2014年12月30日

「このミステリーがすごい!〜ベストセラー作家からの挑戦状〜 天才小説家×一流映画監督がコラボした、一夜限りの豪華オムニバスドラマ!味わいの異なる4つの謎=各25分の濃密ミステリー!又吉×希林の他では見られないコントも!」(12月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「このミステリーがすごい!〜ベストセラー作家からの挑戦状〜 天才小説家×一流映画監督がコラボした、一夜限りの豪華オムニバスドラマ!味わいの異なる4つの謎=各25分の濃密ミステリー!又吉×希林の他では見られないコントも!」(12月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

今回は一挙4作品ということで、各作品別に「公式あらすじ」「ネタバレあらすじ」「一言感想」をまとめ、最後に「総合的な感想」で締めています。
ちなみに、批評順は放送順(「ダイヤモンドダスト」「残されたセンリツ」「カシオペアのエンドロール」「黒いパンテル」の順)です。


・「ダイヤモンドダスト」

<あらすじ>

大寒波が襲来し大雪に見舞われた首都・東京。その夜、スポーツ用品店で働く二人の男、奥脇巧(AKIRA)と明神和也(山本耕史)は翌日に迫った新店舗の開店準備に追われ、二人だけで残業を余儀なくされていた。夜が更けるにつれ暴風雪は増強。都市インフラが機能停止に陥るパニックの中、準備中の新店舗内で停電に遭い、作業を中断せざるおえなくなった二人は奥脇の決断で新店舗から歩いて本社に戻ることにする。大都会の真ん中にいるにも関わらず強烈な暴風雪が吹き荒れ、まるで雪山の中を歩くような感覚に襲われる奥脇と明神。容赦なく襲い掛かる暴風雪の猛威の恐怖に、二人はやがて互いの秘密や欲望がむき出しになっていく。二人は果たして無事に本社に戻れるのか? 最後に衝撃のラストが待ち受ける!
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)。

ある猛吹雪の夜のこと。

スポーツ用品店に勤務する明神は迫るリニューアルオープンに向けて店舗の準備に追われていた。
そんな明神には同僚で恋人の坂下睦美が居る。
だが、睦美とは最近疎遠になりつつあった。

そして、明神を叱咤する男が居た―――奥脇である。
奥脇はオープンに成功すればチーフになる予定であった。
だからこそ、この猛吹雪が気が気ではないのだろう。
この天候の悪化によりスタッフは既に帰宅しており、準備が大幅に遅れていたのだ。

さらに、奥脇は睦美と交際していた。
睦美が奥脇と浮気した!?
いやいや、むしろ奥脇との仲が本気だったと言えるだろう。
これにより、奥脇は内心で明神を嘲っていたのである。

そんな奥脇に明神は「1時間後に雲の切れ間が訪れるから、その隙に本社へ避難しよう」と主張する。
店舗に残ることが危険だと判断したのだ。
これにより苛立つ奥脇。

ところが、直後に停電が発生してしまう。
これでは作業を続けられる筈もない。
奥脇は作業の手を止め、明神と共に本社に戻ることに。

しかし、外は雪山もかくやと言うほどの猛吹雪。
一歩進むにも大きな体力を消耗する状態であった。

少し進み、これ以上は危険だと判断した明神。
雲の切れ間が訪れる筈と地下通路への避難を提案する。

実は奥脇にはこの日に睦美との逢瀬の約束があった。
焦りを覚える奥脇だがどうしようもない。
仕方なく明神の提案を受け入れる。

地下通路には多数の避難者が居た。
どうやら、奥脇たちと同じ境遇らしい。
疲れ果てていた奥脇は早々に自身の居場所を見つけると座り込んでしまう。
その隣に申し訳なさそうに座る明神。

