ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
行方不明となったくららとクララ。 現実とホフマン宇宙、 二つの世界の謎に翻弄される井森を襲う罠!
(東京創元社公式HPより)
<感想>
小林泰三先生の新作長編『クララ殺し』が『ミステリーズ!』にて連載中です。
今回はその第3話。
どんどん謎が深まるばかり。
そんな中、遂にくららが遺体で発見されることに。
とはいえ、これには大きな謎が。
仮にくららが落とし穴で死亡し、犯人がこれを川まで運んだとするならば、その遺体には串刺しにされた痕跡が残る筈。
ところが、その描写が無い。
ということは「くららが落とし穴で死亡したのではない」か「発見された遺体はくららではない」のいずれかとなるだろう。
また、くららの遺体が発見されたことによりクララの死も間接的に確認された―――だが、これは本当だろうか!?
クララの死が間接的に確認されたのは「アーヴァタールが死亡しない限り地球世界では死亡することが無い」との前提条件の上で「地球世界のくららが死亡した」から。
つまり「くららの死によりクララの死が確認された」状態。
確かに「アリス世界」ではこのルールは有効であったが「ホフマン宇宙」でもこのルールは有効なのか?
本作でアーヴァタールが無事だったことで復活が確認されたのは井森のみ。
もしかすると「アリス世界」と「ホフマン宇宙」ではルールが異なるのではないか。
例えば井森は「アリス世界」からやって来ているから、その世界のルールで動いておりビルが死なない限り生き続ける。
ところが「ホフマン宇宙」ではこれとは別のルールがある可能性はないか?
此の点、かなり気になるところ。
また、ドロッセルマイアーとコッペリウスは幻想を調整出来るらしい。
本人たちの申告通り遠隔殺人までは出来ないまでも、ホフマン宇宙の住人の記憶が改竄されている恐れが。
当然、地球世界での夢の記憶も疑わしくなるだろう。
また、諸星の復活も気になる。
井森たちは諸星から聞いた夢の内容から「彼がナターナエル」と判断しているがこれが何者かにより調整された記憶だとすれば……。
同じくスキュデリが礼津のように思えるが、それこそ罠の可能性も。
これに関しては作中で断言されていないワケだし。
さらに作中でのタイミング的にナターナエルこそがくららの可能性もあるか。
ナターナエルが語っていたクララとはホフマン宇宙の彼女ではなく地球世界のくららだとか。
だからこそ、くららの遺体の損傷が激しくなった!?
まさに「スーパーホフマン大戦」となりつつある本作。
『砂男』や『黄金の壺』や『マドモワゼル・ド・スキュデリ』からキャラクターが続々登場することに。
まさに謎に次ぐ謎が。
そう言えば、井森が落とし穴で見つけた品の謎もあった。
ああ、いろいろ気になる!!
4話も見逃せそうにありません!!
ちなみにネタバレあらすじは大幅に改変しています。
どちらかと言えば、かなりライトにしました。
本作はもっとヘヴィかつブラックです。
興味のある方は本作それ自体を読むことをオススメします!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
【地球】
井森:『アリス殺し』から再登場。大学院生。アーヴァタールは蜥蜴のビル。
露天くらら:アーヴァタールはクララらしいが……。
ドロッセルマイアー:工学部教授。本人曰く「アーヴァタールはドロッセルマイアー」。
鼠:車中で焼死していた鼠。くららを襲った車に乗っていた。
諸星:くららの知人。千秋の父。
諸星の家内:諸星の妻。諸星とは別居中。
千秋:諸星の娘。くららの教え子。
新藤礼津:謎の女性。
【ホフマン宇宙】
蜥蜴のビル:『アリス殺し』から再登場。相変わらず場を掻き乱すことに。
クララ:ビルが出会った車椅子の少女。
ドロッセルマイアー:判事。
シュタールバウム:クララの父親。
フリッツ:クララの兄。
鼠:クララ殺しを図ったとして処刑された。
スパンツァーニ:ナターナエルの師匠。
ナターナエル:スパンツァーニの弟子。
オリンピア:スパンツァーニが作った自動人形。
コッペリウス:ドロッセルマイアーと犬猿の仲の弁護士。
マリー:クララの友人の1人。クララ宅の自動人形。
ピルリパート:クララの友人の1人。姫。
若ドロッセルマイアー:判事と同姓同名の別人。ピルリパートの恋人。
ゼルペンティーナ:クララの友人の1人。正体は蛇。
トゥルーテ:クララ宅の自動人形。
パンタローン:スキュデリの部下。
スキュデリ:ビルに協力を申し出る。
・前回はこちら。
『クララ殺し』第2話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.72 AUGUST 2015』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
