ネタバレあります、注意!!
<感想>
2015年8月における「金田一耕助VS明智小五郎シリーズ」最新作。その後篇です。
今回は金田一ではなく、明智が主人公の短編作品となっています。
また、前作と今作は鏡写しの関係にあるとも言えるでしょう。
簡単にまとめると次の通り。
前作『金田一耕助、パノラマ島へ行く』では「江戸川乱歩が創造したパノラマ島」で「横溝正史が創造した金田一耕助」が活躍。
今作『明智小五郎、獄門島へ行く』では「横溝正史が創造した獄門島」で「江戸川乱歩が創造した明智小五郎」が活躍。
言わば「舞台」と「人」との組み合わせが入替っているワケです。
そして、トリックもこの関係に沿っていました。
此処から前作『金田一耕助、パノラマ島へ行く』の内容について触れています。
ご注意ください!!
例えば前作は本作前篇の71ページ(『小説野性時代』掲載時)でも匂わされていましたが「舞台」に大きな鍵が隠されていました。
そして、今回は「人」にこそ大きな鍵が隠されていたワケです。
また、前作では「消えた(離散した)筈の島民が実は○○」でもありました。
今回は「存在している筈の島民が実は○○」となっていました。
まさに対になっていたワケです。
しかも、前作ラストの金田一への電報が此処に来て活きて来ることに!!
さらに、意外な動機もポイントでした。
これにより、子供が残され「少年探偵団」に繋がったのも良かったですね。
そして、落語から擂鉢を連想させていたのも印象的でした。
そして、さらなる広がりを見せる「金田一耕助VS明智小五郎シリーズ」世界。
前作『金田一耕助、パノラマ島へ行く』と本作『明智小五郎、獄門島へ行く』により、短編集『金田一耕助VS明智小五郎みたび』の存在も見えて来たか。
今回もファン必見です!!
ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むことをオススメします!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
明智小五郎:ご存知、名探偵。
文代:明智の良妻。
小林少年:明智の右腕。
金田一耕助:こちらもご存知、名探偵。
鬼頭早苗:『獄門島』の登場人物。金田一とのロマンスは有名。
清水巡査:『獄門島』の登場人物。
・『明智小五郎、獄門島へ行く』前篇はこちら。
『明智小五郎、獄門島へ行く(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年9月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
明智に命じられ島内を単独捜査していた小林少年。
その前に現れたのは狐面の集団であった。
以降、小林少年は消息を絶ってしまうことに。
当の明智はと言えば、文代夫人と共に何やら動き出していた。
その頃、獄門島の港には旅芸人の一座が訪れていた。
彼らは一路、本鬼頭を目指す。
これに戸惑う島民たちだが「1月前に興業の依頼を受けた」と告げられるや、何故か押し黙ってしまう。
遂に鬼頭家へと押し入った一座。
そんな一座を捕らえようと清水巡査が駆け付けた。
其処へ屋敷内から怪しい男性が巡査に飛び掛かる。
これを手助けする一座たち。
捕らえられた巡査は「お前ら、俺が誰だか知っているのか」と絶叫。
これに対し「お前は知らないが、こちらの方は知っている」と応じる声が。
見れば、それは金田一であった。
どうやら明智の電報を受けて駆け付けたらしい。
そんな金田一が巡査を知らないと否定した。
しかも、怪しい男性の方を知っていると語ったのだ。
金田一によれば、明智に対し清水巡査を名乗っていた人物は偽物らしい。
そして、偽物に飛び掛かった人物こそが本物の巡査だったのだ。
軽く挨拶を交わす金田一と清水巡査に絶句する偽物。
清水巡査によれば、1ヶ月ほど前から座敷牢内に閉じ込められていたのだそうだ。
同じことが島全域で起こっていたのである。
その頃、擂鉢山内では大騒動が起こっていた。
捕らえられていた本物の獄門島民が脱出し、偽の島民を召し捕っていたのだ。
こうして偽の島民は一掃された。
一方、鬼頭の婿養子はこの事態に狼狽していた。
そんな彼をさらに驚かせる出来事が。
目の前に早苗が立っているのだが、彼が知る“どの早苗”とも別人なのである。
本物でも偽物でも無い早苗なのだ。
そもそも、どの早苗とはどういうことか?
