2015年01月17日

『キャットフード』(森川智喜著、講談社刊)

『キャットフード』(森川智喜著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

ウマそうな人間を捕まえて”キャットフード”をつくろう……高IQの化け猫プルートは、ある計画を思いつく。新鋭による猫ミステリー
(講談社公式HPより)


<感想>

「名探偵 三途川理シリーズ」第1弾。
単行本時タイトルは『キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人』。
シリーズには他に『スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ(文庫時「スノーホワイト」に改題)』と『踊る人形 名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE(2014年12月時点では未文庫)』の2冊がある。

本作は『注文の多い料理店』をモチーフに据えながら、守備側と攻撃側の攻防を描いた作品。

まず守備側が化け猫仲間であるプルートたちから、とある事情で人間を守ることとなったウィリー。
そして攻撃側がそのプルートたち。

まさに狼と市民そのもので、本作が「人狼ゲーム」に近いと評されるのも此の点からでしょう。
さらに、彼らにはそれぞれ勝利条件がある点もこれを思い起こさせます。

まず、ウィリー側の勝利条件は「二泊三日の間、人間3人を守ること。最低でもユキを守ること」。
続いてプルート側の勝利条件は「二泊三日の間にウィリーを見抜き、彼を除く人間3人を缶詰にすること」。

これに「化け猫は化け猫を殺せない」とのルールが絡み、双方が互いに知力の限りを尽くして策を講じるところが醍醐味。
三途川加入から、ラストのサプライズも素晴らしい。

もう削るべき箇所がないくらいロジカル尽くしの本作。
ロジック好きなミステリファンならば間違いなく傑作と呼べる作品の1つです。

ちなみに、後のシリーズにも続く三途川理と緋山燃の対立構造が此処からスタートする点も見逃せません。

それと、ネタバレあらすじはまとめ易いようにかなり改変を加えています。
例えば「本土へ4人の身許を照会する」方法はペンタメローネの発案ではありません。
このようにかなりアレンジしています。
すなわち、ネタバレあらすじについてはあくまでエッセンスを伝えるものに留まっています。
本作の本質を楽しむ為には原典を読むことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
ウィリー:化け猫、今回は事情により人間たちを守るべく奮闘する。

【プルート・ミート・カンパニー】
プルート:化け猫のリーダー格。実は飼い猫。
ペンタメローネ:化け猫、プルートの参謀役。
ブチ:ブチ柄の化け猫。
トラ:トラ柄の化け猫。
グリン:化け猫、ラット食品工業幹部。プルートに招かれていた。
萩原:プルートたちが案内役の人間として設定したキャラクター。誰が化けているかはその時による。

【狙われる高校生たち】
狼森ユキ:ウィリーが恩義を感じている女子高生。
緋山燃:ウィリーが化けている男子高校生。
金田清作:オールバックの男子高校生。
柏恭一:眼鏡をかけた男子高校生。

【その他】
三途川理:天才探偵。驚異的な知力で相手を常に翻弄するが……。


皆さんは、この世の中に「化け猫」が居ることをご存知だろうか。
「化け猫」は有機物、無機物なんにでも化けることが出来る猫のことだ。
もちろん、化けることが出来ると言っても無尽蔵な大きさのものは不可能だし、ハイテク機器に化けてもそれは外側だけで機能を備えることは不可能だ。

そんな「化け猫」の一匹にウィリーが居る。
ウィリーにはある楽しみがあった。
特定の人間に化けて他の人間と遊ぶのだ。
言わば、人間生活を疑似体験するのである。

ウィリーは野良猫なのだが、普段からお世話になっている相手と遊ぶのが格別であった。
今、ウィリーがお世話になっているのは狼森ユキという少女である。
ユキは異性からもモテモテの少女で、何より気遣いの細やかな猫好きであった。
だから、ウィリーはユキが大好きだ。

そして、ウィリーの今の楽しみは数日後に控えたユキたちとの旅行である。
なんでも、商店街のくじ引きで旅行を引き当てたのだそうだ。
もちろん、この旅行にウィリーは呼ばれていない。
あくまで、ユキの仲間に化けて参加するのである。

