2015年01月02日

「相棒season13」元日スペシャル第10話「ストレイシープ」(1月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「相棒season13」元日スペシャル第10話「ストレイシープ」(1月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season13」第10話「ストレイシープ」(1月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)。

<ネタバレあらすじ>

2013年12月25日、樹海を歩く男が呟く。

あなたがたはどう思うだろうか。
100匹の羊の内、1匹が迷い出たとしたら。
あなたは99匹を置いて、1匹を探しに出ないであろうか?

マタイ伝の一節である。

そして1年後の2014年12月、ある年の瀬の公園で事件が起ころうとしていた。
その焦点は1人の少年、彼を巡り多数の男女が蠢いていたのである。

「いつも通りトイレ入ります」
「よし、アクション!!」

女からの連絡を受け少年がトイレに入ったことを確認すると、掛け声と共に複数の男たちが動き出した。
彼らは清掃員の衣装に身を包み、トイレに乱入するとゴミ箱に少年を押し込み密かに連れ出した。
少年は誘拐されてしまったのだ。

同じ頃、杉下右京(水谷豊)は在りし日の西田悟巳(石田ひかり)を思い浮かべていた。

悟巳は不思議な魅力を讃えた女性であった。
出会いは紅茶専門店、にも関わらず彼女は紅茶に詳しくなかった。
右京はそんな彼女にいろいろな紅茶について語って聞かせた。
そして、悟巳はいつも幸せそうに微笑んだものだった。
特に「ダージリン」と「アールグレイ」のブレンドについてはとても嬉しそうだったことをよく覚えている。

だが、もう彼女はない。
今、右京が居る場所は西田悟巳の葬儀の席である。
それは参列者も少ない寂しいものであった。

其処で右京は故人と親しかったと名乗る人物・荒井良一(平岳大)から声をかけられた。
荒井は「彼女から何か聞いてませんか」と悟巳についての話をせがむ。

ふと、右京の脳裏に浮かんだのは「小田原の山荘に数十年に1度しか咲かない花について」だ。
それは悟巳の生い立ちについてのエピソードである。
悟巳は小田原の山荘に住んでいた時期があり、其処では珍しい花が咲くのだそうだ。

これを聞いた荒井は右京同様に痛ましそうに目を細めた。
しばらく時間が経っただろうか、荒井は振り切るように右京へ悟巳の遺書や遺品などを手渡した。

これを目にした右京は眉を顰める。
遺書には悟巳から右京への思いの丈が綴られていたのだが……。

数時間後、沈んだ様子の右京に甲斐が声をかける。
手にしているのは悟巳の死についての資料だ。

資料によれば、悟巳は毒物による自殺。
紅茶に毒を溶かして飲み干したらしい。
床には紅茶を零した痕跡が残されていたが、それが「ダージリン」と「アールグレイ」のブレンドだったことが確認されていた。

一方、警視庁では元東京地検特捜部のエースで現在は衆議院議員になっている橘高誠一郎(三浦浩一)のもと、中園により飛城雄一についての報告がされていた。
飛城は新タイプの犯罪を次々と考案し「犯罪の神様」と呼ばれていたが、その正体は誰も知らない謎の人物。
さらに、組織自体が飛城以外は並列化されており互いにメンバーについて知らないらしい。
それ故に、全貌が掴めないのだ。

同夜、公園で起こった誘拐事件が進展を迎えていた。
誘拐されたのは村本博、朱美夫妻の長男・修吾。
この捜査指揮を執るのは中園である。

その村本夫妻に脅迫電話が入った。
村本夫妻はその内容に顔を見合わせることに。
誘拐犯からの要求は「村本の前妻である梶井素子(川上麻衣子)を呼べ」とのものだったのだ。

「第一段階成功しました……ええ、第二段階ですね」
電話を終えた犯人は何者かと遣り取りを続ける。

修吾誘拐の報を聞いた素子が村本家に飛んで来た。
実は修吾は博と素子との間の子供だったのだ。
修吾にとって朱美は継母だったのである。

其処に次の電話が。
それは「返してほしければ1億2千万円を用意しろ」とのもの。
素子は投資会社を経営しており、その金を持って来いとの指示である。
さらに犯人は「我々の動機は特命係の方にでも聞いたらいいでしょう」と告げた。

