<あらすじ>
東京・江東区の公園のボート乗り場で、若い女性の絞殺死体が見つかった。遺留品は見当たらず、身元は不明。着衣の乱れや暴行の形跡はなく、遺体を人目につきやすい場所に遺棄していることから冷静沈着な犯人による計画的犯行がうかがえた。現場に駆け付けた城東中央署刑事・葛木邦彦(時任三郎)は、遺体が靴を履いておらず裸足だったことが気にかかる。
翌朝、警視庁捜査一課の13係が出張ってきて第一回捜査会議が開かれた。13係は山岡宗男(佐野史郎)率いる優秀なチームだが、所轄刑事を消耗品のように扱う傍若無人ぶりで帳場の壊し屋ともいわれていた。しかし、葛木が驚いたのは会議に現れた管理官だった。まだ学生に見えなくもない若き指揮官こそ、葛木のひとり息子、俊史(田中圭)だったのだ!
葛木はかつて捜査一課のやり手だったが、2年前に妻が突然他界。その喪失感から、現在の所轄に異動したのだった。仕事にかまけて妻に家庭を任せていたため、なぜ俊史がキャリアを目指したのかもわからなかった。そしてもちろん管理官としてこの事件を担当することなどひと言も聞いていなかった。自らを取り巻く複雑な状況に、「とびきり厄介なヤマになりそうだ」と感じる葛木…。
その悪い予感はすぐに的中した。13係による恫喝まがいの聞き込みのせいで、地域住民から苦情が殺到したのだ。13係の刑事たちの威圧的な態度には、城東中央署の刑事からも不満が噴出する。
その後、捜査は一向に進展せず、唯一の収穫といえば、鑑識から「微細な金属の粒子が現場から採取された」との報告があったことだけ。しかし、犯人に結びつくものとは断定できなかった。
思うような成果を得られず時間だけが過ぎていく中、予期せぬ方向に事態が動き出した。江東マリーナに係留中のクルーザーのデッキ上で女性の絞殺死体が見つかったのだ。被害者は若い女性で、暴行の形跡は見当たらなかった。しかも、遺体はまたもや素足だった――!
葛木には、2つの現場が水辺というのは偶然の一致と思えなかった。犯人は、都心の盲点ともいえる運河を舟で渡り、犯行現場から遺体を運んだのではないか…!? そして被害者が靴を履いていないのは、犯人からのメッセージなのか…!? 事件はますます混迷の度合いを深めていき…!?
(あらすじ・写真共に公式HPより)
では、続きから……(一部、重複アリ)。
若い女性の絞殺事件が連続して発生。
被害者は何故か靴が持ち去られ、裸足であった。
捜査本部が設置され、管理官の葛木俊史や警視庁捜査一課13係の山岡宗男らを中心に、城東中央署の刑事・葛木邦彦を加えて捜査に乗り出した。
そんな葛木と山岡、俊史にはそれぞれ因縁が。
まず、葛木と山岡はもともと同僚でありライバルであった。
だが、葛木は妻の死を契機に家庭の大切さに気付き所轄へ異動していた。
山岡は葛木の行動を理解出来ず、内心で見下していた。
そして、俊史と葛木は親子であった。
葛木は俊史がむざむざ妻を死なせてしまった父への反発から管理官として立ちはだかっていると考えるが……実はこれは大きな誤りであった。
俊史は葛木を尊敬しており、彼らの働き易い職場環境を作ろうと考えていたのだ。
こうして山岡は俊史と捜査方針を巡って対立することに。
そんな中、葛木は被害者の靴が持ち去られていたことに注目。
犯人のメッセージではないかと考える。
俊史はそんな父の仮説を支持し、過去に女性の靴を窃盗したことで逮捕された幸田に目を付ける。
幸田を容疑者として追う葛木たちは、幸田の勤務先の元エリアマネージャー・北原を訪ねる。
被害者の似顔絵を目にした北原は幸田の元同僚たちだと供述。
こうして、さらに幸田への嫌疑が深まった。
幸田は3年前に姉の冴子をストーカーに暴行され自殺に追いやられていた。
この犯人自体は逮捕され先頃出所していた。
これが原因となり、幸田は女性の靴を窃盗していたようだ。
矢先、幸田の身柄が山岡により確保された。
幸田にはマリアなる恋人が居り、彼女を護ろうと必死であった。
これを利用した山岡はマリアを人質として幸田に罪を認めさせる。
追い詰められた幸田は自殺未遂を引き起こす。
この遣り口に反発する葛木は真犯人の存在を確信する。
葛木が犯人として目星を付けたのは北原であった。
北原は被害者たちの似顔絵を目にしただけで被害者の身許を特定した。
しかも、1人ではなく複数人をだ。そんなことはまず不可能だ。
葛木は北原の過去を調べ、彼の本名が「勝本」であり冴子を暴行した犯人であったことを突き止めた。
どうやら、冴子に告発され逮捕されたことを逆恨みし幸田に復讐すべく罪を着せようと企んだようだ。
未だ幸田犯人説に拘り自身の過ちを認めようとしない山岡。
だが、葛木の一喝を受け考えを変える。
葛木と山岡は北原逮捕に挑む。
逃げ出した北原は隙を突いて葛木に襲い掛かるが、山岡に阻止され逮捕された。
