2015年09月02日

『第五番 無痛2』(久坂部羊著、幻冬舎刊)

『第五番 無痛2』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

・単行本版
薬がまったく効かない新病・新型カポジ肉腫が列島に同時多発。一方ウィーンでは天才医師・為頼がWHOの奇妙な関連組織メディカーサから陰謀めいた勧誘を受ける。『無痛』著者の壮大なミステリ。

・キンドル版
私立医学部の雄・創陵大学皮膚科の准教授・菅井憲弘のもとに送られてきた患者の病変は、これまで見たことのないものだった。表面には赤黒いシイタケ状の肉腫。エイズ患者が発症するがんの一種「カポジ肉腫」と似ていたが、ウイルスがまったく別ものだった。さらに腫瘍が骨を溶かし、数日で全身に転移し、意識障害を起こして死に至る。エイズの、がんの特効薬がまったく効かない。そして、数カ月のうちに日本列島に患者が同時多発したが、国も医療界もまったく手だてがなく、日本人を恐怖のどん底に陥れた――。
(幻冬舎公式HPより)


<感想>

『無痛』の正統なるシリーズ続編であり、その問いに解答が与えられることとなりました。

『無痛』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

人は痛みを知ることで成長する。
すなわち、無痛症のイバラには成長がない。

そして、イバラは「純粋」ゆえに何色にも染まる。
例えば白神、例えば菜見子と言ったように。
それは非常に危険な状態であった。

だが、イバラは菜見子を通じ心の痛みを知った。
これにより大きく成長を遂げ、だからこそ菜見子を守る為に身を擲つことに。
このシリーズ、実はイバラこそが主人公だったのかもしれません。

と、同時に本作は治療至上主義である現在医療を揶揄する向きもありましたね。
前作でも語られていた「治療する必要がない者に治療する必然性」。
その思わぬ構造は本作にて思わぬ展開に繋がっていました。
タイトル『第五番』の意味も驚きです。

そして、何より気になるのはラストのへブラの意味。
それは「メディカーサ」の闇の深さを意味していますが、そもそも為頼が会ったへブラは何者だったのか?

幻だったのか?
それともへブラを騙る偽物だったのか?
あるいは偉人とされた肖像画のへブラこそが偽物だったのか?

いずれにしろ、為頼は其処に確かな「悪意」を察しました。

この「悪意」ですが、特に「写真」や「肖像画」からは「犯因症」は診て取れないと言っていた為頼が気付くことが出来たのは重要です。
へブラの「悪意」が生きているのか、あるいはそれほど強いものだったのか。
おそらくへブラの「悪意」は未だ根付いていることになるのでしょう。

為頼の診立てが何処までも正しいとすれば彼自身の余命についてもまた正しい筈。
だとすれば、為頼は姿なき怪物・へブラと対決せざるを得ないのかも。

折角、菜見子との再出発を目前にした為頼ですが暗雲が漂うことに。
そう考えると苦い物を残す結末ですね。

ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように改変しています。
あくまで雰囲気を掴むに留めて下さい。
興味をお持ちの方は本編それ自体を読まれるようオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
為頼英介:ウィーンの在留邦人会の医師。
高島菜見子:臨床心理士。
高島祐輔:菜見子の息子。
南サトミ:ウィーンで法学部に進学した学生。
白神陽児:元・白神メディカルクリニックの院長。
イバラ:白神の患者の1人、無痛症。
三岸:売出し中の画家。
笹山:三岸を支援する画商。
北井:三岸の弟子。
へブラ:メディカーサの支部長の筈だったが……。
フェヘール:メディカーサのメンバーの1人。
犬伏:イバラを追うジャーナリスト。

『無痛』から数年、為頼の姿はウィーンにあった。

『無痛』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

為頼は『無痛』ラストにて在留邦人会の医師として彼の地に招聘されたのだ。
あの事件の首謀者とされた白神は焼身自殺を遂げ、同行していたサトミも今は現地の法学部に通う大学生だ。
あれ以来、為頼はサトミを見守り続けて居た。

一方、日本では菜見子がイバラの社会復帰に乗り出していた。
イバラはこれに応え、会社員となることに。
同時に、センセーショナルなモチーフを用いることで有名な画家・三岸のアシスタントのようなことも始めていた。

少し不安を抱えつつ、それがイバラの世界を広げるのならばと認める菜見子。

三岸はと言えば、イバラから彼の犯行を聞き出してはイマジネーションを高めていた。
三岸は凄惨な現場に立ち会った人物から話を聞くことでモチベーションに繋げていたのだ。
これに画商の笹山は喜び、三岸の弟子・北井は複雑な表情を浮かべていた。

同じ頃、不適格医師とされる人物が次々と殺害されて行く事件が発生。
ジャーナリストの犬伏はイバラの犯行を疑い、付きまとうように。

これに並行して、国内では奇妙な病気が流行。
「カポジ肉腫」と似た症状を示すが有効な治療法が見つからないことから「新型カポジ肉腫」とされ、恐怖を招いていた。

その頃、為頼は医師のフェヘールと出会い、彼からへブラ医師を紹介されると共に「メディカーサ」なる秘密結社に加入するよう誘われる。
「メディカーサ」は「医療のたゆまぬ向上と医師の地位向上」を掲げ、これを叶える為に意図的に疫病を流行させていた。
先の「新型カポジ肉腫」もへブラの代表作「第5番」だったのである。