この一言により、特命係の捜査参加が決まることに。
とはいえ、普段の中園ならば考えづらいことだ。
右京と甲斐は首を傾げる。

其処に犯人からまたも要求が。
なんでも、素子が普段から利用しているジョギングコースにジョギングウェア姿の素子がリュックに詰めた身代金を持って来いとのものだ。
スタートは「神社の石段」、ゴールは「龍神公園の泉」である。
これに応じ素子が1億2千万円を背負い走り出した。

その頃、右京は「犯人が何故、素子にジョギングさせるのか」が気にかかっていた。
これも意味があるに違いないのだ。

そんな中、素子が公園に到着。
犯人の要求で1億2千万円の中身を携帯で撮影させる。
身代金を確認した犯人は次の指示を飛ばす。
犯人が指定したのは「成増ペテロ教会」であった。
しかも、犯人は「団地を抜けて行け」と丁寧に経路まで指定して移動するよう命じる念の入れようである。

先回りした右京は車両が入れる道幅ではないことに気付く。
まずはこれで車両を撒くつもりなのだろうか……。

さらに先に行くと指示通りの団地と広場が見えて来た。
其処に素子が駈け込む。

と、此処で事態が急変。
同時に周辺から素子と同じジョギングウェア姿の団体が現れたのだ。
しかも、彼らは一斉に踊り出した。

素子の姿は人ごみに紛れ込んでしまった。
慌てて駆け寄る右京たち。

これを尻目に一台のバイクが走り出す。
見つけ出した素子によれば身代金は奪われてしまったらしい。

遠回りして車でバイクを追跡する右京たち。
執拗な追跡に降参したのかドライバーはバイクを置いて逃げ出そうとする。

甲斐によりドライバーの身柄は確保。
右京は路上に倒れたバイクに駆け寄ろうとして……その目前でバイクが爆破炎上した。
どうやら爆弾を遠隔操作している犯人が居るようである。
事態を遠目に眺めていた犯人は「第3段階遂行」を指示する。

その後はてんやわんやであった。
逮捕されたドライバー・越本は何も知らないと主張。
バイクを捨てたのも故障したからだと繰り返す。
しかも、神条金融の宮之原に借金チャラを餌に頼まれただけと述べる。

他に、ジョギングウェア姿の団体はCM撮影のフラッシュモブだったことも判明する。

すなわち、身許を特定出来た者、捕まえた者たちは何も知らない者たちばかり。
結局、誘拐犯に繋がる証拠は何も出て来なかったのである。

これを聞いていた右京は事件を分析。
犯罪を細分化し足のつかない者たちを使う組織として飛城雄一の犯行を疑う。

一方、身代金の大半は焼失し素子に戻って来たのは23万円のみであった。
素子に飛城について尋ねたところ、取引で彼の組織に損害を与えたことがあると言う。
その復讐なのか!?

続いて、ある小料理屋が飛城のターゲットとなっていた。
手際よく動く犯人たちにより、女将(大家由祐子)はあっという間に連れ攫われてしまう。

その頃、右京は越本を追及していた。
まだ何かを隠していると見たのだ。

すると、越本は主犯から「バイクを捨てて逃げろ、もし捕まったら故障したことにしろ」と命令されていたことを明かした。
つまり、犯人たちは身代金が欲しかったのではなく素子から1億2千万円を奪いダメージを与えるつもりだったのだ。

当の素子はすべてを失ったと落胆していた。
そのオフィスで氷川神社前で顧客たちと撮影した写真を発見する右京。
どうやら、顧客たちとジョギングした際のものらしい。
右京は参加者のリストを求める。

同じ頃、動画サイトに「12月25日、衆議院議員の橘高は必ず罪を犯す」という映像が投稿され大騒ぎに。
これを受けて警察庁次長・甲斐峯秋(石坂浩二)が動いた。
今や子飼いとなっている警視庁広報課長の社美彌子(仲間由紀恵)に橘高について調べるよう指示したのだ。
美彌子は特命係が関わる案件だけに不満な様子だが……。

右京たちは素子の顧客リストからある人物を見出す。
その人物・伊藤博美は2013年12月25日に樹海で自殺を遂げていた。
橘高への予告との関連性に目を止めた右京は樹海を調べることに。