ふと、明神は奥脇に煙草を勧める。
これに「お前にしては珍しく気が利くな」と洩らす奥脇。
明神は要領が悪く周囲からも軽んじられていたのだ。

と、其処に親子連れがやって来た。
子供は「早く帰りたい」と泣き叫び、母親は「もうすぐだから」と必死に宥めている。
その様子を見詰めていた明神は親子連れに場所を譲る。
しかし、周囲には座り込めるようなスペースはもうない。
こうして、明神も奥脇も居場所を失ってしまった。

「お前の所為だぞ」と明神を責め立てる奥脇。
明神は平謝りしつつ、お詫びとばかりに近くのコンビニへ食料の買い出しに赴く。

その頃、睦美は奥脇の帰還を本社で待ちわびていた。
彼女の脳裏に明神の姿は欠片も無い。

数十分後、明神が足を引き摺って地下通路に戻って来た。
買い出し先で誰かに押され転倒したらしい。
だが、辛うじて酒だけは購入出来たと言う。
明神は折角購入出来た酒を奥脇に譲る。

これを美味そうに飲み干す奥脇。
流石に悪いと思ったのか、奥脇は此処で睦美と交際している事実を打ち明けた。
しかし、明神は怒らない。
それどころか、奥脇と睦美の仲を祝福するような発言まで行う。

暫く経過した。
明神は奥脇に「そろそろ雲も切れるから本社へ戻ろう」と誘う。

そんな2人の様子を見ていたのは先程の親子連れ。
耐え切れなくなったらしく避難する宛があるのなら……と同行を申し出る。
これに難色を示す奥脇だが、明神は「一緒に行きましょう」と大きく頷く。
不承不承これに従う奥脇。

こうして、奥脇と明神、親子連れの4人が本社へ。
ところが、途中で明神が「もう動けない」と訴え出した。
負傷した足が痛むらしい。
親子連れも疲労困憊の様子である。

明神は奥脇に「お前の負担になりたくない。先に行って助けを呼んでくれ」と頼む。
「すまん、必ず助けに戻る」言い置いて駆け出す奥脇。
奥脇の中で明神へのわだかまりは解消されつつあった。

そして夜が明けた。

翌朝、猛吹雪について各種報道が為されていた。
このニュースを眺めながら、自宅でランニングマシンで走る男の姿がある。

ニュースでは「23人が死亡、846人が負傷」と伝えれていた。
続いて現れたのは、地下道の親子。
彼女たちは「同行していた明神が段ボールを持って来てくれたので助かった」と涙ながらに感謝の言葉を告げる。

これを見てランニングマシンで走っていた男が笑う。
男は明神である。

さらに、被害者の1人・奥脇の死が報じられた。
その死因は「偶発性低体温症」。
原因は飲酒と煙草であった。
共に明神が勧めたものだ。

二日前、明神はこの猛吹雪が到達することを予見した計画を立てていた。
そして、すべてを準備していたのである。
足の負傷ももちろん嘘だ。
雪雲にも切れ目は無い。

明神は凍死寸前の親子を救ったことで一躍ヒーローとなった。
そして、奥脇に代わりチーフとなった。
睦美も明神のもとへ。
明神は全てを手に入れた―――エンド。

<一言感想>

原作からもっともアレンジが加えられていた作品か。
全くの別物です。

ドラマ版はミステリらしさは増していたが、テーマが完全に異なっていたのがどうにもモヤモヤ。
原作はかなりテーマ性が高く、より深い作品だったし。
此の点で、もう少し原作を尊重しても良かった気はする。
ちなみに、明神よりも睦美の気紛れの方がよほど怖い。

・原作ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
『ダイヤモンドダスト』(安生正著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

