2015年06月17日

『迷い込んだ呪い 統括診断部の事件カルテ』(知念実希人著、新潮社刊『小説新潮 2015年6月号』掲載)

『迷い込んだ呪い 統括診断部の事件カルテ』(知念実希人著、新潮社刊『小説新潮 2015年6月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

――あなたはまだ許してくれないの――原因不明の激痛に苦しむ秋恵は
(新潮社公式HPより)


<感想>

『天久鷹央の推理カルテ』として刊行されている『統括診断部の事件カルテ』シリーズの1作。
過去には『泡』や『閃光の中へ』を書評(レビュー)していますね。

『泡 統括診断部の事件カルテ』(知念実希人著、新潮社刊『小説新潮 2013年6月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『閃光の中へ 統括診断部の事件カルテ』(知念実希人著、新潮社刊『小説新潮 2014年6月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

そんな今回ですが「鷹央に道ならぬ恋のお相手が登場!?」など見所十分なストーリー。
キャラクターが存分に活かされた短編となっており、シリーズとして成熟した様子を見せています。
今後にも期待出来るシリーズと言えるのではないでしょうか。

なお、「ネタバレあらすじ」はまとめ易いように大幅な改変を加えた上にかなり端折ってます。
本作を正確に味わうには、本作それ自体を読むべし!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
天久鷹央:ご存知「天上天下唯我独尊」な主人公。統括診断部のボスで実際に優秀。
小鳥遊優:鷹央に頭が上がらない医師。愛称は「小鳥」。
大山秋恵:今回の患者。
香織:霊能力者を名乗る人物。


大山秋恵は婚約者との結婚を決めてから腹部の痛みに苛まれるようになった。
そんな彼女の目に浮かぶのは故人となった過去の恋人のこと。
もしかして、彼の呪いなのかも……恐れ戦く秋恵。

そんな秋恵に近付く人影が。
香織を名乗った人影は自身を霊能力者だとし、秋恵を救えるのは自分だけだと豪語する。
実際に香織は秋恵について信じられないほど詳しい情報を持っていた。
秋恵はすっかり香織に信頼を寄せることに。

この秋恵こそが今回の鷹央の患者であった。
鷹央は秋恵から腹部の痛みについて症状を聞くなり、ある病名に思い至る。
だが、当の秋恵は香織に依存しつつあった。
此の状態では鷹央が何を言っても聞く耳を持たないだろう。
鷹央は香織が詐欺師に違いないと考え、秋恵の目を覚まさせるべく香織の欺瞞を暴くことに。

香織に挑戦状を叩きつけた鷹央は約束の場所に小鳥と共に訪れる。
すると、鷹央は小鳥に意外な相談を始めた。
なんでも、鷹央はある男性と道ならぬ恋に溺れているらしいのだ。
これを聞いて仰天する小鳥。

と、其処に香織がやって来た。
香織は現れるなり鷹央が異性関係について悩んでいると指摘。
その場に居なかったにも関わらず、先程、聞かされたばかりの内容を香織が言い当てたことに驚く小鳥だが……。

これこそが香織が詐欺師である証拠であった。
鷹央が交際相手として語っていたのは近所に住むオスの野良猫のことだったのだ。
確かに男性であるし、道ならぬ恋である。
だが、人間では無い。
これに気付けなかったのは香織が実際に耳にした内容から材料を得ていた為である。

鷹央は付近の電波を探知機で探る。
すると、すぐに不快な音と共に盗聴器が発見出来た。
秋恵のときも同様にして情報を収集していたのだ。

自身の手口をバラされた香織だが、これで屈する相手では無かった。
逆に「こんなことをされるのは心外だ。あなたの所為で秋恵さんを救えなくなった」と鷹央に詰め寄ることに。

ところが、此処で鷹央は秋恵の病名を初めて明かす。
秋恵は子宮内膜症だったのだ。
これまではピルを服用していたので症状が出ていなかったのだが、結婚が決まったことで服用を止めた為に活発化したのである。
秋恵の腹痛は呪いでも何でもなかったのだ。

こうして、秋恵を助けた鷹央。
だが、この隙に香織に逃げられてしまった。

後日、鷹央のもとに1枚の写真が届けられた。
写真を見るなり悔しがる鷹央。

其処にはあの鷹央の道ならぬ恋の相手となった猫と戯れる香織が写っていた。
さらに「あなたの恋人は頂いたわ」とのメッセージが記されていたのである。

どうやら、鷹央同様に香織も相当に負けん気が強い性格のようだ―――エンド。

◆関連過去記事
『誰がための刃 レゾンデートル』(知念実希人著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『ブラッドライン』(知念実希人著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【統括診断部の事件カルテシリーズ】
『泡 統括診断部の事件カルテ』(知念実希人著、新潮社刊『小説新潮 2013年6月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『閃光の中へ 統括診断部の事件カルテ』(知念実希人著、新潮社刊『小説新潮 2014年6月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

【研修医・諏訪野シリーズ】
『彼女が瞳を閉じる理由』(知念実希人著、角川書店刊『小説野性時代 2014年2月号 vol.123』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『悪性の境界線』(知念実希人著、角川書店刊『小説野性時代 2015年3月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

【その他】
知念実希人先生、新作刊行予定を明かす。タイトルは『50/50ダンス(仮)』とのこと。

知念実希人先生、新作長編はタイトル『ブラッドライン』!!2013年7月発売予定とのこと!!

知念実希人先生、受賞後第一作は短編『泡 -統括診断部の事件カルテ-』に!!『小説新潮 2013年6月号』に掲載予定とのこと!!

第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」受賞作決まる!!

知念実希人先生長編第3弾のタイトル判明!!その名は『優しい死神の飼い方』2013年11月発売予定とのこと!!

知念実希人先生『統括診断部の事件カルテ』が書籍化とのこと、その名は『天久鷹央の推理カルテ』(新潮社刊)に!!

シリーズ第2弾!!知念実希人先生『天久鷹央の推理カルテ2 ファントムの病棟』が2015年2月28日発売予定とのこと!!

『迷い込んだ呪い』が掲載された「小説新潮 2015年 06月号 [雑誌]」です!!
小説新潮 2015年 06月号 [雑誌]





『悪性の境界線』が掲載された「小説 野性時代 第136号 (新野性時代)」です!!
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「天久鷹央の推理カルテIII: 密室のパラノイア (新潮文庫 ち)」です!!
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