<あらすじ>
月島中央署の刑事・糸村聡(上川隆也)はひょんなことから、国土交通大臣・長峰泰造(石橋蓮司)の古希パーティーに出席することに。会場で出会った泰造の孫・光太(鈴木福)が持っている“黒いヒーローのフィギュア”に興味を示す。その矢先、事件が起きた! 光太がトイレに行ったまま、姿を消したのだ。懸命に行方を探す糸村、そして長峰家の運転手・一ノ瀬誠(北村有起哉)。だが、見つかったのは非情にも、光太を誘拐した旨を告げる手紙だった…。
警視庁捜査一課はさっそく捜査を開始。事件発生時にパーティー会場に居合わせていた糸村も、捜査への参加を要請される。そんな中、誘拐犯が1億円もの身代金を要求してきた! だが、どういうわけか受け渡しの指定場所に、犯人は一向に現れず…!?
そのころ、月島中央署管轄内ではスーツケースに入った男の死体が発見される。と同時に、光太の誘拐事件も次から次へと思わぬ方向へ転び始める! 光太を誘拐したのは誰で、その目的は一体何なのか…。謎が謎を呼ぶ中、糸村はあるものの存在が妙に気にかかる。それは光太がお守りだと言っていた、あの“黒いヒーローのフィギュア”だった――。
誰も気に留めないフィギュアを手掛かりに、糸村は単独捜査を開始。やがて今回の誘拐事件と、7年前に起きた拳銃強奪事件および強盗殺人事件の間に、いくつかの共通点が見えてくる。そして…その奥底では、事件に関わった者たちの強い悲しみと愛情が渦巻いていた…。
(公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……
7年前、大物代議士・長峰泰造の息子・浩介とその妻が自宅で何者かに射殺された。
犯人は深夜に侵入し彼らを射殺したと思われた。
同居していた長峰本人は外遊中で不在、死体の第一発見者はたまたま訪れた浩介の妹・典子であった。
この悲劇の中、ただ1つだけ朗報があった。
生き残りが居たのだ。
生き残ったのは夫妻の1人息子・光太。
長峰は光太の生存を喜び、彼を後継者として育てることに決めた。
そして現在、その長峰が檀上の人となっていた。
今の長峰は息子夫妻を失った悲劇を乗り越え、国土交通大臣にまでなっていた。
今日はその古希の祝いの席が行われていたのだ。
参加するのは長峰本人はもちろんのこと、その秘書・冴木リエ、長峰の元秘書で弁護士に転身した白河文雄、先の第一発見者となった典子、そして光太だ。
さらに、意外な参加者の姿もあった。
ダンス教室の関係者として参加した東署長と我らが糸村である。
糸村は水沢に代わり東署長のお供を申し付けられていたのだ。
相変わらず飄々とした糸村の態度に頭を抱える東。
そんな東の気も知らず、糸村はここぞとばかりに立食パーティーを楽しんでいた。
と、そんな糸村をもの珍しそうに眺める少年。
彼こそ光太であった。
周囲に居ないタイプの人間である糸村に興味を示した光太。
彼が長峰の孫と知っても物怖じしない糸村とすぐに打ち解けることに。
糸村は光太が所持する黒いヒーローのフィギュアを気にかける。
それは光太によるとお守りらしい。
暫くして、トイレに向かった光太。
すると、何者かに襲われ気を失ってしまう。
光太の手に握られていた黒いヒーローのフィギュアがトイレの床に落ちた……。
光太が姿を消したことで、会場では大騒ぎに。
地下で控えていた長峰家の運転手・一ノ瀬誠や糸村らが光太の捜索を開始。
すると、光太が誘拐されたことが判明する。
どうやら、犯人は若い男らしいが……。
長峰の孫が誘拐されたことで厳戒態勢が採られた。
管理官の金子により捜査本部が設置、本庁の宮下刑事らが捜査に乗り出すことに。
現場に糸村が居たことを知った金子は彼に捜査本部に加わるよう命ずる。
此処に糸村、宮下の急造コンビが結成された。
矢先、犯人から長峰へ1億円の身代金要求の連絡が入った。
これに応じた長峰は冴木に1億円入りの鞄を持たせると指定された受け渡し現場へ送り出す。
当然、これを見張る金子たち。
糸村と宮下も遠くから冴木を見守ることに。
ところが、一向に犯人らしき人物は現れない。
たまに不審な自転車が近付いても通り過ぎるだけで、冴木自身も特に気にかけていないようですらあった。
最中、糸村は宮下から光太が7年前の長峰夫妻殺害事件の唯一の生存者であり、目撃者であることを知らされる。
だが、光太は激しいショックから犯人の顔を覚えていないらしい。
また、事件直後には周囲に心を閉ざしていたそうだ。
パーティー会場での光太の様子を思い起こす糸村。
その姿から想像もつかない過去であった。
誰か光太を励まし支える人物が居たのだろうか?