・「残されたセンリツ」

<あらすじ>

天才女流ピアニストとして名を馳せる多岐川玲(とよた真帆)が3年ぶりにリサイタルを開いた。生涯で最高の演奏と言わしめる玲の超絶技巧な演奏は聴衆を魅了し、リサイタルは賞賛の嵐で幕を閉じる。
ところが、絶賛の拍手が鳴り止まない会場を後にした直後、玲は控え室で謎の死を遂げる。玲の傍らに転がっていたのは青酸カリが混入されたコーヒーの入ったボトルが一つ……。現場に出入り出来たのは、長年連れ添ったマネージャーで元恋人の安住鷹久(佐藤二朗)とリサイタルの主催者で現在の恋人である美能忠邦(長谷川初範)、そして玲と同じくピアニストで玲とは不仲だった娘の多岐川真由(川口春奈)の3人だった。捜査を担当する刑事の河原崎雄二(イッセー尾形)は彼独特の含蓄ある人間観察によって玲と3人の間に隠された意外な愛憎劇にたどり着く……。
ラストに残されたのは、“戦慄”の真実と、悲しく響き渡る“旋律”だった――。
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)。

ピアニスト渾身の演奏が行われていた。
演奏を終えた瞬間、聴衆は割れんばかりの拍手でこれに応えた。

その数十分後、当のピアニスト・多岐川玲が毒殺死体で発見された。
現場は控室。
どうやら、水筒に青酸カリが混入されていたらしい。

控室に出入り出来たのは3人。
元恋人でマネージャーの安住鷹久。
現恋人でリサイクル会社を経営する美能忠邦。
玲の娘でこれもピアニストの真由である。

事件の捜査に携わった河原崎雄二刑事は3人から事情を聞き出す。

まずは安住。
安住によれば、美能と玲は3年前から交際を開始したらしい。
だが、美能はその少し前に経営するリサイクル会社で水銀による公害事件を起こしていたそうだ。
さらに、玲はピアノを優先しており娘・真由を顧みなかったとの証言も得られた。

続いて真由。
玲とはほぼ没交渉だったらしく、彼女の口からは玲に関する情報は出て来ない。
それどころか、玲はピアノしか愛していなかったと断言する。
真由の手には包帯が巻かれており、聞けばぶつけて怪我をしたらしい。

最後に美能。
彼のもとには玲から何度もコンサートに来て欲しいと電話が入っていた。
さらに、玲の殺害時刻前後にはアリバイが無い。

河原崎は美能に玲との馴れ初めについて問う。
馴染みのバーで飲んでいたところ、玲から声をかけて来たらしい。

そんな美能によれば、玲と真由の間柄ならば殺しが起きても不自然ではないと言う。
なんでも、玲はピアノに打ち込むばかりに真由の養育を放棄していた過去があり、真由は玲を恨んでいたそうである。
しかも、最近も玲と喧嘩をしていたそうである。
どうやら、玲の包帯はこのときのもののようだ。

河原崎が調べたところ、真由が玲を真冬にパジャマで庭に放置していた過去があることが判明。
このときも、玲はピアノに打ち込む余り気付かなかったと語っていたそうである。

玲の演奏をVTRで目にした河原崎。
まるで最期の演奏と知っているようだと感想を口にする。

矢先、青酸カリの成分表が解析され、不純物の存在が明らかになった。
河原崎は此処に犯人を確信する。

河原崎が訪れたのは真由のもと、其処で明かされた真実とは―――。

居並ぶのは安住、美能、真由ら容疑者3人。
彼らに河原崎は玲が重い病に侵されピアノが弾けない身体になりつつあったと明かす。
原因は美能が経営するリサイクル会社による水銀中毒である。
玲もまた水銀中毒の被害者だったのだ。