こうして事件は解決し、山岡は辞職した。
葛木は俊史と親子の交流を深めるのであった―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は笹本稜平先生『所轄魂』(徳間書店刊)。
その名の通り「所轄魂シリーズ」の第1作目です。
過去にネタバレ書評(レビュー)してますね。
・『所轄魂』(笹本稜平著、徳間書店刊)ネタバレ批評(レビュー)
2015年8月現在「所轄魂シリーズ」には本作以外に2冊の既刊が存在。
それが『失踪都市』と『強襲』。
それぞれ次のようなあらすじになっています。
<あらすじ>
・『失踪都市』
空き家から男女の白骨死体が発見された。そこには3年前まで老夫婦が住んでいたが、転居したあとの行方がつかめない。銀行口座を調べたところ、ネット経由で2000万円が引き出されていた。ほかにも高齢者が3組、同じように行方不明に。城東署の葛木警部補は息子のキャリア警視・俊史とともに捜査に乗り出すが、上層部はなぜか消極的。事件つぶしの疑惑に、所轄魂に火がついた。やがて浮かび上がった容疑者に、葛木父子と捜査陣は震撼する――。
・『強襲』
江東区で立て籠もり事件が発生した。犯人は三年前まで立て籠もり事件を専門に扱う特殊犯捜査係(SIT)に所属していた元警察官・西村國夫。膠着状態が続く中、葛木の携帯に西村から一本の電話が。「この国の警察を自殺に追い込みたい。警察組織の浄化を要求する」と言う。いったい何が犯人を駆り立てるのか。犯罪を防ぐことを正義とする葛木と所轄の面々、そして葛木の息子のキャリア警視・俊史が、立て籠もり犯と対峙する!
(徳間書店公式HPより)
では、ドラマ版の感想を。
ドラマ版は原作の弱い点がかなり改変されていましたね。
個人的には原作に比べて改善だと感じています。
中でも北原と山岡関係にかなりのアレンジが加えられていました。
原作だと北原は幸田の勤務する居酒屋の店長という設定。
幸田の姉・冴子への暴行で逮捕され裁判を受けた折には髭を生やしていた為に人相が分からず、幸田は店長と気付かなかったとの設定でした。
正直、かなり強引かな〜〜〜と思っていたので、そもそもあまり接点の無いエリアマネージャーへの変更は好印象でした。
また、原作だと北原は逃走途中で事故に遭い死亡してしまうのですが、この「犯人である証明」がかなり弱く作中では真犯人とされながら読者的には「証明できていないじゃん!!」とモヤモヤする(詳しくは先述のネタバレ書評参照のこと)のですが、本作では葛木を襲い犯人であると証明した上で逮捕されたのでとても分かり易かった。
此の辺りは改良と呼んで差支えないと思います。
また、山岡の辞職についても原作だと「幸田を無理に罪に落そうとしたことが露見し辞職を余儀なくされた」との印象でしたが、ドラマ版は「葛木に諭されて本分を思い出した為に罪を悔いて」と自主的な辞職である面を強調していたように思います。
此の点も改良と呼んで良いでしょう。
正直、原作に忠実な序盤から中盤にかけては冗長とすら感じましたが、アレンジ部分が多くなるにつれドラマとして面白くなった印象です。
この調子でオリジナルアレンジが多くなるようなら続編にも期待して良いのではないでしょうか。
◆関連過去記事
【笹本稜平先生著作関連】
・「挑発 越境捜査2」(笹本稜平著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『所轄魂』(笹本稜平著、徳間書店刊)ネタバレ批評(レビュー)
【駐在刑事シリーズ】
・水曜ミステリー9「駐在刑事 奥多摩渓谷・殺意の夜想曲 偽装の転落死!?岩壁に残る謎の白い粉と青い羽根…罪を被って死んだ女の無念を晴らす元刑事の執念」(4月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・水曜ミステリー9「奥多摩駐在刑事2 山小屋に潜む未解決事件の真相を追え!遺留品に刻まれた謎の文字AとK!?3倍速で下山?驚愕の移動トリックを暴け!」(4月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・水曜ミステリー9「奥多摩駐在刑事3 渓谷殺人連鎖!山林王狙う2人の脅迫者…ホタルが照らす変死体の謎と30年前刑事銃撃の闇!」(9月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【越境捜査シリーズ】
