2015年06月25日

「監視者たち」(2013年、韓国)

「監視者たち」(2013年、韓国)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

韓国警察特殊犯罪課で凶悪犯の行動監視を専門とする班長ファン・サンジュン(ソル・ギョング)と、記憶力、洞察力、集中力に人一倍たけている新人刑事ハ・ユンジュ(ハン・ヒョジュ)。二人はジェームズ(チョン・ウソン)率いる武装犯罪グループを追っていた。しかし、ジェームズは巧みな戦略で彼らの監視網をかいくぐっていき……。
(公式HPより)


<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
ハ・ユンジュ:監視班に配属された新人刑事。コードネーム「子豚」。
ファン・サンジュン:監視班班長。コードネーム「ハヤブサ」。
リス:監視班のメンバー。

ジェームズ:監視班が追う犯罪グループのリーダー。
靴屋のオヤジ:ジェームズを操る闇の顔役。
水のみカバ:ジェームズの部下の1人が監視班に命名されたコードネーム。


その日、ハ・ユンジュの姿は地下鉄の車両にあった。
彼女の視線の先には1人の面長の男、彼こそが今回の監視対象である。
男はユンジュに尾行されていることを知ってか知らずか悠々と振る舞っている。

男が下車した。
これを追うユンジュは喫茶店へ。
ところが、此処でユンジュは男に声をかけられてしまう。
戸惑うユンジュに男は「失敗だ」と評価を下す。

そう、これはユンジュ自身の試験であった。
実はユンジュには監視班への異動が控えており、その適性試験が行われていたのだ。
監視対象とされていた男はファン・サンジュン、監視班班長であった。

サンジュンに否定され、ガックリと肩を落とすユンジュ。
ところが、此処でサンジュンは「地下鉄での出来事」を尋ねて来た。

ユンジュは目を閉じ右手に神経を集中させながら記憶を再構築する。
おぼろげながら甦ったソレが右手がリズムを刻むたびに鮮明になって行く。

これこそユンジュの得意分野であった。
ユンジュは記憶力、洞察力、分析力に優れていたのだ。
ユンジュはサンジュンの問いに答えて行くことに。

そんなユンジュの解答に満足を得たサンジュンは彼女をメンバーとして認める。
こうして、ユンジュは晴れて監視班のメンバーとなった。

監視班メンバーはそれと知られないようにしなければならず、全員に動物の名を借りたコードネームが与えられる。
例えば、サンジュンは「ハヤブサ」と言ったようにである。
此処にユンジュは「小鹿」を望むのだが「子豚」と名付けられてしまう。
仲間の1人で若い男性「リス」に揶揄されたユンジュは「実績を挙げて見返してやる」と誓う。

その頃、街中では同一の犯罪グループによる重大事件が頻発していた。
このグループはメンバーも正体不明で、すべてを計算に基づき行っていた。

そして、グループが次に見定めた獲物は銀行であった。
部下にさえ正体を隠しているリーダー・ジェームズは標的付近の高層ビル屋上から部下に指示を出す。

まずは爆弾で陽動。
そちらに注意を集めると、銀行を襲撃した。
タイムリミットは周辺の道路事情を込みできっかり5分。
大半の部下たちは計画通りに動いたのだが、1人が欲を出し余分に金を盗み出した。
此の為に、予定がずれリミットを過ぎてしまう。

慌てて逃げ出すジェームズの部下たちだが、その後方には警察車両が迫っていた。

しかし、ジェームズは次の手を実行に移す。
念の為、控えさせておいた太目残りの男に大型車を運転させ逃亡を支援させたのだ。

これにより、ジェームズの部下たちは全員が逃げ切った。
もちろん、太目残りの男も騒動に乗じて脱出したことは言うまでもない。

その夜、ジェームズは自身の計画を危機に曝した欲深い部下を抹殺した。
ジェームズは冷酷かつ凶暴な男なのだ。

一方、この銀行強盗襲撃犯の捜査に監視班が乗り出した。
しかし、手掛かりらしい手掛かりを得ることが出来ず困り果てていた。
そんな中、コンビニの防犯カメラデータから現場から逃走したと思われる「太目残りの男」に行き当たる。
「太目残りの男」は待機中にコンビニで買い物をしていたのである。

