<あらすじ>
東京・品川の閑静な住宅街で一家3人が惨殺される事件が起きた。現場に急行した御殿山署の刑事・名波洋一郎(反町隆史)は、奥のクローゼットに隠れ、ただひとり刃を逃れた5歳の次男・長原耕次を発見し、保護する。7歳のとき火事で両親を失い、妹・有希子(貫地谷しほり)とも生き別れとなった過去を持つ名波は、わずか5歳で突然、両親と兄を奪われた耕次のことを気にかける。
すぐに捜査本部が発足し、名波は捜査一課三係係長・鷹栖誠司(高橋克実)から、三係主任・香川崇(八嶋智人)とコンビを組むよう命じられる。三係は親分肌の警部・鷹栖が統率しており、通称“鷹軍団”とよばれる強者ぞろいの集団だった。名波と香川は、動物虐待を繰り返している近所の男・九鬼祐太(竜星涼)を疑うものの、明らかな目撃証言もなく、彼の存在はいつしか捜査線上から消えていた。
1年後――。名波は鷹栖に引き抜かれて捜査一課三係の一員となっていたが、品川一家3人殺害事件の有力な手掛かりは未だつかめず、捜査は難航していた。
ところが、その矢先、大田区蒲田の住宅で母親・沢松優子と息子・直純(山口大地)が惨殺される事件が発生! 現場には品川の一家3人殺人事件の遺留品と同じタオルが残されていたほか、同サイズ、同メーカーの下足痕が検出されるなど、すべての証拠が同一犯であることを示唆していた。
だが、政治的圧力から、管理官の真壁繁樹(大杉漣)は合同捜査本部を立てないことを宣言。名波ら現場の刑事たちは反発する。その直後、名波は、殺された直純が鷹栖の次女・麻子(夏菜)の知り合いだったことを知るが…!?
そんな中、名波は有希子の周囲を、週刊誌記者・柿崎功(でんでん)がかぎまわっていることに気づく。ピアニストとしてヨーロッパで成功し、華々しく凱旋帰国を遂げた有希子は、ある理由から“中里美沙”と名を変えて生きていたが、柿崎はその事実をかぎつけて強請ろうとしていたのだ。名波は妹を守ろうと、柿崎と対峙するのだが…!?
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
名波洋一郎は7歳の折に火事で両親を亡くし、当時3歳であった妹・有希子と共に施設に預けられた。
その後、有希子は裕福な家に引き取られ2人は生き別れとなった。
それから数十年が過ぎ、御殿山署の刑事となっていた名波は著名なピアニスト・中里美沙と出会う。
彼女に有希子の面影を見る名波、そんな名波に美沙は「自分が有希子である」と告げる。
そう、有希子は名を変えピアニストとして大成していたのだ。
有希子は中里美沙と名前を変えた理由を名波に打ち明けた。
これを聞いた名波は有希子を守ると決意することに。
そんな頃、品川の閑静な住宅街にて長原家の一家が5歳の次男・長原耕次を残し惨殺される事件が発生。
耕次はクローゼットに隠れ難を逃れたのだ。
耕次に自身の境遇を重ね合わせる名波。
そんな名波の姿に何かを感じた本庁の捜査一課三係係長・鷹栖誠司は彼を自身の部下に引き抜く。
鷹栖率いる三係は通称「鷹軍団」と呼ばれる精鋭揃い。
これに加わった名波は付近で動物虐待を繰り返していた男・九鬼祐太に目星を付けるのだが、証拠が見つからず他の容疑者を追うことに。
だが結局、犯人は捕まらなかった。
そして1年後、「鷹軍団」の一員としてそれなりに慣れて来た名波は鷹栖の娘たちとも親しくなっていた。
鷹栖の長女は亜矢子と言い、病の床に臥せり入院していた。
そして、次女は麻子と言い、こちらは名波に好意を寄せていた。
ある日、麻子は鷹栖と共に居たところを大学の同級生・直純と出会う。
鷹栖を認めた直純は何やら思い詰めた表情を浮かべる。
矢先、大田区蒲田の住宅で沢松優子とその息子が惨殺された。
この息子こそ直純であった。
麻子は強いショックを受ける。
現場には「長原一家殺人事件」と共通する証拠が残されていた。
例えば、遺留品のタオル。
例えば、同サイズ、同メーカーの下足痕。
これにより、同一犯によるものと思われたが……。