河原崎の指摘に美能は顔色を変える。
其処に真由が追い打ちをかける。

真由によれば、玲は美能を恨んでいた。
美能に復讐するべく、自身と引き換えに彼を殺人犯へと導いたのだ。

最近の玲と真由の喧嘩の理由もこれにあった。
玲は真由に自身の計画を打ち明けた。
真由は反対したが、玲はピアノが無ければ生きていけないと計画を強行した。

玲はコンサート前に美能を「水銀中毒の決定的な証拠を押さえた」と脅迫。
これに殺させたのだ。

証拠が無いと言い切る美能。
だが、河原崎は美能の会社で使用する青酸カリの不純物と犯行に用いられたものとが同じであることを指摘し動かぬ証拠だと断言する。

しかし、美能はこれを嘲笑う。
それでも逮捕は出来ないと主張したのだ。
そんな美能に、河原崎は「必ずお前を捕まえる」と宣言するのであった。

真由は河原崎に玲への想いを打ち明ける。
確かに優先順位こそピアノ以下とされた真由だが、玲の純粋さは認めていたそうだ。

これに河原崎は首を振る。
取り出して来たのは、あのVTRである。
玲は演奏後にある言葉を呟いていた。

「愛してる」

玲は最後にして最高の演奏を真由に捧げたのだ。
決して、玲は真由を軽んじていたのではなかったのだ―――エンド。

<一言感想>

大筋は原作通りだけど「ダイイングメッセージのカット」や「玲の真意を明かしてしまった」点が異なる。
これにより原作に比べるとシンプルにはなったが、テーマが失われた作品。

特にダイイングメッセージが排除されたことで、玲が美能を罠に嵌めた意味が薄くなったことには閉口。
あれだと玲が美能を嵌めたことにならないだろう。
だって、美能以外が疑われる可能性が残るし。
最悪の場合、真由が犯人にされてしまう可能性すらある。
原作では牽強付会気味だった「ダイイングメッセージ」だが、あれを省くのならば他も改変する必要がある筈だ。

続く「カシオペアのエンドロール」と「どんでん返し」で重複することを避けたのかもしれないが、あの後日談を排除したこともモヤモヤする。
これでタイトルの意味が無くなった。
それと余韻が弱くなっている。
此の点も不満が残るドラマ化であった。

・原作ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
『残されたセンリツ』(中山七里著、宝島社刊『このミステリーがすごい! 四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

・「カシオペアのエンドロール」

<あらすじ>

札幌から上野に向かう豪華特急列車のスウィートルームで起きた密室殺人事件。殺されたのは乗車していた人気シリーズ映画の撮影隊で、撮影隊の中で唯一の男性である映画監督の道明寺(田中要次)だった。
撮影隊で貸し切りになっていたスウィートルームに出入り出来るのは道明寺と共に乗車していた撮影隊の4人の女たち……。女盛りをちょっと過ぎたプロデューサーの吉川かなえ(いしのようこ)、無駄に色気満々のアシスタントプロデューサー・賀茂泉(矢吹春奈)、今回の映画で大抜擢された新進気鋭の若手女優・樫村愛菜(川島海荷)、そして国民的人気を誇る人気シリーズ映画の主演女優・望月ゆかり(藤原紀香)だった。それぞれ一癖も二癖もある容疑者の女たちを相手に、偶然、出張で同乗していた二人の刑事、スウィーツ好きの変わり者警視・加納(吉田栄作)と部下の玉村(浜野謙太)が捜査に乗り出すが……。
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)。

