<あらすじ>
主婦の久保美也子(柊瑠美)が、自宅で刺殺体となって発見された。発見したのは、浮気相手と外泊を続け、2週間ぶりに帰宅した夫だった。
榊マリコ(沢口靖子)ら科捜研のメンバーが現場で特殊ライト“ALS”を当てて潜在指紋の有無を調べていたところ、真っ白な壁に突如、美しい蝶の絵が浮かび上がった…! 特殊ライトを当てて光るということは、紫外線を吸収し発光する物質を使って描かれたもののようだ。もしや、警察がALSライトを使用することを想定した犯人からのメッセージなのか…!? このほか、事件前日の夜、美也子が“左大文字山”を見上げて何やら驚愕する様子が、商店街で目撃されていた。
鑑定を進めた結果、蝶の絵は蛍光増白剤入りの洗濯用洗剤の水溶液で描かれていたことが判明。絵筆として使われたブラシも見つかり、絵は犯人からのメッセージなどではなく、被害者が自宅にあった道具で描いたものと思われた。だが、描いている途中で、液が乾いたら絵は見えなくなってしまうはずだ…。マリコは美也子が、普通の人間には見えない紫外線を色としてとらえることができる“四色型色覚”、いわゆる“スーパービジョン”の持ち主だったのではないかと考えはじめる。
手がかりを求め、スーパービジョンであることを公表している画家・司麗香(笛木優子)を訪ねたところ、やはり美也子は特別な目の持ち主で、麗香とも交流があったとわかる。マリコは事件前日、スーパービジョンの人間しか見えない何かが左大文字山方面に発生し、美也子はそれに驚いたのではないかと推測するが、麗香はその日、特に気づいたことはなかったと話す。
そんな中、美也子が事件当日の昼間、学長・仙川京一郎(北見敏之)に会うため、母校である美術大学を訪れていた事実が発覚。仙川は、かつて普通の人には見えないものを描く美也子の作品に対し、「平凡」とけなした因縁の存在だった…。仙川に事情を聴きに行ったマリコと土門刑事(内藤剛志)は、指に絆創膏を貼った付属美術館の学芸員・佐藤志穂(小橋めぐみ)と出会い、事件現場から検出された、上部が直線的に途切れた残留指紋のことを思い出すが…!?
(テレビ朝日公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……
主婦・久保美也子が自宅で刺殺された。
第一発見者は愛人と遊び歩いており2週間ぶりに帰宅した夫であった。
美也子の夫は妻を亡くしたにも関わらず、特に悲嘆に暮れるでもなく淡々としていた。
この捜査にマリコと土門が乗り出した。
潜在指紋を調べていたマリコは上部が直線に途切れた残留指紋を発見する。
さらに調べていたところ、突如壁に浮かび上がった蝶の絵に驚くことに。
それは特殊ライト「ALS」の光線下でのみ視覚出来るものであった。
どうやら、紫外線を吸収し発光する何かを用いて描かれたらしい。
マリコたちは犯人からのメッセージではないかと色めき立つが!?
一方、美也子の周囲を調べていた土門は「事件前日に彼女が左大文字山の方角を眺めて何かに驚き逃げるように駆けて行った」との目撃証言を得る。
蝶の絵を鑑定した結果、蛍光増白剤入り洗濯用洗剤の水溶液で描かれていたことが判明。
また、絵筆として用いられたとみられるブラシも発見され、蝶が美也子自身の手による絵と分かる。
美也子は美術大学を中退しており絵画に対して技術があったことからもこれが裏付けられた。
しかし、これには1つ問題があった。
洗濯用洗剤の水溶液は濡れている間は良いが、乾くと常人では視認出来ないのだ。
これからマリコは美也子が紫外線を色として捉えることが出来る「四色型色覚」、すなわち「スーパービジョン」の持ち主なのではないかと推測する。
「スーパービジョン」の持ち主は紫外線を目にすることで「三色型色覚」では認識出来ない「色」を目視出来るらしい。
マリコは美也子の夫に事実確認することに。
ところが、夫は「そんなことは知らない」と語る。
だが、重ねてマリコに問われると「美也子に蝶のオスメスを見分ける力があった」ことを思い出す。
これを聞いたマリコは美也子の「スーパービジョン」を確信し、彼女が周囲との摩擦を怖れて隠していたことに気付く。
当の夫はと言えば「あいつは俺を見下していたんですよ」と激怒。
「だから、あんなに愚痴っぽかったんだ!!」とまで口にする。
「スーパービジョン」の持ち主は全世界でも数人しか居ない。
そんな1人が京都に居ると聞かされたマリコは情報を求めて有名画家・司麗香のもとへ。
麗香は「スーパービジョン」の持ち主として知られ、その視界を通して描かれる独特な世界観が支持を集めていた。
彼女のマネージャーに案内され、麗香と初対面を果たすマリコ。
麗香は美也子を知っていた。
どうやら、同じ「スーパービジョン」の持ち主として交流があったようだ。
