<あらすじ>
監禁された末に餓死した榎本敦史(梨本謙次郎)の変死体が廃墟で発見される。榎本は路上生活者の支援活動をしているNPO法人『セーブ・プア』の代表。法人名義の口座にボランティア団体らしからぬ多額の金が預けられていたことから、捜査本部を構えた加藤光太郎(板尾創路)は『セーブ・プア』の捜査から着手するよう河原みのり(佐津川愛美)たちに指示を出す。
捜査への協力要請を受けた心理学教授の兼坂守(小林稔侍)は、以前コンビを組んだみのり、そして5年ぶりに加藤班のメンバーとして召集された田村沙織(矢田亜希子)とともに、『セーブ・プア』の活動拠点を訪ねる。副代表の宮城春樹(松永博史)は、寄付と助成金でどうにか成り立っている『セーブ・プア』に営利目的などあるはずがないと主張するが、その態度から兼坂は宮城が何か隠していると心理学的アプローチから分析する。
そんな兼坂に加藤は、3年前に起きた類似の未解決事件の資料を手渡す。被害者は当時大学生だった柏木幸子(中村有沙)。山小屋の柱に縛られ餓死した状態で発見されていた。兼坂たちは2つの事件の関連性を捜査。その結果、幸子が活動に加わっていたボランティア団体『トゥモローホープ』の事件当時の代表が、今回の事件で殺害された榎本だったことが判明する!
また、兼坂は幸子の遺留品にあった複数の数字のメモに着目。当時は携帯電話の番号として照会されたが、事件とは無関係との結論に至っていた。兼坂は、遺留品の品々から几帳面だったと推察される幸子が無造作に書いた数字のメモには、何か特別な意味があるとみのりに示唆。注意深く数字を観察したみのりは、数字の並びにある法則を見つけ出す。
翌日、使われなくなった倉庫で新たな餓死死体が発見される。被害者は前田里美(星ようこ)。障がい者支援団体『添え木』の代表で、集めた寄付金を全国の障がい者施設に送る活動をしていた。立て続けに起きた事件の共通点は、殺害の手口と、被害者が慈善活動家だったということ。それ以外の明らかな接点を探すため、兼坂たちは『添え木』を訪ねる。
みのりは兼坂指導の下、心理学を活用して『添え木』のスタッフから有力な情報を聞き出すと、なんと里美は集めた寄付金を着服していたというのだ。また、幸子の数字の謎も解明。『トゥモローホープ』が生活保護費をめぐり詐欺行為を行っていた疑惑が浮上する!さらに、この事件を『詐欺被害者の会』代表で心理カウンセラーの井川玲子(田中美奈子)が探っていたこともわかり…。
「善人面した悪人」。捜査開始当初から沙織がつぶやいていた言葉が、現実味を帯びてくる…。
(公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……。
兼坂守は元刑事の心理学教授。
過去、仲間であった刑事の河原を救うことが出来なかったことで長くトラウマを抱えていたが、河原の娘で父と同じく刑事となったみのりを助けることでこれを乗り越えることが出来た。
今では、みのりを支えることが兼坂の生き甲斐となっている。
そんな中、新たな事件が発生。
NPO法人の代表を務めていた榎本敦史が変死体で発見されたのだ。
どうやら、榎本は何者かに監禁された末に餓死してしまったらしい。
榎本が運営するNPO法人を調べたところ、口座に本来ありえないほど多額の金が保管されていたことが判明。
なんと、榎本は慈善事業家の仮面の下で詐欺行為を行い私腹を肥やしていたのだ。
榎本の裏の顔が次々と明らかになる中、状況の変化に伴って捜査に兼坂とみのりが乗り出すことになった。
さらに、5年前に起こったある事件により傷を抱えた田村沙織もこれに加わる。
沙織の傷となった5年前の事件、それは次のようなものであった。
三倉洋平刑事が部下である沙織や島野と共に犯人のもとへ急行した。
犯人が抵抗を示した為に壮絶な銃撃戦が起こり、結果として犯人が死亡、島野もまた殉職してしまっていた。
この責任を取り三倉は警察を退職し、沙織も尊敬する上司と同僚を失ったことで傷を抱えるようになっていたのである。
兼坂と共に事件捜査を開始した沙織は奇しくも三倉と再会を果たす。
だが、其処に沙織の知る三倉は既に居なかった。
ただ呆けたような表情を浮かべる三倉の姿に、沙織はある罪を思い浮かべるのだが……。
一方、兼坂は3年前に榎本と同じ死因で発見された柏木幸子に興味を抱く。
当時、大学生だった幸子はNPO法人で活動していたのだが監禁された状態で餓死していたのである。
この事件、未解決であった。
しかも、幸子が活動していたNPO法人もまた榎本が代表を務めていたものだったのだ。
どうやら、榎本は複数の団体で詐欺を行っていたようだ。
さらに、兼坂は往時の幸子の動画に注目する。
幸子は光を浴びるとくしゃみを連発していた。
翌日、新たな被害者が発見される。
その名は前田里美、彼女もまた榎本と同じくNPO法人の代表であり、榎本と同じ殺害方法で殺されていた。
しかも、里美もまた榎本と同じく寄付金を着服していたのだ。
兼坂は榎本と里美の死が同一犯による連続殺人と断定する。
そんな中、「詐欺被害者の会」代表である井川玲子が榎本と里美について調べていたことが判明。
当の玲子は弱者を利用して利益を得る榎本たちを批判する。
過ぎた正義感が玲子に榎本たちの殺害を行わせたのだろうか!?