目印をつけて迷わないよう慎重に進む右京。
現場に辿り着くや資料を手繰る。
博美は集団自殺者の1人。
他に、粕谷栄子と身元不明の男性2人が死亡していた。

被害者の写真を目にした右京は身元不明男性の1人に「見覚えがある」と述べる。
話は甲斐が特命係に着任する前に遡る。

右京は万引きの現行犯として若い女性を捕まえた。
其処にやって来たのが自殺した男性だったのだ。
男性は万引きした女性を「理穂」と呼び、自身を「彼女の恋人」と告げた。
結局、理穂が未成年だったこともあり両親に連絡するに留まったのだが……。

身代金が奪われた団地の広場が博美が住んでいた団地だったことが判明。
思わぬ繋がりが見出されたのだ。

博美は素子の助言で資産を増やしたのだが、2013年2月26日円の暴落が発生したことで一変し自殺に追い込まれていた。

2013年2月26日、素子は修吾から電話があり情報収集が出遅れた。
当時、修吾は父親の再婚話に動揺しており素子を頼ったのだ。
素子は修吾を突き放すことは出来なかった。
こうして、修吾と共に過ごしていた素子。
そして、円暴落を知ったときには全てが手遅れであった。
これにより博美は大損害を被った。
博美は激怒し、素子に詰め寄った。
其処で修吾の件を知った博美は「裏切りだ!!」と叫んでいたらしい。

右京の記憶から理穂の恋人を名乗っていた男の身許が判明した。
男の名は藤井であった。

さらに、理穂が生田理穂だと判明。
理穂は万引き事件の後に北海道に住む母親のもとへ引き取られ数年前に自殺していた。
理穂の母親によれば、理穂が万引きに走ったのは藤井の所為らしい。
藤井が理穂を追い詰めたと主張していたのだ。
その為に、藤井と理穂を引き離し、藤井からの連絡も無視した。
理穂は藤井から連絡が無いことに不安を抱き自殺してしまっていたのだ。

これを知った藤井は自殺を決意。
当時、藤井は右京の事を恨んでいたそうである。

これで集団自殺4人のうち、3人まで身許が特定出来た。
しかし、残る1人だけは杳として知れない。
角田は「きっと居なくなっても気付かれない存在なのだろう」と洩らす。

右京は粕谷栄子について調べ始めた。
栄子は市松という老舗料亭の仲居だったそうだ。
料亭・市松は汚職事件の取調べの最中に自殺した大物代議士・天沢大二郎行きつけの店。
この際、天沢を取調べたのが当時検事であった橘高だったのだ。

飛城が標的にした素子と橘高が共に集団自殺の被害者と繋がった。
右京はこれに意味を見出す。

市松の女将は多くを語ろうとしない。
だが、右京は粕谷栄子の給料が通常の仲居よりも高いことに注目。
粕谷栄子が天沢の愛人で、手当てを市松経由で受け取っていたのでは……と考える。

甲斐は峯秋を通じて橘高と面識があることを利用し事情を問う。
当時の天沢は「政界の洗濯機」と呼ばれ、クリーンなイメージが売りであった。
これを橘高が「カビの生えた洗濯機」と呼び、ここから天沢の凋落が始まった。
どうも橘高の手法はかなり強引だったらしい。
天沢の家族まで調べ上げ追い詰めていた。
天沢の妻は一連の騒動が原因となり半年前に病死していたほどである。
当然、天沢の関係者は橘高を恨んでいたようだ。

その夜、花の里に大河内監察官の姿があった。
右京は大河内に「市松」について尋ねていたのだ。
大河内は粕谷栄子を知っており、同じく仲居の佐伯紫乃(大家由祐子)と親しかったことを明かす。
この紫乃こそが、誘拐された小料理屋の女将だったのである。

此処で右京は甲斐を誘い西田悟巳宅へ。
右京は甲斐に彼女の遺書を見せる。

私は夢を見ました。
あなたとずっと一緒に居られたら……と。
でも、あなたには愛している人が居る。
花の里の女将さんです。
一緒に居て笑いかけているところを見ました。
もう耐えられません。
あなたに教わった「ダージリン」と「アールグレイ」のブレンドを飲んで行きます……。

こんな内容だ。
悟巳の手紙を額面通り受け取れば「悟巳は右京に恋したが、右京と幸子の仲を勘違いして自殺」したことになる。
これを聞いた甲斐は「自殺の動機」としては「どうにも幼過ぎる」と述べる。

