映画監督がコラボした、一夜限りの豪華オムニバスドラマ!味わいの異なる4つの謎=各25分の濃密ミステリー!又吉×希林の他では見られないコントも!」(12月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)


追記終わり


◆関連過去記事
『カシオペアのエンドロール』(海堂尊著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『ダイヤモンドダスト』(安生正著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『残されたセンリツ』(中山七里著、宝島社刊『このミステリーがすごい! 四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

◆関連過去記事
『完全なる首長竜の日』(乾緑郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

乾緑郎先生『完全なる首長竜の日』(宝島社刊)が映画化!!タイトルは『リアル〜完全なる首長竜の日〜』とのこと!!

『黒いパンテル』が収録された「【テレビドラマ化】このミステリーがすごい! 四つの謎」です!!
【テレビドラマ化】このミステリーがすごい! 四つの謎





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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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