こうして、容疑が玲子に向かうことに。
そんな玲子も光を浴びるとくしゃみを連発していた。
直後に捜査本部へ「葛西崇史が榎本たち殺害の犯人である」と名指しの告発状が届いた。
早速、葛西の身許が調べられ拘束されることに。
実は葛西もまた詐欺師だったのである。
取調を受けた葛西は「榎本たちは親代わりであり殺す筈がない」と主張し「篠田健児に聞いてくれ!!」と訴える。
葛西は佐藤さなえが運営する施設の出身者であり、篠田健児もまた同じ立場であった。
2人は共に榎本と里美を里親として引き取られていたのである。
これを知った兼坂は「榎本たちが忠実な部下を求めて葛西と篠田を引き取った」と考える。
つまり、彼らは擬似的に形成された一家全員が詐欺集団なのだ。
この事実を認めようとしないさなえだが「ネガティブフレーム効果」「シロクマ効果」「思考抑制のリバウンド効果」の併せ技の前に遂に事実を認めた。
矢先、解放された葛西が黒いバンに連れ攫われてしまう。
どうやら、犯人は榎本、里美、葛西、篠田に恨みを抱く人物のようだ。
沙織は連れ去り現場付近を調べ、其処に三倉が居たのではないかと疑問を抱く。
三倉は犯人を見ているかもしれない……これを沙織から聞かされた兼坂は彼に尋問を行う。
すると、三倉は「黒いバンが葛西を連れ去った」と供述。
さらに「犯人が黄色いシャツを着用していた」こと、「車のナンバーが品川へ42である」ことを明かした。
これに基づき、捜査が行われ黒いバンが発見され中から葛西が救出された。
葛西は犯人を目撃していなかったが、バンの持ち主が篠田であったことから篠田に容疑が向かうように。
兼坂はと言えば、黒いバンの窓に興味を惹かれたようだが……。
救出された葛西から幸子について驚くべき情報が飛び出した。
なんと、榎本と里美たちが幸子を殺害していたのだ。
3年前、幸子は榎本たちの悪事を知り、これを告発しようとして先手を打たれたのだ。
どうやら葛西らと同じく施設育ちであった幸子は、それ故に慈善事業を隠れ蓑とした榎本たちのやり方が許せなかったらしい。
犯人は幸子の復讐を行っていたのだ。
兼坂は幸子と同じ特徴を持った人物に注目する。
光を浴びるとくしゃみを連発する―――「光くしゃみ反射」だ。
「光くしゃみ反射」は遺伝する。
つまり、玲子と幸子は親子である可能性が高いのだ。
その翌日、沙織が三倉のもとを訪れ「真犯人が捕まった」と告げていた。
捕まった真犯人は玲子だったそうだが……。
その数時間後、人気の無い廃倉庫に三倉が足を運んでいた。
其処には捕まった篠田の姿が!!