これを知った為頼は誘いを拒否するのだが、サトミに命を狙われる。
抵抗したところ、サトミは自身の凶器で命を落としてしまった。
サトミはフェヘールに操られていたのだ。

此の地に留まることに命の危険を感じた為頼は菜見子からイバラの件も聞いていたこともあり、サトミの遺骨を抱えて帰国する。
もちろん「新型カポジ肉腫」への対策も兼ねてであった。
為頼排除に失敗したフェヘールもまたへブラの命を受けて日本へ向かう。

帰国した為頼は菜見子と再会。
早速、イバラの「犯因症」を確認し、其処に兆しがあることに気付く。
だが、それよりも為頼は驚愕の事実に気付く。
なんと、笹山と北井にこそ明確な「M」の字を見出したのだ。

同じ頃、フェヘールは三岸と接触していた。
同席していたイバラはフェヘールの正体に畏怖の念を抱く。
そう、フェヘールこそ死亡したとされていた白神だったのだ。
白神は整形しフェヘールを名乗るとへブラの部下となっていたのだ。

その数日後、不適格医師連続殺人を追っていた犬伏が何者かに殺害される。
犬伏は死の間際に「イバラか?」と問うのだが、相手はハスキーボイスで「違うよ〜〜〜」とおどける。
なんと、その正体は笹山であった。

実は三岸はフェヘールこと白神の命で「新型カポジ肉腫」を広めると共にイバラを再度取り込むように動いていたのだ。
その一方で、笹山を操り不適格医師を殺害していたのである。
白神は、いずれこの仕事をイバラに引き継がせるつもりらしい。

その頃、為頼は菜見子と共に「新型カポジ肉腫」の治療法を模索し、ある事実に気付いた。
何もかもが逆だったのである。

まず、感染経路が特定出来ずに居たのだが実は体内に既に存在している水疱瘡を外的刺激で変異させたものだったのだ。

さらに、この「新型カポジ肉腫」は治療すると悪化するのだ。
むしろ、放置した方が治癒率が高くなる病気だったのである。
だが、人間は病気に罹患すれば治療したくなる。
これにより、爆発的な拡大を誇ったのだ。

外的刺激となった物が健康食品であることを突き止めた為頼は販売差し止めするように動く。
最中、菜見子と急接近し遂に肉体関係を持つように。

矢先、当の菜見子からSOSを受け取る為頼。
イバラが「犯因症」について知り治療して欲しいと訴えているらしい。
駆け付けた為頼であったが、嘘を吐けず治療は不可能だと告げてしまう。
これにショックを受けたイバラは菜見子のもとを飛び出し白神のもとへ。
白神から薬を与えられたイバラは彼に服従してしまう。

その夜、菜見子からのメールで三岸の個展会場に呼び出された為頼。
其処には正体を現した白神とイバラ、彼らに捕まった菜見子が居た。

白神は為頼を殺すと宣言。
近くに居る筈の三岸を呼ぶのだが……。

当の三岸は既に死亡していた。
犯人は北井である。
北井は三岸がイバラに執心し、自身が軽んじられたことを許せず殺してしまったのだ。
さらに、北井はイバラをも殺害しようと周囲に火を点けると突進する。

しかし、イバラは白神が見込んだ最高傑作である。
北井はあえなく返り討ちに遭うことに。

次いで、イバラは為頼と菜見子に刃を向ける。
必死の説得を行う為頼だが、イバラの表情は変わらない。
為頼抹殺の成功を確信した白神はその場を離れようとするのだが……。

逃げようとしたところをイバラに捕まってしまう。
火が身体に回り、苦痛にのたうつ白神。
必死にイバラを突き離そうとするのだが、無痛症のイバラには全く通用しない。
こうして、白神とイバラは敢え無く焼死してしまう。

数日後、生きていた為頼と菜見子のもとへイバラの遺書が届く。
イバラは白神を尊敬していたが、彼の酷薄な性格も理解していた。
其処で白神の与えた薬を服用せず、彼に従う素振りを見せた。
実際は白神の様子を観察していたのだが、危惧していた通り菜見子に危害を加えようとしたことで裏切りを決意したのだ。
其処で、最後に白神を道連れにすることを選んだのである。

笹山はこれまでの連続殺人が発覚し逮捕された。

「新型カポジ肉腫」は為頼の手配により終息を迎えた。

こうして事件を解決した為頼はウィーンへ戻ることに。
ところが、そんな為頼に菜見子は付いて行くと宣言する。
為頼は自身の診立てで余命が少ないことを告げ拒否するのだが。
当初は戸惑っていた菜見子も「為頼でも診立て違いはある」と主張し、共に暮らす約束を交わすのであった。

菜見子に先行しウィーンへ戻った為頼。
ところが、在留邦人会の医師の仕事を奪われてしまう。
どうやら「メディカーサ」の圧力らしい。

その遣り口に憤った為頼はへブラのもとへ乗り込む。
ところが、へブラなる人物は存在しないと相手にされない。
それでも食い下がる為頼を衝撃の事実が襲う。
へブラは半世紀以上も前に死亡しており、医療の発展に貢献したとされる医学史上の偉人だったのである。
ところが、その肖像画は為頼が出会った彼と同じであった。
そして、何よりも驚くべきはその額に浮かぶ「M」の文字―――エンド。

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