右京は悟巳の死に飛城が関わっているのではないかと疑っていた。
右京が気にかけるのは悟巳の言葉「数十年に一度だけ咲く花を小田原の山荘で見た」であった。

25日を明日に控えた24日、内村らは橘高の警備を強化する。
そんな中、紫乃の小料理屋に右京が辿り着いた。
小料理屋の表には「長期休業の張り紙」が。
だが、扉の前には無造作に届けられた食材が積まれていた。
長期休業するなら食材を頼むだろうか。
どうにも妙だ。
店内を確かめた右京は紫乃の携帯を発見、紫乃が飛城に拘束されたと確信する。

その頃、橘高は昼食を行きつけの店「洋食サイトウ」で取っていた。

紫乃の携帯から橘高の電話番号が発見された。
しかも、高山菊代の名前で登録されていたのである。
どうやら、天沢と栄子の関係同様に橘高と紫乃も愛人関係にあったようだ。

右京は紫乃が飛城に誘拐され橘高が脅されていると推理する。
当の橘高は右京の予想通り、飛城に脅迫され「洋食サイトウ」を抜け出していた。
向かった先は廃屋となった天沢家だ。
其処で橘高は拳銃を手にするよう命じられる。

一方、右京たちが向かった先も天沢家だ。
天沢家は広大な敷地を誇っていた。
右京と甲斐は手分けすることに。

すると、右京の携帯に悦子から着信が。
出てみると電話の相手はあの荒井であった。
いや、その正体こそ飛城(平岳大)だったのである。
どうやら悦子は捕まってしまったらしい。

一方、甲斐はと言えば廃屋の一室に拘束されていた紫乃の救出に成功。
同時に発砲音を耳にする。

動画サイトで橘高の様子が公開されていた。
橘高は手にした銃を乱射していた。

橘高は銃刀法違反、住居侵入の現行犯で逮捕されることに。
飛城の予告通りになったのだ。

その頃、右京は呼び出しに応じ飛城のもとへ。
辿り着いたのは悟巳が語っていた山荘だ。
其処で多数の男たちに囲まれてしまう。
奮戦する右京だが、不意を突かれ捕まってしまうことに。

逮捕された橘高は事情を語り出す。
橘高は紫乃から天沢の情報を入手しようと近付いた。
ところが、紫乃はある男との関係に悩んでおり、橘高はこの解決に手を貸した。
これがきっかけで橘高と紫乃は愛人関係になったらしい。

其処に全く別のルートから汚職についてリークがあり、橘高は天沢を告発した。
しかし、天沢は黙秘を貫いた。
困っていたところに、紫乃から栄子の存在について教えられたのだそうだ。
だが、それを以てしても天沢は罪を認めず自殺してしまったのである。

そして一年ちょっと前、健在だった栄子と紫乃が「あんたが密告しなければ」と揉めたことがあったのだそうだ。
やはり、栄子は紫乃と橘高を恨んでいたのだ。

右京が消えたことに甲斐が気付いた。
飛城の遣り口から見て、誰かを誘拐し脅迫したに違いない。
調べたところ、悦子と連絡が取れないようである。
もしも、悦子を人質に行動を命令されたとしたら……。
Nシステムから右京が小田原方面へ向かったことは確認されている。
前夜に聞いた悟巳の山荘の件を思い出した甲斐は助けを求めることに。

まず甲斐は中園に協力を訴えるが、身代金と橘高の件と2度に渡る失敗に及び腰だ。
焦る甲斐は峯秋に頭を下げることに。
そんな甲斐に峯秋は驚きつつも要望を入れた。
こうして峯秋から正式に出動依頼が出たことで大規模な動員が行われることに。

