<あらすじ>
及川恭子(石田ひかり)は、会社員の夫・茂則(宅間孝行)と二人の子供と暮らす主婦。スーパーでパートをしながら平凡だが幸せな生活を送っている。ある夜、夫の勤務先・シンテクト本城支社で火災が発生し、宿直中の夫がヤケドを負ったと連絡が入る。病院で夫に会った恭子は、ヤケドが軽傷であったことに胸をなでおろす。
火災の第一発見者である茂則が、不審者を目撃したと証言したこともあり、警察は放火事件として捜査を開始。本城署刑事課課長・工藤和正(矢島健一)は、以前、シンテクトはある政治団体とトラブルがあったことから、報復行為の可能性も含め捜査にあたるよう指示する。
本城署刑事の九野薫(中村獅童)と井上貴司(田中幸太朗)は、シンテクト本城支社で話を聞く。すると事件の夜の宿直は当初、別の社員の当番だったが経理責任者の茂則が、次の日に会計監査があるという理由で交代したのだという。九野らは茂則本人から事情を聞くため入院中の病院へ向かう。経理面で問題があったのかと聞くが茂則は否定する。
そんな中、恭子は茂則から車で見舞いに来るよう言われていた。茂則は会社に顔を出すため、車を病院に置いて行って欲しいと言う。
九野たちはその後の聞き込みで、シンテクト本城支社に伝票操作の疑いがあること、茂則が最近、新築一戸建てや新車を購入し、さらにギャンブルにも多額の金を費やしていることなどを掴む。
茂則への疑念が深まる中、九野は7年前に事故で亡くした妻の記憶に眠れぬ日々を送っていた…。深夜、再び連続不審火が発生したとの一報が入り現場に急行する九野。ペットボトルに入れた灯油で火をつけるという手口が、最初の事件と同じことから警察は同一犯による犯行と見る。現場であることに気づいた九野は茂則の病院へ向かう。すると駐車場でまだ熱を持っている車を発見。車の所有者は茂則だった。
翌日、九野らは恭子から話を聞くため、及川家へ。前夜の茂則の行動や、車の購入資金について尋ねる。毅然とした態度で受け答えをする恭子だったが、心の中では夫が警察から疑われていることに動揺していた。九野らが去った後、慌てて書斎に向かい茂則の給与明細を確認する恭子だったが…。
(公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……
及川恭子は夫と子供2人と暮らす主婦である。
夫・茂則は大手企業「シンテクト」の経理課に勤務するエリートで恭子は幸せであった。
そんな恭子は、先頃から地元のスーパー「コミット」でパートとして働いている。
ただ1つ不満があるとすればパートとしての待遇だろうか。
何しろ、有給休暇が認められていないのだ。
恭子は労働環境改善を訴える「すみれの友」のメンバーに加わり、地位向上の為に動き始めた。
その矢先、「シンテクト」で出火騒動が起こった。
どうやら、放火のようである。
その第一発見者が茂則だったのだ。
しかも、この際に負傷したことで入院することに。
この事件の捜査に本城署刑事の九野と井上が当たることとなった。
聞き込みを行った九野たちは茂則に疑いの目を向ける。
実は放火事件の翌日は会計監査が行われる予定だったのである。
茂則には横領の疑いがあり、監査を延期させる為に仕組んだと考えられたのだ。
しかも、茂則自身の反応からもその線が濃いと思われた。
恭子もまた茂則の様子から彼の犯行であると確信していた。
しかし、今の生活を壊すことを怖れて向き合おうとしない。
寧ろ、「すみれの友」の活動に没入してしまう。
そんな中、九野は同じ署の同僚である花村義明の内偵を命じられる。
どうやら、花村は陰で不正を働いているようだ。
しかし、この動きを花村に察知されてしまった。
花村と衝突した九野は癒しを求めて義母のもとへ向かう。
実は九野の妻・早苗は7年前に事故で死亡しており、今の九野にとっては義母のみが家族と呼べる存在であった。
義母宅は九野にとって避難場所だったのだ。
其処で英気を養った九野は再び、捜査に戻ることに。
その頃、疑惑が噂となったことで会社や家庭での居場所を失った茂則は日に日に追い詰められていた。
ある晩、地下鉄でやって来た電車に飛び込もうとしてしまう。
これを助けた九野であったが、捜査対象者に接触したことで窮地に。
遂には退職すら迫られてしまう。
一方、「すみれの友」で活動していた恭子だが裏切られてしまうことに。
なんと「すみれの友」は「コミット」と向こう5年間、年300万円の和解金で決着してしまったのだ。
結局、恭子の立場は何ら向上していないどころか悪化している。
しかも、利益を得たのは当事者ではない「すみれの友」だけであった。
これに憤慨した恭子は「すみれの友」と訣別することに。
同じ頃、退職を迫られた九野はまたも義母のもとへ。
しかし、呼べど叫べど誰も出て来ない。
此処で九野は義母が早苗と共に事故で死亡していたことを思い出す。
そう、九野は既に存在しない義母の死を認めず、それを心の拠所としていたのである。
だが、遂に気付いてしまった。
九野は避難場所を失ってしまったのだ。
恭子はと言えば、それでもスーパー「コミット」で働いていた。
社長の林葉はそんな恭子に興味を抱き愛人契約を持ちかける。
半ば自棄になった恭子は1000万円でこの契約を受け入れることに。
その夜、茂則は恭子に自身の罪を認める。
やはり、茂則が放火犯だったのである。
恭子は茂則に死を迫るのだが……。
九野の働きにより、大倉と花村の裏取引が露見した。
花村は大倉から金を受け取り便宜を図っていたのだ。
これが明らかになれば花村だけではなく、上層部の管理責任も問われかねない。
花村はこれを逆手に取り上層部を脅迫、真実を明らかにしない代わりに九野の退職を要求する。
九野はさらに窮地に立たされることに。
さらに「シンテクト」の放火犯を名乗り寺田が出頭して来た。
早期解決を狙う「シンテクト」と大倉が取引したのだ。
これにより、余計に九野の立場は難しいものとなった。
さらに、退職させられた花村は九野への恨みを募らせる。
数日後、恭子は茂則たちと共に湯河原へ旅行に出かけた。
その夜、恭子は茂則を残し宿を後にする。
恭子はガソリンを入手すると本城市へ戻る。
恭子は寺田が出頭していることを知らない。
其処で茂則の為にアリバイを作るべく、次の犯行に踏み切ろうとしたのだ。
しかし、この動きに逸早く九野が気付いた。
恭子は九野に止められるのだが……。
其処へ九野を付け狙う花村が現れた。
手にしたナイフで九野の命を狙う花村。
これと九野が争う内に、恭子が放火を達成してしまった。
何とか花村を降した九野は火を消そうと奔走する。
しかし、恭子は止めようとした九野を刺してしまうことに。
恭子はその場を逃走。
残された九野は騒ぎを聞き付けた同僚たちに救われた。
「子供たちの邪魔はしたくない」
逃げ続ける恭子は呟く―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は奥田英朗先生『邪魔』(講談社刊)。
過去にネタバレ書評(レビュー)がありますね。
・『邪魔』(奥田英朗著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
一部に省略はありましたが、展開自体はほぼ原作通りでしたね。
とはいえ、やっぱり原作に比べるとマイルドになるのは致し方ないか。
また、原作最大のポイントが「状況の推移により移り変わる登場人物たちの心象描写」にあっただけに、それを地の文で表現出来ないドラマ版は此の点で難しかったかな。
例えば、恭子が社長と愛人契約を交わしたのは茂則抜きでも生活出来ることを証明する為だったりします。
これが「ある」と「なし」とでは、恭子の行動への理解度もかなり変わる筈。
特に、最終盤の切羽詰まった恭子に関しては心象描写のある原作の方がより分かり易かったとは思います。
ちなみに、恭子は逃げながら九野と花村を口封じすべきだったと後悔してたりします。
でもって、ラストですが原作だと「あれほど作中で子供たちのことを繰り返していた恭子が当の子供たちを割とあっさり捨ててしまって逃亡生活を始めてしまう」ことに。
ドラマ版だと此の点でニュアンスが異なったかな。
とはいえ、実は此の点も原作の妙味だと思うので、出来ればもっと恭子の逃亡シーンに尺を割いた上で恭子の表情を追いつつ表現して欲しかったところ。
此処が本作はあっさりだったかなぁ。
特に恭子中心の本作ならば九野は必要最小限の情報だけでも良かったような気もする。
例えば、花村との関係だけに留めて、その分だけ恭子の表現に割いた方がより深くなったと思う。
そう言えば、花村が美穂を刺したりとかも省略されてましたね。
あくまで暴力と語られていました。
あれだったら、美穂自体を省略するのもアリだった気がします。
美穂の存在に花村というキャラクターの暴力性が表現されていたように思うので。
スーパーの社長ももっとアクの濃いキャラだっただけにイロイロと薄味になってしまった点は惜しい。
とはいえ、ドラマ版はかなり頑張っていたように思います。
これを機に他の奥田英朗先生作品も「2時間サスペンス」化して欲しいと思ったり。
ちなみに「水曜ミステリー9」は2015年10月から「水曜エンタ」枠となるそうです。
詳しくはこちら。
・【2015年10月】テレビ東京系列「水曜ミステリー9」が放送終了、「水曜エンタ」に改編とのこと。
<キャスト>
及川恭子:石田ひかり
九野 薫:中村獅童
及川茂則:宅間孝行
工藤和正:矢島健一
佐伯 実:徳井 優
花村義明:堀部圭亮
林葉将太:螢雪次朗
吉田純子:阿知波悟美
大倉一郎:小沢和義
井上貴司:田中幸太朗
榊原正彦:矢柴俊博
小山昌枝:榊原るみ
西尾淑子:大島蓉子
脇田美穂:森脇英理子
岸本久美:清水由紀 ほか
(公式HPより転載、順不同、敬称略)
◆関連過去記事
・『邪魔』(奥田英朗著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『オリンピックの身代金』(奥田英朗著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
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