さて、旅行当日。
ユキと共に旅行に臨むのは3人。
まず、オールバックの男子高校生・金田清作。
そして、眼鏡をかけた男子高校生・柏恭一。
最後に、緋山燃である。

この緋山燃こそ、ウィリーが化けている人物だ。
他の金田や柏に比べてユキとの接点が少なかったのが選ばれた理由である。
接点が多ければ多いほど違和感に気付かれ易くなるから、それを避けたのだ。
ちなみに、本物の緋山はユキの声色を用いたウィリーにより偽の集合時間を教えられている。
彼が集合場所に現れる頃には、ユキたちは既に出発した後だ。
多少、良心が痛むがソレはソレである。諦めて貰おう。

そして、今は案内人に連れられ離島に向かっていた。
萩原と言う名の案内人は常に人懐っこそうな表情を浮かべている。
だが、ウィリーはどうも萩原が好きになれなかった……。

離島に到着した一行。
萩原の案内で辿り着いたペンションは近代的なものであった。
これに大喜びするユキたち。
ウィリーも気分を切り替えて旅行を楽しむことにした……筈だったのだが、知り合いを見かけ凍り付く。

それはウィリーと同じ「化け猫」のプルート。
此処でウィリーはプルートにある試みに誘われていたことを思い出した。

プルートは起業しようとしていたのだ。
そのジャンルは食品産業。
そして、取り扱う商品とは……人間の缶詰であった。
プルートは人間缶詰工場を建設しようと働きかけていたのだ。

そのプルートが今此処に居る。
これが意味するところは何か……ウィリーの背筋を冷や汗が流れる。
間違いない。
この旅行自体が罠だ。
プルートは商店街のくじ引きに仕掛けを施し獲物を招き寄せ缶詰にするつもりなのだ。
もしも、ウィリーが緋山の姿で居れば缶詰にされてしまうだろう。
急ぎ仲間であることを伝えなければならない。
だが、それはすなわちユキたち3人を見捨てることに繋がる。
ウィリーにとってそれは物凄く後味が悪い。

思い切って、プルートに頼んでみるか……。
少し考えたウィリーだが、プルートの性格から受け入れられるとは考えづらかった。
どうするべきか……必死に頭を巡らせていたところ、ふとあることに気付いた。
プルートたちはウィリーの存在を知らない。
これを利用すれば良いのだ。

数分後、「プルート・ミート・カンパニー」の社長・プルートは部下たちを前に鼻高々であった。
なにしろ、この人間缶詰工場は化け猫史上に残る壮挙なのだ。
その証拠に、東北にある「ラット食品工業」の幹部・グリンも駆け付けていたほどである。

ちなみに、社員は3人。
参謀役で機械に関しては天才的な頭脳を誇るペンタメローネ。
これに実働部隊のブチとトラ。
バランスも良い。

プルートが考える限り「プルート・ミート・カンパニー」の将来は輝かしいものだと確信していたのだ……そのときまでは。

ところが、そのときになってウィリーが現れた。
今更、仲間にしてくれと懇願しに来たのかとも思ったが、ウィリーの言葉は彼女の予想を裏切るものであった。

ウィリーは「今回の旅行者には手出ししないでくれ」と頼み込んで来たのだ。
グリンも来ている、此処で稼働しなければ会社の将来に関わるのだ。
プルートはにべもなくウィリーの頼みを断った。

すると、ウィリーはとんでもないことを口にしたのである。
なんと、ウィリーが4人の旅行者の誰かに化けていると言うのである。
しかも、それを伝えるや身を翻し消えてしまった。

一体、何を……と困惑したプルートだが、その意味にすぐ気付いた。
慌てて部下に後を追わせたが、既にウィリーは4人のうちの誰かに姿を変えた後であった。
ウィリーが誰に化けているのかは分からない。

これにプルートは頭を抱えた。
人間に人間の法があるように、化け猫にも化け猫の法があるのだ。
その法では同族殺しは堅く禁じられている。
これに反すれば、化け猫の法に背いたことで罪に問われるだろう。
曲がりなりにもプルートは企業家の立場である。
違法なことなど出来よう筈もない。

つまり、もしも誤ってウィリーが化けている人間を殺してしまえば同族殺しに問われるのである。
ウィリーに知らされる前ならば、知らなかったことで済まされる。
知らされた後でも、それが誰かさえ分かればウィリーを避けて缶詰にしてしまえば良い。
しかし、そのどちらも封殺されてしまったのである。

