ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
色鮮やかな塗装死体 美しく悽愴な連続殺人 鮮やかな赤に塗装された死体が、深夜マンションの駐車場で発見された。死んでいた男は、赤井。彼の恋人だったという女性が「犯人が誰かは、わかっている。それを証明して欲しい」と保呂草(ほろくさ)に依頼する。そして発生した第2の事件では、死者は緑色に塗られていた。シリーズ完結編にして、新たなる始動を告げる傑作。
(講談社公式HPより)
<感想>
森博嗣先生「Vシリーズ」最終作。
タイトルの意味は表向きは「被害者の状態」。
その真の意味は、五行説にて「赤青黒白」が「青春、朱夏、白秋、玄冬」であること。
すなわち「春夏秋冬」となり「一年=四季」を示すことから。
そう、四季が出て来ます!!
実はこれこそが本作の仕掛けの1つ。
この四季登場により本作の時間軸が明らかに。
それは「S&Mシリーズ」よりも過去の出来事であった。
しかも、本作では林の祝儀袋にて紅子たちとあの人の関係も匂わせています。
この解答は「S&Mシリーズ」と交錯する「四季シリーズ」の第3弾『四季 秋』にて明かされます。
同時に『四季 秋』では『すべてがFになる』での「ミチルの死の真相」も語られるので読むべし!!
さらに本作では「操りの構図」にも注目。
本作の真犯人は四季に操られ、その真犯人は別の犯人を操る。
『赤緑黒白』のテーマはこの「操りの構図」と言えるでしょう。
そんな『赤緑黒白』なのだが「S&Mシリーズ」にて『すべF』と『有限と微小』が対になっていたように、実は『黒猫の三角』と密接な関わりを持つ作品となっている。
「秋野秀和」の存在。
そして「あいうえおのマトリクス」。
『黒猫の三角』を既読の方は本作『赤緑黒白』も読むべし!!
そう言えば、紅子の心中を知った上での保呂草の騎士道精神の発露も見所です。
なお、ネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むべし!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
瀬在丸紅子:「Vシリーズ」の主人公。
保呂草潤平:「阿漕荘」の住人、探偵事務所を営む男。
小鳥遊練無:「阿漕荘」の住人。
香具山紫子:「阿漕荘」の住人。
根来機千瑛:瀬在丸家に仕える執事。
へっくん:紅子の息子。実は「S&Mシリーズ」のあの人。
林:紅子の元夫。警部。
各務亜樹良:保呂草の知人。
秋野秀和:『黒猫の三角』の犯人。
帆山美澪:作家。
室生真弓:美澪の秘書。
赤井:第1の被害者、赤色に塗られる。
美登里:第2の被害者、緑色に塗られる。
黒田:第3の被害者、黒色に塗られる。
山本百合:第4の被害者、白色に塗られる。
白鳥:モデル事務所の代表。
少女:保呂草、秋野、紅子が出会った少女。四季その人。
栗本其志雄:四季の人格の1つ。
赤井が全身を赤く塗装され殺害された。
赤井と交際していた美登里は「犯人は帆山美澪に違いない」と主張し保呂草に調査を依頼する。
その矢先、当の美登里までもが緑色に塗装され殺害されてしまう。
この捜査に乗り出したのが林である。
だが、容疑者とみられる帆山美澪とその秘書・室生真弓には隙が無い。
さらに、続く第3の殺人が発生。
今度は黒田が黒く塗装され殺されていた。
続いて、第4の殺人も発生。
今度は山本百合が白色に塗装され殺されていた。
赤井が赤色、美登里が緑色、黒田が黒色、百合が白色である。
この連続殺人は巷間でも噂となった。
その頃、紅子は獄中の秋野秀和(『黒猫の三角』の登場人物)に呼び出され彼のもとを訪れる。
秋野は今回の連続殺人について「犯人となり得る人物を3人」知っていると言う。
1人目は紅子。
2人目は遊園地で出会った少女(此処では明かされないが四季のこと)。
3人目は中学時代の文通相手。
このうち、1人目は本人に覚えがないから除外。
2人目は年齢的に犯行不可能。
残る3人目について秋野は「当時、帆山美澪」を名乗っていたと告げる。
こうして、紅子は帆山美澪の犯行に確信を持った。
一方、美術品盗難事件も並行して発生。
美術館に飾られていた絵画が盗み出されたのだ。
だが、こちらは紅子によってあっさり真相を看破されてしまう。
盗み出した方法は次の通りだ。
犯人は同じ美術館に展示されていた大型展示物に潜み、人気の無い夜中に絵画を盗み出した。
ただし、美術館からは持ち出しが不可能である以上、絵画は持ち出されていないに違いない。
おそらく、もう1つ絵画持ち出しに都合のよい展示品が用意されている筈と指摘する。
展示期限寸前の品があれば、その中に隠されていると断定したのだ。
実はこの犯行は保呂草(作中では明言されないが彼は美術品窃盗犯である)によるものであった。
紅子により釘を刺された保呂草は絵画の回収を諦める。
林の為に一肌脱ぐことにした紅子は帆山美澪との対決を決意する。
これに保呂草は傷心を抱く。
一同を連れ帆山美澪のもとを訪れた紅子。
紅子は赤、緑、黒までは成功したが白の犯行でミスしたことを指摘。
本来の標的は白鳥だったのだが、誤って山本百合を殺害してしまったのだ。
このミスが起こったのは遠隔操作による犯行の為であった。
さらにペンダントの色についてカマをかけられた帆山美澪はボロを出してしまう。
直後、目を離した隙に帆山美澪が高所から身を投げてしまう。
罪を認めた自殺と判断する林。
だが、紅子はこれを否定し真犯人として室生真弓を指摘する。
秘密は「あいうえおのマトリクス」にあった。
「帆山美澪」をこれに当て嵌めると「室生真弓」となるのだ。
