2016年01月06日

『惑星カロン』(初野晴著、角川書店刊)

『惑星カロン』(初野晴著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

大人気吹奏楽青春ミステリ"ハルチカ"シリーズ、待望の第5弾!!

コンクールと文化祭を経て、ちょっぴり成長した清水南高吹奏楽部。更なる練習に励む中、チカは「呪いのフルート」に出会い……!?楽器に秘められた謎、音楽暗号解読、旧校舎の怪事件。珠玉の青春ミステリ最新刊!
(角川書店公式HPより)


<感想>

「ハルチカシリーズ」第5弾。
シリーズには他に『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』『空想オルガン』『千年ジュリエット』がある。
なお、いずれも連作短編集であり、タイトルは表題作となっている。

そんな本作の収録作は表題作『惑星カロン −人物消失−』の他に『チェリーニの祝宴 ―呪いの正体―』『ヴァルプルギスの夜 −音楽暗号―』『理由ありの旧校舎 −学園密室?−』を含めた4作。

特に『惑星カロン』では『空想オルガン』にも登場した「マンボウ」がよもやの再登場。
どうやら、今後にも繋がるキーマンのようですが……。
それ以外にも『惑星カロン』は今後のシリーズに貢献しそうなポイントが盛り沢山。
さらには真琴も活躍するし、シリーズファンとして本作は見逃せないようだ。

同時に、ポップな中にも重く深い想いを込める作風も健在。
読後、なかなかに考えさせられることでしょう。

ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように改変しています。
あくまで雰囲気を掴むに留めて下さい。
興味をお持ちの方は本編それ自体を読まれるようオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:

【清水南高校吹奏楽部】
穂村千夏:通称・チカ。吹奏楽部に所属しフルートを担当する。
上条春太:通称・ハルタ。吹奏楽部に所属しホルンを担当する。
草壁信二郎:吹奏楽部顧問。生徒から慕われている。
片桐圭介:吹奏楽部部長。
成島美代子:オーボエ奏者。『クロスキューブ』より登場。
マレン・セイ:サックス奏者。『退出ゲーム』より登場。
後藤朱里:バストロンボーン奏者。『エレファンツ・ブレス』より登場。
芹澤直子:クラリネット奏者。『スプリングラフィ』より登場。
檜山界雄:通称・カイユ。打楽器奏者。『周波数は77.4MHz』より登場。
山辺真琴:草壁の師・山辺の孫娘。天才ピアニストとして将来を嘱望されていたが……。『エデンの谷』より登場。

【清水南高校関係者】
日野原秀一:生徒会長。『エレファンツ・ブレス』より登場。
名越俊也:演劇部部長。日野原のブラックリスト十傑の1人。
マヤ:演劇部を代表する看板女優……らしい。
萩本兄弟:発明部の兄弟。日野原のブラックリスト十傑の1人。
麻生美里:地学研究会代表。日野原のブラックリスト十傑の1人。
朝霧享:初恋研究会代表。日野原のブラックリスト十傑の1人。
甲田:アメリカ民謡研究会のメンバー。『失踪ヘビーロッカー』より登場。
清春:アメリカ民謡研究会のメンバー。『失踪ヘビーロッカー』より登場。
大塚:演劇部のメンバー。『決闘戯曲』より登場。

【藤ヶ咲高校関係者】
堺:藤ヶ咲高校吹奏楽部の顧問、あだ名はゴリラ。
大河原:藤ヶ咲高校にやって来た教育実習生、堺の元教え子。
岩崎:藤ヶ咲高校吹奏楽部部長。

【清新女子高校関係者】
ナナコ:清新女子高校吹奏楽部のメンバー。『十の秘密』に登場。
遠野:清新女子高校吹奏楽部のメンバー。アルコール中毒、『十の秘密』に登場。

【その他】
渡邊:草壁の過去を知るジャーナリストと思われていたが……。『ジャバウォックの鑑札』に登場。
上条南風:ハルタの姉、上条家の長女。『ヴァナキュラー・モダニズム』に登場。
上条つぐみ:ハルタの姉、上条家の次女。『ヴァナキュラー・モダニズム』に名前だけ登場。
上条冬菜:ハルタの姉、上条家の三女。『ヴァナキュラー・モダニズム』に名前だけ登場。
天野:大家の孫娘。『ヴァナキュラー・モダニズム』に登場。
孝志:オルガンおじさんの親友。『空想オルガン』に登場。
マンボウ:振込詐欺グループの黒幕。『空想オルガン』に登場。
ガクシャ:振込詐欺グループの一員。『空想オルガン』に登場。
ボーボ:振込詐欺グループの一員。あまり向いていないようだ。『空想オルガン』に登場。
新垣智子:ジュリエットの秘書・はごろも支部のメンバー。『千年ジュリエット』に登場。
柏原智之:???