プルートは地団太を踏んだ。
ウィリーの奴、頭が良いとは思っていたが此処まで機転が働くとは……。

困り果てたプルートはとりあえず4人を観察することにした。

例えば、化け猫ならば服を着替える必要が無い。
着替えを用意していないのがウィリーだ。
ところが、ウィリーは人間好きな化け猫である。
成り切る為に着替えまで用意していた。
全く見抜けない。

このようにプルートはウィリーと他の3人を見極めようとするのだがどうしても掴めない。

其処で参謀役のペンタメローネに相談することにした。
正直、ペンタメローネは自身の頭脳を鼻にかけプルートに敬意を払っていない。
頼らずに済むならそれに越したことは無かったのだ。
だが、もはやそうは言っていられない。

すると、ペンタメローネは2つの方法を提示した。

1つ目、ウィリーが化けているにも関わらず他の3人が動揺していないからには化けている人間は実在人物である。
本土へ誰かを送り、4人の身許を確認することで誰に化けたか確認してはどうか。
ウィリーが化けた誰かは本土に残されている筈である。
すなわち、その人物以外は缶詰に出来る。

これにはプルートが難色を示した。
実はこれは既にプルートも考えていた案であった。
確かに確実だが、手間がかかるのだ。

2つ目、4人の中からウィリーを見抜こうとするから困難なのである。
思い切って4人全員に罠をかけたらどうか。

ウィリーごと罠に掛けては意味が無いと驚くプルートだが、その案を聞くと大きく頷いた。
悪くは無い……プルートはGOサインを出すことに。

その午後の事である。
なんとかなりそうだと胸を撫で下ろす緋山ことウィリー。
すると意外な展開に。

萩原が「海で泳いではどうか」と奨めて来たのだ。
今では、ウィリーは萩原が化け猫たちの誰かが化けたものであると分かっている。
その提案には何か罠が仕掛けられているに違いない。

だが、同時にそれはこれ以上ない脱出の機会でもあった。
実はウィリーにとっても海への外出は願っても無いことだったのである。
ウィリーの脱出案はこうだ。

それとなく浜辺に外出。
海に泳ぎ出たところを見て、ウィリーが船に変身しユキたち3人を囲い込む。
その状態で本土へ向かえば良い。
これでウィリーを傷付けずにユキたちへの手出しは不可能になる。

しかし、ウィリーがこの案を強行しなかったのにも理由があった。
ある危険が潜んでいたからである。
その危険さえ排除出来れば……とりあえず、ウィリーは様子を見ることにした。

午後になりウィリーたちは海へと出た。
無邪気に笑うユキの姿に改めて守り抜かねばと誓うウィリー。

そんなウィリーは決断を迫られつつあった。
距離的には申し分ない、今なら船に化ければ脱出出来る。
だが、あの危険の可能性がある。
それを見極めるにはもう少し待つ必要があった。

数分が経過した。
背後から起こった悲鳴にウィリーは危惧が的中したことを確信した。
見ればユキの水着が猫に変わっていた。
ウィリーはそれがペンタメローネだと気付いた。
やはり、罠だったのだ。

ペンタメローネの案は敢えてウィリーに脱出の機会を与えることであった。
海に出たところでウィリーは船に化けるだろう。
そのとき、残る3人の持ち物に化けて紛れ込んでいれば……船に化けたウィリーは手出しできない。
此の時点で勝利確定である。

だが、ペンタメローネは重要なことを失念していた。
海に持ち込む私物と言えば、水着しかない。
水着は海面の下に沈むのだ。
如何に化け猫と言え、生き物である以上は呼吸が必要だ。
海の下では呼吸が出来ない。

結果、ユキの水着に化けたペンタメローネは溺れたのだ。
だから変身が解けた。

今ならば脱出可能だ!!
ユキたちを助けようとするウィリーだが、彼にも誤算があった。

なんと、猫により水着が奪われたと思ったユキが慌てて浜辺へ戻り始めたのだ。
しかも、身体を隠すべくペンタメローネを抱いた状態である。
最初は暴れていたペンタメローネも次第に抵抗が小さくなっていった。
もはやぐったりとしたままピクリとも動かない。