名波はこの見解に異議を唱える。
もしも、それぞれが別の犯人だとすればかなり内部の情報に精通した人間にしか不可能だ。
沢松親子殺害が内部犯によるものとして鷹栖たちを疑う名波は彼らのアリバイを調べ始めた。
一方、有希子の周囲を週刊誌記者の柿崎功が付きまとい始めた。
どうやら、有希子の秘密を知っているようだ。
柿崎に危機感を募らせる名波。
そんな中、名波は麻子から鷹栖と直純が顔を合わせていたことを聞かされる。
さらに、直純が5歳の折に謎の転落事故に遭っていたことも判明。
当時のことを調べた名波は直純の転落事故当日に矢田部組組長が何者かに射殺されていたことを突き止める。
この犯人は未だに捕まっていなかった。
矢田部組について調べ始めた名波。
すると、当時の矢田部組では抗争事件が頻発しており吉村俊介なる5歳の児童が巻き込まれて死亡していたことが分かる。
これらのことが直純の死に関係しているのか?
矢先、スポーツジムで発砲事件が発生。
この犯人はすぐに捕まったのだが、並行して九鬼が鷹栖に射殺される事件が発生する。
何でも鷹栖は不審な様子の九鬼を発見し、声をかけたところ襲われたので射殺したらしい。
鷹栖によれば九鬼は死の直前に「長原一家、沢松親子殺害を認めた」のだそうだ。
こうして、一連の事件は九鬼の犯行として処理された。
だが、名波はどうにも腑に落ちなかった。
どうしても鷹栖と直純の繋がりが気にかかったのだ。
沢松親子殺害時の鷹栖のアリバイを詳しく調べた名波。
鷹栖は亜矢子の入院先を訪れ、共に音楽番組を鑑賞していたと言う。
亜矢子によれば「女の人が歌っていた」のだそうだが。
さらに、名波は吉村俊介について調べ始めた。
俊介の母は吉村静江なる元ラジオDJ、ストーカーに悩まされDJを辞めた後に俊介を生んでいた。
静江を追った名波はある事実に行き当たる。
そんな名波に鷹栖から電話が入った。
鷹栖は有希子を人質に取り名波を呼び出そうとする。
一方、名波の前に柿崎が現れ有希子の秘密を暴露すると脅迫する。
実は有希子は過去にピアノ教師を誤って死亡させていた。
この過去から逃れる為に名前を変えていたのだ。
名波は柿崎の口を封じなければ……と考える。
数時間後、鷹栖の前に名波が現れた。
鷹栖は有希子を人質にしている為か、余裕を持って全てを打ち明けた。
そう、沢松親子と九鬼を殺害したのは鷹栖だったのだ。
鷹栖は俊介の仇を討つべく、矢田部組組長を殺害した。
ところが、その現場を当時5歳であった直純に目撃された。
其処で口封じしようとし、転落事故が発生したのだ。
直純はこの事故で記憶を失っていた。
しかし、先日になって鷹栖と再会したことで記憶が甦った。
これに鷹栖も気付き、口封じしたのだ。
亜矢子とのアリバイは録画してあった音楽番組を視聴したことにより作ったもの。
名波が調べたところ、女性歌手は2週間前の出演者であった。
一安心していた鷹栖だが、名波が疑惑を抱き独自捜査を開始した。
其処で鷹栖は長原一家殺人事件の犯人である九鬼に沢松親子殺害の罪を着せることにした。
九鬼を呼び出し、これを殺害すると証拠となる品々を九鬼の家に隠したのだ。
有希子を盾に取引をしようと持ちかける鷹栖。
これに名波は病床の亜矢子を盾に鷹栖に罪を認めるように迫る。
鷹栖は名波の追及に屈し、有希子を解放する。
その夜、鷹栖は麻子を名波へ託すと自ら命を絶った。
数日後、何も知らない亜矢子も鷹栖の後を追うように死亡した。
1人残された麻子に名波は鷹栖の犯行動機を教える。
矢田部組の抗争に巻き込まれ、吉村俊介という少年が死亡していた。
この俊介の母・静江こそ、鷹栖の愛人だったのだ。
俊介は鷹栖の隠し子だったのである。
ストーカーに悩んでいた静江は当時の本田東署、今の葛飾東署に勤務していた鷹栖に相談。
いつしか2人は恋に落ちていた。
そして、生まれたのが俊介だったのである。
驚愕の事実に、麻子は言葉も無い。
同じ頃、柿崎の溺死体が発見された。
もちろん、名波が有希子を守る為に行ったことだ。
