2015年09月03日

『所轄魂』(笹本稜平著、徳間書店刊)

『所轄魂』(笹本稜平著、徳間書店刊)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

警察を舞台にした父と子の物語。父は所轄署の現場の刑事で警部補。その息子はキャリア警官で警視。警視庁捜査一課の管理官である息子が、父親の上司として殺人事件の捜査本部を仕切ることに。第二、第三の被害者が出るなか、容疑者は絞りこめず、所轄の刑事たちと本庁から乗り込んできた一課の刑事たちの対立が噴出する。父子の奮闘を中心に、個性あふれる刑事たちの群像劇、捜査のマネージメントまでを描ききった出色の警察小説!
(徳間書店公式HPより)


<感想>

「所轄魂シリーズ」第1弾。
2015年8月時点でシリーズには本作以外に『失踪都市』と『強襲』の2作が存在する。

そんな本作ですが、結論から述べると個人的には合わなかったかなぁ……。
何と言っても展開が余りに恣意的に感じられてしまったのが理由です。

例えば、勝本の死で真相が藪の中になるのかと思いきや、次の行で証拠が山ほど見つかってあっさり解決したりします。
また、その証拠が「勝本自身の部屋に残された被害者の靴などの遺留品」などなのですが……。

邦彦は幸田の犯行を示す証拠は否定する割に勝本の犯行を示す証拠は無造作に肯定したりします。
幸田に対してのソレのように、勝本に罪を着せようとする第三者の可能性は一切考慮していません。

一体、邦彦は何処で「証拠の真贋」を切り分けているのか?
言わば「後期クイーン問題」の発生。

これについて邦彦は「勘を持ち出して正当化する」のですが、そもそも同様に勘で決め打ちして押し進める山岡の捜査手法を邦彦自身が「冤罪を生む恐れがある」と批判していた筈。
ところが、邦彦は上記の通りほぼ同様の手法を取っていることに。

これを認められるかどうかが本作を楽しめるかどうかの大きなポイントとなっています。

正直、邦彦と山岡の間には「被疑者を幸田にしたか勝本にしたか」や「強引かどうか」以外に何らの差もない感じ。
強いて言えば邦彦は主人公だから肯定されており、山岡はその当て馬にされた印象です。

他にもイロイロあるのですが、これらを認められれば楽しめると思います。
こうして感想を振り返るとこの感想自体が恣意性に満ちていますが、それだけ「本作が肌に合わなかった」とご理解頂ければと思います。
個人的には同作者の他の作品と比較しても首を傾げる出来でした。

なお、あらすじはまとめ易いようにかなり改変しています。
興味をお持ちの方は本作それ自体を読まれることをオススメ致します。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
葛木邦彦:所轄署の刑事、俊史の父親。
葛木俊史:警視庁の管理官、邦彦の息子。
山岡:警視庁捜査一課13係の係長。
幸田:邦彦が犯人と見込んだ若者。
北原:5年前に幸田が働いていた居酒屋の店長。
勝本:幸田の姉を死に追いやった犯人。
マリア:幸田の妻。


葛木邦彦は所轄署の刑事である。
元は警視庁捜査一課に居たのだが、強引な手法で知られる山岡との間に確執を抱え所轄に異動することとなった。
また、邦彦には息子・俊史が居るが最近は疎遠である。

そんなある日、邦彦の管轄内で殺人事件が発生。
被害者は若い女性で、奇妙なことに遺体からは靴が脱がされ持ち去られていた。

この事件の捜査本部が立ち上げられ、本庁から派遣された管理官を目にして邦彦は驚く。
なんと、俊史だったのだ。
しかも、因縁の山岡までもが一緒である。

早々に不穏な予感を抱く邦彦。
その予感は大当たり、独断で事を進める山岡により邦彦らのもとにクレームが殺到したのだ。
邦彦は山岡の強引な手法を批判する。

そんな中、第二の犯行が発生。
今度の被害者も若い女性、しかもまた靴を持ち去られていた。
さらに、第三の犯行も発生し、これまた靴を持ち去られていたのだ。

犯人が靴に執着していると考えた邦彦は、過去に女性用靴の窃盗を働いていた幸田に目を付ける。
しかも、幸田は被害者たちと過去に居酒屋で同僚であったとの接点があった。
当時の居酒屋店長・北原も幸田の犯行を示唆するのだが……。

邦彦の主張により幸田が取調を受けることに。
幸田は取調に反発する。

幸田の姉は過去に勝本なる男性にストーカーされた末に暴行された。
これを訴え、勝本は懲役3年の刑に服することとなった。
幸田の姉はこれを不満として自殺していたのである。
そして、幸田もまた同様に不満に思っていたのである。
其処で反発しているのだ。

そんな幸田に対しシロだとの印象を抱いた邦彦は「マリア(幸田の妻)を1人にするのか」と説得。
邦彦の説得に屈した幸田は無罪を主張する。

こうなると怪しいのは幸田の犯行を示唆した北原だ。
調べたところ、北原が本名では無いことが判明。
なんと、北原こそ勝本であった。
北原の経歴には3年ほど海外へ出ていた期間があったのだが、これは服役中の期間だったのだ。
こうして、邦彦は勝本こそが真犯人と見込み彼を捕まえようとする。

一方、山岡は手柄を焦り幸田を犯人に仕立てようと急ぐ。
その遣り方に憤りを感じる邦彦。

矢先、3番目の犯行現場から幸田の指紋付きのマグカップが押収された。
山岡は動かぬ証拠と狂喜乱舞し、邦彦は不利な立場に。
幸田はこれに耐えられず自殺未遂を引き起こしてしまう。

これを犯人の罠と考えた邦彦は勝本逮捕を急ぐ。
邦彦に追われた勝本は逃げようとして道路に飛び出し車に撥ねられ死亡してしまった。
しかし、勝本の部屋から被害者の所持品が大量に発見されたこと、さらに持ち去られていた靴も押収されたことで勝本の犯行が確定した。

勝本の動機こそ不明だが、おそらく幸田の姉に告発されたことを逆恨みし幸田へ復讐したものと思われた。

山岡は強引な捜査手法を反省し退職することとなった。

幸田の両親やマリアは邦彦に感謝する。
こうして事件が解決したのであった―――エンド。

2015年9月21日追記

ドラマ版「所轄魂」追加しました。

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追記終わり


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