・土曜ワイド劇場「越境捜査・警視庁vs神奈川県警、エリアの死角に消えた連続殺人犯!監視カメラには映らない暴走車…疑惑の警察ミステリー」(5月22日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・ドラマスペシャル「越境捜査 警視庁vs神奈川県警、暴走車を炎上させた空飛ぶ刑事!?あのキケンな2人が帰ってきた…本格警察ミステリー!!」(12月22日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
葛木邦彦(53):時任三郎
城東中央署・刑事組織犯罪対策課・係長。階級は警部補。かつては本庁捜査一課のやり手刑事だったが、2年前に妻・佐知子がくも膜下出血で他界。深い喪失感にさいなまれ、所轄への異動を自ら申し出た。家庭も育児も妻に任せっきりだったため、息子の俊史がなぜキャリアを目指したのか、その真意もわからずにいる。
証拠がすべて“クロ”だと語っていても、いったん“シロ”だと感じたならば、最後までとことん信じて真実を追求する…。そのブレない姿勢と弱者に向ける温かい視線から、部下の信頼も厚い。実は、俊史もそんな父親の背中を尊敬の眼差しで見つめていたのだが…。
葛木俊史(26):田中 圭
警視庁捜査一課の管理官。階級は、父親より上の警視。最難関の国立大学を卒業し、国家公務員T種試験に合格、警察庁に入庁した。学生時代から交際していた妻・由梨子と結婚し、実家からは独立している。今回、初めて担当する捜査の指揮にプレッシャーを感じながらも、固定観念にとらわれない発想、いざという時に示す気骨、何より現場の刑事たちを思いやる温かさを見せ、次第に若きリーダーとして信頼を得ていく。
池田真美子(34):内山理名
城東中央署・刑事組織犯罪対策課の女性刑事。葛木の直属の部下。捜査一課から所轄への逆転コースを志願した風変わりな上司・葛木を慕っている。向こう気の強い性格だが、離婚後、幼い息子を実家の母に預けて働いており、内心、自分に母親としての資格があるのか悩んでいる。
坂下裕二(45):宇梶剛士
城東中央署・刑事組織犯罪対策課の刑事。葛木の部下。容疑者として浮上した幸田の張り込みを担当する。
山井清昭(38):松尾 諭
城東中央署・刑事組織犯罪対策課の刑事。葛木の部下。今回の捜査を通して、所轄刑事としての誇りに目覚めていく。私生活では、キツイ性格の妻に悩まされている。
渋井和夫:長谷川初範
警視庁捜査一課長。多数の捜査本部を掛け持ちして多忙を極めているが、「捜査一課の看板は自分だ」という誇りを持っている。
大林:内野 智 警視庁捜査一課13係・刑事
倉橋:波岡一喜 警視庁捜査一課13係・刑事
清水:馬場 徹 警視庁捜査一課13係・刑事
幸田正徳(28):金井勇太
連続殺人事件の容疑者として浮上した無職の男。ある重大な“秘密”を抱えて、葛木と対峙する。
葛木由梨子(26):黒川芽以
葛木俊史の妻。泊まり込みの俊史に夜食と着替えを持っていくなど甲斐甲斐しい一面も。
葛木佐知子(享年50):手塚理美
葛木邦彦の妻で、俊史の母。仕事一筋の邦彦を不平不満も言わずに、支えていた。2年前にくも膜下出血で死亡。
大前田五郎(68):泉谷しげる
寿司店の店主。葛木の近所に住んでおり、町内会会長を務めている。ひとり暮らしの葛木を何かと気にかけてきた。住民に脅迫まがいの聞き込みを続ける13係の刑事たちに激怒して…!?
山岡宗男(53):佐野史郎
警視庁捜査一課13係の係長。“鬼の13係”とも“壊し屋13係”とも恐れられる猛者軍団を率いる男。刑事としての腕は確かだが、捜査はすこぶる強引。所轄の刑事を消耗品として扱い、キャリアであっても役に立たないと思えば冷たい視線を投げかける。所轄の刑事にとってはまさに“天敵”ともいうべき男だが、血の気の多い13係の刑事たちを一手に束ねる手腕は見事でもある。捜査一課時代の葛木とは、ある因縁が…!?
大原直隆(58):笹野高史
城東中央署・刑事課課長。葛木の上司。部下を守るためには本庁に食って掛かることもある、懐の深い人物。葛木の刑事としてのカンに全幅の信頼を寄せている。 ほか
(公式HPより、敬称略)
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原作との違い 参考になります
スポーツ店でカヤック売り場担当だったからってカヤック使って犯罪するかな?と思ってしまいましたが 家の近くの海 カヌー・カヤックだらけです 大学高校の部活のチーム大量にいます
ドラマ見ててカヌーなどは目立つし犯罪には向かないかなと(笑)
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
お役に立てたなら嬉しいです!!
なるほど、確かに「まさか、ソレを使うとは!?」的に「特徴的な品を犯行に用いる」ドラマがありますね。
意外性を重視するべきか、それとも現実性を重視すべきなのか、難しい点ですね。