ウィリーにははっきりと分かった。
憐れペンタメローネは不慮の窒息死を遂げたのである。

プルートは怒り狂っていた。
貴重な部下が失われたのだ。
しかも、事態は一向に解決しない。
其処で遂に切り札を投入することとした。
ある人間を招くのだ。

その名は三途川理。
プルートの飼い主にして名探偵である。
彼の性格ならばプルート側に立つことは間違いない。
それほど倫理観の箍が外れた人物である。
こうして、本土に三途川を迎えに出ることに。

その頃、緋山はと言えば離島を臨む浜辺にてポータブルゲームに興じていた。
昨日、置いてけぼりを喰らった緋山は半ば不貞腐れていたのである。

同日夜、一艘のボートが離島へと辿り着いた。
周囲を経過していたウィリーは其処から萩原が降りる姿を目にした。
他に降りる人間は居ない。

これを見たウィリーは激しく動揺した。
わざわざ彼らが本土へ向かった理由、それは1つしか考えられなかったからである。
それこそ、ペンタメローネが最初に挙げた方法。
すなわち、本人を確認しに行ったのではないか。
もし、そうならば―――ウィリーは焦り始めた。

その日の朝、ウィリーの気も知らず和気藹々と朝食を口にする金田たち。
と、金田が醤油をズボンに零した。
そそっかしい金田を笑う面々、とは言えウィリーはそれどころではない。

そんな中、萩原がある提案をして来た。
地元の名所があるので案内したいと言い出したのだ。

罠か……警戒するウィリーだが拒否することは正体露見に繋がりかねない。
様子を見ることに。

ユキたちが萩原に連れられやって来たのは奇妙な石碑の前。
萩原によれば「この石に近付くと化け猫に殺されてしまう」らしい。
どうやら、萩原はユキたちにこの石に触れさせようとしているようだ。

それが何を意図しているのか……考えを巡らすウィリーだが目的が分からない。
しかし、何としてでも阻止すべきと腹話術を用い萩原の声を真似て接触を妨害する。
些か奇妙な事態に陥ったがユキたちの誰がウィリーかまでは見抜ける筈がない。
これで何とか切り抜けられた筈だった。

ところが、ペンションへと戻ったウィリーは現在の金田が本物の金田ではないことに気付く。
何時の間にか醤油の染みが消えて居たのだ。
明らかに不自然であった。

ウィリーは呆然としていた。
一体、何のミスがあったのだろうか。
金田が消えてしまった。
石碑での対応に問題があったとは思えない。
やはり、緋山が確認されてしまったのか……。
だが、それならユキたちが無事である理由が無い。
困惑するウィリー。
残された最後の手段を何時用いるかタイミングを計り始めた。

さらに、ウィリーを追い詰める事態が発生。
なんと、風呂場で柏が殺害されていたのである。

金田に続き、柏まで。
やはり、なんらかの方法で見抜いていると考えるべきだ。
もしかすると、緋山を確認出来たのかもしれない。
だとすると、緋山に化けている意味は無い。

ウィリーは最後の手段を用いることに。
その手段とはユキの前でユキに化けることだ。
これでプルートたちにはおいそれと手が出せない。
もしも間違えば2分の1でウィリーを殺してしまうからだ。

だが、この方法ではユキ自身を驚かせてしまう。
さらに、ユキしか守ることが出来ない。
だからこそ、最後の手段だったのだ。

案の定、この最後の手段にプルートたちは動揺。
迂闊に手を出せないように。
その隙にウィリーはユキを連れ出し停めてあったボートで脱出した。

この間、ウィリーは相手の戦力を計算する。
相手にはプルート、ブチ、トラ、グリン、ペンタメローネの化け猫が5人だ。
このうち、ペンタメローネは死亡。
脱出時に萩原が確認されており、他にブチ、トラ、グリンらしき猫を確認している。
あのときの萩原はプルートだったのだろう。
だとすれば、船上には誰も居ない。
安心したウィリーは混乱するユキを宥めるべく変身を解こうとした。

途端、何者かに船上から振り落とされてしまう。
馬鹿な……もうプルート側の手下は居ない筈!!
驚くウィリーの前でプルートが姿を現す。
その手には拳銃が握られていた。

「どうして、お前が!?」
「それこそが、ご主人様の策だったのよ」
ユキのように混乱するウィリーにプルートは嫌味な笑顔を浮かべる。
見抜かれたことも驚きだが、この事態に至っていることも驚きであった。