そう、榎本と里美を殺害し葛西を誘拐した真犯人は三倉だったのだ。
三倉は篠田を殺害しようとするが……。
其処に兼坂たちが駆け付けた。
兼坂は三倉に尋問を行った際に彼が犯人だと気付いたのだ。
三倉が居たとされる場所からは車のナンバーは見えなかった。
しかも、篠田の車の窓ガラスは紫外線軽減ガラスになっており、青いガラスであった。
青いガラス越しに篠田の黄色のシャツを見たならば緑色と答える筈だが、三倉は黄色いシャツと答えた。
それは篠田のシャツを直接目にしていたからの発言であった。
もちろん、葛西を手紙で告発したのも三倉の仕業である。
三倉は幸子の母親である玲子を救おうとしていたのだ。
今回も玲子が捕まったと聞き、彼女のアリバイを作る為に篠田を殺害しようとしていたのである。
5年前、事件がもとで傷心を抱えていた三倉。
遂には自殺を試みたのだが、其処を幸子に救われていたのだ。
三倉は幸子の笑顔により生き続けることに決めた。
そんなある日、幸子が榎本たちの不正について訴えると相談して来た。
三倉は幸子に危険だから止めるように助言した。
ところが、幸子は榎本たちに殺害されてしまった。
以来、三倉は復讐を企んでいたのである。
そんな三倉に沙織は暴走する正義を見ていた。
5年前、三倉は島野を殺した犯人を銃撃戦のドサクサに偽装し射殺していたのだ。
「更生する余地のない悪人は殺すしかない!!」
三倉は雄叫びを上げつつ連行された。
翌日、兼坂は玲子のもとを訪れていた。
玲子は若い頃に結婚詐欺に遭い、幸子を身籠った。
だが、育てることが出来ず手放したのだそうだ。
やがて娘を探したところ、当の娘・幸子は既に死亡していた。
その死に疑問を抱いたからこそ、榎本たちを調べていたのである。
娘を失った玲子は号泣する。
人は脆く、強いもの。
その背中を眺めながら玲子の再生を信じる兼坂とみのりであった―――エンド。
<感想>
「犯罪心理学教授・兼坂守の捜査ファイル」シリーズ第2弾。
原作なし、オリジナル作品です。
では、ドラマ版の感想を!!
各人各様にトラウマの乗り越え方があると言ったテーマでしょうか。
その中でトラウマを乗り越える者(兼坂)、逆にトラウマに飲み込まれる者(沙織)も居る。
トラウマを従えようとして、別のトラウマに飲まれる者(三倉)も居るのでしょう。
そんな今回、兼坂が用いた心理は次の通りでした(説明は劇中のもの)。
相手にYESで応じる質問を繰り返すことで本心を吐露し易くさせる「一貫性の心理(原理)」。
対象の危機感を煽ることで意図する行動を取らせる「ネガティブフレーム効果」。
敢えて禁ずることでそれ以外を考えられなくさせる「シロクマ効果」、「思考抑制のリバウンド効果」。
どれも実在するもので此の辺りは面白かったですね。
反面、ストーリーに些か謎が残ったか。
特に気になったのは兼坂が三倉を犯人と断定した論拠。
例えば、兼坂は三倉が青いガラス越しに篠田のシャツの色を言い当てたことから犯人と目星をつけたと述べていましたが、当の兼坂がいつ篠田のシャツが黄色だと知ったのか。
篠田のシャツの色を知らなければ、兼坂に三倉の言葉の真偽が判別出来る筈もない。
これについては、篠田が三倉に拘束されていた以上は犯行現場に踏み込むまではシャツの色は分からなかった筈だし、其処で確認が出来たとしても三倉が犯人だと疑ったきっかけにはなり得ないし。
そもそも、三倉が犯人ならば葛西を抹殺する為にも黒いバンのナンバーは絶対に言わないと思うのだが。
つまり、兼坂が論拠とした2点が共に成立しないような気がする……モヤモヤするなぁ。
やはり、このシリーズはストーリーよりも設定とシチュエーション重視なのだろうか。
シチュエーションと言えば、榎本の喋り方が物凄くインパクトあったなぁ。
凄かった。
そして、ミクラ、ミクラと繰り返されるたびに三倉茉奈さんや三倉佳奈さんが思い浮かんだ。
遂には「ウルトラマンセブン」の「カプセル怪獣・ミクラス」が浮かんだのだが、これも「シロクマ効果」なのだろうか。
三倉と言えば、3年前の時点で幸子の告発を止めるよりも協力していればなぁ……。
元刑事なんだから榎本たちと戦うことも出来ただろうに。
ちなみに、兼坂のトラウマとなった河原殺害犯は第一弾に登場した阿南でした。
そんな阿南役はいぶし銀の名脇役・木下ほうかさんだったりします。
・いぶし銀の名脇役・木下ほうかさんが監督をしてた!?
遂にシリーズ化された本作。
全体としていろいろと可能性を感じさせる作品だけに、次回も期待です!!
◆関連過去記事
・土曜ワイド劇場「犯罪心理学教授・兼坂守の捜査ファイル 喉を焼く連続殺人!白い巨塔に仕組まれた心理トリックの罠!死者のとる謎のポーズ!?心を操る学者&ドジ亀刑事の新コンビ誕生」(2月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
兼坂守:小林稔侍
河原みのり:佐津川愛美
二宮恭助:黄川田将也
榎本敦史:梨本謙次郎
三倉洋平:本田博太郎
井川玲子:田中美奈子
佐藤さなえ:根岸季衣
継田総平:橋本一郎
柏木幸子:中村有沙
田村沙織:矢田亜希子
加藤光太郎:板尾創路 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより転載)
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