矢先、区役所に匿名の電話が入り、担当者が調べたところ廃倉庫で光太が発見され無事保護された。
廃倉庫を訪れた糸村は其処にあの黒いフィギュアを発見する。
フィギュアの足の裏には「0」と数字なのかアルファベットなのか分からない記号が刻まれていた。
糸村はヒーローもののフィギュアにしては濃い黒色などダーティーな印象を受けるソレに更なる興味を抱く。
同じ頃、水沢たちはスーツケースに収納された射殺体を発見していた。
被害者は若い男である。
早速、捜査が開始されることに。
何時になくやる気を見せる森田は単独捜査を行う。
誘拐事件から1日が経過した。
長峰は光太が戻って来るや、安心したように日常に戻った。
光太も一ノ瀬から剣道の指導を受けている。
さらに、金子が配した警備すら不要と言い切る長峰。
これに糸村は「もしかして、裏で取引が既に終えられていたのではないか」と考えるように。
これを裏付けるように、リエの携帯に公衆電話からの着信があったことが判明。
糸村らが長峰にこの事実をぶつけると、彼はこれを認める。
どうやら、リエが犯人と交渉し身代金を運んだらしい。
リエによれば「昨夜10時頃、虹の橋公園のごみ箱に1億円を運んだ」のだそうだが……。
こうして、虹の橋公園のごみ箱が捜索された。
其処から中島隆なる男性の指紋が検出。
中島が誘拐事件の容疑者と目されるように。
早速、中島宅を訪れた糸村と宮下だったが……。
中には既に先客が居たのだ。
しかも、それは糸村たちの顔見知りであった。
そう、射殺事件を調べていた水沢たちだ。
スーツケースの遺体こそが中島だったのだ。
中島宅からは光太の写真も多数発見された。
しかも、スーツケースの中から光太の毛髪やボタンも見つかる。
どうやら、誘拐の実行犯は中島で間違いないようだ。
容疑者が殺害されたことで宮下は人員増強すべきと判断。
糸村に続き、仙堂を捜査本部に呼び込む。
本来ならば森田が適任なのだろうが単独行動が多いことを敬遠されてしまったのだ。
現に、森田は今も単独捜査を行っていた。
思わぬ展開に喜ぶ仙堂。
その頃、中島殺害に用いられた拳銃が線条痕から長峰の息子夫妻殺害に使用された拳銃と一致する。
こうして、改めて7年前の長峰夫妻殺害事件がクローズアップされることに。
そもそもの発端は新宿東署の警察官が巡邏中に襲撃され拳銃が奪われたことにあった。
この拳銃が使用され、長峰夫妻が殺害されたのだ。
その後、街工場を経営していた金森が容疑者として浮かんだ。
金森は当時銀行員をしていた長峰浩介と揉めていたのだ。
当時の捜査員は金森の身柄確保に動くが、当の金森は自殺してしまった。
これが事件の顛末である。
だが、拳銃の線条痕が一致したことで誘拐事件と射殺事件、さらに7年前の事件が一本の線で繋がった。
すなわち、7年前の事件も未だ解決していないのだ。
糸村と宮下は7年前の犯人を目撃した光太に記憶を尋ねるが、光太は「分からない」と答えるのみであった。
その一方で、光太は誘拐事件で気になることが1つだけあるらしい。
誘拐された際に光太はフィギュアを床に落としてしまった。
ところが、監禁されていた廃倉庫に置かれていたのだ。
確かに謎である。
此処で糸村は光太が写ったアルバムを確認しフィギュアの出処を探ることに。
ところが、フィギュアは何処にも写っていなかった。
フィギュアの出処も謎なのだ。
謎が増えて行く中、長峰家を辞去しようとした宮下が素っ頓狂な声を上げる。
その目は一ノ瀬を見据えていた。
なんと、一ノ瀬も元警察官だったのだ。
しかも、7年前に拳銃を奪われた張本人だったのである。
どうやら、一ノ瀬はこれに責任を感じ刑事を退職し長峰家に仕えるようになったようだが……。
次いで、長峰とリエを訪ねた糸村たち。