ホフマン宇宙にて、捜査に乗り出したスキュデリはドロッセルマイアーの不可思議な態度に疑問を唱えこれとと対立することに。
そんな中、なんとナターナエルが塔から転落死を遂げてしまう。
何でも自ら身を投げたのだそうだが……。
目撃したビルによれば、ナターナエルはコッペリウスを目にして死亡してしまったらしい。
スキュデリはこれを重要視し、渋るドロッセルマイアーを置いてコッペリウス宅へ。
コッペリウスを問い詰めたところ、彼がナターナエルにクララが恋人であるとの幻想を見せていたことが明らかに。
だが、コッペリウスは幻想に殺害するほどの力はないと主張。
また、ドロッセルマイアーも同様のことを行っていると弾劾する。
一方、地球世界では井森と礼津が落とし穴前で論争を続けていた。
井森は事件解決の手掛かりを求め、ホフマン宇宙とのリンクを持つ人物に事情を確認するべきと主張する。
其処で彼が挙げた名は諸星であった。
ところが、礼都はこれを一笑に付す。
それもその筈、諸星は飛行機事故に巻き込まれて死亡したらしい。
だが、井森はそんな礼都の言葉を信じられないと訴える。
何しろ、当の諸星が近くを歩いていたからである。
これには堪らず仰天する礼都。
井森と礼都は諸星に事情を問うことに。
すると、飛行機事故は事実だが奇跡の復活を遂げたと語る。
これに井森は自身と同様のことが起きたと考えるのだが、礼都は首を横に振る。
そもそも、井森の場合は「死」自体が無かったことにされている。
だが、諸星の場合は「死」が起こった上で生き返っていたのだ。
この差は非常に大きい。
井森は諸星にアーヴァタールについて尋ね、彼の口から「ナターナエルを名乗っていた」と聞き出す。
ところが、数日前からまた別のアーヴァタールの夢を見始めるようになったのだと言う。
礼都は諸星が別の世界にリンクしたと判断し、話を打ち切る。
井森は落とし穴を調べて手掛かりを得るよう提案。
しかし、礼都はこれには応じずその場を去ってしまう。
残された井森は落とし穴を調べようとして、底に白い何かを発見するが何者かに殺害されてしまう。
再びホフマン世界。
ビルは井森がまたも殺害されたことをスキュデリに報告。
これを聞いていたマリーはくららが姿を現さないのはクララが死亡したからだと自説を主張。
クララの関係者全員を容疑者として調べるべきと断言する。
これにスキュデリは何処か懐疑的な様子。
結局、マリーは自身でリストアップ作業を強いられることとなった。
どうやら、スキュデリは何かを気にかけているようだが……。
そして、地球世界ではドロッセルマイアーの研究室に井森と礼都が集まっていた。
ドロッセルマイアーや礼都もマリーと同じく「クララ死亡=くらら死亡」説を主張。
一方、井森は何かを気にかけるスキュデリの態度を重視しクララ生存説を主張する。
井森はくららが一時的に身を隠すべくアーヴァタールが無事ならば死なないことを知って行った狂言ではないかと仮説を立てるが……。
矢先、ドロッセルマイアーにくらららしき溺死体が発見されたとの報が届く。
くらららしき遺体は損傷が激しく直視出来ない状態にあった。
仮説をあっさりと崩された井森だが、何かに気付いた様子。
ホフマン宇宙の関係者に聴取を行うよう提案。
さらにナターナエルの関係者にも聴取を行うよう述べる―――4話に続く。
◆「小林泰三先生」関連過去記事
【書籍関連】
・『アリス殺し』(小林泰三著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『クララ殺し』第1話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.71 JUNE 2015』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『クララ殺し』第2話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.72 AUGUST 2015』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『愛玩』(小林泰三著、新潮社刊『小説新潮 2015年3月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・「ドッキリチューブ(『完全・犯罪』収録)」(小林泰三著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・【2014年】「啓文堂書店文芸書大賞」が決定!!栄冠は小林泰三先生『アリス殺し』(東京創元社刊)に輝く!!
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