札幌から上野へと向かう豪華特急列車のスイートルームにて殺人事件が発生。
捜査に乗り出したのはスイーツ好きの変わり者として知られる加納警視と、その部下・玉村。

現場となった1号車から4号車までは貸切になっており、犯行が可能なのは4人しか居ない。
おっと、順番が前後した。

まずは被害者について。

殺害されたのは大人気映画「貴婦人刑事シリーズ」で知られる映画監督の道明寺。

そして容疑者だ。

シリーズの主演女優・望月ゆかり。
プロデューサーの吉川かなえ。
アシスタントプロデューサーの賀茂泉。
新進気鋭の若手女優・樫村愛菜。

取調を始めた玉村。
すると、道明寺が愛菜を除く女性陣3人と交際していたことを突き止める。

一方、加納は15作目の脚本を一目見るなり「出番が減らされてるねぇ……」と呟く。
どうやら、ゆかりの出番が減らされ愛菜の出番に代えられているらしい。

さらに、加納は4号車から女優のオーディション風景が撮影されたVTRを発見。
VTR中の女性は北海道訛りで「妹はもっと美人なんです」と元気よく答えていたが……。

この間に愛菜が席を外し戻って来た。

ふと気にかかった加納は再び殺害現場へ。
すると、ベッドの横に第14弾の脚本が置かれていることに気付く。

拾い上げて目を通してみると、愛菜の役柄に前任者が居たことが分かった。
その名は河村里美、あのオーディション映像の女性だ。
本来ならば第14作時点で登場する予定だったそうだ。
だが、役を外されてしまい自殺してしまったらしい。

どうも、役を外された理由は道明寺に交際を迫られながらこれを断った為らしい。
他にも、ゆかりに敬遠されたからだそうだ。

さらに、加納は道明寺が所持していたレシートから交際相手が4人居たことを突き止める。
そう、愛菜も道明寺の交際相手の1人だったのだ。
道明寺は相当奔放な人物だったようだ。

しかし、ゆかりはだからと言って人を殺しはしないと主張。
むしろ、作品を良くするためには仕方がないことだと理解していたそうである。

愛菜もこれを支持する。
ちなみに、愛菜は東京出身らしい。

と、何時の間にやら加納がウニアイスを食べていた。
やがてキョロキョロと周囲を窺う加納は「いたましいけど、なげるか」と呟く。
どうやら、カップを捨てたいようだ。
これに愛菜がゴミ箱を差し出した。

直後、加納は「エクセレント!!」と叫ぶ。
事件の真相を見抜いたようだ。

加納によれば動機は怨恨、原因は里美の自殺だそうである。
里美の復讐を果たした人物が居たのである。

加納が犯人だと指摘したのは愛菜だ。
愛菜は東京出身だと述べていたが、北海道出身だったのだ。

その根拠こそ「いたましいけど、なげとけ」。
これは北海道の方言で、その意味は「勿体ないけど、捨てとけ」である。
これが分かるのは北海道出身者のみなのだ。

愛菜は里美がオーディションで口にした妹であった。
里美の死の原因が道明寺にあると考えた愛菜が復讐したのであった。
こうして愛菜は逮捕された。

翌朝、加納はゆかりに真実を告げる。
実は裏に黒幕が居たのである。

道明寺は「貴婦人刑事」の若返りを図ろうとしていた。
だからこそ、里美や愛菜を出演させようとした。
ゆかりは主役の座を失いかけていたのだ。

そして「オーディション映像」と「第14弾の台本」。
それは誰かが用意しなければ、この場に存在しないもの。
あれにより加納は愛菜の犯行に気付いた。

道明寺が死亡したことで利益を得た人物こそが、これを用意した。
その人物は道明寺を排除し、自身の地位を脅かす愛菜をも排除した。
これこそ、ゆかりの仕業だったのだ。

ゆかりは「貴婦人刑事」の主役の座を守るべく、愛菜が道明寺を殺害するように仕組んだのだ。

だが、それが加納に分かったところでゆかりを逮捕する術は無い。
加納は呟く「エクセレント!!」と―――エンド。

<一言感想>

これまた犯人と黒幕こそ同じだが、かなりのアレンジを加えられていた作品。
ドラマ版だと容疑者4人の意味が無いんだよなぁ……。
それと、方言も原作にない。
そう言えば、原作にあったアリバイトリックも割愛されてたなぁ。
最後の二転三転するどんでん返しも無しかぁ……。

これだけ改変するならいっそ倒叙モノにした方が面白かったと思う。
例えば、愛菜の犯行を冒頭で描き、方言が決め手で逮捕、これで終わりと思いきや……ゆかりが黒幕だったの一捻りで十分だろうになぁ……。