その頃、右京と飛城が対峙していた。
右京はすべての事件について推理を語り出す。

まず、修吾誘拐。
これは伊藤博美の復讐だ。

続いて、橘高の失脚と紫乃誘拐。
これは粕谷栄子の復讐だ。

藤井のことを考えれば、右京もまた復讐対象者だった。
藤井は右京の為に理穂と別れさせられたと恨んでいたのだから。

すべて集団自殺した4人と関係していたのだ。
飛城は右京に悪意がなかったからこそ、復讐を代行するのだと言う。

これを聞いた右京はある結論に至った。

これまでの飛城の犯行は金銭目的であった。
だが、今回の飛城の目的は復讐である。
どうにもこれまでのカラーに沿わない。

動機がそぐわない。
しかし、遣り方自体はこれまで通りである。
これが意味するところは1つ。

組織自体は飛城のものだが、これを動かす飛城自身が変わったのだ。
すなわち、飛城を名乗る目の前の人物は飛城ではない。

この回答を飛城を名乗る男は認める。

2013年12月25日、右京の目の前の男もまた樹海に入った。
男は其処で前身黒ずくめの優雅に煙草を吸う男と出会った。
それが本物の飛城であった。

本物の飛城は病気により余命幾許もない状態にあった。
飛城は自身の生死は自身で決めるとその場に足を運んだ。

そして、其処に博美、栄子、藤井たちも居た。
さらにもう1人―――悟巳も。

本物の飛城は彼らの前で冒頭の一節を告げた。

あなたがたはどう思うだろうか。
100匹の羊の内、1匹が迷い出たとしたら。
あなたは99匹を置いて、1匹を探しに出ないであろうか?

その上で独自の解釈を伝えた。

99匹が一般的な人間だとすれば、迷い出た1匹とは僕らのことだ。
だが、探しに出て来る羊飼いは居ない。

その熱っぽい語り口に彼らは魅入られた。

博美、栄子、藤井は恨みを打ち明けた。
そして、悟巳は難病であることを明かした。
それぞれがそれぞれの事情を抱えていた。

一体感が生まれた頃、集団自殺が決行された。

ふと気付けば、男と悟巳だけが命を永らえた。
他の4人は死んでいた。

生き残った男は「迷える羊」を探し求める羊飼いにならなければと思った。
それが生き残った意味だと思ったのだ。

男は飛城が誰にも顔を知られていないことを利用し飛城となった。
そして、最初に行ったのが復讐代行だったのだ。

これに悟巳は理解を示したと言う。
ただし、殺人だけは禁じた。

右京は男に「何故、あの人を殺したのですか?」と問う。
もちろん、悟巳のことだ。

理穂は藤井に新しい交際相手が出来たと勘違いし死亡した。
勘違いによって相手が死ぬ―――男は藤井と同じ気持ちを右京に味合せるつもりだった。
これを聞いた悟巳が自ら立候補したと言う。

同じ頃、山荘を取り囲む人影があった。
甲斐たちだ。
さらに、最高のスナイパーである日野警部補(「相棒5」11話「バベルの塔」の登場人物)も待機していた。

しかし、この情報を右京を捕らえる男たちも掴んだ。
「迷い出ても探しに来てくれる人が居るようですね」
右京に羨望の眼差しを向ける男。
男は最期の手段として自殺すると伝える。
それこそが右京にもっともダメージを与える方法だ、と。

銃を自身に突き付ける男。
そんな男に右京は語り出す。

悟巳の部屋のカーペットには紅茶の染みが残されていた。
それはダージリンとアールグレイのブレンドであった。
ところが、毒を飲む際に使用した紅茶ポットの茶葉は別のものだったのだ。
ダージリンとアールグレイの紅茶が飲めなくなった為に改めて淹れ直したものだろう。
これが何を意味するか。
遺書と実情が異なるのだ。

悟巳は右京にだけ分かるようにメッセージを遺した。
私は嘘を吐いている、と。
だから、実情と異なる手紙を書いたのだ。

右京はその理由を「悟巳が本当に僕を愛してしまったからだ」と指摘する。
これに激怒する男。
男もまた悟巳を愛していたのだ。

だからこそ、男は右京を許せなかった。
だからこそ、男は悟巳を死なせるしかなかった。

図星を突かれ逆上した男は右京に銃を突き付ける。

銃声が響いた。

何時の間にか男の手からは銃が消えていた。
発砲したのはスナイパーの日野であった。

これを合図に甲斐たちが山荘に突入。
その場に居た飛城一派は男を含め逮捕された。

右京は日野の到着を予期していた。
わざわざ相手を逆上させたのは男の自殺を止める為であったのは言うまでもない。

甲斐宛に悦子から電話が入った。
携帯を紛失したようだ。
どうやら、悦子は誘拐されたワケではなかったらしい。
携帯電話はすぐに見つかるでしょうと右京は笑う。

無事に戻った右京は中園が特命係に捜査参加を命じた理由を問う。
中園によれば「妻からキャリアを危険に曝す事件が起こる」と予言されたらしい。
この危機に対抗出来るのが右京だけだったそうだ。

