集英社刊『ジャンプSQ.(ジャンプスクエア) 2015年4月号』に掲載された作品です。
一読して物凄く良かったので皆さんにも知って頂きたく批評(レビュー)しちゃいました。
ちなみに、タイトル「血溜まりのブライズメイド」にも深い意味がありますね。
此の点については「あらすじ後」の「感想」にて触れています。
というワケで、ネタバレ批評(レビュー)です。
<ネタバレあらすじ>
「アレはマル、アレはバツ」
橋の上にて通り過ぎて行く人波を指差し評価を下す少女が居た。
少女の名はエディ。
彼女は今、結婚後に妻に暴力を奮う男か否かを振り分けている。
そして、それにハズレは無い。
何故なら、エディは「直感」の持ち主だから。
「直感」とはエディだけが持つ殺意や悪意を持つ者を見抜く能力。
だが明確ではなく、あくまでぼんやりとエディのみが感じ取ることが出来る。
そんな中、人波の動きに急に変化が加わった。
どうやら、何かがあるようだ。
慌てて、そちらへと足を運ぶエディ。
其処では1人の車椅子の男性が表彰を受けていた。
男性の名はシャルロ。
車椅子に座ることからも分かるように足は不自由だが、探偵一族出身でその優れた推理力から難事件を幾つも解決し傑物と名高い人物である。
今回もある事件を解決したことを表彰されているらしい。
と、エディはシャルロから強烈な殺意を感じ取った。
次の瞬間、エディの前に老女が降って来た。
空から降って来た老女は地面に激突し事切れた。
エディは悟った―――この老女を殺害したのはシャルロなのだ、と。
咄嗟に「あなたが犯人ね」と叫んでしまったエディ。
これにシャルロは特に傷付いた様子もなく微笑む。
その理由はすぐに分かった。
被害者はシャルロの祖母、死因はビル屋上からの転落死である。
だが、シャルロは車椅子でしか動けない。
何らかのトリックを用いたにしろ、屋上から祖母を殺害することは不可能なのだ。
「アレ?」
理路整然と説明され不思議に思うエディ。
だが、彼女の「直感」はシャルロの犯行を示している。
これは一体どういったことなのであろうか。
シャルロに興味を抱かれたエディは彼の家に滞在することに。
その間、シャルロはエディの「直感」を試し続けたが百発百中である。
シャルロはエディの「直感」に更なる興味を抱く。
エディによれば「直感」はある時に「危険だ」と感じたことが始まりらしい。
直後、危険だと感じた男は資産家夫婦を刺し殺してしまったそうである。
これにシャルロは何やら考え込むが……。
一方、エディはと言えばシャルロの犯行への確信を強め続けていた。
何度試しても「直感」はシャルロの犯行を示しているのだ。
矢先、エディの主張を耳にした警官が打ち明け話を始める。
彼もまたシャルロの犯行を疑っているらしい。
そもそも、シャルロの周囲では次々と殺人が起こっていた。
まずはシャルロの婚約者が謎の死を遂げた。
以降、シャルロの一族が次々と不審死を遂げた。
今や、探偵の一族はシャルロを残すのみだそうだ。
警官はシャルロの犯行を確信していた。
だが、シャルロはあの通り車椅子であり自由に動けない。
犯行は不可能なのだ……。
これを聞いていたエディは何かを閃く。
ある夜、シャルロは目の前に現れたエディを見て慌てふためいた。
エディはシャルロの婚約者の形見となったドレスを身に着けていたのだ。
これを見るなり車椅子から立ち上がり銃をエディへと突き付けるシャルロ。
そう、彼は歩けたのだ。
これまでの全ての犯行も彼であった。
たった1件を除いては……。
それこそがシャルロの婚約者殺害である。
シャルロの婚約者は結婚に反対した彼の一族の手で殺害されていた。
シャルロは婚約者を愛しており、これを奪った者達に復讐を果たしていたのである。
シャルロはそんな婚約者の形見であるドレスをエディが着用したことに激怒。
射殺しようと引き金に手をかけるが。
エディは彼が撃てないことを知っていた。
何故なら、シャルロにとって婚約者のドレスは唯一の形見であり大切な品であった。
だからこそ、激怒してエディに銃を向けている。
だが、それ故にそんなドレスを血で汚すワケが無いからだ。
これを指摘されたシャルロは完敗を認めつつ、自身へと銃口を向け直す。
エディはシャルロに飛び掛かった……。
数日後、エディは「直感」を活かし警察で働き始めた。
そんなエディにシャルロから手紙が届く。
シャルロは殺人犯として収監中の身であった。
あの自殺未遂により、今度こそ本当の車椅子生活を余儀なくされることとなったシャルロ。
だが、エディにより罪を償う機会を得たこと、また彼の婚約者への愛を証明する機会を得たことに感謝しているらしい。
これを目にしたエディに笑顔が浮かぶ―――エンド。
<感想>
平浜矢陸先生による読切作品です。
「第3回SQ.NEXT CUP エントリーNo.3」として『ジャンプSQ.(ジャンプスクエア) 2015年4月号』に掲載されました。
「ブライズメイド」とは「花嫁の付添人、立会人」のこと。
もちろん、本作での「ブライズメイド」はエディを指すのでしょう。
何故、エディが「ブライズメイド」となるのか―――それには次のような理由が考えられます。
シャルロは婚約者を愛しながらも、これを奪われた。
その復讐を果たしたことは彼自身の婚約者への愛の証明に他ならない。
だが、この証明を完全犯罪だったが故に表明出来ずに居たシャルロ。
それを奇しくもエディが告発することで証明した。
同時にこれはシャルロの破滅を示すのですが、ラストの書簡通りそれこそがシャルロの望みでもあったことが判明します。
このように「シャルロと婚約者の愛を証明した」また「復讐を果たしたことで虚ろになっていたシャルロの心を救った」ことでシャルロたちに寄り添った人物として「花嫁の付添人」と評されたのでしょう。
此の点、凄く感じ入りました。
そして、本作はあらすじを読んで頂ければお分かりの通り、なかなかにロジカルな作品である点も管理人好みです。
例えば「直感」と言う特異設定を活かした「百発百中の直感は外れているのか否か」に始まり「これが当たっているのならば何故、犯人は殺害に及んだのか=犯人の動機(ホワイダニット)」に至るまで。
「ミステリ」における要所は抑えられており「ミステリ」それ自体としても完成度の高い作品だと思います。
オリジナル作品で此処まで「ミステリへの理解を深く示した作品」はそう見受けられないでしょう。
ラストも「動機に繋がるほどの想い故に、形見を着たエディは撃てない」とのロジックは美しかった。
欲を言えば、ラスト以外にもシャルロの婚約者への想いをもっと明確に描写しても良かったかも。
それにより、この「ホワイダニット」がより強調されたに違いないので。
ただ、これはページ数の問題もあるのかもしれない。
他にも流麗な絵柄や作品全体のインパクトも含めて完成度は物凄く高いと思う。
是非、本作それ自体を読むべし!!
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