美也子は麗香の絵の信奉者であり、また唯一の仲間として麗香を慕っていたそうだ。
マリコは土門から「美也子が左大文字山に何かを見たようだ」と聞かされると、これを麗香に尋ねる。
「スーパービジョン」の持ち主のみが視認出来る何かが「左大文字山」にあったのではないかと考えたのだ。
だが、麗香には特に覚えはないらしい。
矢先、殺害当日に美也子が学長である仙川京一郎を訪ねて母校を訪れていたことが判明。
仙川はマリコと土門を目にするなり、マリコを「何事をも見抜く眼」、土門を「猟犬の眼」と評して大喜びする。
仙川によれば「芸術を解する為には対象を深くまで見詰める観察眼」が求められるのだそうだ。
マリコと土門にそれを見出したらしい。
仙川に美也子について尋ねたところ、彼は「行き違いになって会えなかった」と述べる。
しかも、仙川によれば美也子から恨まれているらしい。
美弥子は他者が目に出来ない「スーパービジョン」に驕り表面を飾る絵しか描かなかったのだそうだ。
仙川はそんな美也子を「お前は内面を見抜けていない」と批判していた。
結局、美也子はコンクールで受賞を逃すなりショックを受け「自分はスーパービジョンで捻じれてしまった」と自主退学してしまった。
仙川はその背中に「捻じれたならやり直せばいい、その時は会いに来い」と声をかけていたそうだ。
もしかして、美也子はその言葉を思い出し仙川を訪ねたのだろうか。
また、当時の美也子は自身を「捻じれた蝶」と評していたと言うが……。
さらにマリコたちは聞き込みで訪れた付属美術館で学芸員・佐藤志穂と出会うことに。
彼女の指を見たマリコは注目する。
志穂の指には絆創膏が貼られていたのだ。
上部が直線に途切れた指紋の正体はこれであった。
つまり、志穂は美也子宅を訪れていたのだ。
だが、何故か志穂は事実を認めようとしない。
手掛かりを求めたマリコは麗香を伴い「左大文字山」へ。
だが、麗香は「特に何も見えない」と語る。
「その日が満月ならば紫外線に浮かび上がる物もあるんだけど」と洩らす麗香。
だが、美也子が何かを見ていた日は新月であった。
しかし、麗香の言葉に引っ掛かりを覚えたマリコはある事実に気付く。
翌日、マリコは再び志穂のもとへ。
ポイントは紫外線であった。
「スーパービジョン」には美術品の真贋を鑑定する際に用いる紫外線照射分析と同じ効果があったのだ。
付属美術館を訪れた美也子は其処で桃山時代の黒楽茶碗・比叡を鑑賞しそれが贋作であると見抜いたのである。
美弥子はこれをアンケートに記した。
美也子の指摘を受けた志穂は仰天し、アンケートにあった美也子宅へ。
ところが、其処で何者かとぶつかった。
首を傾げつつ美也子宅を訪れたところ、既に美也子が死亡していたらしい。
だが、贋作の件もあり第一発見者として名乗り出られなかったのだと言う。
指紋はこの際に付着したのだ。
志穂とぶつかった人物が犯人だと考えたマリコは、当時に着用していた服を提出するよう依頼。
これを鑑定する。
一方で事件前日に磁気嵐が発生したことを知り、真相を突き止める。
向かった先は麗香のもとだ。
マリコは事件前日の美也子が「左大文字山」ではなく「左大文字山上空」を見ていたと指摘。
事件前日に磁気嵐が起こったことで太陽フレアが降り注ぎ「左大文字山上空」にオーロラが現れていたと告げる。
ところが、同じ「スーパービジョン」を持つ筈の麗香はこれについて何も語らなかった。
つまり、麗香は「スーパービジョン」を持っていないのだ。
事件前夜、美也子はオーロラを目にし恐怖を覚え唯一の仲間である麗香のもとへ向かった。
恐怖を分かち合おうと思ったのだろう。
ところが、麗香にはそれが見えない。
美也子は麗香が嘘を吐いていることに気付いた。
だが、美也子は麗香の絵が「スーパービジョン」に頼らない本物であると知り感動した。
其処でこの秘密を明かさないと約束して帰ったのだ。
しかし、そんな美也子の存在を許さない人物が居た。
マリコは志穂が犯人とぶつかった際の衣服から証拠が出たと述べ、犯人が麗香のマネージャーであると告発する。
麗香の嘘が露見することを怖れたマネージャーの犯行だったのだ。
こうしてマネージャーが逮捕され、麗香は真実を世間に公表した。
「嘘だったんでしょ〜〜〜裏切られた気分です」
数日後、自称ファンによる麗香へのバッシングが続いていた。
「今までそれを認めていた筈なのに……ねぇ」
これを目にしていた仙川が呟き、同席していたマリコと土門が頷く。
「本物を見抜く眼を持っているのは一握りなんだねぇ」
見ることこそが闘いだと主張する仙川は美也子を思い浮かべる。
美弥子は仙川を母校に訪ねた。
そして、彼女が自宅に描いた蝶は捻じれた蝶ではなく綺麗な蝶であった。
おそらく彼女は本物が何たるかを知り、再出発を心に決めていたのだろう。
仙川に挨拶し、その場を去ろうとするマリコと土門。
そんな2人に仙川は告げる。