・原作ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
『カシオペアのエンドロール』(海堂尊著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

・「黒いパンテル」

<あらすじ>

中年半ばの須藤(勝村政信)は今でこそ建設会社に勤めるしがない現場監督だが、30年前の20代、実は戦隊モノのヒーローとしてテレビで人気を博した駆け出しの役者だった。須藤は当時共演者でヒロイン女優だった栄子(高橋ひとみ)と結婚し、現在は二十歳になる一人娘・千明(小池里菜)がいる。ある日、須藤は栄子から須藤が役者当事身に着け、仕舞い込んでいたヒーロー・ブラックパンテルの衣装とマスクを見せられ、30年前の出来事を思い出す。それは須藤が出演する戦隊モノの撮影現場で起きた悲惨な事故だった。当事、須藤が主人公の戦隊モノは佳境を迎え、最終回の撮影を行っていた。ところがそのロケ現場で火災事故が起こり、須藤は先輩俳優で共演の敵役・ドラクル男爵を演じていた二ノ宮(城田優)を見殺しにしてしまったという苦い経験を味わったのだ。久しぶりに衣装を見て自責の念が再燃する須藤。そんな中、須藤の元に娘の千明を誘拐したとのメールが届き、誘拐犯は須藤になんとブラック・パンテルの姿で救出に来るよう指示してくる!須藤は千明の恋人・戸倉(山本裕典)と救出に向かうが……。悲哀に満ちた中年サラリーマンは、果たして娘を無事救出することができるのか!?
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)。

30年前、特撮ヒーロー「ブラック・パンテル」を演じていた須藤。
ドラクル男爵を演じる二ノ宮やヒロイン役を演じる栄子と共に日夜撮影に挑んでいたのだ。

ところが、最終回の当日に思わぬ事故が発生した。

撮影現場の倉庫が火事に見舞われたのである。
此処で須藤はある選択を強いられた。
二ノ宮と栄子、どちらを助けるか……だ。

須藤は咄嗟に好意を寄せていた栄子を助けた。
結果、二ノ宮は焼死してしまった。

直後に須藤は俳優業を引退し栄子と結婚。
娘・千明をもうけた。

だが、この想い出は今も須藤を苛んでいる。

そんなある晩、須藤の前に撮影に使っていた「ブラック・パンテル」の衣装が現れる。
だが、その衣装はあの事故で焼失した筈であった。

矢先、千明が奇妙な男に尾行されてしまう。
不安を覚える須藤だが、千明は平気な様子。
それどころか、千明は彼氏を紹介したいと言い出した。

須藤にとっては青天の霹靂である。
青天の霹靂と言えば、世間を騒がせる事件がもう1つ起こっていた。
小惑星が地球に迫っていたのである。

そして、須藤の心を騒がせる事件も。
例の工場が解体されるのだそうである。

そんな須藤に奇妙な男が声をかけた。
須藤ははたと気付いた。
相手が二ノ宮に似ていることに。
途端、相手は煙のように消えてしまった。

その夜、千明が恋人を連れて来た。
その名は戸倉。
戸倉は特撮について造詣が深く「ブラック・パンテル」にも詳しかった。
須藤は当時のことを思い出した。

30年前、二ノ宮は須藤の事務所の先輩だった。
須藤は二ノ宮を尊敬しており、彼の推薦で須藤は「ブラック・パンテル」となった。
その撮影現場で須藤は栄子と出会った。
須藤は栄子を一目で好きになった。
だが、栄子は二ノ宮に好意を寄せていた。
其処にあの事件である。

