ネタバレあります!!注意!!
<あらすじ>
私立探偵・大杉良太は、新聞社で編集委員をしている残間龍之輔から、違法な武器輸出をしている商社について告発してきた男の尾行を依頼され、それを引き受ける。
同じ頃、残間はかつての上司で現在はオピニオン誌「ザ・マン」編集長の田丸に呼び出され、百舌と呼ばれた殺し屋に関わる事件を雑誌に書いてほしいと頼まれた。
大杉と残間が両事案の調査を続けていたある日、警察庁特別監察官の倉木美希が自宅に向かう途中に襲われる。すぐさま大杉が駆けつけ軽傷で済んだが、美希のコートから百舌の羽根が出てくる。武器輸出に関わる商社の告発と、トップシークレットである過去の百舌事件。関係ないと思われた二つの事象が交差する時、巨悪の存在が明らかに……。驚愕と興奮のシリーズ第七作!
(集英社公式HPより)
<感想>
「百舌シリーズ」2015年時点での最新作。
『裏切りの日々』、『百舌が叫ぶ夜』、『幻の翼』、『砕かれた鍵』、『よみがえる百舌』、『鵟の巣』に続くシリーズ第7弾。
本作は『小説すばる』にて全12話が連載されており、その単行本版となる。
連載時と比較すべく単行本版を読んでみました。
大筋こそ連載時と同じですが、細部にかなりの手直しが加えられていた印象。
特に、連載時では本編に続いていたまほろのモノローグ部分が、単行本版ではエピローグとして独立しています。
これに伴い、まほろが三重島邸ではタミを名乗っていたことも明記されました。
また、かりほとまほろの姉妹が千枚通しを使っての殺害に長けていたことも明らかに。
まほろの存在は第8弾に続く大きなポイントとなりそうなだけにシリーズファンにとって此処は見逃せないでしょう。
さて、こうして百舌の系譜に新たな1ページが付け加えられました。
まだ見ぬシリーズ第8弾にも要注目です!!
ネタバレあらすじはまとめ易いように改変しています。
興味をお持ちの方は是非本作それ自体を確認するべし!!
<ネタバレあらすじ>
初代・百舌との戦いから長い月日が過ぎ、大杉は警察を退職し探偵業を営んでいた。
倉木を失った美希とは大人の男女として関係を続けている。
一方、警察官となった娘・めぐみとの仲もそれなりに良好だ。
そんな大杉のもとに旧知の残間から、茂田井派に属する田丸が「百舌について」記事にしようとしているとの報が飛び込む。
今更のことに、意外に思う大杉。
また同時期に、不正な「武器輸出」が行われているとの情報を入手する。
その告発者は三京鋼材の石島であった。
さらに、千枚通しを用いる殺し屋が新たに登場し美希が狙われてしまう。
これは大杉により事無きを得たのだが……。
その翌日、石島を監視していた大杉と村瀬であったが、めぐみとその同僚・車田聖士郎に見咎められてしまう。
大杉たちは何とかめぐみたちの裏をかき、石島が接触していた雑誌記者・為永に辿り着く。
矢先、田丸が何者かに殺害されてしまう。
凶器は「千枚通し」、現場には「あの羽根」が残されていたから「新たなる百舌」の犯行と思われた。
どうやら、「新たなる百舌」は茂田井と対抗する三重島派に属するようだ。
茂田井派の田丸は百舌について記事にすることで三重島派を攻撃しようと目論んでおり、先手を打たれたのである。
一方、かりほの元部下で「のすり」と呼ばれていた大角は稲垣に拾われ、御室三四郎と共に三重島の別邸の警護を担当していた。
其処には謎の人物・黒頭巾、三重島の愛人とされるまほろ、さらに使用人のタミが居た。
黒頭巾は田丸殺害に興味があるようだが……。
そんな中、大角は御室の口から紋屋の名前を聞くことに。
御室は稲垣が所持していた資料を盗み見た結果、黒頭巾が「紋屋貴彦」ではないかと疑っていた。
直後、為永までもが新百舌に殺害。
同じ夜、大角もまた黒頭巾の正体を知ったが為に新百舌に殺害されてしまう。
事件解決を目指す大杉と美希は車田たちと共に三重島別邸への家宅捜査を強行。
最中、御室が新百舌に殺害され、当の新百舌を逃がしてしまうことに。
後日、黒頭巾の正体が判明。
それは紋屋のミイラであった。
稲垣が紋屋の遺体を回収しミイラ化していたのである。
事の顛末を焼肉屋にて語り合う大杉、美希、車田、めぐみたち。
一方、新百舌もまた今回の事件を振り返る。
新百舌、その正体はかりほの妹・まほろであった。
とはいえ、三重島別邸でまほろを名乗っている人物とは別人である。
三重島別邸でまほろを名乗っているのは三重島の隠し子・弓削ひかるである。
三重島は隠し子に愛人の名を名乗らせたのだ。
そして、当のまほろはタミとして控えることに。
とはいえ、其処はかりほの妹である。
まほろはひかるを籠絡すると三重島別邸の影の支配者として君臨していた。
まほろの目的はかりほの復讐。
その為に美希を狙ったが、あれはあくまで警告に過ぎない。
その後、三重島の命で田丸と為永を殺害した。
大角殺害は黒頭巾の正体を知られたからだ。
御室もまた正体を知られた為にどさくさ紛れに殺害されたのである。
そして、まほろは三重島殺害も計画している。
さらに、稲垣やひかるをも抹殺するべきと考える危険人物であった。
だが、それは直ぐの事ではない。
とりあえず、今のまほろには目前にすべきことが残されていた。
それは注文を大杉たちのもとへ運ぶこと。
そう、まほろは焼肉屋の店員に扮し彼らを見張っていたのだ―――エンド。
◆関連過去記事
・『墓標なき街』第1話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第2話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第3話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第4話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第5話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第6話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第7話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第8話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第9話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第10話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』第11話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『墓標なき街』最終話、第12話(逢坂剛著、集英社刊『小説すばる』連載)ネタバレ書評(レビュー)
・『百舌シリーズ(百舌の叫ぶ夜、幻の翼)』(逢坂剛著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【関連する記事】
- 『どこかでベートーヴェン』(中山七里著、宝島社刊)
- 『通いの軍隊』(筒井康隆著、新潮社刊『おれに関する噂』収録)
- 『クララ殺し』最終話、第6話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.7..
- 『自殺予定日』(秋吉理香子著、東京創元社刊)
- 『タルタルステーキの罠』(近藤史恵著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.76 ..
- 『歯と胴』(泡坂妻夫著、東京創元社刊『煙の殺意』収録)
- 『迷い箱』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『噂の女』(奥田英朗著、新潮社刊)
- 『追憶の轍(わだち)』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.69 F..
- 『コーイチは、高く飛んだ』(辻堂ゆめ著、宝島社刊)
- 『恋人たちの汀』(倉知淳著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.75 FEBRU..
- 『東京帝大叡古教授』(門井慶喜著、小学館刊)
- 『傍聞き』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)
- 『愚行録』(貫井徳郎著、東京創元社刊)
- 『転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿』(笠井潔著、講談社刊『メフィスト 2016v..
- 『声』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)
- 『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)
- 『図書館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)
- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)