2015年10月14日

『そして、何も残らない』(森晶麿著、幻冬舎刊)

『そして、何も残らない』(森晶麿著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

アガサ・クリスティー賞作家が放つ現代日本版「そして誰もいなくなった」。
惨劇の裏に潜む<恋心>を暴け! 青春群像ミステリー。

上村真琴は高校の卒業式を終え、二年前に廃校となった母校の平静中学校を訪ねた。朽ち果てた校舎に、真琴が所属していた軽音楽部の元部員が集められたのだ。目的は、真琴が中学三年のときに軽音楽部を休部に追い込んだ体育教師・内山康への復讐。だが、再会を祝して全員で乾杯すると、ミニコンポから内山の声が突然流れた。「平静中学校卒業生諸君に死を」。全員が唖然とするなか、元部員のひとりが身体を痙攣させ、倒れ込み、息を引き取る。真琴は警察に連絡をしようとするも、携帯電話に電波は届かない。しかも、何者かによって学校から外に出れない状態になっていた……。
(幻冬舎公式HPより)


<感想>

『そして誰もいなくなった』と言えばアガサ・クリスティーの名作。
後の作品に多大な影響を与えました。

そして、日本版『そして誰もいなくなった』と言えば綾辻行人先生『十角館の殺人』(講談社刊)や門前典之先生『屍の命題』(原書房刊)などが挙げられます。
これまた名作と呼んで差支えない作品が多々存在し、特に例として挙げた2作品は素晴らしい作品です。

『十角館の殺人』(綾辻行人著、講談社刊)ネタバレ批評(レビュー)

『屍の命題』(門前典之著、原書房刊)ネタバレ書評(レビュー)

そんな日本版『そして誰もいなくなった』の系譜に本作も名乗りを上げることに。
とはいえ、一読したところでは『そして誰もいなくなった』と『オリエント急行の殺人』の併せ技と言ったところでしょうか。
これに青春ミステリを加えたところが特徴と言えそうです。

そして本作はタイトルこそ『そして、何も残らない』ですが、青春の痛みとそれを乗り越えての再起が描かれた作品。
ラストでの真琴の姿にあなたは何を思うでしょうか。

ちなみに、ナユタとは仏教用語の「那由多」のことでしょう。
これは1つの単位であり「極めて大きな数量」を示す。
真琴にとってナユタの生き方は1つの単位(指針)となったのかもしれません。

ネタバレあらすじについては、本作の魅力を伝えきれていません。
あらすじで興味を持たれた方は是非本書を読んでみることをオススメ致します。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
上村真琴:軽音楽部のメンバー。
内山:体育教師、若い愛人が居るらしい。
ナユタ:女性音楽教師。
透:軽音楽部のヒーロー。
璃衣紗:透の妹、軽音楽部のメンバー。
リッキー:軽音楽部のメンバー。


高校の卒業式を終えた真琴は、後輩である璃衣紗の呼びかけで中学時代の母校である「平静中学校」に足を運んだ。
集まったのは当時の軽音楽部のメンバーたちだが2人だけ欠けていた。

1人は当時の音楽教師であったナユタ。
教師である為に呼ばれなかったのだ。

そしてもう1人は璃衣紗の兄・透。
透は中学卒業を目前にして謎の死を遂げていたのである。

璃衣紗が軽音楽部のメンバーを集めた理由は1つ。
透の死に関連していたと見られる体育教師・内山へ復讐すること。
内山には当時から不穏な噂が絶えず、教師にも関わらず若い愛人が居るとされていたが……。

早速、復讐計画が練られるのだが直後に内山の声でメンバーへの殺害予告が流れる。
これに呼応するようにメンバーが死亡。
さらに、順番に1人ずつ不審な死を遂げて行く。

復讐を察した内山による連続殺人なのか?
それとも、内山による襲撃を偽装した連続殺人なのか?

困惑する真琴だが、残るは璃衣紗と彼女のみ。
このとき、真琴の脳裏に透の最期の光景が甦る。
実は透の死には内山ではなく真琴が関与していたのだ。

璃衣紗に透の死に関与していると指摘され困惑する真琴。
そんな真琴の困惑を深めるように、これまで死亡していた筈のメンバーたちが集結する。
そう、すべては芝居だったのだ。
誰1人死亡していなかったのである。

その目的は透の死の真相を明かす為。
真琴自身、今の今まで忘れていたソレ。
批難を浴びた真琴は罪を認め、璃衣紗にリンチを受けることに。

と、其処に呼ばれなかった筈のナユタがこっそりと現れる。
ナユタにより救い出された真琴は透の死の真相を全て思い出す。

事の発端はナユタにあった。
内山の年若い愛人こそナユタだったのだ。
そんなナユタに透は想いを寄せていた。
だが、ナユタは透の想いを拒否した。
其処で透は真琴を求めた。
真琴は透の真意を悟り、彼がエレキギターを演奏中にジュースを浴びせ感電死させたのだ。

やはり、透を殺害したのは真琴であった。
罪を償おうとする真琴にナユタは「透は人を愛するには未熟過ぎた」と評し、罪を背負って生きて行くように告げる。

恐怖の一晩が終わり、真琴は朝焼けの中に走り出す―――エンド。

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