2015年01月01日

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第5話「恐喝王2」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第5話「恐喝王2」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第5話登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。

志田りか:聖マルス学園の生徒。2話から登場。
塞田康平:蛍のクラスの担任教師。割とミーハーらしい。
見場創太:3話ラストに登場した怪しい男。学園の生徒であった。
緑川楓:蛍のクラスメート。
校長:聖マルス学園の校長。
教頭:聖マルス学園の教頭。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

・前回までのあらすじはこちら。
「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」第4話「恐喝王」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

高校生になった赤木蛍は行方不明となっていた兄・圭一と思わぬ形で再会を果たすことに。
なんと、圭一が幽霊として蛍のもとに戻って来たのだ。
しかも、圭一は悪意が関わる事件を察知し悪意を消滅させる能力を手に入れていた。
だが、圭一は現世に介入することが出来ない。
これでは折角の力も無意味である。
其処で圭一から協力を求められた蛍は、兄妹で力を合わせ1人でも多くの人を助けるべく動き出すことに。

ところが、その矢先に見場創太により蛍があらぬ罪に落とされてしまう。

なんと、見場は蛍に苛められたと教師にそれとなく訴え出たのだ。
これに校長が動き、蛍に退学処分が下されそうになっていたのである。
まずは自宅謹慎の処分を下された蛍は事態に愕然とする。

蛍に親しそうに近付いていた見場。
だが、その正体は自身のハンデを武器に大人の同情を買い同年代の生徒を支配する怪物だったのだ。

見場は身体が病弱であった。
これに聖マルス学園の教頭が注目した。
教頭は知り合いのテレビ局に「苦難にも負けない生徒」として見場を紹介した。
見場はテレビに取り上げられ多くの同情を集めた。
それは彼にとって初めての経験であり、大きな力となった。

これに見場は味を占めた。
同時にどうすれば同情を集めることが出来るかを学んだのだ。

こうして自身のハンデや弱点を逆手に取り、大人の同情を武器に周辺生徒を支配したのである。
見場は気に喰わない生徒が居れば、わざと近付き距離を縮めておきながら、周囲の誤解を招き易いような下地を作る。
そして、相手が自分に従わないと見るや、ありもしないイジメの事実を以て追い出しにかかるのだ。
今回は蛍がそのターゲットとなったのである。

担任教師の塞田によれば、聖マルス学園内では校長派と教頭派が対立しており、見場を支持しているのはその経緯から教頭派らしい。
それだけに、いくら塞田が蛍を庇おうとも処分は免れないようであった。

知らぬ間に圧倒的な窮地に追いやられていることを知った蛍。
謹慎前に少しでも情報を集めるべく志田りかに協力を依頼する。

すると、見場の悪行が次々と明らかになった。
やはり、見場は歯向かう者を次々と支配するか追放する暴君なのだ。
しかも、見場は男子生徒には服従を。女子生徒には性的関係まで強要していたそうなのだ。
あまりの悪逆非道ぶりに蛍は頭を抱える。

そんな蛍の様子を心配した圭一は見場の周辺を調べ始める。
其処には噂を否定して欲しいとの一縷の望みが託されていたが……。

見場は噂通りの人物であった。
蛍に対しよからぬ妄想を膨らませたかと思うと、早くも興奮を抑え切れない様子で浮かれていたのだ。
さらに、見場はあちこちに隠しカメラを仕掛けていた。
どうやら、蛍と圭一が感じた視線はこれだったようだ。
見場はカメラの映像を証拠として用意していたのである。

これを目撃した圭一は見場への怒りに身を震わせる。
だが、今の圭一に生者へ関与は出来ない。

切羽詰まった圭一は蛍にすべてを告げ、自主的に退学するよう奨める。
それほど見場は危険な人物だったのだ。

見場の全貌を把握した蛍。
見場が自身のハンデを利用するなら……と蛍は「女の武器」を用いると宣言。
内密に塞田とりかに連絡を取る。

翌日、見場を呼び出した蛍は彼に従うことを伝える。
これに見場は先の妄想の実現を確信。
欲望に顔を歪ませながら、蛍を連れ歩くのであった。

一方、蛍は急造チームによる逆転の秘策を実行に移す―――次話に続く。

いよいよ始まった蛍と圭一の奇妙な相棒物語。
ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように展開などをかなり改変してます。
気になる詳細は「週刊少年チャンピオン」本誌で確認せよ!!

