2015年07月17日

「英国一家、日本を食べる」12話「北の海藻キング」(7月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「英国一家、日本を食べる」12話「北の海藻キング」(7月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<12話あらすじ>

ポンコツのレンタカーで北海道の広い大地を函館市南かやべに向かってひた走るマイケルたち。車の長旅に飽き飽きしているアスガーをよそに、マイケルのテンションは最高潮だった。なぜなら、向かう先は交渉に5週間もかけてようやく訪問が実現できた昆布の養殖場だからだ。約束の相手に会えたマイケルだったが、無愛想なその態度にぼう然とする。
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)

11話より北海道に滞在中のマイケル一家。
本日はレンタカーを借りて札幌を出ると函館方面へ向かっていた。

既に出発してから久しい。
当然、耐え兼ねたアスガーは不満を洩らし始めた。
ところが、対照的にエミルが大人しい。

「おや?」と疑問に思うマイケル。
そんなマイケルに「何時、札幌に着くの?」と尋ねるエミル。
どうやら、札幌の観覧車が痛く気に入ったらしい。

しかし、マイケルたちは札幌から出発したのだ。
もはや、戻るつもりはない。
そのことを不用意に答えたマイケルであったが……。

途端にエミルの口が噤まれた。
眉根が寄せられ、眉間に皺が出来る。
同時にエミルの中に負のオーラが蓄積されて行く……。

最初にエミルの異変に気付いたのはアスガーであった。
だが「あああああ……」と絶望の声を上げることしか出来ない。

次いで子供たちの異変に気付いたリスン。
しかし、既に遅かった。
エミルに蓄積されたオーラが咆哮として放出されることに。

数分後、車内には笑顔のエミルが居た。
その手にはマイケルがSAで購入したアイスクリームが買い与えられていた。
何とか機嫌を直したようだ。

一方で、困り顔のリスン。
エミルの手に握られたアイスクリームから目が離せない。
なにしろレンタカーである、汚しでもしたら大変なことになってしまうからだ。

そんな妻子の葛藤を横目に、運転席から目的地について語り出すマイケル。
今回の取材対象は「昆布」である。
ミネラルを多く含み、用途も出汁からお菓子までバリエーションに富んだ食材だ。

マイケルは家族に向けて「昆布」の素晴らしさを熱く語って聞かせる。
当然、前方への注意が疎かになっていた。
と、車体が路上に落ちていた石を踏み大きく揺れた。

「うおっ!!」
「きゃああああああああ」

マイケルの動揺と共にリスンの悲鳴が上がる。
何とか車を立て直したマイケル。
ところが、リスンの悲鳴は止まらない。
それもその筈、この衝撃でエミルのアイスクリームが車のシートへと綺麗に着地を遂げていたのだ。

トーンを上げて行くリスンの悲鳴。
それを聞きつつゆっくりと目を閉じるマイケル。
目的地まではまだ遠い……。

道中、幾つかのトラブルに見舞われながらも、マイケルたちは目的地である南かやべに到着していた。
此処は養殖昆布の有名な産地で50億円の収穫を誇る。
また、献上昆布とも呼ばれる最高級昆布を輩出する土地柄なのだそうだ。
それだけに取材のハードルも非常に高く許可を取るのに5週間、さらに顔写真とパスポートのコピーまで送ってようやく了承を得ていたのであった。

苦労を語り出したマイケル、その前に養殖場の責任者・風間が現れた。
これまでの人々に比べ、無愛想な風間。
その態度は招かれざる客であることを雄弁に物語っていた。

そんな風間の態度に怯えつつも、養殖昆布について家族に説明を始めるマイケル。
その目の前で漁船が昆布を収穫していた。

収穫の様子を指差しつつ、すぐに乾かさなければ白くなると語るマイケル。
さらに、目の前の昆布を「3メートルほどかなぁ……」と評するが。

これを聞いていた風間の目が光る。
すかさず「いい加減なことを言わないでくれ」と口にするや「6メートル」との訂正が入ることに。

続けて、風間は現地が3500トンの漁獲量を誇ることを説明。
だが、最近ではこれが減っていることも明かす。

これに「地球温暖化が原因なんですね」と自説を述べるマイケル。
すると風間は、またも「いい加減なことを言わないでくれ」と口にするや「嵐が原因なんだよ」と訂正する。

風間との遣り取りにペースを乱されるマイケル。
取り敢えず、家族のみで戻って来た漁船の見学をしたいと申し出る。
これが受け入れられるや逃げるようにその場を離れてしまった。

