2015年08月13日

昔話法廷「“カチカチ山”裁判」(8月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)

昔話法廷「“カチカチ山”裁判」(8月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

「三匹のこぶた」に「カチカチ山」、そして「白雪姫」。昔話の登場人物を裁判にかける前代未聞の法廷ドラマ!第2話は「カチカチ山」。大好きなおばあさんをタヌキに殺されたウサギがあだ討ちを決意。タヌキに火を放ち、やけどにとうがらし味噌を塗りつけ、さらに泥舟に乗せて池に沈めて殺そうとした。ウサギは実刑にして刑務所に送るべきか?それとも、情状酌量で執行猶予か?
出演:安藤玉恵、モロ師岡、高橋元太郎、宮崎香蓮ほか
(公式HPより)


では、続きから……(一部、重複あり)

「カチカチ山裁判」が開廷された。
この裁判で扱うのは「ウサギによるタヌキの殺害未遂事件」。
そして、争われるのは「実刑か執行猶予か」―――すなわち量刑である。
被害者はタヌキ、被告人はウサギだ。

検察側の冒頭陳述によれば「恩人であるお婆さんをタヌキに殺されたことでウサギが復讐を決意。タヌキに火を放ち、やけどにとうがらし味噌を塗りつけ、さらに泥舟に乗せて池に沈めて殺そうとした」らしい。
検察側は「実刑」を主張。
これに対し、弁護側は「執行猶予」を唱え真っ向から対立する。

これにより、この裁判では検察側と弁護側は以下の立証に奔走した。
検察側は「如何にウサギの犯行が残虐であったか、またウサギの再犯の恐れを立証する」。
弁護側は「ウサギの行為に情状酌量の余地があった、再犯の恐れはない」。

まず、証言台に立ったのは被害者のタヌキである。
ちなみに、このタヌキはお婆さん殺害の罪で逮捕され係争中だ。

タヌキは「確かにお婆さんを殺害したことは間違っていたが、復讐の方法が執拗だった」と主張。
まず、タヌキに火を放ち火傷させ、これを治療すると騙し火傷に唐辛子味噌を塗りつけたのだ。
タヌキは悶絶する苦しみを味わったと言う。
極めつけは泥舟に乗せて池に沈めて殺そうとしたのだそうだ。
しかも、狡猾なことに他者に犯行を目撃されるや改心したような素振りを見せ、タヌキを助けようとまでしたのだそうである。
タヌキは「あいつは復讐ではなく、犯行に快楽を感じるサイコパスだ!!」と主張する。

これに弁護側は情状証人として、お爺さんを召喚した。
お爺さんは如何にウサギがお婆さんに親愛の情を抱いていたかを主張。
もともと、罠にかかっていたウサギをお婆さんが助けたことを恩義に感じていたらしい。
そんなお婆さんが惨たらしく殺害されたのだから、方法は間違っていたがウサギの怒りも無理からぬことと唱えた。
また、ウサギも改悛の情を示しているので更生の余地はあるとするや、自身が共に暮らし彼を支えると訴えた。

そんなお爺さんに検察側から反対尋問が行われる。
まず、検察官はお婆さん殺害直後のウサギの挙動について質問。
これにお爺さんは「ショックを受けていたようだが、こんなことをするとは思わなかった」と応じた。
途端、検察官は「実際に犯行に及んだウサギの気持ちも見抜けなかったあなたが、今後の彼の再犯を防ぐことが出来ますか?」と詰問した。
「いや、それは出来るだけ……」と誠意を強調するお爺さんだが、検察官は「気持ちだけではねぇ」と断じる。

続いて、当のウサギが証言台に立った。
ウサギは泣き腫らしたのか目を真っ赤にしつつ、罪を悔いていることを繰り返す。
しかし、検察官から「街でタヌキにバッタリ出くわしたら復讐しないと言えますか?」との質問に答えることが出来なかった。

さて、あなたならウサギの刑は「実刑」?それとも「執行猶予」?―――エンド。

<感想>

おとぎ話世界をモチーフにしながらも裁判の本質をリアルに描いたドラマでした。

誰もが知る『カチカチ山』の物語。
それ故に視聴者はウサギの本質がタヌキが主張したような「サイコパスではない」ことを知っています。
また、タヌキのお婆さん殺害の手口や、これに対しウサギとお爺さんがどういったスタンスで事に当たったかも知っています。
言わば「神」の視点に立っており、真相を全て見通している状態。

ところが、その状態ですら次々と出て来る新証拠や新証言に翻弄されました。
さらに、最後までウサギは「復讐しない」との言葉を口にしませんでした。
すなわち、彼には未だ復讐心が残っている。
だが、それはお爺さんと共に居ることで癒されるかもしれないものです。

果たして、ウサギに対してどうするべきか……。
そう、真相を知っている視聴者でさえも困惑してしまうのです。
これが実際に何も知らずに裁判員の席に座っていたとしたら……。

視聴者は『カチカチ山』の物語を知っているからこそ、嘘に惑わされることはありません。
それこそサイコパスではないことを知って尚、その処遇に悩む。

しかも、物語と異なり現実は結末を先に知ることは出来ません。
それこそ、本作の結末が曖昧であるように。
結果、もしかするとあなたは「真実とは違う事実」を「真実」だと認めてしまうかもしれません。
そんな「裁判員の難しさ」や「責任の重さ」を痛感する番組でした。

また、「裁判員の難しさ」を説明する上で「イチから設定を説明する必要がないように、誰もが知る童話を設定に据えたのも特筆すべき点」でしょう。
此の点、とても分かりやすく為になるドラマだと言えそうです。

同時に、本作は上質な「リドル・ストーリー」でもある。
「リドル・ストーリー」とは芥川龍之介『藪の中』やストックトン『女か虎か』のように「敢えて結末を明かさずに読者(視聴者)に結末を委ねる物語」ですが、本作がまさにソレ。

例えば、先述した内容と相反することになりますが、先のタヌキが主張したウサギの本質がもしも本物だったとしたら……。
それこそ、結末は驚くべきものとなるでしょう。
そんな可能性を純粋に物語として楽しむことも出来る。
それが「リドル・ストーリー」。

「リドル・ストーリー」に興味がある方は山口雅也先生による『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)』(早川書房刊)がオススメです。
中でも『異版 女か虎か』が面白いので読んでみてください。

『異版 女か虎か』(アブラハム・ネイサン著、山口雅也訳、早川書房刊『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)』収録)ネタバレ書評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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