そう、彼こそが偽の島民を用意した黒幕であった。
実は選挙が行われるにあたり、ある人物を当選させるべく島民を入替えていたのだ。
もちろん、早苗も偽物にすり替わっていた。
ところが、彼の前に立つ早苗は本物でも偽物でも無い、第3の早苗なのだ。
慌てる鬼頭はその場を逃げ出す。
残された早苗に明智が声をかけた。
その正体こそ、文代夫人の変装だったのである。
誰あろう、この変装で偽島民を翻弄し擂鉢山の本物の島民を解放させた功労者は彼女であった。
逃げ出した鬼頭。
その周囲を狐面たちが取り囲む。
この光景に肝を潰した鬼頭は気絶し捕まった。
狐面の正体は小林少年と少年探偵団獄門島支部の面々であった。
鬼頭は選挙権のある大人だけを捕まえて入替えていたのだが、難を逃れた子供たちが抵抗運動を続けていたのだ。
それが狐面の正体であった。
また、例のタコも彼らの仕業である。
落語をモチーフにしたもので其処から擂鉢山を連想させ、人質の在処を明智たちに教えていたのだ。
偽物と黒幕が逮捕され、本物が助け出されたことで事件は解決した。
明智と金田一は獄門島を去ることに。
本物の早苗に別れを告げる金田一。
明智もまた今は消えつつある幻想的な完全犯罪に想いを馳せつつ、その島を後にする―――エンド。
◆関連過去記事
【金田一耕助VS明智小五郎シリーズ関連】
・『明智小五郎対金田一耕助』(芦辺拓著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『金田一耕助VS明智小五郎』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『金田一耕助VS明智小五郎ふたたび』(芦辺拓著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『金田一耕助、パノラマ島へ行く(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年3月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『金田一耕助、パノラマ島へ行く(後篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年4月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『明智小五郎、獄門島へ行く(前篇)』(芦辺拓著、角川書店刊『小説野性時代 2015年9月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・「金田一耕助VS明智小五郎 犬神家の一族八つ墓村の金田一が名探偵明智と世紀の推理対決!切断された頭部 黒頭巾の男、黒焦げの焼死体…老舗薬問屋で続発する奇怪な連続殺人!予想を全て裏切る謎につぐ謎!驚愕の真相とは!?」(9月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「金田一耕助VS明智小五郎ふたたび 名探偵金田一と明智の推理対決再び!村の入り口に垂れ下がる首つり死体…柳條家に隠された宝と謎…それを狙う怪人二十面相!名家を襲った怪事件!驚愕の結末とは!?」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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「殺人喜劇の13人」」(芦辺拓著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
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【ドラマ化情報】
・【至急報】謎の推理ドラマ情報が!!果たして「KvsA」とは!?
・「KvsA」の正体判明!!土曜プレミアムSPドラマ「金田一耕助vs明智小五郎」だった!!
・【朗報】「KvsA」続編製作中とのこと!!つまり「金田一耕助VS明智小五郎」第2弾放送決定!?
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感謝のしるしに明かしておきますと、物語の中でちょっとした役割を務める「桂円団治」のポスターにはモデルがあり、それが下記の画像です。
https://pbs.twimg.com/media/BsvPr41CEAA-281.jpg
実はこれ、学生時代の手塚治虫氏が二代目桂春団治の依頼で描いたものなのでした。
コメントありがとうございます!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
こちらこそ、芦辺先生からコメントを頂けて恐縮すると共に本当にありがたく思います。
何より、本作を読んで管理人が楽しめたことをお伝え出来たことが嬉しいです(^O^)/!!
また、教えて頂いた画像も早速拝見致しました。
左右に分かたれた上で「左で演者」を「右で演目の内容を7コマ漫画で表現」しており「一目で全容を把握する事が出来るキャッチーな構図」にまず驚きました。
さらに、これが手塚治虫先生の作と聞き、重ねて驚いております。
本作『明智小五郎、獄門島へ行く』の背景を窺うと共に知識を増やすことが出来ました、感謝致します(^O^)/!!
そして、是非是非「金田一耕助VS明智小五郎シリーズ」新作にも期待しております!!