残った風間がふと隣に目をやると……エミルが居るではないか。
どうやら、自主的に居残ったようだ。
おずおずとエミルに語りかける風間だが、エミルもまた独自のペースの持ち主。
今度は風間がペースを乱されることに。

それから数分、エミルが居ないことに気付いたマイケルたちが元居た場所へ戻って来たところ―――。
風間とエミルはすっかり意気投合していた。
それどころか、風間はエミルを抱きかかえて観覧車ごっこに及んでいたのである。
厳めしい顔をしていた風間だが、根は気の良い男だったのだ。

エミルを通じてマイケル一家を理解したのか、笑顔を浮かべる風間は先程とは変わって柔らかく説明を始めた。

なんでも、昆布には2年間も熟成される物があり、さらに10年ものも存在するのだそうだ。
これを聞いたマイケルは「ワインと似ている」と感想を述べる。
今度は頷く風間は「昆布ソムリエ」こと「コブリエ」が存在することも明かす。

こうして、いつしかエミルだけでなくマイケルたちも風間と打ち解け始めた。

すっかりペースを取り戻したマイケルは昆布と記念写真を撮影し始める。
さらに、いつものように昆布について熱く語り出した。
「出汁に用いる昆布の素晴らしさ」、「グルタミン酸の効能」、さらに「精進料理に用いられること」などを説明するマイケル。

これではどちらが案内しているのか分からないほどだ。
これに今度は風間がたじろぐことに。

だが、まだまだ語り足りないマイケルは「含まれるミネラル」や「脂質やカロリーは極めて少ない」ことなどを語り続けた。

そうこうしているうちにすっかり日も暮れて、別れの時がやって来た。
風間に懐いたエミルは彼との別れを惜しむのであった―――エンド。

<感想>

原作はマイケル・ブース著『英国一家、日本を食べる』と『英国一家、ますます日本を食べる』(共に亜紀書房刊)。
NHKさんにて毎週木曜日0時40分から1時まで放送中、全24話予定。

前半はマイケル一家を中心としたカートゥーンパート、後半はトシ視点のドキュメンタリーパートからなる。

この12話のテーマは「昆布」について。
同時に前回に続き「北海道の豊かな食の一端」が取り上げられました。

具体的には、カートゥーンパートでは「昆布の養殖場」を中心に、実写パートでは「函館名物朝市」が取り上げられ「昆布」について紹介されました。
ちなみに、この「函館名物朝市」は「店の数は250、道内最大級の朝市」だそうで「水揚げ量が多いのはイカ」で「その場で刺身にする」のだとか……美味しそうです。
加えて今回は「利尻昆布」や「日高昆布」にも触れられ「昆布が松前漬けとの相性が良い」ことが語られた後に「かごめ昆布」がクローズアップされることに。
この「かごめ昆布」はキャラメル、チョコレート、クッキー、調味料に用いられ、さらに創作料理もあるのだとか。
その具体例として「さらさらのカレーにねばねばのがごめ昆布を入れたスープカレー」が挙げられていました。

でもって、今回も本作「英国一家、日本を食べる」を象徴する回でもありました。
マイケル一家の日常を描きつつ、日本の料理を紹介する―――これこそが初回に見られたような本作の王道。
また「土地に根付く豊かな産物」の紹介はそれこそ「日本という土地の北から南までの名産物」の紹介でもある。
これを通じて日本の文化もまた浮かび上がるのです。次回も楽しみな作品です。

ちなみに本作「英国一家、日本を食べる」の旨味も此の点にあるような気がします。
「マナー」とは「思いやりの心」、すなわち「相手(視聴者)のニーズを察する心」でもあります。
「専門性」や「テーマ性」が作品に問われ「ギャップ」や「メリハリ」が作品に彩りを添える。
さらに「視聴者の欲する情報やシチュエーション」が盛り込まれれば……面白いワケです。
次回も楽しみな作品です。

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