2015年06月20日

『墓標なき街』第9話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)

『墓標なき街』第9話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります!!注意!!

<あらすじ>

「百舌シリーズ」新連載!巨悪を追う、迫真のサスペンス。
(集英社公式HPより)


<感想>

「百舌シリーズ」2015年時点での最新作が『小説すばる』にて連載開始されました。

「百舌シリーズ」は次の6作が既刊。
『裏切りの日々』、『百舌が叫ぶ夜』、『幻の翼』、『砕かれた鍵』、『よみがえる百舌』、『鵟の巣』。
そして、これに新たに加わるのが意外な導入から始まった2015年時点でのシリーズ最新作『墓標なき街』。

今回はその第9話ネタバレ批評(レビュー)です。

なんと、此処でまさかの「紋屋貴彦」の名が登場。
シリーズ既読者はご存知の通り『よみがえる百舌』にて百舌役を担った人物です。
大杉と美希の手で止めを刺された筈だったのですが……大角と御室が予想するように本当に彼が黒頭巾の正体なのか!?
ただ、どちらかと言えば、黒頭巾からは冷静さと大物ぶりが感じられます。
其処からは津城のような印象を受けるのですが……でも、津城は紋屋に確実に殺害されてるからなぁ。
やっぱり、紋屋なのでしょうか?

とはいえ、そもそも大角たちの間で紋屋説が浮上するきっかけとなった目撃談も何処まで信用すべきかの問題も残る。
なにしろ、「歩く黒頭巾」が「車椅子の黒頭巾」と同一人物とも限らないワケだし。
蓋然性が低いとはいえ、もしかすると後者がまほろやタミの変装の可能性も残る。
まだ、予断は禁物と言えるでしょう。

そして、黒頭巾たちは三重島側らしい。
どうも、美希が教えた三重島の別邸こそ黒頭巾たちの住居と思われます。
となると、そろそろ大角らと美希たちが出会うことになる?
でもって、優秀さを見せる御室だが余りに知り過ぎており危険な匂いが……次に狙われるのは彼か?
優秀と言えばめぐみと共に居る車田聖士郎のポジションも気になる。

さて、此処で9話までのまとめ。

田丸殺害は新百舌による犯行と確定。
さらにその背景が明かされつつあるようです。

どうやら、茂田井と三重島による権力闘争が根幹にある様子。
ただ、これはまだまだ断定出来ない。
もしかすると、両者を争わせて利益を得る第三者が黒幕の可能性もあるからだ。

それを踏まえて、次の2つの事柄が密接に関わっているようです。

1つ目は「武器輸出事件」。
2つ目は「田丸による百舌についての記事掲載」。

2つ目の「田丸による百舌についての記事掲載」は茂田井の命によるものの様子。
これを三重島側に居た百舌が中丸を殺害し阻止した。

となると、問題は「武器輸出事件」。
コチラに関しても三重島側が主謀者なのか?

かなり物語が進展しましたね。
これは『小説すばる』掲載の第9話をチェックすべし。

<ネタバレあらすじ>

【前回までのあらすじ】

初代・百舌との戦いから長い月日が過ぎ、大杉は警察を退職し探偵業を営んでいた。
娘・めぐみは警察官になり、倉木を失った美希とは大人の男女として関係を続けている。

そんな大杉のもとに旧知の残間から田丸が「百舌について」記事にしようとしていることを聞かされる。
今更のことに、意外に思う大杉。
また一方で、不正な「武器輸出」が行われているとの情報を入手する。
その告発者は三京鋼材の石島であった。

さらに、千枚通しを用いる殺し屋が新たに登場し美希が狙われてしまう。
これは大杉により事無きを得たのだが……。

その翌日、石島を監視していた大杉と村瀬であったが、めぐみとその同僚・車田聖士郎に見咎められてしまう。
大杉たちは何とかめぐみたちの裏をかき、石島が接触していた為永に辿り着く。

矢先、田丸が何者かに殺害されてしまう。
これにより、大杉たちは「新たなる百舌の登場」と「三重島と茂田井の暗闘」に気付くことに。

一方、大角は部下の御室と共に謎の人物・黒頭巾の警護をしていた。
黒頭巾は田丸殺害に興味があるようだが……。

・前回はこちら。
『墓標なき街』第8話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)

【今回のあらすじ】

田丸殺害について捜査本部から情報を引き出す美希。
ところが、逆にアドバイスを求められてしまう。

どうやら「百舌」が関与していることに捜査本部自体が戸惑っている様子。
なにしろ、現役の警官で「百舌」に関わった上での生存者は美希しか居ないのだ。
美希は自身が掴んだ「田丸が茂田井側の人間」であること、「茂田井と三重島が暗闘を続けている」こと、従って「三重島側の人物が容疑者となる」ことと「三重島の別邸の在処」を教える。

一方、大角は黒頭巾に田丸殺害についてまたも問われていた。
知り得る限りの情報を教える大角、御室もまた同様である。
だが、御室は大角の知らない何かを知っているようだが……。

と、此処で黒頭巾から「百舌」の名が飛び出した。
もちろん大角も多少は知っている。
困惑しつつも、書類で目にした内容を語る。
其処で大角は御室が知らない素振りを装っていることに気付いた。

休憩を取り、黒頭巾の眼を逃れた大角は御室を呼び出し事情を問い質すことに。
これに御室は「ある情報を知っているかどうかの差だ」と返す。

そのとき、2人は意外な光景を目撃する。
普段の黒頭巾は車椅子を利用しているのだが、このときばかりは悠然と歩いていたのだ。
見てはいけない何かを目撃したとでも言うように、慌てて隠れる大角たち。

黒頭巾の前に戻った2人に、黒頭巾は何かを察したのか休憩中の居場所を問う。
これに御室が上手く切り替えし事無きを得るのだが。

その夜、思った以上に優秀な御室に救われた大角は感謝の意を伝える。
それとは別に、彼が握る情報を確認することに。

御室によれば稲垣の机の中を調べていたところ、驚くべき資料を発見したのだと言う。

資料には『よみがえる百舌』当時の出来事が記されていた。
内容は津城が紋屋貴彦に殺害されたこと。
当の紋屋もまた大杉と美希の反撃に遭い、死亡したとされたこと。

ところが、此処からが公式の事実と異なっていた。
なんと、稲垣が誰かを運び出し助けて居たそうなのだ。

御室が見たところ、それは紋屋だと判断されるらしい。
この際、稲垣に救出の指示を与えたのは三重島だそうである。

だとすれば、助け出されたとされる紋屋は今何処に居るのか?
此処で大角と御室の脳裏を過ったのは同一人物であった、そう黒頭巾だ。

黒頭巾は車椅子のように偽装していたが、実は歩行可能であった。
だとすれば、彼こそが新たな百舌であり田丸殺害犯なのではないか。
大角から田丸殺害について情報を聞き出そうとしているのは、捜査状況を調べているのではないか。
疑念を抱える大角たちだが―――10話に続く。

◆関連過去記事
『墓標なき街』第1話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『墓標なき街』第2話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『墓標なき街』第3話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『墓標なき街』第4話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『墓標なき街』第5話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『墓標なき街』第6話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『墓標なき街』第7話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『墓標なき街』第8話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)

『百舌シリーズ(百舌の叫ぶ夜、幻の翼)』(逢坂剛著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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