サンジュンは彼を「水のみカバ」と命名。
監視班全員が「水のみカバ」発見に全力を尽くすことに。

とはいえ、彼らのやることはただ1つ。
街に繰り出し「水のみカバ」を思しき人物を見当たり捜査で発見することであった。
連日連夜、ユンジュも加えたメンバーたちが街を彷徨う。

同じ頃、ジェームズはと言えば靴屋のオヤジのもとを訪れていた。
靴屋のオヤジに今回の報告を行うジェームズ。
すると、オヤジは次の仕事を彼に与える。
そう、この靴屋のオヤジこそ闇社会の顔役でジェームズの黒幕なのだ。

この指示に従いジェームズは次なる計画を立案。
今度は会計法人に保管されていた不正の証拠書類を盗み出すことに成功する。

ところが、ビルから指示を出していたジェームズは盗撮犯に目撃されてしまった。
彼は禍根を断つべく、盗撮犯を殺害しその場を逃げ出す。

一方、サンジュンたちは未だに「水のみカバ」を発見出来ずに居た。
既に捜査開始から16日目である。

そんな中、ユンジュは捜索場所の変更を提案。
これが奏功し、遂に「水のみカバ」を発見する。
また、ユンジュ自身が「水のみカバ」の追跡を行い、その住まいをも突き止めた。
こうして「水のみカバ」に監視班が喰らいついたのだ。

その頃、ジェームズは靴屋のオヤジに「仕事を辞めさせて欲しい」と訴えていた。
目撃者を殺害してしまったことで流石に危険を感じ始めたのだ。

そんなジェームズに靴屋のオヤジは刺客を送り込む。
これを返り討ちにしたジェームズは「今度の仕事を最後にする」と宣言しつつ引き受けることに。

監視班による「水のみカバ」への監視は続いていた。
そんな中、サンジュンが会計法人近くで謎の他殺が行われたことを聞き、グループの指揮者が現場付近の高層ビルから部下に指示を出していたことに気付く。
つまり、指揮者は毎回高所から現場の様子を観察し指示を出していたのだ。
これは大きな手掛かりになると考えるサンジュンだが……。

「水のみカバ」も動き出した。
そのゴミから暗号メモが発見されたのだ。
解析された結果、次の標的が判明し「監視班」も対決の時が近いと意気込む。

そして、その日がやって来た。

「水のみカバ」から足がついたと知らないジェームズは今日も標的近くの高層ビルから部下に指示を出していた。
と、どうも様子が異なることに気付いた。
慌てて無線を確認すると、部下に監視がついているではないか。
ジェームズは作戦中止を伝達、自身も逸早くその場を逃げ出す。

だが、この動きにサンジュンも気付いた。
ユンジュを連れて高層ビルへ突入する。

しかし、ジェームズの対処はサンジュンの予想を超えていた。
そのとき、ジェームズは既にビルから出ようとしていたのである。

だが、ジェームズにも想定外のことがあった。
サンジュンも尋常ならざる洞察力の持ち主だったことだ。
サンジュンはグループの指揮者が既に脱出を果たしたと見定めるや、此の追跡に移る。

サンジュンとユンジュはジェームズの正体は知らないが、彼が部下に電話した際の電話番号を突き止めていた。
電話を架けつつ周囲で通話する人間を見極めることに。

これにジェームズも気付いた。
それとなくその場を離れようとするが、そんな彼の態度にサンジュンが違和感を覚えた。
こうして、ジェームズを突き止めたサンジュンとユンジュは尾行を行うことに。

その頃、ジェームズの部下たちは必死の逃走劇を繰り広げていたが遂に捕捉され銃撃戦に突入。
1人が死亡したものの、残りの部下が全員逮捕された。

この中継を目にし、動揺を隠せないジェームズ。
同時に、尾行者の存在に気付いた。

姿を見られたサンジュンはユンジュに託す。
しかし、ユンジュは信号でジェームズに振り切られてしまう。
無理に渡れば尾行がバレてしまう……ヤキモキするユンジュの目の前でジェームズに声をかける人物が。

リスであった。
フォローすべく追い付いたリスがジェームズの身柄確保に動いたのだ。
仮に確保を失敗しても、ユンジュが追い付く時間は稼げるとの判断であった。

しかし、リスのこの予想は甘かった。
道路越しにリスが倒れ込む光景を目にするユンジュ。
なんと、ジェームズは問答無用でリスを刺殺したのだ。
リスに駆け寄るユンジュだが、その隙にジェームズは逃げ去ってしまった。

その夜、ジェームズは靴屋のオヤジのもとへ。
仕事に失敗したジェームズをオヤジは部下たちを使って抹殺しようとするのだが……。
多数居た筈の部下たちは悉くジェームズに殺害され、靴屋のオヤジも彼に殺されてしまう。
ジェームズは今度こそ国外逃亡の準備に取り掛かった。

同じ頃、ユンジュはリスの仇を討つべく手掛かりを必死に探っていた。
ジェームズの衣服や所持品を思い出し、1つ1つ検証して行くユンジュ。
其処でユンジュはあの試験のときに、ジェームズが地下鉄に同乗していたことを思い出した。
しかも、その手には店舗を特定するような雑誌が握られていたのである。

これに基づき周辺を調べたユンジュはジェームズを発見、尾行を開始する。
ユンジュからジェームズ発見の報を伝え聞いたサンジュンも現場に急ぐ。

しかし、喫茶店でユンジュはジェームズに声をかけられてしまう。
それこそ、あの日のサンジュンと同じように。

だが、ユンジュは「監視班」で経験を積んでいた。
なんとか、これを回避する。
また、其処にサンジュンも到着し、ユンジュはこれと交代するのだが……。

店を出たジェームズとこれを追ったサンジュン。
ほっと胸を撫で下ろしたユンジュはテーブルからナイフが消えて居ることに気付いた。
慌ててサンジュンたちを追うことに。

しかし、時既に遅し。
ジェームズはユンジュではなくサンジュンこそが尾行者だと考え、彼を誘き寄せてナイフで襲撃していた。
なんとか、これを撃退したサンジュンだがジェームズに逃げられてしまう。

その場に駆け付けたユンジュはサンジュンに代わり再びジェームズの追跡を開始する。
ところが、外は見渡す限り傘ばかり。
これでは誰がジェームズが分からない……絶叫するユンジュであったが。

途端に雨が止んだ。
先行く人の中にジェームズを発見したユンジュは仲間に居場所を教えつつ追跡する。
それは地下鉄へと向かっていた。

負傷したサンジュンも追跡に復帰し、ジェームズを包囲して行く。
トンネルに逃げ込んだジェームズは線路伝いに脱出を試みる。

しかし、これに先回りしたサンジュンはジェームズの前方に回り込む。
そして、ジェームズの背後からはユンジュと合流した仲間たちが追い込んで行く。
ジェームズは挟み撃ちになったのだ。

ジェームズに銃を構えるサンジュン、その後方からは何時の間にか列車が近付く。
一方、挟み撃ちにされたジェームズは前方のサンジュンを排除すべきと判断していた。

此処でジェームズはニヤリと笑う。
自ら手を下さなくともサンジュンの背後には列車が迫っている、放置しても自滅は必然であった。

ジェームズはスピードを落とさずサンジュンへ迫る。
当のサンジュンは数メートル背後に列車を抱えていた。

と、此処で列車がサンジュンの背中で軌道を変えた。
いや、初めからサンジュンのすぐ後ろで線路が分岐していたのだ。
ギリギリで列車はサンジュンを避けて行く。

驚くジェームズは慌てて銃を構えつつ発砲。
それに先んじてサンジュンが迎え撃った。

繰り返される発砲音。
地面に倒れ込んだのはジェームズであった。

サンジュンはゆっくりとその場に座り込む。
彼は賭けに勝ったのであった。

こうして、ジェームズとその一党は壊滅したのだ。

その数日後、リスの墓前に監視班のメンバーが集っていた。
仲間の死を悼むメンバーたちだが、彼らの仕事に終わりはない。

さらに数日後、サングラスの男性を尾行するユンジュの姿があった。
今や彼女は「子豚」ではなく「小鹿」と呼ばれている―――エンド。

<感想>

「天使の眼 野獣の街」の韓国版リメイク作品。
リメイク元は過去にネタバレ批評(レビュー)していますね。

「天使の眼 野獣の街」(2007年、香港)ネタバレ批評(レビュー)

終盤がリメイク元とかなり変わってました。
これにより「天使の眼 野獣の街」だと子豚の成長譚だったのが、本作ではサンジュンとユンジュのバディものに変わった印象。
どちらかと言えば、むしろサンジュン主役と言っても差し支えない作品だと思います。

それに伴い「天の眼」の意味も異なることに。
リメイク元「天使の眼 野獣の街」では「天の眼=天の意志(配剤)」と捉えられ、だからこそあの「因果応報」な結末が皮肉を感じさせていました。
このリメイク版では「天の眼=高所から見渡すジェームズの視点」と置き換えられていたように感じます。

例えば、トンネル出口付近にてサンジュンと対決するジェームズ、なまじ目端が利くからこそジェームズは自身が手を下す必要がないと判断しサンジュンへの対処が遅れた。
それこそ、これまでの犯行計画を「天の眼」で見通して来たジェームズだからこその錯誤。
これが彼にとっての致命傷となった……何とも皮肉な結末です。
また、ジェームズ自体もかなりクローズアップされていたように思います。

ただ、やっぱりリメイク元「天使の眼 野獣の街」と比較すると些かドキドキに欠けるかな。
リメイク元で「影の男(リメイク版のジェームズ)」が「犬頭(リメイク版のサンジュン)」を手にかけたときの衝撃や「子豚」が「影の男」を見失ったときの絶望と其処からの再起はリメイク元の方が上だった。

何より、リメイク元だと終盤での「子豚」の「影の男」への尾行も一味を捕まえられていないから泳がせておく必要があるが、こちらではジェームズを特定出来た時点で仲間を一網打尽にしているから尾行する必要がないと思うし、あの場で逮捕に踏み切れたのではないかなぁ……とモヤモヤ。
他にもユンジュがサンジュンがジェームズに負傷させられた場面で「班長、班長」と叫んでいたのに、ジェームズが彼女の尾行に気付かないとか。ユンジュが濡れた衣服の状態でジェームズを尾行するが、それでもジェームズが気付かないとか。
此の点も気になった。

とはいえ、「監視者たち」はその分だけ展開のリズムに力が入れられており、テンポよく進む点は良し。
重厚な物語を望むなら「天使の眼 野獣の街」、テンポ重視ならば「監視者たち」がオススメです!!

ちなみにラストに登場したサングラスの男性はリメイク元である「天使の眼 野獣の街」にて「犬頭」役を演じられたサイモン・ヤムさんだったりします。
此の辺りのファンサービスも良かった。

そして、監視班のメンバーがリスの告別式に参加出来ず墓石に足を運ぶこととなったのも、その隠密性の高い仕事ゆえなんだろうなぁ。
監視班メンバーが顔を覚えられたら仕事にならないから。
此の点もプロ意識が感じられるシーンでした。

そう言えば、本作は日本でも是非リメイクして欲しいなぁ。
その際は、サンジュン役に大杉蓮さんでお願い致します。

興味を持たれた方は是非、本作にチャレンジされたし!!
ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いように改変を加えているので、詳しくは本作をご覧頂きたい。

◆関連過去記事
「天使の眼 野獣の街」(2007年、香港)ネタバレ批評(レビュー)

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