【本作からの新キャラ】
倉沢:クラサワ楽器店の???。『惑星カロン』より登場。
新藤誠一:直太朗の息子。『惑星カロン』より登場。
新藤直太朗:誠一の父。『惑星カロン』より登場。
斎木:???『惑星カロン』より登場。

・『チェリーニの祝宴 ―呪いの正体―』

フルートの技術が伸び悩み打開策を探るチカは、手っ取り早く道具にソレを求めることに。
つまり、良いフルートを使えば良い演奏が出来ると考えたのだ。

そして、あろうことか高級品を格安で借りられるとの理由でクラサワ楽器店の店長から「呪いのフルート」をレンタルすることに。
店長によれば6度客の手に渡り、6度とも客が怯えてクラサワ楽器店に戻って来た曰くつきの品らしい。

早速、練習を開始するチカ。
確かに音は良くなったのだが、代わりに何やら体調を崩してしまう。
これも呪いの所為なのか!?
見かねたハルタ、草壁、真琴に南風までも巻き込んで「呪い」の正体について解明することに。

そもそも「呪いの楽器」は「弦楽器には聞いたことがあるが管楽器にはそうそうない代物」。
それだけに何か理由が隠されているのである。

調べたところ、その正体はあっさり判明。
フルートの内部に刻まれたデザインが簡易催眠の効果を演奏者に及ぼし集中状態に導いていたのだ。
しかも、それにはお守りの意味も込められていた。

確かに特別ではあるが、それほど効果が強い物でもない。
おそらくフルートを手にした客が呪いを気にし過ぎたのだろうとの結論であったが……。

実はフルート自体よりも驚くべき呪いが存在していた。
6度手放されたフルートが揃いも揃ってクラサワ楽器店に戻って来ていたことだ。

呪いとは人がそれをどう捉えるかによる。
クラサワがチカに語ったように、その存在を強調した為に購入者が影響を受けてしまったのである。

これを指摘されたクラサワは自分にも非があったと認めることに。
こうして「呪いのフルート」はチカの手を離れクラサワに返却、其処から別の業者に渡ることとなった―――エンド。

・『ヴァルプルギスの夜 −音楽暗号―』

藤ヶ咲高校吹奏楽部の部長・岩崎がチカを通じて真琴に相談を寄せて来た。
何でも吹奏楽部に在籍している不良部員が事件に巻き込まれかねないので助けて欲しいらしい。
こうして、チカと真琴たちが岩崎に協力することに。

岩崎によれば不真面目な後輩部員が得体の知れないOBを名乗る人物から奇妙な音楽暗号の出題をされているらしい。
それをクリアすれば良いことがあると唆されているようだ。
もしも、事件性のあることならば吹奏楽部全体にも影響しかねない。
其処で出題意図を探りたいらしい。

音楽暗号を手に入れた真琴たちは全10問のソレに挑戦。
暗号は音声ファイルから出題され、音を実際に拾い何を示しているかをメールで解答する形式だ。

次々と回答して行く真琴たち、ところが途中でピタリと止まってしまった。
何度やっても不正解になるのだ。

其処へ「ハムスター怪死事件」を解決したハルタが駆け付けた。
事情を聞いたハルタは「ハムスター怪死」と同じ原因だと語る。

その正体はモスキート音であった。
真琴は年齢的にモスキート音を拾えない。
岩崎やハルタも真面目に音楽に取り組んでいれば居るほど聞こえない仕組みだ。
だからこそ、不真面目な不良部員が挑むことが出来たのだ。

そして、此の場にももう1人……そう、チカである。
チカの場合は音楽経験が浅いことが幸いした。

モスキート音の存在をチカが拾い出し、真琴とハルタが推理で解答を埋めて行く。
結果、最終問題が「ハッシッシ」となった。
つまり、薬物の名だ。
自称OBは後輩に薬物を売りつけようとしていたのである―――エンド。

・『理由ありの旧校舎 −学園密室?−』

旧校舎で密室事件が発生した。
行きがかり上からこの謎に挑むことになったハルタとチカ。
実はこれには美里など文科系クラブが関わっていた。

旧校舎で密かに「シュールストレミング」でお祝いを行っていた面々。
だが、その匂いは強過ぎた。
余りにきつい匂いに衝撃を受ける面々、外へ洩れれば異臭騒ぎに発展しかねないと怯えるが……。

参加していた生物部が閉め切れば大丈夫と大小判を押した。
其処で旧校舎を内側から締め切り、匂いが抜けるまでじっと息を潜めて我慢していた。
だから、旧校舎が密室となったのだ。

では、生物部はどうして旧校舎が密閉空間足り得ると知っていたのか?
それもその筈、生物部は旧校舎内で希少種のコウモリを飼っていた。
だが、「シュールストレミング」の匂いでこれを逃がしてしまったのだ。

こうして、密室事件が解決した一方で意外な生物部の被害が判明。
美里らは生物部の為に逃げたコウモリ探しに協力するのであった―――エンド。

・『惑星カロン −人物消失−』

倉沢から新藤誠一探しを依頼されたハルタとチカ。
遂に誠一の所在を突き止めるが、既に故人であった。

一方、草壁は奇しくも知り合ったマンボウや斎木と共に誠一の父・新藤直太朗を訪ねる。
直太朗は「デジタルツイン」なるシステムで誠一を生き返らせようとしていた。
これに魅力を感じる草壁、彼もまた過去に負った傷を癒すべく同様の発想を必要としていたのだ。

其処にハルタたちが合流。
彼らの指摘を受けて、直太朗は傷心から少し回復するのであった―――エンド。

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