糸村はリエに身代金を虹の橋公園に届けた際の状況を確認する。
敢えて糸村が存在しない露店や出入り口について触れたところ、これに頷くリエ。
糸村はリエが嘘を吐いていると見抜く。
中島も何者かに利用されただけであり、長峰やリエもその何者かに嘘を吐くよう指示されているのではないか。
糸村は金子に進言し、金子はこの線で捜査を進めることを決定する。
さらに、7年前の事件で一ノ瀬にも嫌疑がかかっていたことを知った糸村。
どうやら、拳銃強奪が狂言ではないかと疑いもあったそうだ。
その一方で、糸村は仙堂からフィギュアの正体が「ダークファイター」なるヒーローであることを聞く。
何でも、雑誌で連載されたコミックのアニメ化だそうで、その際どい内容から1話で打ち切りとなったそうだ。
その内容こそ「ダークファイターが愛する者の為なら人殺しも厭わない危険なヒーロー」であった。
その頃、長峰は光太が7年前の犯人の顔を思い出してしまうことを危惧していたが……。
翌日、今日も一ノ瀬が光太に剣道の稽古をつけていた。
それは厳しくも愛情に溢れるもののように糸村には思われた。
同じ頃、長峰のもとに白河が呼び出されていた。
長峰は光太を海外の学校に寄宿させるつもりなのだ。
その頃、水沢たちは「難病支援財団」に行き当たっていた。
7年前、長峰は難病支援財団に関与しており、その自宅には多額の裏金が保管されていると噂されていたそうだが。
一方、糸村はと言えばフィギュアショップを訪れダークファイターについて調べていた。
店員によれば、フィギュアは放送開始を記念して制作されたもので10体限定、足の裏に1から10までナンバーが刻印されているらしい。
糸村は自身が目にした「0」が「ナンバー0」を指すものだったかと納得しかけるが「ナンバー0」が存在しないと聞かされ戸惑う。
同時刻、水沢たちは難病支援財団について調べていた。
その中で、7年前には長峰ではなく、その秘書・白河が担当していたことが判明。
弁護士として成功している白河を訪問した水沢たちは「木村建設の担当者と話があるから」と忙しそうな彼から聴取を開始する。
だが、白河が7年前に秘書を辞めたこと以外には特に有益な情報は得られそうも無かった。
他方、糸村はダークファイターの所有者リストを入手し彼らの間を巡っていた。
所有者の人数は10人、そしてフィギュアの数も10体であった。
やはり「ナンバー0」は存在しないのか……肩を落としかける糸村であったが、最後の1人から意外な情報が。
彼女は「11個しかないプレミアもの」と口にしたのだ。
何でも、このフィギュアを作ったデザイナーが幻の一体を所有しているらしい。
こうして、デザイナーのもとを訪れた糸村。
デザイナーは家業を継いで中華料理店を経営していた。
彼によればナンバー0のダークファイターは難病に侵された息子を持ったある女性に譲ったそうだ。
当の女性を訪れたところ、ダークファイターは息子の父親の手許にあるらしい。
水沢たちの捜査は続いていた。
そんな中、難病支援財団の相談者リストに一ノ瀬の名前が見つかった。
さらに、一ノ瀬と中島が誘拐直前に密会していたことも明らかに。
こうして、一ノ瀬が容疑者として浮上する。
その頃、当の一ノ瀬に何者かから連絡が入っていた。
相手は光太が海外留学することを知っており、その前に口を封じるよう一ノ瀬に命ずる。
一ノ瀬は光太を連れ出すと共に姿を消してしまう。
誘拐前後のリエの行動を追っていた捜査員がある事実を掴んだ。
リエは誘拐直後に国土交通省整備局の落合康夫と密会していたのだ。
落合は先日行われたばかりのダム入札の担当者。
此処から光太誘拐の目的は身代金ではなく、ダム受注にあったことが判明。
そして、これを落札したのは木村建設だった。