須藤は思う。
今思えばあの頃の自分は輝いていたなぁ……と。

一方、小惑星がどんどんと接近しつつあった。
遂には直撃コースとまで噂されることに。

そんな中、千明が消えた。
そして、須藤にドラクルからメールが届く。
其処には「千明を取り戻したければブラック・パンテルとしてやって来い」と記されていた。

小惑星衝突、ヒロイン誘拐。
このシナリオは「ブラック・パンテル」最終回そのものであった。
二ノ宮の関与を確信した須藤は戸倉と共に廃工場へ向かう。

すると、当時そのままに戦闘員が現れる。
彼らと戦う須藤ことパンテルはあっという間に蹴散らす。

その目の前に、ドラクルこと二ノ宮が立ち塞がる。
そして、二ノ宮は30年前と同じ選択を須藤に強いる。

廃工場が火に包まれたのだ。
今回は栄子と二ノ宮に代わり、千明と戸倉である。

だが、須藤はこの選択を拒否する。
跳躍するや「必殺・パンテルパンチ」を用い、ドラクルを討ったのだ。

気付けば、二ノ宮も廃工場を包む炎も消えていた。
小惑星も衝突を回避した。

千明は戸倉と帰宅し、須藤は着替えを用意していなかったのでパンテルの衣装で歩いて帰った。

その途中、須藤はいろいろと考えた。
二ノ宮は須藤を恨んでいたワケではないのだろう。
きっと、あの頃の気持ちを須藤に取り戻させたかったのかもしれない。

何とか帰り着き、ようやく風呂にありついた須藤。
風呂から出たところ、ブラック・パンテルの衣装は現れたときと同じく忽然と消えていた―――エンド。

<一言感想>

ほぼ原作に沿っていた作品。
そして、4作の中で唯一原作を上回ったとの印象の作品。
もともと原作自体がドラマ向きだったんだろうけど、これが1番面白かった。

特に、マスクが焼失していたことを明記した点はドラマ版の良い点。
これにより、あの時点でファンタジックな作品であることが視聴者に伝わったと思う。
ちなみに本作は「狭義のミステリ」ではなく「広義のミステリー」作品と捉えることが重要。

ふと思ったが「狭義のミステリ」に落とし込むなら、須藤の二重人格オチでも面白かったかもなぁ……。
いや、やっぱり本作の味は「広義のミステリー」作品であることこそ……か。

・原作ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
『黒いパンテル』(乾緑郎著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

<総合的な感想>

ドラマ版全4作のうち、好意的な評価を下せそうなのは1作だけとなった。
さて、総評。

3作についてだが、全体的に驚くほどアレンジを加えられていたが基本改悪との印象。
原作の長所を殺すようなアレンジが多かった。
25分だから割と忠実にドラマ化されるものと思っていただけにビックリだ。

これらの理由だが「番組タイトル」から判断すると、用意された原作とドラマ化する側との間で求めていた物が異なっていたのが原因ではないか。

「番組タイトル」は「このミステリーがすごい!〜ベストセラー作家からの挑戦状〜 天才小説家×一流映画監督がコラボした、一夜限りの豪華オムニバスドラマ!味わいの異なる4つの謎=各25分の濃密ミステリー!又吉×希林の他では見られないコントも!」である。

ポイントは「挑戦状」だ。
どうも、本格ミステリ調で「クイズに出来そうなもの」を求めていたのではないか。
此の点で乖離があったのかもしれない。
それにしても、改変に際してわざわざ原作に備わっていたテーマ性を多々捨てたのは謎である。

さて、その中で唯一原作を尊重し上回ったと感じたのは「黒いパンテル」。
もともと原作が映像向きだったこともあるのかもしれない。
広義の意味での「ミステリー」作品ではあるが、此の点は良かった。

ちなみに、幕間に入るMCパートに殆ど意味が無かった点も明記しておきたい。
あれは……かなり問題だろう。
折角のキャストが無駄遣いされたような気がする。
もっと内容とリンクさせつつ、オチをつけられていれば……。

出来れば同じような試みにチャレンジして欲しいが……これは厳しいかもしれない。
個人的には「難しいのではないか」と思う。
ミステリ系ドラマ隆盛の火付け役になってくれればと強く望むがどうなんだろう。
巷間の評判が高ければ良いのだが……。

