日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season13」第12話「学び舎」(1月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
公園で男性の他殺体が発見された。
どうやら、前夜のうちに殺害されたらしい。
現場では、犯行時刻前後に若者たちが何やら騒いでいたとの目撃証言があった。
その所為か現場にはゴミや割れた瓶の破片が散乱しており、鑑識作業に支障を来たすほどであった。
下足痕も多数検出され、米沢は頭を抱える。
そんな中、伊丹たちは不良グループによる犯行と目星を付けるが……。
一方、捜査に乗り出した右京(水谷豊)と甲斐(成宮寛貴)は遺体の身元を突き止めた。
被害者は協和堂大学に勤務する生物学教授・池本正(長谷川公彦)。
昆虫学を専門としており、どうやら公園には研究の為の虫を採取しに訪れていたらしい。
池本研究室を訪問した右京たち。
すると『大いなる山脈』や『日本建築学専門』など明らかに池本の研究分野とは異なる書物を多数発見する。
池本研の助教授によれば、そのどれもが大学図書館の蔵書で読みもしないのに借りて来させた物らしい。
池本曰く「道標」なのだそうだが……。
しかも、それに関連して池本は「図書館で素晴らしい大発見をした」と興奮気味に大騒ぎしていたのだそうだ。
その帰路、大学構内を歩いていた右京たちは奇妙な騒動に遭遇する。
なんと、女子大生が大声を上げながら多数の同級生の前で脱衣していたのだ。
興味を抱いた右京がその女子大生・久我沢舞に事情を確かめたところ「何者かから指示が届いた為」らしい。
どうやら、舞がSNSに投稿した恥ずかしい写真を利用して何者かが彼女を操ったらしい。
しかも、同様の騒動が複数件発生していたことも判明する。
そのどれもが、舞と同じ事情であった。
ちなみに、舞は日本文学科明治文学専攻で将来は研究者となるのが夢なのだそうだ。
しかし、日本文学科は学内でも立場が弱く研究者となるのはかなり難しいらしい。
事情を右京に語る間、舞は常に裸眼の目を細めている。
本の虫の彼女は、どうやら視力があまり良くないらしい。
一方、殺害当日に起こった公園での若者たちの騒ぎもこれと同じく何者かの指示で集まった学生たちによるものであったことが判明。
それぞれが「公園で瓶を2本割れ」「ゴミをばら撒け」などと指示されていたようだ。
この指示を出していた何者かを追った右京たち。
すると、ソーシャルコミュニケーション学を研究する吉野助教授が指示を出していたことを突き止めた。
吉野によれば「こういった騒動を起こすことでSNSの利便性だけではなく危険性を訴え、ソーシャルコミュニケーション学を学科として成立させる」目的だったらしい。
どうも、学科として成立させることで給料アップを狙っての行動のようだ。
なんとも傍迷惑な結論に眉を顰める右京たち。
しかも、不思議な事に公園の騒ぎだけは吉野も関与していないと言う。
同じ頃、池本が大学図書館から借りた蔵書の一部が「ミツオ」なる人物に渡っていたことが判明。
伊丹たちはミツオの身柄を拘束する。
「ミツオ」は本名・中塚光男。
元投資ファンドのやり手社長であったが、事業に失敗し公園で生活していたらしい。
当時、中塚は「学問では金は稼げない」と主張していたのだが……。
それから数年、会社を潰した中塚はある日公園で池本と出会った。
池本はそれは楽しそうに彼の専門分野である昆虫について語って聞かせた。
これに興味を抱いた中塚が学問に興味を持ち、池本の力添えを受けて図書館を利用していたらしい。
さらに、中塚は興味深い証言を行う。
なんと、池本から「大学のファンド運用」について相談を受けていたのだ。
報告書を一目見た中塚は「3000万円の損失を補填」していることに気付いたと言う。
これを池本に教えて数日後、池本は「大学は知性を流出させていた」と憤慨していたそうだが。
これを聞いた右京は「大学理事長が損失補填の為に図書館の蔵書を密かに売却した」と推測。
大学図書館を確認し、蔵書リストにある学術的な価値の高い品が何点も消えていることを確認する。
さらに池本が借りていた『大いなる山脈』、『日本建築学専門』といった本の配架を確認し「道標」の意味に気付く。
池本が借りた本を斜めに追うとある箱に繋がったのだ。
しかし、それは空き箱となっていた。
箱書きによれば、中身は「漱石の自筆原稿」……ではなく「漱石へ宛てた生徒からの書簡」であった。
これが池本の述べた「大発見」になるのだろうか!?
右京たちは消えた中身を追うことに。
古美術店を調べた結果、書簡を発見する。
書簡の1つを手にした右京は目を通しつつ「月がきれいですね」と呟く。
一方、米沢の奮闘の甲斐あって、現場から眼鏡のレンズ片が検出された。
どうやら、犯人のもののようだ。
これを見た伊丹たちは眼鏡をかけた人物=理事長を思い浮かべ、取調を開始する。
右京たちはと言えば、吉野のパソコンの中身を確認。
其処には様々な写真が保存されていた。
その1つに右京は「ある発見」をする。
伊丹たちにより、理事長が取調を受けた。
理事長は損失補填の為に秘密裏に蔵書を売却していたことを認める。
まず、高価な巻物、続いて閲覧数の少ない物を選んで手放したらしい。
これに池本が気付き、理事長に直談判していたことも分かる。
池本は「選りによって何故、あの資料を!!」と激怒したと言うが……。
割って現れた右京は理事長に「月がきれいですね」と問うが、彼は「意味が分からない」と言った表情を浮かべる。
これを確認した右京は真犯人のもとへ。
右京が向かった先に居たのは舞であった。
舞に対し、ある写真を見せる右京。
それは吉野のパソコンから見つかった写真、其処では彼女は眼鏡を着用していた。
普段の舞は眼鏡を使用していたのだ。
犯行現場で発見された割れた眼鏡こそ、舞の物であった。
例の学生たちによる騒ぎは証拠品を隠滅するべく舞が図ったものだったのだ。
ゴミやジュースを撒かせて現場を荒らしたのである。
これに犯行を認める舞。
だが、舞は池本に対しての憎しみを露にする。
ある日、舞は図書館で池本に話しかけられたら。
以来、彼女は池本と親交を結ぶように。
ところが先日、舞は池本教授から驚愕の事実を知らされる。
理事長が図書館にある「日本文学」関連の蔵書を秘密裏に売却していたのだ。
池本教授はこの事実を教授会で告発しようとしていた。
もしも、教授会で告発されてしまえば、ただでさえ立場の弱い日本文学科は存続も危ぶまれかねない。
舞は「大学は経営者や教授たちの物じゃない。私たち学生の為の物でしょ!!」と叫び、池本に翻意を迫った。
だが、池本はこれを譲らず揉み合う内に殺害してしまったのだ。
これを聞いていた右京は舞にある逸話について語り出す。
夏目漱石が「アイ・ラブ・ユー」を何と訳したか。
彼は「月がきれいですね」と訳したのだ。
この逸話はあくまで伝説とされていた。
ところが池本は、売却された資料の中にこの逸話が事実である証拠を見出したのだ。
それが例の「夏目漱石へ宛てた生徒からの書簡」であった。
池本は図書館から『大いなる山脈』らを借り出すときに、舞を介していた。
実は池本はこれを通じて「書簡」に気付かせようとしたのだ。
それこそが例の「道標」である。
大学に寄贈されてから40年、誰も中身には目を留めていなかった書簡。
池本は蔵書売却を調べて行くうちに「書簡」に目を留め、これが「大発見である」と気付いた。
其処で舞に発見させ、彼女の研究の力になろうとしたのだ。
ところが、その直前に理事長がこれを売却してしまった。
池本が理事長に「選りにもよって」と悲嘆したのはその為だった。
「私、なんてことを……」
池本が決して自身を軽んじていたワケではないと知った舞は犯した罪を後悔する。
右京たちに連行される舞。
一方、これと入替りに中塚光男が借りていた書籍を手に図書館を訪れた。
それは池本が望んだ理想の姿。
大学は経営者の為の場所でも、教授の為の場所でも、学生の為の場所でも無かった。
身分は問われず年齢も性別も問われない其処は、学問を志す全ての「学究の徒」の為の場所だったのである―――第12話了。
<感想>
シーズン13第12話。
脚本は藤井清美さん。
サブタイトルは「学び舎」。
そして、テーマは「学び舎は誰の物か」。
自身の栄達の為に学問を曲げた吉野。
学問の場でありながら経営の為に学術資料を売るなど、本末転倒となった理事長。
夢を語りつつも「あくまで大学は学生の為の物である」と定義し固執した舞。
一度は学問を否定しつつも、後に学問の楽しさに目覚めたミツオこと中塚。
そして「大学は学問を志す全ての者の為にあるべき」との信念を抱いていた池本。
舞と池本の間には絶望的なほど考え方の違いが横たわっていた。
舞は「大学は学生の為の物」=「学生でなければ学問が出来ない」と思い込んでいた。
これに池本は中塚に見られるように「学生でなくとも学問を志せば学問は出来る」と考えていた。
池本は書簡について舞に答えを教えずヒントに留めたところからも、学問へのスタンスは「自主性に委ねるタイプ」。
この考え方の違いが悲劇に繋がったのでしょう。
そして、連行される舞に代わり現れる中塚などラストにて痛烈なメッセージが主張されていましたね。
伏線もテーマに結び付くものでしたし、かなりテーマ性の高い回だったと思います。
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