紅子は真弓に秋野秀和の名前を出し、これを揺さぶり彼女に犯行を認めさせる。
しかし、真弓は想像以上の武闘派であった。
拳銃を乱射しつつ逃亡を試みるが、林に取り押さえられることに。
こうして事件は解決した。
紅子の林への愛情を痛感した保呂草は「阿漕荘」を静かに去った。
この後、保呂草は各務亜樹良と行動を共にし置いて行かれることになるのだが……それはまた別の物語。
出会いがあれば別れもある。
紅子には興味深い出会いが待っていた。
ある少女に出会ったのだ。
栗本其志雄(四季の人格の1つ)と名乗る少女は語る。
真弓が犯行に及んだのは少女の為だと言うのだ。
「赤緑黒白」とはすなわち「春夏秋冬」、それは「一年=四季」を示すものであった。
被害者4人は「神に捧げる供物」として殺害されたのだと言う。
共に来るか紅子に尋ねる其志雄。
しかし、紅子はこれを拒否するのであった―――エンド。
◆関連過去記事
【四季シリーズ】
・『四季シリーズ(春 Green Spring、夏 Red Summer、秋 White Autumn、冬 Black Winter)』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【Vシリーズ】
・シリーズ第1弾。
『黒猫の三角』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【S&Mシリーズ】
・シリーズ第1弾。
『すべてがFになる』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ第2弾。
『冷たい密室と博士たち』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ第3弾。
『笑わない数学者』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ第4弾。
『詩的私的ジャック』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ第5弾。
『封印再度』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ第9弾。
『数奇にして模型』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ第10弾にして最終話。
『有限と微小のパン』(森博嗣著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ版】
・「すべてがFになる」1話「冷たい密室と博士たち(前編)」(10月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「すべてがFになる」2話「冷たい密室と博士たち(後編) 【暴かれる冷たい密室の謎と哀しき殺人者の記憶】」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「すべてがFになる」3話「封印再度(前編) 【呪われた仏画師一族と家宝が眠る密室の殺人】」(11月4日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「すべてがFになる」4話「封印再度(後編) 【50年の時を超えた殺人と封印された真相】」(11月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「すべてがFになる」5話「すべてがFになる(前編)【天才博士が仕組んだ孤島の謎】」(11月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「すべてがFになる」6話「すべてがFになる(後編)【美しき狂気の殺人者】」(11月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「すべてがFになる」7話「数奇にして模型(前編)【孤独な模型マニアの狂気】」(12月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「すべてがFになる」8話「数奇にして模型(後編)【殺人者の異常な愛情】」(12月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「すべてがFになる」9話「有限と微小のパン(前編)」(12月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「すべてがFになる」最終話(10話)「有限と微小のパン(後編)【神に最も近い犯罪者】」(12月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【その他】
・超再現!ミステリー「巧妙なトリック暴け人気推理小説を超再現謎を解け&犯人は誰?超衝撃の2時間SP 大学内で連続殺人…美女が残した(秘)日記に謎を解くカギ…珍推理佐藤隆太スタジオ爆笑砂羽も紗栄子も超興奮」(4月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・森ミステリィの名作「S&Mシリーズ」がフジテレビ系火曜21時枠にて連続ドラマ化!!タイトルは「すべてがFになる」に!!
・『すべてがFになる』がアニメ化とのこと!!
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- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)