今年も辛口な評で「2時間ドラマ批評(レビュー)」を締めることになろうとは……ショックだ。

<キャスト>

・「カシオペアのエンドロール」

望月ゆかり:藤原紀香
樫村愛菜:川島海荷
吉川かなえ:いしのようこ
玉村刑事:浜野謙太
賀茂 泉:矢吹春奈
河村里美:落合萌
道明寺:田中要次
加納警視正:吉田栄作 ほか

・「残されたセンリツ」

多岐川真由:川口春奈
多岐川 玲:とよた真帆
美能忠邦:長谷川初範
安住鷹久:佐藤二朗
佐藤:高崎翔太
検視官:兒玉宣勝
河原崎雄二:イッセー尾形 ほか

・「黒いパンテル」

須藤:勝村政信
須藤栄子:高橋ひとみ
戸倉:山本裕典
須藤千明:小池里奈
30年前の栄子:柳ゆり菜
田辺:小野 了
建設会社社員:陳内 将
金髪の作業員:小島祐輔
30年前の須藤:兼原良太郎
二ノ宮:城田 優 ほか

・「ダイヤモンドダスト」

奥脇 巧:AKIRA
明神和也:山本耕史
坂下睦美:高橋ユウ
安西信一:原田新平
佐伯春奈:濱田万葉
佐伯未来:須田理央
片桐吾郎:神保悟志 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)


◆関連過去記事
『カシオペアのエンドロール』(海堂尊著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『黒いパンテル』(乾緑郎著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『ダイヤモンドダスト』(安生正著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『残されたセンリツ』(中山七里著、宝島社刊『このミステリーがすごい! 四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

ドラマ原作「【テレビドラマ化】このミステリーがすごい! 四つの謎」です!!
【テレビドラマ化】このミステリーがすごい! 四つの謎



【関連する記事】
この記事へのコメント
確かに、原作は読んでいないけれど、微妙な印象。
原因はいくつか考えられるけれど、
一つは25分間という縛りがあるので、情報量を絞らなければならないからじゃないでしょうか。普通のミステリードラマのように1時間あればもっと良くなった可能性はあります。あと、演出を担当した監督も上げてくださるとありがたいです。それと作品のリライトを行った脚本家も。
『黒いパンテル』の星護監督だけがご自分で台本も書かれていたのが勝因のような気がします。他の監督が充分持ち味が出ていると言いがたい感じでしたが、星監督の作品は、いつものテイストでしたから。
あと、年末のミステリードラマとしてはアニメですが、『江戸川コナン失踪事件』も内田けんじ監督脚本作でしたよ。ただ、映画『鍵泥棒のメソッド』の完全な続編なので、あの映画を見ていない子供たちに楽しめたか微妙ですが。コナンの推理も含め三重構造の物語って理解できたかな。めったにコナンは見ませんが、一流の脚本家に外注した大人気ない本気の話があることがたまにあります(笑)
Posted by よしぼう at 2014年12月30日 06:49
Re:よしぼうさん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

媒体の違いが大きな壁になっているんですね。
これこそ原作を映像化する上で永遠のテーマなのかもしれません。
だからこそ、良アレンジの映像化作品はあれほどの喜びと面白さを我々に与えてくれるのでしょう。

「名探偵コナン」の年末スペシャルは管理人も少しだけ視ました。
確かに「鍵泥棒のメソッド」のオマージュと言うよりは正統派続編になってましたね。
流石は「名探偵コナン」と言うべき作品で「鍵泥棒のメソッド」も視たことがあったので楽しめました。
出来れば「鍵泥棒のメソッド」と「名探偵コナン」で2週連続放送だった方がもっと楽しめたかな。
それと、こういった試みがもっと増えると嬉しいですね。
Posted by 俺 at 2015年01月03日 22:47
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/410704495
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック