<あらすじ>
伊勢にある外宮前法律事務所は、あまりの人の良さから負けが多いため“負け弁”と呼ばれる弁護士・松月真志(大杉漣)が所長を務めている。それゆえ、よそで弁護を断られ頼みの綱としてやってくる人が後を絶たない。お金にならない案件ばかり扱う所長に、松月の姪で弁護士の中里実花(原田夏希)と、事務の和田千鶴子(宮崎美子)は頭を悩ましている様子だ。そこへ新たな弁護士として深町代言(石塚英彦)がやってくる。東京で数々の刑事事件を扱ってきた深町だが、勝つことしか頭にない事務所のやり方に辟易し、刑事事件は担当しないことを条件に事務所へ来た。
ある日、元バス運転手・前納規夫(ベンガル)が事務所に現れる。不在の松月の代わりに深町が対応すると「逮捕されるかも」と頭を抱えだす。近所で発生したひき逃げ事件の現場に残された破片などが、前納が所持する車と一致したのだ。事件当夜、車で居酒屋に向かった前納は泥酔し、店を出た後の記憶がまったくなかった。しかし翌朝自宅にはいつもバックで停める車が、頭から停められており、自分は運転していないと主張。後日、警察に連行されてしまうが、弁護を引き受けた松月は、「力になる」と前納を励ます。
そこで深町が居酒屋の店主・寺家卓次(近藤芳正)へ話を聞きに行くと、かつて東京で検事していた滝川要(石黒賢)と再会する。今は津地検のエースで、しかも前納の事件の担当検察官。滝川は何かを掴んでいるようだが、深町に手の内を明かすことはなかった。
前納の事件と並行して、給料が未払いだというタクシー運転手の川井孝義(デビット伊東)の相談を受けた深町は、川井の勤務先「パールタクシー」を訪問。社長と話をつけ、月末には給与を支払うと確約させる。それを川井に報告するが、傷だらけの手の甲に目が行く深町だった。
そんな矢先、松月が心筋梗塞で倒れてしまう。うなだれる実花を見た千鶴子は、深町に前納の事件の弁護を依頼。しばらくためらっていた深町だったが、“負け弁”の道を突き進む松月の姿を思い返し、拒否していた刑事事件を受ける決意を固める。
(テレビ東京公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
外宮前法律事務所は伊勢にある。
所長は「負け弁」と呼ばれる弁護士・松月真志。
その名の由来は、松月が必ず負けると分かっている弁護でも引き受けることにあった。
松月は「誰にでも弁護を受ける権利はある」と考え、それを真摯に実行していたのである。
それ故に、多くの依頼者が最後の頼みの綱として松月のもとを訪れる。
当然、松月が担当する案件は利益も少ない。
これに松月の姪で同じく弁護士の中里実花や事務員の和田千鶴子は頭を悩ませていた。
其処に新たに深町代言弁護士がやって来る。
深町は松月の考え方に共鳴したのだ。
そんなある日、元バス運転手の前納規夫が轢き逃げの罪で連行されることに。
轢き逃げ現場から前納が所持する車の破片が検出されたのだ。
前納は犯行を否認。
こうして、松月が弁護を担当することに。
だが、前納の無実を証明するものは何もなかった。
実は前納は事件当夜に寺家卓次が経営する居酒屋へ車で出かけており強かに泥酔していた。
その間の記憶が全く無かったのである。
しかも、乗って出かけた筈の車は前納家の車庫に停まっていた。
これでは客観的には前納の犯行を否定する要素は無い。
ただ、前納によれば必ずバックで停車する筈があの日に限っては頭から停められていたのだそうだが……。
これが事実だとすれば、何者かが居酒屋から前納の車を盗み轢き逃げを犯した可能性も浮上する。
松月をサポートすべく事件を調べ始めた深町。
ところが、寺家は何故か多くを語ろうとしない。
矢先、東京で検事をしていた滝川要と再会する。
滝川はエース中のエースと呼ばれる俊英。
今は津地検に赴任しており、なんと前納の事件の担当であった。
どうやら、何かを掴んでいるらしいのだが……。
並行して、タクシー運転手の川井孝義から賃金未払いについて相談を受けた深町。
川井の勤務先である「パールタクシー」を訪問し、支払いを約束させることに成功する。
喜ぶ川井、どうやら川井には病床から動けないタケシなる息子が居るらしい。
川井が仕事中はヘルパーの大島沙良がタケシをケアしているそうである。
直後、松月が心筋梗塞で倒れてしまうことに。
命に別状は無かったが、今無理をさせるワケにはいかない。
実花に依頼され、松月に代わり深町が前納の事件を本格的に担当することとなった。
まず、深町は前納が帰宅時に川井家前を必ず通っていたことに注目。
事件当夜に、タケシが前納を目撃していたかどうかを確認しようとする。
前納によれば、いつも通りがかった際にはクラクションを3回鳴らしてタケシへの合図としていたそうだが。
「前納さんが歩いて帰ったと分かったら救えるの、教えてくれない?」
深町に同行した実花の問いにも、無反応なタケシ。
付き添っていた川井によれば、タケシはマグネットの文字でコミュニケーションを取るらしい。
だが、今回に限っては動け無いようだ。
これに実花は肩を落とすのだが……。
タケシの部屋を出て数分後、何やら部屋から物音が。
慌てて駆け付けるとタケシはマグネットの文字を握っていた。
その文字は「た」「け」「し」の3文字。
自分の名前を伝えただけかとガッカリする実花に対し、深町は意味がある筈と考える。
この謎を解くべくタケシのヘルパー・大島沙良を訪ねた深町。
ところが、沙良はあまり事態を真面目に考えてはいないようで、恋人の山口駿と喋ってばかり。
実花はこれに怒り出すが、深町に窘められる。
それから数日、この謎にかかりきりだった深町は遂に謎を解明することに成功する。
寺家や川井らと呼び集めた深町は其処で謎解きを開始。
マグネット文字「た」「け」「し」の意味はその向きにあった。
あのとき、タケシは「し」だけ方向を変えつつ裏返していたのだ。
すなわち「つ」を示していた。
タケシが示したのは「た」「け」「つ」の3文字だったのである。
そして重要だったのはあの時の実花の問いだ。
「前納さんが歩いて帰ったと分かったら救えるの、教えてくれない?」
すなわち、前納が車以外の交通手段で帰ったことが分かればそれで良いのだ。
これを聞いてタケシは前納が「た」「け」「つ」で帰ったことを報せようとした。
最後に、何より重大なのは3文字の順番だ。
「たけつ」ではない。
タケシが伝えようとしたのは「けった」だったのだ。
それは東海地方で「自転車」を意味する言葉。
そう、あの夜の前納は自転車で帰宅したのだ。
そして、タケシの前でクラクションに代わりベルを3回鳴らした。
ところが、酔っ払っていた前納はこれをすっかり忘れていたのだ。
では、この自転車は誰の物か?
深町は寺家が何故、前納の無実を口にしないかが気にかかっていた。
その理由こそがコレだ。
あの夜、寺家は酔っ払った前納を歩いて帰すに忍びなく自転車を貸したのだ。
だが、それと知れれば自転車も車両である。
飲酒運転を勧めた罪に問われる。
もしかすると、店が閉店に追いやられるかもしれない。
前納が連行される前に自転車を回収していたことで証拠も無い。
其処で寺家は黙秘を決め込むことにしたのである。
深町たちの説得で寺家が証人となり、前納の無実が証明された。
こうなれば、問題は誰が真犯人なのかだが……。
深町には思い当たる人物が1人居た―――山口駿だ。
あの夜、山口は沙良に会うべく前納の車を使ったのである。
そして、轢き逃げ事件を起こしたのであった。
この事実を滝川に伝えようとする深町。
だが、滝川には既に全てが御見通しであった。
滝川は全体像を見抜きつつ、山口が出頭するよう取り計らっていたらしい。
だからこそ、前納の起訴に時間をかけていたのだ。
「流石は滝川」と感心する深町なのであった―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は大門剛明先生『負け弁・深町代言 沈黙する証人』(中央公論新社刊)。
『負け弁・深町代言 沈黙する証人』は「負け弁・深町代言シリーズ」第2弾。
シリーズには他に第1弾『ボーダー 負け弁・深町代言』や第3弾『有罪弁護 負け弁・深町代言』がある。
ちなみに深町の名前・代言には「代言人=弁護人」との意味が含まれています。
そんな原作『負け弁・深町代言 沈黙する証人』のあらすじは次の通り。
<あらすじ>
・文庫版
民事訴訟で事務所を潤す深町の下に、ひき逃げの容疑者が無実を訴えやってきた。所長が弁護を引き受けるが、事件当夜、酒を呑んでおり、記憶がないとわかる。
・キンドル版
深町が勤める負け組法律事務所に、ひき逃げ事件の容疑者が飛び込んできた。泥酔していたため記憶はないが、自分は運転しておらず無実だと訴える。相手は敏腕で知られる滝川検事。どう見ても勝ち目のない戦いなのに、松月所長は弁護を引き受ける。人の良さに呆れる深町だったが、松月の信念は事件の意外な真相を照らし出す......。書き下ろしシリーズ、第2弾。
(中央公論新社公式HPより)
ちなみに、他のシリーズ作品のあらすじは次の通り。
<シリーズ第1弾『ボーダー 負け弁・深町代言』あらすじ>
・文庫版
若手イケメン弁護士として活躍していた深町代言はとある事件で東京を離れる。伊勢で所属したのは、志は高いが実績はまるでナシな負け組弁護士が集まる貧乏事務所だった。
・キンドル版
テレビでも人気の若手弁護士・深町代言は、ある事件をきっかけに東京を去る。流れ着いた伊勢で所属したのは、志は高いが裁判で勝てない"負け弁"が集まる貧乏法律事務所。刑事事件への情熱を失った深町だが、ニート強殺事件の被告人の無罪を信じる同僚・実花の窮地に再び立ち上がる。
