2015年08月12日

昔話法廷「“白雪姫”裁判」(8月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

昔話法廷「“白雪姫”裁判」(8月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

「三匹のこぶた」に「カチカチ山」、そして「白雪姫」。昔話の登場人物を裁判にかける前代未聞の法廷ドラマ!第3話は「白雪姫」。この裁判の被告人は王妃。白雪姫の美しさに嫉妬を募らせ、白雪姫を毒リンゴで殺害しようとした事実を真っ向否定する!証人には、白雪姫の他、かつて王妃に白雪姫殺害を命じられた狩人も登場。検察弁護双方が熱い戦いを繰り広げる。
【出演】山本裕典、堀内正美、真行寺君枝、小林涼子、苅谷俊介 ほか
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)

「白雪姫裁判」が開廷された。
この裁判で扱うのは「毒リンゴによる殺人未遂事件」。
被害者は白雪姫、被告人は白雪姫の継母である王妃だ。

検察側の冒頭陳述によれば「王妃は白雪姫の美しさに嫉妬し、白雪姫の好物であった毒リンゴを用いて謀殺しようとした」らしい。
これに対し、王妃は無実を主張し真っ向から対立する。

これにより、この裁判では検察側と弁護側で以下の立証が求められる。
検察側は「白雪姫の主張を受けて、王妃の殺意を立証する必要」がある。
弁護側は「白雪姫の主張を覆し、王妃の殺意(あるいは殺害未遂自体)を否定する必要」がある。

まず、証言台に立ったのは当の白雪姫。
白雪姫は毒リンゴを口にした途端に意識を失い、次に目覚めた時には見ず知らずの王子の前だったと証言する。
もしも、王子に助けられなければ死んでいたに違いない。
すなわち、間違いなく王妃が白雪姫に対し殺意を持っており毒リンゴにより死の淵に立たされたとの主張である。

次いで、証言台に立ったのは検察側証人の猟師。
猟師によれば王妃から白雪姫を殺害するよう依頼を受けたが果たすに忍びなく、王妃を騙して森の中に逃がしたのだそうだ。
これは王妃に白雪姫を殺害する意図があったことを示す。

ところが、猟師に対し弁護人側が尋問を加える。
この猟師は弁護側の証人でもあったのだ。
なんと、猟師は以前に白雪姫と王子が密会している現場を目撃していたらしい。
これが事実ならば、白雪姫が主張した「見ず知らずの王子に救われた」ことが嘘だとなる。
その点が嘘ならば「毒リンゴによる被害」自体が嘘の可能性も出て来たワケだ。

そんな中、遂に王妃が証言台に立った。
王妃は自身の無罪を主張する。

これに検察側が反対尋問を加えた。
まず、王妃の所持品から白雪姫に毒リンゴを食べさせた際の変装と思しき服が押収されている。
さらに、後に凶器の毒リンゴに加工されたと思われるリンゴを王妃がインターネットで取り寄せたことも突き止めている。

しかし、王妃は慌てない。
衣装については「仮装パーティーの為に用意したもの」、「リンゴは白雪姫の好物でもあるが自分の好物でもあり食べる為に取り寄せた」と反論した。

しかも、王宮の人間や猟師の証言についても「王宮の人間は白雪姫のファンばかりなので誰も信用が出来ない」と強調したのである。
遂には「王子と白雪姫による狂言の可能性」にすら言及する王妃。

双方衝突する白雪姫と王妃。
果たして、裁判員たるあなたの判断は―――エンド。

<感想>

おとぎ話世界をモチーフにしながらも裁判の本質をリアルに描いたドラマでした。

誰もが知る『白雪姫』の物語。
それ故に視聴者は継母たる王妃の殺意を既に知っています。
言わば「神」の視点に立っており、真相を全て見通している状態。

ところが、その状態ですら次々と出て来る新証拠や新証言に翻弄されました。
最後には王妃側の圧倒的な反転攻勢が開始され彼女の言葉が事実にすら聞こえたのではないでしょうか。

そう、真相を知っている視聴者でさえも困惑してしまうのです。
これが実際に何も知らずに裁判員の席に座っていたとしたら……。

劇中にて猟師が見たとした王子と共に居た白雪姫は本当に彼女だったのか?
仮に本物だったとしても猟師が別人を王子と見間違えた可能性はないのか?
現実世界ならば、見間違えは当然あり得ることでしょう。
ですが、同様に現実世界ならば王妃の証言にも信憑性が生じることになるのです。

視聴者は『白雪姫』の物語を知っているからこそ、嘘に惑わされることはありません。
しかし、物語と異なり現実は結末を先に知ることは出来ません。
それこそ、本作の結末が曖昧であるように。

結果、もしかするとあなたは「真実とは違う事実」を「真実」だと認めてしまうかもしれません。
そんな「裁判員の難しさ」や「責任の重さ」を痛感する番組でした。

また、「裁判員の難しさ」を説明する上で「イチから設定を説明する必要がないように、誰もが知る童話を設定に据えたのも特筆すべき点」でしょう。
此の点、とても分かりやすく為になるドラマだと言えそうです。

同時に、本作は上質な「リドル・ストーリー」でもある。
「リドル・ストーリー」とは芥川龍之介『藪の中』やストックトン『女か虎か』のように「敢えて結末を明かさずに読者(視聴者)に結末を委ねる物語」ですが、本作がまさにソレ。

例えば、先述した内容と相反することになりますが、先の猟師が見た白雪姫がもしも本物だったとしたら……。
それこそ、結末は驚くべきものとなるでしょう。
そんな可能性を純粋に物語として楽しむことも出来る。
それが「リドル・ストーリー」。

「リドル・ストーリー」に興味がある方は山口雅也先生による『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)』(早川書房刊)がオススメです。
中でも『異版 女か虎か』が面白いので読んでみてください。

『異版 女か虎か』(アブラハム・ネイサン著、山口雅也訳、早川書房刊『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)』収録)ネタバレ書評(レビュー)

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posted by 俺 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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