そして、名波はこれを隠すつもりはない。
名波はその日の内に逮捕されることとなった―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は緒川怜先生『迷宮捜査』(光文社刊)。
過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。
・『迷宮捜査』(緒川怜著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
そして、テレビ朝日系の「2時間サスペンス」で緒川怜先生原作と言えば、2013年には椎名桔平さん主演で『冤罪死刑』がドラマ化されています。
・『冤罪死刑』(緒川怜著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・土曜ワイド劇場 特別企画「冤罪死刑 逆転の誘拐!!一本の毛髪で作る警察組織の完全犯罪!?消えた身代金6000万円の謎…記者を待つ偽りの罠!!」(11月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
さ〜〜〜て、ここからドラマ版感想です。
テーマとしては「事件と、それによる幼い被害者たち」か。
「幼少時の火事」で名波と有希子が。
「矢田部組の抗争」で俊介が。
「矢田部組組長殺害」で目撃者となった直純が。
「長原一家殺人事件」で耕次が。
それぞれ被害者となり、トラウマを背負うこととなりました。
そのトラウマは名波や鷹栖を殺人に追い込んだ。
かなり虚しいですね……。
これに松本清張先生『砂の器』(新潮社)っぽい演出が加えられていたかな。
・サスペンス特別企画「砂の器〜松本清張の最高傑作遂に完結へ!日本縦断3000キロの捜査が暴く連続殺人の罠!?二人の刑事が見た父子永遠の旅!!天才作曲家の殺意…衝撃の結末」(9月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)
それにしても、ドラマ版だと原作と異なり柿崎殺害で名波が逮捕されてしまうので有希子の過去の殺人も暴かれてしまうのではないだろうか……。
此の点がかなり気にかかる。
原作と言えば、ドラマ版は原作とはかなり改変していた印象。
ネタバレ書評のあらすじも原作をかなり改変していたのですが、これを上回る改変でした。
敢えて評すれば「ドラマ版は鷹栖中心に再構成されたもの」とすべきか。
これにより名波と有希子の関係はサブストーリーに留まってしまった感があります。
管理人的には「有希子の正体」こそが本作のメインで「鷹栖の事件」こそサブストーリーに過ぎないと思っていただけにこの改変は意外でしたね。
あくまで「鷹栖の事件」はラストの名波の劇的な去就を定める為の仕掛けだと思っていたんだけどなぁ……。
とはいえ「鷹栖の事件」自体も原作に比べるとかなりアレンジされていました。
例えば、鷹栖の直純殺害時のアリバイ工作。
ドラマでは「女性歌手が2週間前の出演者だったこと」が工作を見破る手掛かりとなりましたが、原作だと「玉置浩二さんが明るい歌を歌ったかどうか」が手掛かりとなっています。
他にも、鷹栖が九鬼の犯行に気付いた理由も長原一家殺人事件現場の遺留品から「海賊→九鬼水軍→九鬼」に辿り着くとのものでしたが、これも省略。
ただ、これは原作でも流石に牽強付会に過ぎたかと思われたので良かったかもしれない。
それと、おそらくレンタルビデオショップで九鬼のレンタル履歴を鷹栖が調べるくだりがあったので、ドラマ版ではその点も影響したのではないでしょうか。
そして、何より原作との大きな変更点は「長原一家殺人事件」と「直純親子殺害事件」とが合同捜査にならなかった理由である公安関連のくだりもカットされたことか。
原作は此処もかなり強調していました。
ただ、此の点では原作も特に貢献出来ていたようには思えなかったのでカットして正解だったと思う。
なので、個人的には原作からドラマ版への変更には好意的な印象。
