2014年12月31日

『ある音楽評論家の、註釈の多い死(※1)』(深水黎一郎著、光文社刊『宝石 ザ ミステリー 2014冬』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『ある音楽評論家の、註釈の多い死(※1)』(深水黎一郎著、光文社刊『宝石 ザ ミステリー 2014冬』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、未読の方は注意!!

<あらすじ>

名手の読み切り短編をたっぷりと!年末恒例のミステリー別冊が今年も登場。
ベストセラー作家たちによる短編の競演。年末年始を彩る一冊に!

今野敏 湊かなえ 笹本稜平 東川篤哉 若竹七海 小杉健治 長岡弘樹 深水黎一郎 田中啓文 深町秋生 大山誠一郎 長沢樹 曽根圭介 
(光文社公式HPより)


<感想>

『ある音楽評論家の、註釈の多い死(※1)』は「大癋見(おおべしみ)警部の事件簿シリーズ」2014年12月時点での最新短編。

『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』(深水黎一郎著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

シリーズにとってはエポックメイキングな出来事が描かれた作品で、なんと大癋見(おおべしみ)警部が仕事をします。
……って、本来はこれが普通なんだよなぁ。

そして、本作はその特異な構成自体が大掛かりな仕掛けに繋がっています。
あの途中から出張って来る註釈の為に本編が非常に読みにくくなるのだが、それすらも仕掛けの存在を指し示していたとは……。
何しろ、リアルタイムなんだから仕方がない。

また、本作全体に『ジークフリートの剣』(講談社刊)などで挙げられた深水先生の深い音楽への造詣が窺える作品でもある。

同時に、作中では音楽評論で用いられる言葉とその本音が描かれており、此の用例の豊富さに法月綸太郎先生『挑戦者たち』を思い起こさせた。

『挑戦者たち』(法月綸太郎著、新潮社刊『小説新潮 2014年5月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

などなど、見どころも多く読んで損は無い作品だろう。

ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いようにかなり改変しています。
本作をきちんと読まれた方が楽しめる筈。
あくまでノリをご確認頂ければと思います。

<ネタバレあらすじ>

著名な音楽評論家の松浦が殺害された。
早速、捜査に乗り出した大癋見(おおべしみ)警部たちだが、案の定、大癋見警部はまともに仕事をしない。
松浦のPCに残された音楽評論家としては表に出せないファイルを嬉々として覗き込んでいる。

一方、そんな大癋見警部たちの行動に註釈を加える者が居た。
元音楽評論家を名乗る増渕である。
増渕はその観点から様々な楽屋裏話や衝撃の真実を註釈との形で明らかにして行く。

そんな中、大癋見警部そっちのけで捜査が進み、遂に容疑者が浮かび上がった。
容疑者の名は……増渕である。

なんと、増渕は自称音楽評論家。
少しばかりネジが飛んでおり、評論家として認めるよう本職の松浦を脅迫していたらしい。
これを拒否した為に松浦が殺害されたのであろう。

それにしても……増渕は何処から捜査状況に註釈を付けていたのか?
これまた驚くべきことに、増渕は犯行現場を監視カメラで盗撮していた。
その映像を自宅で眺めつつ、註釈を付していたのである。

増渕の自宅を急襲した大癋見警部たち。
其処にある註釈を目にした彼らは自身の行動が筒抜けであったことを知る。
さらに、当の増渕が「NASAにスカウトされたので」と国外逃亡を予期させるような台詞を口にしていたことが判明。

早速、大癋見警部らは身柄を抑えるべく空港へ向かう。
しかし、人が多過ぎて増渕発見は容易ではない。

このとき、大癋見警部が意外な行動を取った。
なんと、港内放送で増渕の自尊心を満足させる呼び出しを行ったのだ。

そもそも、自ら評論家を名乗るだけあって増渕の自尊心は驚くほど強い。
あっさりと呼び出しに応じることに。

しかし、カウンターに立っていた大癋見警部の姿に罠を悟った増渕は身を翻して逃走する。
今度こそ、もう駄目か……と思いきや、大癋見警部は大声で叫ぶ。

「おおお〜〜〜い、お前の註釈最高だったよ。他の物にも註釈を付けてみないか?だから、此処は大人しく捕まってくれよ」

あくまで自分本位、興味本位から発せられたこの言葉。
だが、この大癋見警部の言葉が増渕の琴線を揺さぶった。
増渕は註釈家冥利に尽きるとばかりに、求めに応じてあっさりと投降するのであった―――エンド。

◆関連過去記事
【大癋見警部の事件簿シリーズ】
『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』(深水黎一郎著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『現場の見取り図 大癋見警部の事件簿(ザ・ベストミステリーズ2012収録)』(深水黎一郎著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『大癋見警部の事件簿(番外編)』(深水黎一郎著、光文社刊『宝石 ザ ミステリー2』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『大癋見警部の事件簿 青森キリストの墓殺人事件』(深水黎一郎著、光文社刊『ジャーロ』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

【その他】
『人間の尊厳と八〇〇メートル(ザ・ベストミステリーズ2011収録)』(深水黎一郎著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『完全犯罪あるいは善人の見えない牙』(深水黎一郎著、東京創元社刊『人間の尊厳と八〇〇メートル』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『特別警戒態勢』(深水黎一郎著、東京創元社刊『人間の尊厳と八〇〇メートル』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『蜜月旅行 LUNE DE MIEL』(深水黎一郎著、東京創元社刊『人間の尊厳と八〇〇メートル』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『五声のリチェルカーレ』(深水黎一郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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