<番組内容>
今年没後50年を迎えた日本ミステリーの巨人、江戸川乱歩。数々の業績の陰で、乱歩の人生には常に秘められた苦悩と葛藤があった。近年、遺された資料の分析と新たな視点からの研究が進み、その知られざる姿が現れてきた。少年のころ『怪人二十面相』に出合いミステリー作家を志した綾辻行人さんや、芥川賞作家の中村文則さんらが、乱歩の生涯を見つめ、作品世界を読み解いていく。
(公式HPより)
<感想>
今回は番組の内容と、それを視聴しつつ受けた管理人の感想を併記して行く形です。
なので、番組の主旨以外の内容も混ざっているので注意!!
あくまで「ミステリ通信 創刊号」版の本番組の解釈とご理解下さい。
では、感想をば。
どのような作品でも生まれたその時代の影響を必ず受けるもの。
ミステリ界の巨人・江戸川乱歩が生きた時代は「戦争が色濃い時代」でした。
そんな時代に後の傑作群が生まれました。
江戸川乱歩の名はエドガー・アラン・ポー由来。
エドガー・アラン・ポーと言えば『モルグ街の殺人』で知られるミステリの祖。
其処から純然たるミステリに魅せられた1人の男性が筆名を「江戸川乱歩」として文壇に立ちました。
彼はその名の通り祖に倣い純然たるミステリを著することを夢としていました。
其処で鮮烈なデビュー作となったのが『二銭銅貨』(処女作は『火縄銃』)。
「暗号解読」をテーマにした作品で、ある種冒険小説の要素も含まれていました。
その後、時代は「モボ(モダンボーイ)」や「モガ(モダンガール)」へ。
この頃、乱歩は『芋虫』や『人間椅子』など「エログロナンセンス」と称される作品を上梓する。
時代は次第に戦時下へ。
統制が厳しくなり乱歩の著作が発禁処分となる中で「冒険小説(ジュブナイル)」を発表。
すなわち『少年探偵団シリーズ』こと『怪人二十面相』が登場しました。
この変遷の歴史こそが乱歩の多面性と先見性を示すものとされています。
また、「モボ(モダンボーイ)」や「モガ(モダンガール)」など流麗な文化が盛り上がれば「エロ、グロ、ナンセンス」を。戦争の色が濃くなり統制の時代に突入すれば、何者にも囚われない稀代の怪人「怪人二十面相」を生み出すなど「反骨の士」としての側面も強調されるべきでしょう。
とはいえ、管理人個人としては乱歩の本領は「やっぱり、幻想文学なんだよ!!」と力説したい。
あの文体が醸し出す世界観が優れているんだよ。
そして、描き出された心理がまた凄い。
この両者のバランスが秀逸なんですよ!!
さらに、乱歩による後進の育成も注目すべき点です。
此の中で彼の後輩であった松本清張との関係も取り上げられました。
乱歩側が評価するも、松本清張側は一線を画すところがあったそうです。
共に「ミステリ」の土壌に立ちながらも「社会派」であった松本清張とは相容れぬ部分もあったのかもしれません。
後進育成については「江戸川乱歩賞」もクローズアップされていました。
こちらは現在も名だたる後進を育成しています。
この様に、その魂は後進に受け継がれていると言えるでしょう。
此の辺り、流石は「幻影の城の主」と言うべき貫禄です。
他に、江戸川乱歩先生の肉声や綾辻行人先生、中村文則先生の解説も。
綾辻先生によれば『十角館の殺人』(講談社刊)から始まる「館シリーズ」にも多大な影響があるとのことでした。
・『十角館の殺人』(綾辻行人著、講談社刊)ネタバレ批評(レビュー)
それと、福島泰樹さんによる各作品の朗読も印象的でしたね。
実際に『二銭銅貨』『モルグ街の殺人』『芋虫』『人間椅子』『怪人二十面相』の朗読はかなりインパクトがありました。
かなり集中できる1時間でした、ミステリファンならば是非視聴して欲しい。
とはいえ「既に放送終わってんじゃん!!」とお思いのアナタ!!
ご安心を、2015年8月8日(土)午前0時から午前1時にかけて同じEテレさんにて再放送予定なのです。
見逃したアナタは要チェックにゃん!!
◆関連過去記事
【江戸川乱歩著作関連】
・『妻に失恋した男』(江戸川乱歩著、春陽堂書店刊『ペテン師と空気男』収録)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・江戸川乱歩作「妻に失恋した男」が映画化!!「失恋殺人」は4月24日より公開!!
・映画「失恋殺人」、モントリオール世界映画祭へ!!
・映画「失恋殺人」の衝撃再び!!今度の映画は「D坂の殺人事件」だ!!
・土曜ワイド劇場の名作「江戸川乱歩の美女シリーズ」が遂にBlu-ray BOXになった!!「江戸川乱歩の美女シリーズ Blu-ray BOX」は2015年6月24日に発売予定とのこと!!
・2015年7月19日(日)13時50分より「NHKアーカイブス すべては乱歩から始まった〜日本ミステリーの父 没後50年」放送とのこと!!
・NHKにて江戸川乱歩関連番組が続々放送予定!!「NHKアーカイブス」に続き「シリーズ・妖しい文学館」と「ETV特集」も!!
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