しかし、ラストの「有希子の正体」だけはカットしないで欲しかった。
あれがあると無いでは本作の意義が大きく異なると思う。
なので、ドラマ版は原作に比較すると「功罪相半ば」と言ったところか。
ドラマ版「冤罪死刑」の批評(レビュー)の際にも述べたが、やはり全体的に「マイルド」になったと言うところでしょう。
これにより、人によっては受け入れ易くなったし、逆に受け入れ難くもなったと思う。
◆関連過去記事
【著作関連】
・『冤罪死刑』(緒川怜著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『迷宮捜査』(緒川怜著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【映像化作品関連】
・土曜ワイド劇場 特別企画「冤罪死刑 逆転の誘拐!!一本の毛髪で作る警察組織の完全犯罪!?消えた身代金6000万円の謎…記者を待つ偽りの罠!!」(11月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
名波洋一郎(ななみ・よういちろう)(37):反町隆史(そりまち・たかし)
警視庁捜査一課・殺人犯捜査三係刑事。巡査を拝命して5年目の23歳で所轄の刑事となった、優秀な警察官。東京・品川で起きた一家3人殺害事件の捜査に加わったところ、捜査一課三係係長・鷹栖の目に留まり、三係に引き抜かれる。強い正義感を持っているが、集団を好まず、単独行動することも多い。
実は7歳のとき、火災で両親を失い、妹の有希子と共に児童養護施設に入った。その1年後、妹は裕福な家庭に引き取られ別離したが、28年後、偶然再会した。唯一の肉親である有希子の存在だけが生きがいであり、希望。妹を守るためなら、どんなことでもするつもりでいる。
鷹栖誠司(たかす・せいじ)(53):高橋克実(たかはし・かつみ)
警視庁捜査一課三係、通称“鷹軍団”の係長。強烈なリーダーシップで、猛者ぞろいの三係を統率している。名波に目をかけ、三係に引き抜く。 妻はすでに他界、亜矢子と麻子という美しい2人の娘がいる。かつて犯人に撃たれた傷が原因で少し足を引きずって歩く。
香川 崇(かがわ・たかし)(43):八嶋智人(やしま・のりと)
警視庁捜査一課三係の主任刑事。名波とコンビを組んで連続一家殺害事件の捜査にあたる。妻と3人の子どもと団地住まい。
樋口有希子/中里美沙(ひぐち・ゆきこ/なかざと・みさ)(33):貫地谷しほり(かんじや・しほり)
名波の妹。ピアニスト。3歳のとき裕福な樋口家に引き取られ、兄と離ればなれになった。教育熱心な養父母のおかげで音楽の道に進み、ヨーロッパに留学。ピアニストとなって凱旋帰国した。ある事情から名を変え、“中里美沙”と名乗っている。
鷹栖麻子(たかす・あさこ)(23):夏菜(なつな)
鷹栖の次女。洋菓子店で働いている。自分は父親に嫌われていると思いこんでいる。名波にほのかな好意を抱いていて…!?
鷹栖亜矢子(たかす・あやこ)(26):中村ゆり(なかむら・ゆり)
鷹栖の長女。生まれつき心臓に持病があり、幼い頃から入退院を繰り返してきた。家族思いのやさしい娘。
九鬼祐太(くき・ゆうた)(20):竜星 涼(りゅうせい・りょう)
ピザ店のアルバイト。品川一家3人殺害事件の容疑者として名波が最初に目をつけた男。
柿崎 功(かきざき・いさお)(45):でんでん
週刊誌記者。有希子の過去をかぎまわる。
真壁繁樹(まかべ・しげき)(55):大杉 漣(おおすぎ・れん)
警視庁捜査一課管理官。2つの一家殺人事件の捜査の指揮を執る。同一犯の犯行を示唆する証拠が挙がっているにもかかわらず、政治的配慮から合同捜査本部を立てない決断を下す。 ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
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