ボートを奪ったプルートは離島へと戻り始める。
ウィリーは力を振り絞るとプルートから拳銃を奪い、ボートのモーターを撃ち抜くことで精一杯であった。

ボートはもたもたと少しずつウィリーから離れて行く。
とはいえ、ウィリーが追い付くには遠過ぎた。
ふと見れば、本土はすぐ其処である。
もう一息だったのに!!
悔しがるウィリーの脳裏にある可能性が浮かんだのはその時だ。

数十分後、離島にユキを拘束したプルートが到着した。
これを出迎える三途川、ブチ、トラ、グリンたち。
彼らは勝利の雄叫びを上げる。

「それにしても此処まで上手く行くとは……」
感心しきりの表情を浮かべるグリン。
その賛辞は三途川に贈られていた。

すべての計画を立てたのは三途川であった。
彼はプルートから協力を求められるや「それは面白そう」とあっさり同朋を売ったのである。
此の点、プルートが見込んだ通りの人物であった。

さらに、悪魔的な計画を立てた。
三途川はペンタメローネの計画の反省点が「全員を罠にかけたこと」にあったと指摘。
そんなことをせずとも、もっと簡単に調べる方法があると提案した。

4人を順番に1人ずつ拘束し、1人不在の間に残る3人の様子を見るのだ。

まずは金田が拘束された。
代わりに化け猫が金田に化けた。
そして、萩原は例の石碑の罠を仕掛けた。

此処で何も無ければ見分ける方法は無い。
だが、ウィリー以外に不可能な妨害があれば捕まえた金田は人間であると証明される。
そして、ウィリーは腹話術を用いてしまった。
金田は人間であると証明され缶詰になった。

次いで柏が拘束された。
そして、化け猫の1人が柏の死体に化けた。

結果、ウィリーはユキに化けた。
此の時点で柏が人間であることが証明された。
柏は缶詰にされてしまった。

残るはユキだ。
ある方法を用いてウィリーに化け猫の数を誤認させ隙を突くことに成功したのである。

こうして圧勝を収めたかに見えた三途川とプルートたちだったが……。
少し遅れてモーターボートがやって来た。
乗っているのは緋山だ。
その手には先程の拳銃が握られている。

「何よ、ウィリー。あんたには何も出来ないわよ」
嘲笑うプルート。
当然だ、同族殺しは大罪である。

しかし、目の前の緋山は躊躇なく撃った。
都合4発。
それは的確にプルート、ブチ、トラ、グリンを射殺した。

「そんな馬鹿な……」
視界が真っ赤に染まるプルートは最後に呟いた。
「ご主人様、仇を……」と。

「こんなの反則だ〜〜〜」
一方、当のご主人様である三途川は1人で憤りの声を上げ続けている。
その声を尻目にボートは走り去る。

ボート上では助け出されたユキが何が何やら分からないと言った様子で呆然としている。
その目の前で、ウィリーの声が。
それは緋山へと向けられたものだった。

その声に緋山は三途川が仕掛けたウィリーを誤認させたトリックを明かす。
それは至極シンプルなモノ。
言わば、先の緋山やウィリーと同じだ。

そもそも萩原とはプルートが主人である三途川を模して化けたものだった。
その萩原役を三途川本人が演じたのだ。
これにより人数がずれたのだ。

プルート側にはプルート、トラ、ブチ、グリンの他に三途川自身が居たのである。
萩原を三途川が演じ、トラ、ブチ、グリンをウィリーが確認した。
だからこそ、プルートがボートに潜むことが出来たのである。

ウィリーが目撃した深夜に島へ戻った萩原こそ三途川本人だったのである。
おそらく、プルートが迎えに出向き、帰路は猫の姿に戻り抱かれていた為に見落としたのだろう。

そして、これと緋山やウィリーが同じということは……。
ウィリーは本土に戻り緋山に助けを求めたのだ。
浜辺でボートを借りた緋山たちは戻って来て、化け猫の法に縛られない緋山がプルートたちを射殺したのである。

「それにしても、お前凄いなぁ……」
咄嗟のことながら状況を全て理解した緋山。
さらに緋山は三途川の策を全て看破していた。
ウィリーは緋山に三途川を超える名探偵の資質を見出し称賛するのであった―――エンド。

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