逮捕された男の取調べが行われていた。
悟巳が男に生きて欲しがっていると伝える右京。
男は山荘の折と違い憑物が落ちたように優しい顔つきになっていた。

男が右京を拘束する為に山荘を指名したのは、同じ悟巳を知る立場の者として話がしたかったからのようだ。
そんな男に、右京は「罪を償うことこそがあなたが生き残った意味です」と諭すのだった。

「そう言えば……」と男の名を問う右京。
これに「荒井良一です」と男は応じる。
それは男が悟巳の葬儀の席で告げた名である、本当に男の名だったのだ。
彼女が見ていたので緊張していたのかもしれないと告げる右京に男は頷くのであった。

立ち去るべく腰を浮かせた右京に荒井は問う。
「あなたも彼女のことを?」
右京はこれには応じず静かに目を伏せた。

廊下を歩く右京が美彌子と擦れ違う。
軽く会釈しつつ、右京は美彌子の手腕を褒める。
橘高は愛する女性の為に全てを捨てたヒーローとされたのだ。
美彌子の工作らしい。
これに冷たい微笑みを浮かべる美彌子は早々に背中を向ける。
その背に、右京は「(美彌子について)気になることがある」と告げるのだが、果たして聞こえていたものかどうか……。

その夜、右京は悟巳から届いた最後の手紙に1人で目を通していた。

其処には復讐目的と近付きながら恋をしたこと。
それが初めての恋だったこと。
右京との時間がかけがえの無い物だったこと。
だからこそ、これ以上騙すことが出来ないと締め括られていた。

右京は悟巳を偲びつつ、あの店でダージリンとアールグレイのブレンドを口に運ぶ―――第10話了。

<感想>

シーズン13第10話。
脚本は真野勝成さん。

サブタイトルは「ストレイシープ」。
すなわち「迷える羊」のこと。

まさに荒井こそが「迷える羊」だったのでしょう。
そして、悟巳もまた……。

本物の飛城は「迷える羊」を一般社会から排除された者と定義しました。
すなわち行く宛も無く彷徨う者と。

しかし、彼らは死という目的地に辿り着いた。
此の時点で迷いは払拭されたのです。

だが、生き残った荒井と悟巳はその意味を求めて彷徨うこととなった。

おそらく荒井もまた自殺の理由があった筈で、同様の境遇にあった栄子たちの恨みを晴らすことで自身の恨みをも晴らそうとしたのでしょう。
言わば、私怨。
それでは恨みを晴らせても迷いを晴らすことにはならない。

しかも、荒井は飛城ではない。
いくら飛城を演じても、それは偽物に過ぎない。
復讐を果たしたとしても続かない以上は迷うだろうし、自殺したとしてもそれは飛城のコピーの死に過ぎず荒井本来の人格は彷徨うだろう。
いずれにしろ、荒井は迷い続ける。
しかし、右京により贖罪の道を示された。
彼もまた「迷える羊」ではなくなった。

一方、荒井に協力する過程で悟巳は右京と出会い恋をした。
それは彼女が生きていた証であり、目的を見つけた瞬間だったのでしょう。
だからこそ、彼女は右京を大切に想い、その思い出を胸に命を絶った。
それは自分の為でもあるが、誰かの為の行為でもある。
これにより彼女も最期に目的を見出し「迷える羊」では無くなったのでしょう。

そして、右京。
彼にとっては辛い結末となってしまいました。
悟巳にとっての安らぎは右京にとっての安らぎでもあった筈です。
どんなにか悟巳と語らい続けて居たかったか。
それはもう叶いません。

「あなたも彼女のことを?」
ラストでの荒井の問いに静かに目を伏せた右京。
否定も肯定もしませんでしたが、その無言こそが何よりも雄弁に答えを語っていたのでしょう。

スペシャルに相応しい物語でした。
さて、此処からは徒然と。

まず、羽鳥さんが出演されていましたね。
サプライズでした。

そして、日野警部補(「相棒5」11話「バベルの塔」の登場人物)も再登場。
今回も良いところを持って行きました。
カッコいい!!

でもって、右京さんも格闘シーンで活躍していました。

そう言えば、今回の荒井の犯罪はある意味で飛城の置き土産だったのかも。
「迷える羊」の話を持ち出したのも彼ですし。
とはいえ、荒井の敗北は飛城にとっては迷惑な話。
何しろ、無敗のまま消える筈がそうではなくなってしまったワケで。
だとすると、飛城の意図したところではないのでしょうか。
気になりますね。

気になると言えば、美彌子も再登場。
「シーズン13」最終話での決着となるのか……注目です!!