木村建設は白河のクライアントの1人。
白河が木村建設にダムの受注を行わせる為に誘拐を指示したに違いない。
しかも、白河は7年前に難病支援財団の担当でもあった。
当然、一ノ瀬の苦境も知っていた。
彼を利用できるとすれば白河しか居ない。
同じ頃、光太は両親殺害犯人の顔をようやく思い出していた。
その顔は……白河であった。
そして、光太の目の前には当の白河が彼の命を奪おうと笑っていたのである。
もはや、一刻の猶予も残されていなかった。
光太の身を心配する長峰たちに金子が容疑者として白河と一ノ瀬の名を上げた。
典子は白河が犯人だと聞くと「長峰が白河を裏切ったことの復讐だ」と揶揄する。
長峰は白河を後継者にすると甘言を弄し、難病支援財団を通じて裏金を作らせていたのだ。
だが、長峰は白河に後を継がせるつもりは毛頭なかった。
その頃、当の白河は光太に銃を突き付け引き金を引こうとしていた。
その隣には無表情に立ち尽くす一ノ瀬の姿が。
この距離ならば外す筈もない、光太がぎゅっと目を瞑った。
と、突然に一ノ瀬が動いた。
何時の間にかその手にはナイフが握られていた。
ナイフが向かう先は光太……ではなく銃を構えた白河だ。
白河は不意を突かれ無防備に刺された。
「おま、えぇぇぇ」
悶絶する白河を捨て置き、一ノ瀬は光太を連れるとその場を立ち去る。
刺された白河は身動き出来なくなったところで身柄を確保されることに。
取調を受けた白河は3億円の報酬で木村建設のダム受注を請け負っていたことを認めた。
さらに、白河の口から事件の背景が明らかになった。
法律事務所に相談にやって来た中島を買収し、光太誘拐を行わさせたのだ。
そして、口封じに射殺しスーツケースで遺棄した。
7年前、長峰家を襲撃したのも白河と一ノ瀬の2人であった。
長峰に後継者候補から外されたことを知った白河は復讐を決意した。
其処で相談にやって来ていた一ノ瀬を「威嚇で使用するから」と騙し拳銃強奪に協力させた。
さらに長峰家を襲撃し、白河が自らの手で夫妻を殺害した。
一ノ瀬はまさか実際に殺害が行われるとは思ってもいなかったようだ。
夫妻殺害の犯人とされた金森は無関係であったが罪を着せられたらしい。
同じ頃、糸村は資料から一ノ瀬の真意を探っていた。
あるノートを目にした糸村の表情が変わる。
さらに、糸村からこれを見せられた長峰もが「これは!!」と瞠目することに。
矢先、光太たちの居場所が携帯のGPSから判明。
捜査員たちが現場に急行し、一ノ瀬は廃工場に追い詰められた。
光太に銃を突き付け、周囲を牽制する一ノ瀬。
包囲する警官は一ノ瀬射殺命令を受けて狙いを定める。
まさに一触即発の状況。
其処へ自転車を漕いだ糸村が駆け付けた。
包囲する警官と一ノ瀬の間に割って入った糸村は「僕に3分だけ時間をくれませんか」と例の台詞を口にする。
一ノ瀬の想いを語り出す糸村。
7年前、一ノ瀬は別れた恋人から自分に息子が居ることを知らされた。
名は勇樹。
ところが、勇樹は腎臓に難病を抱えており移植の必要に迫られていた。
其処で、元恋人は一ノ瀬に助けて欲しいと訴え出た。
一ノ瀬は息子を助けられるならと協力を約束した。
だが、元恋人は既に再婚しており、一ノ瀬は勇樹に実父として名乗り出ることが出来なかった。
其処で一ノ瀬は勇樹の親戚として近付き、勇樹がダークファイターのファンであることを知った。
一ノ瀬は勇樹の為にダークファイターのフィギュアを手に入れようと奔走し、元恋人の名前でデザイナーからようやく入手した。
ところが、それが無駄に終わりかねない状況となった。
勇樹の容態が悪化したのだ。
一ノ瀬は移植手術の費用を求められ、白河の誘いに応じ長峰家襲撃に加わった。
では、ダークファイターのフィギュアが光太の手に渡ったのは何故か?
