2015年09月01日

『明智小五郎、獄門島へ行く(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年9月号』掲載)

『明智小五郎、獄門島へ行く(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年9月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<感想>

2015年8月における「金田一耕助VS明智小五郎シリーズ」最新作。
今回は金田一ではなく、明智が主人公の短編作品となっています。
『金田一耕助、パノラマ島へ行く』では江戸川乱歩が活写したパノラマ島で金田一が活躍、『明智小五郎、獄門島へ行く』では横溝正史が活写した獄門島を舞台に明智が活躍することで鏡写しの関係にあるとも言えるでしょう。
まとめると次の通り。

前作は「江戸川乱歩が創造したパノラマ島」で「横溝正史が創造した金田一耕助」が活躍。
今作は「横溝正史が創造した獄門島」で「江戸川乱歩が創造した明智小五郎」が活躍。

言わば「舞台」と「人」との組み合わせが入替っているワケですが、おそらくトリックもこの関係に沿っている気がします。

此処から前作『金田一耕助、パノラマ島へ行く』の内容について触れています。
ご注意ください!!


例えば前作は本作前篇の71ページ(『小説野性時代』掲載時)でも匂わされていましたが「舞台」に大きな鍵が隠されていました。
では、今回は「人」にこそ大きな鍵が隠されているのではないでしょうか。

また、前作では「消えた(離散した)筈の島民が実は○○」でもありました。
だとすれば、今回は「存在している筈の島民が実は○○」となっているのかも。
すなわち、今回は例のタコの件から考えると「島の住人が入替っている」のではないでしょうか。

例えば、島が外敵により占拠されており本物の島民は一握り以外が捕まっている。
其処へ明智がやって来た為に占拠側が偽の島民を演じた。
此の為に、奇妙な空気になっているのかも。
一方、島民側も反撃すべく島に伝わる「武士が多くのタコを引き連れ敵を撃退した」エピソードを利用しタコの扮装で動いている。
これが小林少年が目撃したタコの正体なのかも!?
そもそも、タコではなくて赤い甲冑の可能性もあるのではないでしょうか。
何しろ、前作ではパノラマ島の島民が○○だったので。

そして、さらなる広がりを見せる「金田一耕助VS明智小五郎シリーズ」世界。
前作『金田一耕助、パノラマ島へ行く』と本作『明智小五郎、獄門島へ行く』により、短編集『金田一耕助VS明智小五郎みたび』の存在も見えて来たか。
今回もファン必見です!!

ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
明智小五郎:ご存知、名探偵。
文代:明智の良妻。
小林少年:明智の右腕。

ワーカホリックの明智を心配し、無理矢理にでも休暇を取らせることとした文代と小林少年。
しかし、明智が休暇を過ごす土地として選んだのは瀬戸内海に浮かぶ「獄門島」であった。
明らかに何かを期待する様子の明智に溜息を吐きつつ同行することにした文代たち。

船旅も終わり迎え、いよいよ「獄門島」に近付いた面々。
すると、小林少年が「島の崖上にタコを見た」と言い出した。
何やら明智の狙い通りの展開になってきたようだが……。

島に上陸した明智たち。
しかし、島民は何処かよそよそしい。
いや、何か妙な雰囲気である。

そんな中、明智は島の和尚と意気投合。
和尚は戦国時代の攻防で島が危機に陥った際に、武士が多くのタコを引き連れ敵を撃退したエピソードを語る。
後に判明するのだが、奇しくもこのエピソードこそが全てを表していたのだ。

一方、小林少年は明智から島内を調べるよう指示されていた。
早速、行動に移した小林少年の眼に驚くべき光景が―――後篇へ続く。

2015年9月7日追記

コメントにてご指摘頂き、感想の内容を一部訂正致しました。
訂正箇所は次の通りです。

訂正前:『金田一耕助、パノラマ島へ行く』のトリック部分について記載。
訂正後:上記部分を削除、修正。

より良い記事になったと思います。ご指摘に感謝致します(^O^)/!!

追記終わり


◆関連過去記事
【金田一耕助VS明智小五郎シリーズ関連】
『明智小五郎対金田一耕助』(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『金田一耕助VS明智小五郎』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

『金田一耕助VS明智小五郎ふたたび』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

『金田一耕助、パノラマ島へ行く(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年3月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『金田一耕助、パノラマ島へ行く(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年4月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

「金田一耕助VS明智小五郎 犬神家の一族八つ墓村の金田一が名探偵明智と世紀の推理対決!切断された頭部 黒頭巾の男、黒焦げの焼死体…老舗薬問屋で続発する奇怪な連続殺人!予想を全て裏切る謎につぐ謎!驚愕の真相とは!?」(9月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「金田一耕助VS明智小五郎ふたたび 名探偵金田一と明智の推理対決再び!村の入り口に垂れ下がる首つり死体…柳條家に隠された宝と謎…それを狙う怪人二十面相!名家を襲った怪事件!驚愕の結末とは!?」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【森江春策シリーズ関連】
・森江春策シリーズ第1作にして初々しい学生・森江青年が初登場する作品はこちら。
「殺人喜劇の13人」」(芦辺拓著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「綺想宮殺人事件」(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『異次元の館の殺人』(芦辺拓著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・土曜ワイド劇場版「森江春策」シリーズ第1作となった「弁護士・森江春策の裁判員法廷 殺人レシピのさしすせそ」のネタバレ批評(レビュー)も含んでます。
「裁判員法廷」(芦辺拓著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・「探偵Xからの挑戦状!」にあなたも挑戦!?「森江春策の災難」ネタバレ批評(レビュー)です。
「森江春策の災難」(芦辺拓著)ネタバレ批評(レビュー)

土曜ワイド劇場「弁護士森江春策の事件 殺人同窓会・すり替った友人の死体〜君は一体誰!!密閉空間の移動トリックで法廷が踊る!?」(8月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)

土曜ワイド劇場「弁護士・森江春策の事件 透明人間の完全犯罪!!偽装結婚で殺された病院長!?死のカプセルが相続人を狙う」(10月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【ドラマ化情報】
【至急報】謎の推理ドラマ情報が!!果たして「KvsA」とは!?

「KvsA」の正体判明!!土曜プレミアムSPドラマ「金田一耕助vs明智小五郎」だった!!

【朗報】「KvsA」続編製作中とのこと!!つまり「金田一耕助VS明智小五郎」第2弾放送決定!?

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posted by 俺 at 12:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あれがフェイクの記述だったなら申し訳ないのですが。
例え先行の対になる作品だとしても「パノラマ島へ行く」のネタバレは避けるべきかと・・。
私雑誌を買いそびれてパノラマ島未読で単行本を待ち、且つ今回は無事買えたので前編読了した後レビュー拝読しましたのでちと焦っております・・。
出来ればネタバレしない形に改稿して頂ければ幸いです。
Posted by あずたか at 2015年09月06日 01:23
Re:あずたかさん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

こちらこそ申し訳ないです……。

てっきり前篇71ページ下段の描写から「作中でも前作トリックについて明かされていた」との理解だったのですが、読み込んでみると明確に前作を指しての記述ではありませんでしたね……。
気を付けていたつもりだったのですが何時の間にか配慮が不足していたようです。早速、訂正したく思います。

もしもご指摘頂けず、これに気付かなかったらと思うと身の引き締まる思いです。
ご指摘頂けたことに感謝致します!!
Posted by 俺 at 2015年09月07日 01:00
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