「あんたは何事も見抜く菩薩様の眼、あんたは猟犬の眼、良いコンビだよ」と―――エンド。
<感想>
「科捜研の女 シーズン15」2話。
テーマは「本物(真実)を見抜く眼」か。
仙川の言葉はいろいろと示唆に富んでいましたね。
彼が言うように「人間の内面(真実)」を覗くには特別な力は不要なのでしょう。
あくまで必要なのは「他者に興味を抱き、その内面を注視し続け力を磨く」こと。
例え、「スーパービジョン」を以てしても美也子は「人を見抜く力」が無かった。
だから、夫を見抜くことが出来ず、麗香を見抜くことが出来なかった。
一方、マリコ、土門、仙川は「他者の内面」に注視し続けて居る。
科学を以て「人間の内面」を覗くマリコ。
足で稼いだ事実を以て「人間の内面」を覗く土門。
そして芸術の対象として「人間の内面」を観察し続けた仙川。
そう言えば『無痛』にて「診る眼」を手に入れた為頼も同様に観察し続けた結果でしたね。
・『無痛』(久坂部羊著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)
ある意味、4人は「真実を追求する徒」として同志なのでしょう。
だからこそ、仙川はマリコと土門を見出し喜んだ。
まるで異郷の地で出会った数少ない同朋のように。
その一方で、唯一の仲間を見つけたと思いながらその仲間が真っ赤な偽物だった美也子。
これは彼女にとって唯一の同朋を失ったことを意味します。
ですが、美也子はこれを寧ろ喜んだ。
何故なら、美也子は麗香の絵に「本物の美しさ」を見出しており、これが「スーパービジョン」によらない物だと知ったから。
つまり、奇しくも仙川の言葉がその時に実感出来たのでしょう。
そして、「スーパービジョン」抜きでも芸術が追及出来ること。
また、自身が捻じれたのは「スーパービジョン」だけではなく、自身が他者に興味を抱かなかったからであることにも気付いた。
だから、再出発を決意出来た。
ところが、そのきっかけをくれた麗香の周辺者により命を奪われることに。
何とも切ないです。
そして、当の麗香もまた切ない。
何しろ、彼女は「スーパービジョン」に頼らずとも、その持ち主である美也子を感動させる絵を描けた。
つまり、実力は本物。
それこそ、仙川が言う「本物を見抜く眼」を持っていた。
にも関わらず、嘘だった筈の「スーパービジョン」に溺れ、その眼を曇らせた。
結果、麗香の真価を知る大切な美也子を失うこととなった。
「現代社会は芸術ではなく情報を鑑賞する」と称されることがあります。
芸術そのものではなく、それに付随する作者の情報やプロフィールで評価するアレです。
端的な例だと映画「ビッグ・アイズ」のモチーフにもなった事件がそうでしょうか。
それが1つの目安にもなるでしょうし、プロモーション上付加価値が求められるのも理解出来なくもないですが、それが先行し過ぎて本物が否定されてしまうのでは本末転倒な気がしますね。
何とも含蓄のある回でした。
やっぱり、この「テーマ性の高さ」こそが「科捜研の女」です。高評価でした!!
えっと、そんな余韻を台無しにしかねないのですが一言。
それにしても「潜在」指紋を調べるライトで浮かび上がる絵が「洗剤」で描かれていたのは少しツボでした。
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「科捜研の女」も「無痛」も見ているので、どちらもレビューしてくださって、うれしいです。
いつも、管理人さんほど、深く視聴していませんが、読んで納得・・・が多いです。
一時、蛍光物質や香料のない洗剤が流行していましたが、最近、またすごく含んだのがでてきていますね。こういうのも、流行があるのでしょうね。
今シーズンはドラマの初回が2時間スペシャルになっているのが多いですね。これも流行?
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
あああっ、先にお詫びしなければ……。
申し訳ないです。
折角、コメント頂きながら「科捜研の女」「無痛」ともに今週分のレビューを落としてしまいました。
ただ「無痛」の4話は視聴してますので、記事としてまとめられればアップしたく思っています。
実を申し上げると、これから年末にかけて少し忙しくなりつつありましてリアルタイムで見逃しの恐れが出て来ています。
出来れば皆勤を目指したいのですが、レビューが上がらなかった場合は「間に合わなかったか……」とお察しください(泣)。
そして洗剤ですが、やっぱり何事も流行があるのかもしれませんね。
一説によるとブームには周期があるのだとか。
それも関係しているのかもしれません。
そう言えば、ご指摘受けて気付きましたが確かに「2時間スペシャル」も多い印象ですね。何か理由があるのでしょうか!?