襲撃当夜、両親が目の前で惨殺される現場を目撃した光太。
顔を見られた白河は光太を殺害しようとした。
一ノ瀬はこれを止めようと、両親の死に泣き続ける光太を必死に泣き止ませようとした。
其処でダークファイターのフィギュアを光太に握らせたのだ。
すると、不思議なことに光太は泣き止んだのである。
こうして多額の報酬を得た一ノ瀬だったが、勇樹の手術には間に合わず徒労に終わった。
全てを失った一ノ瀬だったが、たった1つ特別な存在が残された。
それが光太だったのだ。
一ノ瀬は光太を見守るべく長峰家に仕え始めた。
白河が計画した光太誘拐に一之瀬が参加したのも、光太を陰ながら守る為であった。
光太が床に落とした筈のダークファイターを廃倉庫に運んだのも一ノ瀬だ。
光太が不安がらないようにとの一ノ瀬なりの配慮だったのだ。
糸村の言葉に「そんなのは推測だ!!」と叫ぶ一之瀬。
さらに銃口を光太に向けて威嚇する。
これに糸村は「もう弾は残ってませんよ」と伝える。
さらに、その鞄から一冊のノートを取り出すことに。
それは光太の両親が遺した成長記録であった。
同時に、長峰夫妻亡き後は一ノ瀬による光太の成長記録となっていた。
「あなた、光太君に憎まれようとしているんでしょ」
そう、一ノ瀬に語りかける糸村。
一ノ瀬は自身の罪を償う為に光太に憎まれなければならないと考えていたのだ。
図星を突かれた一ノ瀬は光太を突き飛ばすと再び銃を構える。
このとき、一ノ瀬は無防備になった。
がら空きになった一ノ瀬を狙撃班の弾丸が襲う。
銃撃を受け仰向けに倒れ込む一ノ瀬、其処に光太が駆け寄る。
「来るな!!離れろ」
光太を巻き込まないように叫ぶ一ノ瀬、さながらそれは子を庇う父の姿であった。
銃弾は一之瀬の腕に命中しており、比較的軽傷だったようだ。
光太を抱きかかえ、引き離す糸村。
同時に、ここぞとばかりに一ノ瀬に殺到する捜査員たち。
彼らの手で一ノ瀬はたちまち拘束された。
この間にも「誘拐されていない、一ノ瀬さんとドライブしていただけだ」と叫び続ける光太。
取り押さえられ連行される一ノ瀬。
その姿に、糸村が「死ぬまで光太君を見守って下さい、それがあなたの償いです」と語りかける。
一ノ瀬は自身が加えた成長記録のページを思い起こした。
4月16日 指導を初めて丸1年、ようやく型が様になって来たようだ。
6月5日 道着が少し小さくなったか、今度新しい道着を贈ろう。
11月5日 今日、初めて胴を決めた。もっと、上達して欲しい。
そして、そのどれもに記された「光太君、誰にも負けない強い男になって欲しい」との一文。
其処には正直な一ノ瀬の思いの丈が綴られていたのである。
一ノ瀬は光太の思い出を胸に涙ながらに連れられて行く。
続いて、糸村も打ちひしがれた様子の光太を支えながら外へ出た。
「何がもう弾は残っていません、よ……」
現場に残り、1人呟く水沢の手には一ノ瀬が取り落とした拳銃が握られていた。
其処には装填されていた弾丸が……糸村特有の嘘だったのだ。
長峰は今回の事件で不正を暴かれ失職した。
光太は海外留学を拒否し、幼いながらに自立することを望む。
一ノ瀬との記憶が彼を強くしたのだろうか。
そして、今回の事件を後に伝え聞いた森田は「俺ならば、もっと早く事件解決していた」と嘯いたそうである―――了。
<感想>
7度、我々の前に姿を現した「遺留捜査」。
4度目のスペシャルです。
ラスト、一ノ瀬による光太の成長日記が語られたシーンで思わず泣かされてしまいました。
さらに、小田和正さんの歌が追撃。
グッと来てしまって終盤は涙で画面が滲んでしまう事態に……不覚でした。
一ノ瀬にとって光太は亡き勇樹と同じ存在……すなわち息子になっていたのでしょう。
だからこそ、厳しくも愛情を持って接していた。
そして、それを感じていたからこそ光太もまた彼に父親のような愛情を抱いていた。
「遠くの親戚よりも近くの他人」という言葉が示すように、光太が血縁でありながら何処か愛情を感じられない長峰や典子たちよりも血縁では無いものの常に寄り添ってくれていた一ノ瀬に愛情を感じていたのは皮肉な話と言えるかもしれません。
皮肉と言えば、そんな皮肉を劇中で表現する存在が「ダークファイター」。
「愛する者の為には人殺しも辞さない」―――まさに人によっては忌避されかねないもの、いや忌避されるべきものか。