(中央公論新社公式HPより)
<シリーズ第3弾『有罪弁護 負け弁・深町代言』あらすじ>
・文庫版
薬物使用のうえ、人を殺した青年の事件が持ちこまれる。無罪を求める親。迷いのなか弁護を引き受けた深町に降りかかる、さらなる試練とは!? 書き下ろし。
・キンドル版
息子を無罪にしてください――深町の元に持ち込まれたのは、LSDを摂取して男を撲殺した青年の弁護だった。無罪にするには心神喪失を訴えるしかない。深町は事件を調べるなかである事実に辿りつくが、被害者の娘を見て心は揺れる。本当に無罪にしてよいのか。一方、苦悩し法廷に立つ深町を傍聴席から見つめる一人の男がいた......
(中央公論新社公式HPより)
どうやら本作は第1弾と第2弾を原作にしたドラマ化の様子。
とはいえ、主人公周辺の設定がかなりアレンジされているのかな。
ちなみに、著者である大門剛明先生原作のドラマと言えば「水曜シアター9」時代の『雪冤』、「水曜ミステリー9」の『レアケース』に『罪火』などがあります。
いずれも過去記事有りますね。
特に『雪冤』については当ブログもまだまだ初々しい頃で、管理人も振り返ると感慨深いです。
・水曜シアター9 第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞 ダブル受賞作品 雪冤「あなたの息子は無実です〜死刑確定した息子の父に突然の告白電話 再審奔走する父の涙(ドラマスペシャル〜死刑囚の息子は無実だ冤罪を訴える父に届く密告電話!沈黙の15年に秘められた衝撃の真実!)」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「雪冤」(大門剛明著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・水曜ミステリー9「レアケース 生活保護課の殺人事件簿 不正受給は許さない格差社会の闇!消えた凶器と4人の容疑者!!衝撃の逆転真相は!?」(3月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・水曜ミステリー9「冬の特選企画 罪火 花火が消した少女の叫び! 大胆不敵…悪を公言する男VS復讐に燃える母!日記が示す逆転の真相は」(12月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
弁護士が主役にも関わらずライバル役の検事が美味しいところを全て持って行くとのなかなかに珍しい結末でしたね。
シリーズにも続編があるらしいようですし、続編もありそうですね。
◆関連過去記事
【大門剛明先生原作ドラマ関連記事】
・水曜シアター9 第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞 ダブル受賞作品 雪冤「あなたの息子は無実です〜死刑確定した息子の父に突然の告白電話 再審奔走する父の涙(ドラマスペシャル〜死刑囚の息子は無実だ冤罪を訴える父に届く密告電話!沈黙の15年に秘められた衝撃の真実!)」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・水曜ミステリー9「レアケース 生活保護課の殺人事件簿 不正受給は許さない格差社会の闇!消えた凶器と4人の容疑者!!衝撃の逆転真相は!?」(3月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・水曜ミステリー9「冬の特選企画 罪火 花火が消した少女の叫び! 大胆不敵…悪を公言する男VS復讐に燃える母!日記が示す逆転の真相は」(12月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【大門剛明先生著作関連記事】
・「雪冤」(大門剛明著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
<キャスト>
深町代言:石塚英彦
松月真志:大杉漣
滝川要:石黒賢(友情出演)
中里実花:原田夏希
和田千鶴子:宮崎美子
深町紀世彦:山本學
寺家卓次:近藤芳正
前納規夫:ベンガル
川井孝義:デビット伊東
倉田純一:新井康弘
飯田恒夫:村松利史
寺家卓也:根岸拓哉
山口駿:碓井将大
大島沙良:宇野愛海
島谷龍生:永倉大輔 ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
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