<感想>

「名探偵マーニー」から3ヶ月……我らが木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」に還って来た!!
というワケで、その新作「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」です。

さて、その5話。
サブタイトルからもお分かりの通り、今回は「恐喝王」。
すなわち「シャーロック・ホームズ」でもお馴染み「恐喝王 ミルヴァートン」がテーマ。

そして5話により、この「恐喝王」が「ミルヴァートン」をもじった見場であることも明かされました。
併せて4話に登場した「目の怪物」は「見場が校内に仕掛けた隠しカメラ」を指していたものか。

此処までは「隠しカメラ」の件を除いてほぼ4話の予想通り。

これに対し、蛍は「女の武器」を用いて対抗する様子。
とはいえ、見場に屈服するのではなく彼の手法を真似るつもりなのではないでしょうか。
おそらく見場は勝利を確信し欲望を満たそうとする筈で、蛍はギリギリまでこれに耐え、その様子を塞田とりかに録画させることで見場の悪事の証拠とするのでしょう。

同時に、見場が校内に仕掛けた隠しカメラも、存在が秘匿出来ている間は見場に有利に働くが、その存在が露見すれば逆に彼の悪事を証明するこれ以上ないほどの証拠。
これを以てトドメを刺すものと思われます。
なにしろ、盗撮していたことが証明されるのですから。

このように、蛍は相手の手法を逆手に取るやり方でピンチをチャンスに変えようとしているのではないでしょうか。
それはまさに見場が自身の弱点を武器に変えたのと同じ。

ある意味、「恐喝王」のテーマはこの「発想の逆転」にこそあるのかもしれません。

一方、今回もなかなかに重要そうなキーワードが登場。
それが「校長派」と「教頭派」の対立。
マーニーでの4大派閥と同じような軸になるのかも。

少しずつ物語が加速している印象です。
次回も見逃すなかれ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」関連過去記事
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◆関連過去記事
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これまでの登場人物一覧:
赤木蛍:主人公。今年の春から「聖マルス学園」に特待生として進学した。
圭一:蛍の兄。正義感の強い警官だったが失踪。幽霊となって戻って来た。

【聖マルス学園関係者】
志田りか:聖マルス学園の生徒。2話から登場。
塞田康平:蛍のクラスの担任教師。割とミーハーらしい。
見場創太:3話ラストに登場した怪しい男。学園の生徒であった。
緑川楓:蛍のクラスメート。
校長:聖マルス学園の校長。
教頭:聖マルス学園の教頭。

【その他】
志田高志:りかの兄。りかにストーカーしているとのことだが……。

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posted by 俺 at 12:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ストレートに見場が恐喝者でしたか

マーニーの時のようなひとひねり加えた展開を予想して前回の話でコメントさせていただきましたが、残念
性別はある意味病弱や被害者以上に弱い立場となり得るだけに、ここから先の展開がストレートに行きそうだけど、木々津先生らしいひとひねりを期待したいですね
Posted by アキシン at 2015年01月04日 11:14
Re:アキシンさん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

これまでのところ、本作は割と王道的な展開が多いですね。
もしかすると、スタートしたばかりなのでキャラの定着や設定説明などの必要もあっての王道展開なのかもしれません。

ちなみに前回コメント頂いた展開とは異なっていましたが、個人的には今回の展開もかなりサプライズでした。
見場の恐喝法がてっきり「相手の弱味を探り脅す手法」かと思いきや、逆に「自身の弱点を逆手に取り、相手を罠に嵌める手法」であったこと。
此の点は非常に斬新な印象です。

またこれを利用した蛍の「相手の手法を逆手に取るやり方」も意外でした。
この2つの「逆転の発想」こそが今回のテーマなのかもしれません。

やはり、変化球は多くの直球の中で放たれてこそ光るもの。
王道展開だからこそ、サプライズもより光輝く。
それを感じた回でした。

次回にも期待です!!
Posted by 俺 at 2015年01月07日 22:03
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