とはいえ、誰しもが「愛する者を守りたい」との気持ちを抱えているのも事実。
言わば、その差は程度の差に過ぎず、それを手段に表すかどうかが分けているのかもしれない。
「ダークファイター」はそれをもっとも極端ながら表現した存在なのでしょう。
そして、この「ダークファイター」と同じ行動理念で動いたのが一ノ瀬であった。
「ダークファイター」は勇樹から求められたが間に合わず、光太を救うこととなった。
「一ノ瀬」もまた勇樹を救うことに間に合わず、光太を救うこととなった。
彼らは同一の存在である。
さらに、一ノ瀬は「最初に愛する者」であった勇樹を救うべく行動した為に「後に愛する者」となった光太から両親を奪い危地に追いやる片棒を担いだワケで……これもかなりの皮肉と言えるでしょう。
そこから一転して最終盤では森田によりコメディタッチなラストに。
此の辺りも良かった。
序盤のやる気を見せる森田。
中盤で宮下から拒否される森田。
最終盤で嘯く森田。
そして、ラストで糸村に奢らずに済むように嘘を吐こうとしあっさり周囲からばらされる森田。
登場シーンこそ少なかったものの森田も大活躍でした。
仙堂もマニアキャラを発揮。
ダークファイターについて水沢が答えようとしているところを掻っ攫うシーンはツボでした。
そして、何より糸村は良いねぇ!!
彼の飄々とした存在感が、時にウェットに傾いた物語をある程度のバランスで保たせている。
これは稀有な主人公だと思う。
もちろん、演者である上川隆也さんの存在が大きい。
上川さんあっての糸村と言えるでしょう。
続くスペシャルかシーズン4、期待したいところです!!
<キャスト>
糸村 聡(月島中央署刑事):上川隆也
水沢響子(月島中央署刑事課課長):斉藤由貴
仙堂卓巳(月島中央署刑事):正名僕蔵
遠山修介(月島中央署刑事):眞島秀和
横山恵一(月島中央署刑事):波岡一喜
村木 繁(科学捜査研究所係官):甲本雅裕
森田宗介(月島中央署刑事):西村雅彦
東 孝彦(月島中央署署長):三宅裕司
一ノ瀬誠(いちのせ・まこと):北村有起哉
国土交通大臣・長峰泰造の運転手。6年前から長峰家で働き始めた。どうやら警視庁捜査一課の刑事・宮下晴彦(螢雪次朗)と面識があるようだが…!?
長峰光太(ながみね・こうた):鈴木福
国土交通大臣・長峰泰造の孫。ある事情から、祖父のもとで暮らしている。両親にもらったという“黒いヒーローのフィギュア”をお守りとして、どこに行く時も携帯している。
(公式HPより、順不同、敬称略)
◆関連過去記事
・「遺留捜査(2013年)」(テレビ朝日、2013年)まとめ
・「遺留捜査スペシャル(2013年) 緊急事態発生!!あの風変わりな刑事が病院立てこもりの人質に!?少女の心臓手術のタイムリミットは24時間…遺留品の“鳥のブローチ”が明かす意外な真犯人とは!?」(11月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「ドラマスペシャル 遺留捜査(2014年) あの風変わりな刑事が帰ってきた!!連続誘拐事件発生!!犯人の要求は9125万円の身代金と事件の完全生中継!?“東京―長崎の寝台特急券”に3分の真実」(8月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「ドラマスペシャル 遺留捜査(2014年10月) あの風変わりな刑事が帰ってきた!!連続バックドラフト殺人事件発生!!疑惑の女社長と燃えた1億円…絶体絶命!!猛火が刑事を襲う日月星の香炉に3分間の涙の真実」(10月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
なるほど、言われてみて気付きましたが今回は糸村が皆から肯定的に受け入れられていましたね。
途中で宮下に単独捜査を揶揄されたことぐらい。
此の点、少しずつですが周囲が糸村を認めているような気がして好感が持てます。
そしてご指摘の通り、光太役の鈴木福君、熱演でしたね。
最終盤にて一ノ瀬が連行されるところで何度も懸命に誘拐を否定する姿は小さいながらも凄味を感じました。
このクオリティで次の「スペシャル」、あるいは「シーズン4」欲しいなぁ。