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この記事へのコメント
生田理穂の配役名を探してこのページを見ました。ご存知ないでしょうか?
Posted by 武井進 at 2015年01月03日 09:35
Re:武井進さん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

作中に登場した生田理穂役の女優さんについてですね。
公式HPにも記載がなく、「理穂」以外にも「里保、りほ」など様々な方法で調べてみたのですが、調べた範囲内では見つかりませんでした。

お役に立てず、申し訳ないです。
Posted by 俺 at 2015年01月03日 23:13
昨日やっと録画で見れました。
年末バベルの塔の再放送やってたのはスナイパーの日野さんの再登場のためだったんですね。

それにしても中園さんの「自己保身ねラッキーアイテムが紅茶と眼鏡=右京さん」とは(笑)。(難事件解決のために特命の力を借りることになるのはいつものことですが。)
制作側も刑事部長の説教シーンを省くために、特命係が大事件に自然に関われる理由付けに苦労してますね。

そして次回米沢さんピンチ?二年前の伊丹刑事の情報漏洩疑惑(シーズン11「オフレコ」)みたいな話になるんですかね。楽しみです。
Posted by ヒカル at 2015年01月04日 13:26
作風がちょっと変わってるように思いました
設定に無理と違和感を感じてしまいました
Posted by カズ at 2015年01月07日 20:17
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

Re:ヒカルさん

スナイパー日野警部補、いぶし銀の活躍でしたね。
登場時間こそ短かったものの、その印象は大きかった。
今後も是非、登場して欲しいキャラの1人です。

中園さんも良い味出してましたね。
キャラの個性が発揮されていました。

そして、次回は米沢さん回。
サブタイトルは「米沢守、最後の挨拶」!!
予告からして興味津々な展開になりそう。
管理人も今から物凄く楽しみです!!

Re:カズさん

確かに人を選ぶ作品だったかもしれませんね。
とはいえ、其処は「相棒」。
様々な作風がシリーズに並ぶ懐の深さが魅力なのかもしれません。
Posted by 俺 at 2015年01月08日 01:41
当日は見る事が出来ず
ようやく一度見たのですがごちゃごちゃに思えて
どなたかのレビューを読んでみようと、ここにたどり着きました
おかげで、あらためて見たものは、味わい深く、相棒らしく
良いSPでした!
細かなレビュー、ありがとうございました!!
Posted by ちび at 2015年01月10日 14:01
Re:ちびさん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

コメントありがとうございます!!
お役に立てたなら物凄く嬉しいです(^O^)/!!

本作「ストレイシープ」は飛城や荒井、悟巳らの人間関係などを中心に、なかなかスケールが大きくスペシャルに相応しい回でしたね。
今日の11話「米沢守、最後の挨拶」も楽しみです。
Posted by 俺 at 2015年01月14日 00:24
生田理穂役の件ですが、ここのコメントを見て気になったので色々と辿ってみました。

さすがに放送直後では情報が更新されていなかったのでしょうね。
現在は前田聖来さんという方のwikiにその役での出演が記載されているようです。
Posted by 和泉 at 2015年01月15日 11:01
Re:和泉さん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

教えて頂きありがとうございます!!
生田理穂役は前田聖来さんだったんですね。

管理人も気にかかっていました。
感謝です(^O^)/!!
Posted by 俺 at 2015年01月19日 21:46
遅ればせながら観ました。
右京さんの淡い恋バナが何とも良かったですね。悟巳はいかにも、乙女が年を重ねたような薄幸な雰囲気で、二人は似合っていた。
悟巳は、右京に全てを打ち明けたら良かったのに、と思うのは私だけでしょうか(^^ゞ。
そしたら警察に「保護」され、医療も受けられる。右京とも・・。
幸子さんのことも見捨てなかった右京ですし。・・妄想ですけど笑。
Posted by わたこ at 2015年03月30日 16:06
Re:わたこさん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

右京と悟巳の悲恋、切なかったですね。
仰る通り、悟巳がわだかまりを捨てて右京に何もかもを打ち明けられていたら……きっとまた別の展開があったのだろうと思うと余計に切ないです。

あったかもしれない別の可能性となりますが、もしも、右京が悟巳との恋を成就させていたら……その後の最終回へと続く展開も大きく異なっていたのかもしれません。
Posted by 俺 at 2015年03月30日 23:05
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